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第六章 同盟締結
18 間違った真名
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昼からの講義はサイレーンだけでなく、他の伝説上の生き物達のエピソードや逸話、寓話に隠された教訓とかを、興味深く授業に取り混ぜられていて、全員がライシャワー教授に魅せられた。
特に、エドアルドは鷹のターシュのエピソードが詳しく語られたのに興味を持った。ユーリも教授からの視線を感じなくなり、やはり気のせいだったのだと安心して講義を聴く。
「今日は、喋る猪サイレーン、皇子の鷹ターシュ、乙女の守護獣ユニコーンと伝説や、文献上の動物について講義してきたが、これらの動物は魔力を持っていたと考えられている。伝説上の動物について残っている文献は、大多数が旧帝国時代のものであるが、稀少な旧帝国以前の古文書の残骸にサイレーン、ターシュの真名が残されているのを発見した」
講義の最後を締めくくる教授の言葉に学生達はどよめいた。ライシャワー教授は黒板に「犀猪臉」「鷹玉」と大きく書いた。
「これが、サイレーン、ターシュ、それらの本質を表す真名だ。これにて私の講義は終わりだ。拝聴を感謝する」
学生達はライシャワー教授の興味深い話に感謝して拍手を贈ったが、ユーリは象形文字、象意文字の漢字に近い文字で書かれた「犀猪臉」に赤い目を光らせる猪の幻を見、「鷹玉」の点の間違えにグラッと視線が歪むような気持ちの悪さを感じる。
グレゴリウスは他の生徒達と同じく拍手していたが、隣りのユーリが具合悪そうにしているのに気づいた。
「大丈夫かい? 顔が真っ青だ」
ユーリは視線が歪んで気持ち悪いのに、文字の力に捕らわれて目が離せなかったが、グレゴリウスに肩をつかまれて、やっと文字から目が離せた。
「少し、熱気にあたったみたい……外の空気が吸いたいわ……」
講義が終わってライシャワー教授の周りには人垣ができていた。
ユーリは教授や黒板を見ないように教室から出ようと立ち上がったが、グラッと視界が歪んで倒れそになる。
グレゴリウスはとっさにユーリを支えたが、エドアルドもユーリの異変に気づいて支える手を出したので二人から支えられた。
「ユーリ嬢、大丈夫ですか? 少し、座った方が良いですよ」
エドアルドは真っ青な顔に驚いて心配して声をかけたが、吐き気までしてきたユーリは、一刻も早くこの教室から逃げ出したかった。
「大丈夫です」
口をハンカチで押さえて教室から飛び出したユーリは、外の空気を深呼吸する。まだ目眩は残っていたので、芝生に崩れるように座り込んだが、教室にいた時のような胸の悪さは治まった。
他のメンバーも心配そうにユーリの様子を見ていたが、フランツは食堂に走って水を持ってくる。
「ユーリ、大丈夫? お水、飲める?」
フランツからコップを受け取ると、ユーリは一気に飲み干す。
「フランツ、ありがとう、もう大丈夫よ」
胸につかえてた気持ち悪さが、冷たい水で洗い流されたみたいに思えて、ユーリはホッとする。
「旧帝国語なんて久し振りだから、知恵熱でも出したのかと思ったよ」
ユーリの顔色が良くなったのに安心したフランツは軽口を言って、まだ心配そうな二人の皇太子を元気づける。
「酷いわね! でも、知恵熱なのかも……」
ふと、またあの間違った文字が目に浮かび、胸の悪さがこみ上げてくる。
「ユーリ、本当に気分が悪そうだ。エドアルド皇太子殿下、保健室は何処ですか? ユーリが病気だ」
フランツは入学してから、風邪ひとつひいた事のないユーリの具合が悪いのに慌てる。
「ハロルド、保健室に校医はいるだろうか?」
サマースクールは開催されているが、パロマ大学自体は夏休み中なので、いつもは保健室にいる校医が不在ではと、エドアルドは胸が張り裂けそうな思いがする。
「夏休みだから校医はいないかもしれないが、看護婦はいるだろう。それにベッドもあるから、少し休まれた方が良いですよ」
ユーリは迷惑をかけるから、大丈夫ですと立ち上がったが、顔色は真っ青だ。
「ユーリ・フォン・フォレスト嬢、無理をされない方が良いですよ。貴女は真名に酔ってしまってるのですね?」
ユーリが具合が悪くなって、芝生に座り込んでいる間に、側にライシャワー教授と助手のアレックスが立って見ているのに誰も気づかなかった。
「ライシャワー教授、彼女はユーリ・キャシディ嬢ですよ。誰かとお間違えでは?」
ライシャワー教授の言葉に疑惑を抱いたエドアルドは、午前中にユーリから言われてた偽名を使って誤魔化そうとする。
「皇太子殿下、いくら私が世事に疎いからといって、殿下がお連れしている令嬢の名前ぐらい知っておりますよ。ユーリ・フォン・フォレスト嬢、貴女は真名が読めるのですね」
ライシャワー教授に見破られてるなら仕方がないと、ユーリは逆ギレする。
「ライシャワー教授、貴方は大間違いしてるわ。『鷹主』よ! 間違えた真名なんか見せられたから、視線がグニャグニャになったのよ」
怒鳴りつけながらも、間違った文字を思い出してウッとなりかけたが、どうやってこの吐き気を止めるのかユーリはわかった気がする。
「フランツ、お願いだから、私を教室に連れて行って! あの文字を書き直さないと、間違った文字が目に焼き付いてるの」
間違った文字と言うだけで吐き気を覚えたが、このままじゃ吐き気も目眩も治らないとユーリは訴えた。
「間違った文字だったのですか? 大変だ!」
フランツが具合の悪そうなユーリを教室に連れて行くのを躊躇っていると、助手のアレックスはユーリを抱き起こして教室まで引きずるように運んだ。
呆気にとられた一行は、ユーリ達の後を走って追いかけた。
教室に着くと、ユーリは吐き気をこらえながら黒板の『鷹玉』の玉の字を消して『鷹主』と書き換えた。
一瞬、鷹のターシュが金色の目をキラリと光らせてユーリの身体を通り過ぎたような気持ちがした。
「ああ! これで吐き気はおさまったわ」
ホッとしたユーリは、エドアルドとライシャワー教授、アレックスが呆然としてるのに気がついた。
「エドアルド皇太子殿下! ライシャワー教授! アレックスさん!」
ユーリは三人が自分と同じ鷹のターシュを見て、残像に捕らわれていると感じる。
パシーン! 一人づつ軽く頬を平手打ちしていく。
「ユーリ、何をするんだ」
パシーンっという音に驚いて、フランツは制したが、三人はハッと幻から解放される。
ユーリは、黒板の「犀猪臉」「鷹主」の文字を乱暴に消した。
「こんな文字は軽々しく扱っては駄目です。魔力に捕らわれてしまいますよ」
幻からは解放されても、まだ呆然としているエドアルドを心配して、ユーリは教授に噛みつく。
「アレックス君、気付けを研究室から取って来たまえ」
教授も少しグラッとして、教室の椅子に座り込む。
「あれが鷹のターシュ! すごく美しくて強い金色の瞳を持っていた」
まだ夢見心地のエドアルドを椅子に座らせると、ユーリは殴ってごめんなさいと謝る。
「どうなっているのです! エドアルド様のご様子がおかしい。ライシャワー教授、何をなさったのです」
ジェラルドはエドアルドが何らかの魔術をかけられたのでは? と危惧して詰め寄る。ライシャワー教授は気付けが必要ですと、額を手で押さえて答えない。
「エドアルド皇太子殿下は鷹のターシュの幻を見られたのですわ。ライシャワー教授は魔力のある文字を古文書で見つけられたのですね。多分、その文字はその物の本質を表す力を持っているのでしょう。私も文字に捕らわれて、グレゴリウス皇太子殿下に肩をつかまれるまで、抜け出せなかったの。だから、三人をぶったの。彼らはターシュの幻に捕らわれていたから。エドアルド皇太子殿下、そんなに痛くはなかったでしょ」
平手打ちされた頬を無意識に撫でていたエドアルドは「いいえ、痛くはないです」と答えながらも、まだボォっとしている。
アレックスが研究室から気付けを取ってきて、教授、エドアルド、ユーリに渡す。小さなグラスに透明な液体が入っていたので、ユーリは渡されたのが水だと勘違いして一口で飲み干した。
「ゴホン! ゴホン! ……これ……何」
むせて咳き込むユーリをフランツとグレゴリウスは心配して、背中を撫でてやりながら、何を飲ましたんだ! とアレックスに怒鳴りつける。
「ウォッカですよ。 気付け薬代わりに、教授はいつも飲まれてます」
エドアルドもボォっとしたままウォッカを飲んで少しむせたが、正気にかえって、ユーリの背中を撫でているグレゴリウスに気づいてムッとする。
「ユーリ嬢、大丈夫ですか?」
ハロルド、ジェラルド、ユリアンはさっきまで大丈夫でなかったのはエドアルドなのにと、心の中で突っ込んだが、いつものユーリラブ状態に戻ったので安堵する。
「大丈夫なわけないでしょ。ユーリはシャンパンで酔って寝てしまうお子様なのに。女の子に、ウォッカだなんて」
咳き込むのは止まったが、ユーリはすっかり酔っぱらってしまった。
「ちょっと待ってて、お水を持ってくるから」
真っ赤になってるユーリを椅子に座らせて、食堂に水を取りに行こうとするフランツをエドアルドは止めた。
「フランツ卿は側についてた方が良い」
そう言うと学友達に持ってくるように命じる。
『こんなに無防備なユーリ嬢を身内のフランツならいざ知らず、グレゴリウスが代わりに支えるのは嫌だ!』
「お水ですよ、飲んで下さい」
ユリアンが差し出すコップをボンヤリ眺めているユーリを見かねて、フランツはコップを受け取ると「ほら、しっかりして」とユーリに水を飲ませる。ユーリは水を何杯か飲むと、少しは落ち着いてきたが、顔は真っ赤なままだ。
特に、エドアルドは鷹のターシュのエピソードが詳しく語られたのに興味を持った。ユーリも教授からの視線を感じなくなり、やはり気のせいだったのだと安心して講義を聴く。
「今日は、喋る猪サイレーン、皇子の鷹ターシュ、乙女の守護獣ユニコーンと伝説や、文献上の動物について講義してきたが、これらの動物は魔力を持っていたと考えられている。伝説上の動物について残っている文献は、大多数が旧帝国時代のものであるが、稀少な旧帝国以前の古文書の残骸にサイレーン、ターシュの真名が残されているのを発見した」
講義の最後を締めくくる教授の言葉に学生達はどよめいた。ライシャワー教授は黒板に「犀猪臉」「鷹玉」と大きく書いた。
「これが、サイレーン、ターシュ、それらの本質を表す真名だ。これにて私の講義は終わりだ。拝聴を感謝する」
学生達はライシャワー教授の興味深い話に感謝して拍手を贈ったが、ユーリは象形文字、象意文字の漢字に近い文字で書かれた「犀猪臉」に赤い目を光らせる猪の幻を見、「鷹玉」の点の間違えにグラッと視線が歪むような気持ちの悪さを感じる。
グレゴリウスは他の生徒達と同じく拍手していたが、隣りのユーリが具合悪そうにしているのに気づいた。
「大丈夫かい? 顔が真っ青だ」
ユーリは視線が歪んで気持ち悪いのに、文字の力に捕らわれて目が離せなかったが、グレゴリウスに肩をつかまれて、やっと文字から目が離せた。
「少し、熱気にあたったみたい……外の空気が吸いたいわ……」
講義が終わってライシャワー教授の周りには人垣ができていた。
ユーリは教授や黒板を見ないように教室から出ようと立ち上がったが、グラッと視界が歪んで倒れそになる。
グレゴリウスはとっさにユーリを支えたが、エドアルドもユーリの異変に気づいて支える手を出したので二人から支えられた。
「ユーリ嬢、大丈夫ですか? 少し、座った方が良いですよ」
エドアルドは真っ青な顔に驚いて心配して声をかけたが、吐き気までしてきたユーリは、一刻も早くこの教室から逃げ出したかった。
「大丈夫です」
口をハンカチで押さえて教室から飛び出したユーリは、外の空気を深呼吸する。まだ目眩は残っていたので、芝生に崩れるように座り込んだが、教室にいた時のような胸の悪さは治まった。
他のメンバーも心配そうにユーリの様子を見ていたが、フランツは食堂に走って水を持ってくる。
「ユーリ、大丈夫? お水、飲める?」
フランツからコップを受け取ると、ユーリは一気に飲み干す。
「フランツ、ありがとう、もう大丈夫よ」
胸につかえてた気持ち悪さが、冷たい水で洗い流されたみたいに思えて、ユーリはホッとする。
「旧帝国語なんて久し振りだから、知恵熱でも出したのかと思ったよ」
ユーリの顔色が良くなったのに安心したフランツは軽口を言って、まだ心配そうな二人の皇太子を元気づける。
「酷いわね! でも、知恵熱なのかも……」
ふと、またあの間違った文字が目に浮かび、胸の悪さがこみ上げてくる。
「ユーリ、本当に気分が悪そうだ。エドアルド皇太子殿下、保健室は何処ですか? ユーリが病気だ」
フランツは入学してから、風邪ひとつひいた事のないユーリの具合が悪いのに慌てる。
「ハロルド、保健室に校医はいるだろうか?」
サマースクールは開催されているが、パロマ大学自体は夏休み中なので、いつもは保健室にいる校医が不在ではと、エドアルドは胸が張り裂けそうな思いがする。
「夏休みだから校医はいないかもしれないが、看護婦はいるだろう。それにベッドもあるから、少し休まれた方が良いですよ」
ユーリは迷惑をかけるから、大丈夫ですと立ち上がったが、顔色は真っ青だ。
「ユーリ・フォン・フォレスト嬢、無理をされない方が良いですよ。貴女は真名に酔ってしまってるのですね?」
ユーリが具合が悪くなって、芝生に座り込んでいる間に、側にライシャワー教授と助手のアレックスが立って見ているのに誰も気づかなかった。
「ライシャワー教授、彼女はユーリ・キャシディ嬢ですよ。誰かとお間違えでは?」
ライシャワー教授の言葉に疑惑を抱いたエドアルドは、午前中にユーリから言われてた偽名を使って誤魔化そうとする。
「皇太子殿下、いくら私が世事に疎いからといって、殿下がお連れしている令嬢の名前ぐらい知っておりますよ。ユーリ・フォン・フォレスト嬢、貴女は真名が読めるのですね」
ライシャワー教授に見破られてるなら仕方がないと、ユーリは逆ギレする。
「ライシャワー教授、貴方は大間違いしてるわ。『鷹主』よ! 間違えた真名なんか見せられたから、視線がグニャグニャになったのよ」
怒鳴りつけながらも、間違った文字を思い出してウッとなりかけたが、どうやってこの吐き気を止めるのかユーリはわかった気がする。
「フランツ、お願いだから、私を教室に連れて行って! あの文字を書き直さないと、間違った文字が目に焼き付いてるの」
間違った文字と言うだけで吐き気を覚えたが、このままじゃ吐き気も目眩も治らないとユーリは訴えた。
「間違った文字だったのですか? 大変だ!」
フランツが具合の悪そうなユーリを教室に連れて行くのを躊躇っていると、助手のアレックスはユーリを抱き起こして教室まで引きずるように運んだ。
呆気にとられた一行は、ユーリ達の後を走って追いかけた。
教室に着くと、ユーリは吐き気をこらえながら黒板の『鷹玉』の玉の字を消して『鷹主』と書き換えた。
一瞬、鷹のターシュが金色の目をキラリと光らせてユーリの身体を通り過ぎたような気持ちがした。
「ああ! これで吐き気はおさまったわ」
ホッとしたユーリは、エドアルドとライシャワー教授、アレックスが呆然としてるのに気がついた。
「エドアルド皇太子殿下! ライシャワー教授! アレックスさん!」
ユーリは三人が自分と同じ鷹のターシュを見て、残像に捕らわれていると感じる。
パシーン! 一人づつ軽く頬を平手打ちしていく。
「ユーリ、何をするんだ」
パシーンっという音に驚いて、フランツは制したが、三人はハッと幻から解放される。
ユーリは、黒板の「犀猪臉」「鷹主」の文字を乱暴に消した。
「こんな文字は軽々しく扱っては駄目です。魔力に捕らわれてしまいますよ」
幻からは解放されても、まだ呆然としているエドアルドを心配して、ユーリは教授に噛みつく。
「アレックス君、気付けを研究室から取って来たまえ」
教授も少しグラッとして、教室の椅子に座り込む。
「あれが鷹のターシュ! すごく美しくて強い金色の瞳を持っていた」
まだ夢見心地のエドアルドを椅子に座らせると、ユーリは殴ってごめんなさいと謝る。
「どうなっているのです! エドアルド様のご様子がおかしい。ライシャワー教授、何をなさったのです」
ジェラルドはエドアルドが何らかの魔術をかけられたのでは? と危惧して詰め寄る。ライシャワー教授は気付けが必要ですと、額を手で押さえて答えない。
「エドアルド皇太子殿下は鷹のターシュの幻を見られたのですわ。ライシャワー教授は魔力のある文字を古文書で見つけられたのですね。多分、その文字はその物の本質を表す力を持っているのでしょう。私も文字に捕らわれて、グレゴリウス皇太子殿下に肩をつかまれるまで、抜け出せなかったの。だから、三人をぶったの。彼らはターシュの幻に捕らわれていたから。エドアルド皇太子殿下、そんなに痛くはなかったでしょ」
平手打ちされた頬を無意識に撫でていたエドアルドは「いいえ、痛くはないです」と答えながらも、まだボォっとしている。
アレックスが研究室から気付けを取ってきて、教授、エドアルド、ユーリに渡す。小さなグラスに透明な液体が入っていたので、ユーリは渡されたのが水だと勘違いして一口で飲み干した。
「ゴホン! ゴホン! ……これ……何」
むせて咳き込むユーリをフランツとグレゴリウスは心配して、背中を撫でてやりながら、何を飲ましたんだ! とアレックスに怒鳴りつける。
「ウォッカですよ。 気付け薬代わりに、教授はいつも飲まれてます」
エドアルドもボォっとしたままウォッカを飲んで少しむせたが、正気にかえって、ユーリの背中を撫でているグレゴリウスに気づいてムッとする。
「ユーリ嬢、大丈夫ですか?」
ハロルド、ジェラルド、ユリアンはさっきまで大丈夫でなかったのはエドアルドなのにと、心の中で突っ込んだが、いつものユーリラブ状態に戻ったので安堵する。
「大丈夫なわけないでしょ。ユーリはシャンパンで酔って寝てしまうお子様なのに。女の子に、ウォッカだなんて」
咳き込むのは止まったが、ユーリはすっかり酔っぱらってしまった。
「ちょっと待ってて、お水を持ってくるから」
真っ赤になってるユーリを椅子に座らせて、食堂に水を取りに行こうとするフランツをエドアルドは止めた。
「フランツ卿は側についてた方が良い」
そう言うと学友達に持ってくるように命じる。
『こんなに無防備なユーリ嬢を身内のフランツならいざ知らず、グレゴリウスが代わりに支えるのは嫌だ!』
「お水ですよ、飲んで下さい」
ユリアンが差し出すコップをボンヤリ眺めているユーリを見かねて、フランツはコップを受け取ると「ほら、しっかりして」とユーリに水を飲ませる。ユーリは水を何杯か飲むと、少しは落ち着いてきたが、顔は真っ赤なままだ。
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