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第七章 忙しい夏休み
12 ストレーゼンの離宮
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ストレーゼンの離宮は、普段は公務で忙しい王族の方達のみで寛ぐ場所で、貴族も招待されないと足を踏み入れたりしない。離宮の門も閉ざされており、門番の衛兵は王族方の招待された方だけを通すように厳命を受けている。
ユーリがマウリッツ公爵家の馬車で離宮の門に着くと、前日にストレーゼンに到着したのを察知していた国王から、すぐに通すように言われていたのでサッと通された。
ユーリはパーラーの制服姿のローズとマリーをお供に連れて来ていたので、女官に台所でアイスクリームの盛り付けと、サロンへの案内などの手配をお願いする。
「ユーリ様、王妃様がお待ちですよ」
離宮にユーリが到着したのに、なかなかサロンに来ないのにじれた王妃からの呼び出しに、慌ててローズ達への指示を終えると挨拶に出向く。
「王妃様、国王陛下、ご機嫌いかがお過ごしでしょうか? この度は公園での屋台の許可を頂き、ありがとうございます」
サロンには国王夫妻と、グレゴリウス、マリー・ルイーズ妃、サザーランド公爵夫妻が寛いでいる。
「グレゴリウスから聞きましたが、なんでもアイスクリームとかいう、氷菓を屋台で売るそうですね」
王妃の言葉にユーリは試食して頂こうと持参してますと、打合せ通りにローズとマリーにガラスの器に盛られた二色のアイスクリームを運ばせる。
今朝のユーリはパーラーの制服に似たブルーのドレスを着て、髪の毛はローズ達とお揃いに両サイドでお団子にして、青いリボンを飾っている。グレゴリウスは見た瞬間からボォッとしていたが、可愛い制服姿の二人と並ぶと、より愛らしく見える。
「まぁ、これがアイスクリームなのね。グレゴリウスの説明を聞いて、食べてみたかったのですよ」
国王や王妃の前に出たローズとマリーは緊張しきっていたが、どうにかアイスクリームを配り終える。
「溶けないうちに、お召し上がり下さい。白いのはバニラ、ピンクのは苺ですのよ。お口にあえば、宜しいけど」
グレゴリウスは前に食べていたから、美味しいのは知っていたが、他の方々は初めて味に喜んだ。
「これは美味しいな、ユーリが作ったのか?」
国王の言葉で、ローズとマリーが作りましたのと、二人を紹介する。
「お前たちがユーリのパーラーも手伝ってくれるのだな。ユーリは時々無茶をするから、疲れすぎないように気をつけてやってくれ」
国王にお言葉をかけられて、真っ赤になって頷いている二人を微笑ましく王妃は思ったが、こうも緊張していては気の毒だと女官達に別室で休ませるように指示する。
「ユーリ、あの制服姿すごく可愛いね。パーラーでもあの制服なの?」
グレゴリウスはパーラーの制服姿も可愛いけど、ユーリの方が百倍愛らしく思えたが紳士らしく誉める。
「皇太子殿下、ありがとうございます。とても可愛い制服ができて嬉しいの」
ユーリが自分より幼なじみを誉められる方を喜ぶのをグレゴリウスが理解してたのかと、アルフォンスはジークフリートの指導のお陰かなと内心で呟く。
「ユーリ、これほど美味しいとは思ってなかったわ。屋台は大評判になりそうね。公園のどこで開くつもりですか? 後見人なのだから、行ってみなくてはね」
「王妃様が屋台で? 公園の野外劇場で屋台を開こうと思ってますが、屋台ですからガラスの器などないのです。ワッフルコーンに乗せて売る予定です。もちろん、アイスクリームにかぶりつかれないレディには、小さな木のスプーンをつけますけど……」
自分の説明がよく理解されて無さそうなので、ユーリは女官にローズ達にワッフルコーンの上にアイスクリームを乗せて持ってくるように頼んだ。
銀のお盆の上に、ワッフルコーンにアイスクリームを乗せたのが、6個スタンドに立てて運ばれてくる。
「ああ、こういう事ね。確かにかぶりつくのは、お行儀悪そうだわ。私は木のスプーンで頂きますわ」
王妃を見習って、マリー・ルイーズ妃も、サザーランド公爵夫人のメルローズ王女も、木のスプーンで上品にアイスクリームを食べる。グレゴリウスがアイスクリームとワッフルコーンを一緒に食べると最高ですよと、お祖父様に勧めると、男性方はパクパクと美味しそうにかぶりついた。
「まぁ、かぶりついた方が美味しそうだわ」
サザーランド公爵にワッフルコーンと食べた方が美味しいですよと勧められたメルローズは、これっと王妃に窘められても、アイスクリームにかぶりつく。
「母上! これはワッフルコーンと一緒の方が美味しいわ。マリー・ルイーズ御姉様も、試してみて。此処には私達だけですもの」
女官もローズ達もサービスすると退室していたし、国王も勧めるので、王妃もマリー・ルイーズ妃も、少しはにかみながら食べる。
「あら、本当だわ。お行儀が悪いから、人前ではできませんが、アイスクリームとワッフルコーンを一緒に食べた方が美味しいわ」
ユーリは野外劇場の使用許可と、ピアノの貸し出し、倉庫に屋台をしまう許可を貰うと、ご家族だけで寛いでいらっしゃるので早々に退出しようとする。だが、長年ユーリをストレーゼンの離宮に招待し続けていたテレーズが、そう易々と解放してくれるわけがない。
「この屋台を開くのは、前のローラン王国との戦争の遺児達が安心して働けるパーラーの出資者を募る為とか言ってましたね。凄く良い考えだと思いますし、このアイスクリームならパーラーも成功すると思いますわ。私は貴女の後見人なのですから、全額出資致しましょう」
王妃の言葉を、ユーリは断り難くて困ってしまう。
「ユーリ? もしかして、出資者は既に集まっているの」
ユーリの困っている様子に、グレゴリウスはピンとくる。
「ええ、マキシウス祖父と、マウリッツ公爵家の方々が出資者になってくれたの。まだ出資者は募るつもりだし、小口の寄付も受け付けるけど、全額出資は他の人達も断ったから……」
グレゴリウスは何事にもキチンとしているユーリだから、帳簿をつけているだろうと考えて、後見人の王妃にお見せするべきだと勧める。
テレーズは数字に明るくはなかったし、帳簿などチェックしたことがなかったが、ユーリの帳簿が細かい経費までキチンと計上された物であるのはわかった。それとマキシウス卿とマウリッツ老公爵、公爵、公爵夫人、ユージーン卿が10000クローネ出資しているぐらいは理解できた。
「アルフォンス様、私は帳簿がよくわかりませんの。あと幾ら必要なのかしら?」
テレーズはユーリに屋台の許可を出したものの、長々と屋台をさせるつもりなどない。どれどれと、アルフォンスとナサニエルはユーリの帳簿をチェックする。
「うん? もう目標額に達しているな。ユーリ、どういう事だ?」
「あっ、それは前の計画表ですわ。こちらの方ですの」
差し替えられた計画表では、寮の経費が跳ね上がっている。
「ユーリ、どうして寮の経費がこのように加算されているのですか?」
ナサニエルの質問に、ユーリは最初に予定していた寮の地区は余り治安が良くないと説明する。
「最初はパーラーのある地区で寮を探しましたが、見つからなかったし、家賃が高すぎたの。それで下町にやっと寮の建物を見つけましたが、酔っ払いが声をかけてくるような町だったのです。女の子ばかりの従業員の寮に不向きだと公爵家で言ったら、パーラーのある地区に建物ごと用意して下さったの。前の下町の家賃で良いと言われたけど、キチンとしたくて……」
国王夫妻は、グレゴリウスからユーリがユングフラウを侍女も伴わず一人で歩き回っていたと聞かされて愕然としていたので、酔っ払いが声を掛けてくるような下町を彷徨いていたのかと激怒する。
「ユーリ、貴女はそんな下町まで行ってたのですか。二度と行っては行けませんよ。アルフォンス様、私の監督不行き届きですわ。この子が無事なのは、奇跡ですわ」
ひゃ~っと、首をすくめながらユーリは謝罪する。
「王妃様のせいではありませんわ、私が悪いのです。つい、思い立ったら馬車を用意して貰うより、イリスでひとっ飛びした方が早いから。マウリッツ公爵夫人にも、怒られましたわ」
かなり厳しく公爵家でも叱られたのだろうと、アルフォンスは察する。そしてユーリが出入りするだろう寮を、治安の良い地区に速やかに用意した手腕に感嘆した。
「あの地区の建物ごと買い取ったのか。なかなか人気の地区だから、売り物件は少ないだろうに」
「そうなんですよね。私も何度も不動産屋に足を運んで探しましたが、見つからなかったのに、2、3日で手配して下さったの。やはり私が女の子だからかしら? パーラーの店舗を借りるのも難しいかったし、イリスが保証人みたいなものでしたもの。私より竜の方が信用あるのかと、落ち込みましたが、マキシウス祖父様の信用なんだと途中で気づきましたわ」
ユーリが孤軍奮闘していたのをあっさりと解決したマウリッツ公爵家のお手並みに、全員がガードの固さも感じる。特に、ナサニエルは姉のマリアンヌがユーリをどれほど可愛がっているか知っていたので、皇太子妃にする気が無いのではと心配する。
「そうですね、パーラーの開店費用と、当面の運転資金には、あと50000クローネかな? ユーリ、私は君の父上とは従兄なのだから1000口出資しよう。姉上も1000口出資されているからね」
姉のマリアンヌの出資を受けて、自分のを断るなんてさせないよと、サザーランド公爵はユーリにごり押しする。
「あら、ユーリは従姉のロザリモンド姫の娘なんだから、1000口出資しますわ。夫の出資を受けたのですものね」
「まぁ、フィリップ殿下もロザリモント姫の従兄弟ですわ。亡き夫の代わりに私が出資しますわ」
メルローズや、マリー・ルイーズ妃の出資を断れなかったユーリに、ましてや後見人の王妃や、大伯父の国王からの出資を断れるわけもなく、予定の出資金は集まった。ユーリは何となく納得し難い思いだったが、丁寧にお礼を申し上げる。
「皆様の出資を大切に使わせて頂きますわ。毎月、報告書を送らして頂きます」
グレゴリウスは見習いだからと断られたのが少し不満だった。
ユーリがマウリッツ公爵家の馬車で離宮の門に着くと、前日にストレーゼンに到着したのを察知していた国王から、すぐに通すように言われていたのでサッと通された。
ユーリはパーラーの制服姿のローズとマリーをお供に連れて来ていたので、女官に台所でアイスクリームの盛り付けと、サロンへの案内などの手配をお願いする。
「ユーリ様、王妃様がお待ちですよ」
離宮にユーリが到着したのに、なかなかサロンに来ないのにじれた王妃からの呼び出しに、慌ててローズ達への指示を終えると挨拶に出向く。
「王妃様、国王陛下、ご機嫌いかがお過ごしでしょうか? この度は公園での屋台の許可を頂き、ありがとうございます」
サロンには国王夫妻と、グレゴリウス、マリー・ルイーズ妃、サザーランド公爵夫妻が寛いでいる。
「グレゴリウスから聞きましたが、なんでもアイスクリームとかいう、氷菓を屋台で売るそうですね」
王妃の言葉にユーリは試食して頂こうと持参してますと、打合せ通りにローズとマリーにガラスの器に盛られた二色のアイスクリームを運ばせる。
今朝のユーリはパーラーの制服に似たブルーのドレスを着て、髪の毛はローズ達とお揃いに両サイドでお団子にして、青いリボンを飾っている。グレゴリウスは見た瞬間からボォッとしていたが、可愛い制服姿の二人と並ぶと、より愛らしく見える。
「まぁ、これがアイスクリームなのね。グレゴリウスの説明を聞いて、食べてみたかったのですよ」
国王や王妃の前に出たローズとマリーは緊張しきっていたが、どうにかアイスクリームを配り終える。
「溶けないうちに、お召し上がり下さい。白いのはバニラ、ピンクのは苺ですのよ。お口にあえば、宜しいけど」
グレゴリウスは前に食べていたから、美味しいのは知っていたが、他の方々は初めて味に喜んだ。
「これは美味しいな、ユーリが作ったのか?」
国王の言葉で、ローズとマリーが作りましたのと、二人を紹介する。
「お前たちがユーリのパーラーも手伝ってくれるのだな。ユーリは時々無茶をするから、疲れすぎないように気をつけてやってくれ」
国王にお言葉をかけられて、真っ赤になって頷いている二人を微笑ましく王妃は思ったが、こうも緊張していては気の毒だと女官達に別室で休ませるように指示する。
「ユーリ、あの制服姿すごく可愛いね。パーラーでもあの制服なの?」
グレゴリウスはパーラーの制服姿も可愛いけど、ユーリの方が百倍愛らしく思えたが紳士らしく誉める。
「皇太子殿下、ありがとうございます。とても可愛い制服ができて嬉しいの」
ユーリが自分より幼なじみを誉められる方を喜ぶのをグレゴリウスが理解してたのかと、アルフォンスはジークフリートの指導のお陰かなと内心で呟く。
「ユーリ、これほど美味しいとは思ってなかったわ。屋台は大評判になりそうね。公園のどこで開くつもりですか? 後見人なのだから、行ってみなくてはね」
「王妃様が屋台で? 公園の野外劇場で屋台を開こうと思ってますが、屋台ですからガラスの器などないのです。ワッフルコーンに乗せて売る予定です。もちろん、アイスクリームにかぶりつかれないレディには、小さな木のスプーンをつけますけど……」
自分の説明がよく理解されて無さそうなので、ユーリは女官にローズ達にワッフルコーンの上にアイスクリームを乗せて持ってくるように頼んだ。
銀のお盆の上に、ワッフルコーンにアイスクリームを乗せたのが、6個スタンドに立てて運ばれてくる。
「ああ、こういう事ね。確かにかぶりつくのは、お行儀悪そうだわ。私は木のスプーンで頂きますわ」
王妃を見習って、マリー・ルイーズ妃も、サザーランド公爵夫人のメルローズ王女も、木のスプーンで上品にアイスクリームを食べる。グレゴリウスがアイスクリームとワッフルコーンを一緒に食べると最高ですよと、お祖父様に勧めると、男性方はパクパクと美味しそうにかぶりついた。
「まぁ、かぶりついた方が美味しそうだわ」
サザーランド公爵にワッフルコーンと食べた方が美味しいですよと勧められたメルローズは、これっと王妃に窘められても、アイスクリームにかぶりつく。
「母上! これはワッフルコーンと一緒の方が美味しいわ。マリー・ルイーズ御姉様も、試してみて。此処には私達だけですもの」
女官もローズ達もサービスすると退室していたし、国王も勧めるので、王妃もマリー・ルイーズ妃も、少しはにかみながら食べる。
「あら、本当だわ。お行儀が悪いから、人前ではできませんが、アイスクリームとワッフルコーンを一緒に食べた方が美味しいわ」
ユーリは野外劇場の使用許可と、ピアノの貸し出し、倉庫に屋台をしまう許可を貰うと、ご家族だけで寛いでいらっしゃるので早々に退出しようとする。だが、長年ユーリをストレーゼンの離宮に招待し続けていたテレーズが、そう易々と解放してくれるわけがない。
「この屋台を開くのは、前のローラン王国との戦争の遺児達が安心して働けるパーラーの出資者を募る為とか言ってましたね。凄く良い考えだと思いますし、このアイスクリームならパーラーも成功すると思いますわ。私は貴女の後見人なのですから、全額出資致しましょう」
王妃の言葉を、ユーリは断り難くて困ってしまう。
「ユーリ? もしかして、出資者は既に集まっているの」
ユーリの困っている様子に、グレゴリウスはピンとくる。
「ええ、マキシウス祖父と、マウリッツ公爵家の方々が出資者になってくれたの。まだ出資者は募るつもりだし、小口の寄付も受け付けるけど、全額出資は他の人達も断ったから……」
グレゴリウスは何事にもキチンとしているユーリだから、帳簿をつけているだろうと考えて、後見人の王妃にお見せするべきだと勧める。
テレーズは数字に明るくはなかったし、帳簿などチェックしたことがなかったが、ユーリの帳簿が細かい経費までキチンと計上された物であるのはわかった。それとマキシウス卿とマウリッツ老公爵、公爵、公爵夫人、ユージーン卿が10000クローネ出資しているぐらいは理解できた。
「アルフォンス様、私は帳簿がよくわかりませんの。あと幾ら必要なのかしら?」
テレーズはユーリに屋台の許可を出したものの、長々と屋台をさせるつもりなどない。どれどれと、アルフォンスとナサニエルはユーリの帳簿をチェックする。
「うん? もう目標額に達しているな。ユーリ、どういう事だ?」
「あっ、それは前の計画表ですわ。こちらの方ですの」
差し替えられた計画表では、寮の経費が跳ね上がっている。
「ユーリ、どうして寮の経費がこのように加算されているのですか?」
ナサニエルの質問に、ユーリは最初に予定していた寮の地区は余り治安が良くないと説明する。
「最初はパーラーのある地区で寮を探しましたが、見つからなかったし、家賃が高すぎたの。それで下町にやっと寮の建物を見つけましたが、酔っ払いが声をかけてくるような町だったのです。女の子ばかりの従業員の寮に不向きだと公爵家で言ったら、パーラーのある地区に建物ごと用意して下さったの。前の下町の家賃で良いと言われたけど、キチンとしたくて……」
国王夫妻は、グレゴリウスからユーリがユングフラウを侍女も伴わず一人で歩き回っていたと聞かされて愕然としていたので、酔っ払いが声を掛けてくるような下町を彷徨いていたのかと激怒する。
「ユーリ、貴女はそんな下町まで行ってたのですか。二度と行っては行けませんよ。アルフォンス様、私の監督不行き届きですわ。この子が無事なのは、奇跡ですわ」
ひゃ~っと、首をすくめながらユーリは謝罪する。
「王妃様のせいではありませんわ、私が悪いのです。つい、思い立ったら馬車を用意して貰うより、イリスでひとっ飛びした方が早いから。マウリッツ公爵夫人にも、怒られましたわ」
かなり厳しく公爵家でも叱られたのだろうと、アルフォンスは察する。そしてユーリが出入りするだろう寮を、治安の良い地区に速やかに用意した手腕に感嘆した。
「あの地区の建物ごと買い取ったのか。なかなか人気の地区だから、売り物件は少ないだろうに」
「そうなんですよね。私も何度も不動産屋に足を運んで探しましたが、見つからなかったのに、2、3日で手配して下さったの。やはり私が女の子だからかしら? パーラーの店舗を借りるのも難しいかったし、イリスが保証人みたいなものでしたもの。私より竜の方が信用あるのかと、落ち込みましたが、マキシウス祖父様の信用なんだと途中で気づきましたわ」
ユーリが孤軍奮闘していたのをあっさりと解決したマウリッツ公爵家のお手並みに、全員がガードの固さも感じる。特に、ナサニエルは姉のマリアンヌがユーリをどれほど可愛がっているか知っていたので、皇太子妃にする気が無いのではと心配する。
「そうですね、パーラーの開店費用と、当面の運転資金には、あと50000クローネかな? ユーリ、私は君の父上とは従兄なのだから1000口出資しよう。姉上も1000口出資されているからね」
姉のマリアンヌの出資を受けて、自分のを断るなんてさせないよと、サザーランド公爵はユーリにごり押しする。
「あら、ユーリは従姉のロザリモンド姫の娘なんだから、1000口出資しますわ。夫の出資を受けたのですものね」
「まぁ、フィリップ殿下もロザリモント姫の従兄弟ですわ。亡き夫の代わりに私が出資しますわ」
メルローズや、マリー・ルイーズ妃の出資を断れなかったユーリに、ましてや後見人の王妃や、大伯父の国王からの出資を断れるわけもなく、予定の出資金は集まった。ユーリは何となく納得し難い思いだったが、丁寧にお礼を申し上げる。
「皆様の出資を大切に使わせて頂きますわ。毎月、報告書を送らして頂きます」
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