クズ聖王家から逃れて、自由に生きるぞ!

梨香

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第三章 防衛都市

中級者用ダンジョンに挑戦 2

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 三階に下り、脳内地図マッパエムンディで確認する。
「やっと冒険者の数が少なくなったな」

 私以外には、一組の冒険者がいるだけだ。ホッとする。だって、冒険者になってから馬鹿に絡まれてばかりだから。

 そう、だから一人で行動するのが苦痛になっているんだ。城から逃げ出して、ルシウスやジャスに会うまでは、一人で気儘に生きていこうと考えていたんだけどさ。見た目が良すぎて困る。

「あっ、あそこに下級薬草が生えているぞ!」
 ジルとサミーに採らせて、私は警戒する。脳内地図マッパエムンディで魔物の動きを確認しているだけだけどね。

 銀貨クラン一枚が荷物持ちの日当として破格なのは分かるけど、明日、明後日ぐらいでこのダンジョンも踏破するつもりだ。

 雨季になったら困るだろうけど、日当をこれ以上値上げする気はないから、下級薬草を買い上げてやりたい。

「ちょっと動くな!」

 二人の前に立って、こちらに突進してくるビッグボア三頭に矢を射る。チェッ、一頭は急所を外した!

「バリア!」で倒す。ジルとサミーがドロップ品と矢を拾ってくれるから、先を急ぐ。

 だが、三階からは魔物が複数で出てくるようになった。だから、冒険者の数が少ないのかも。

「おっ、魔物の点が重なっている! キラービーだ」

 巣ごと退治したら、ロイヤルゼリーがドロップするかもね! それに、ハチミツはもう少しアイテムボックスに保存したい。甘味は、重要なんだ。

「ハチミツ!」とジルとサミーが嬉しそうだけど、毎回はあげないよ。でも、ハチミツって、金熊亭の女将さんにあげたら、とても喜ばれたんだ。ちょっとしたプレゼントに良いんだよね。
 いつか、交易都市エンボリウムに行くことがあったら、リリーにあげたいな。

「うっ、デカい!」
 初心者用のダンジョンにあったキラービーの巣の倍はある。

「バリア!」と周りに飛んでいるキラービーごと囲んで、空気を抜いていく。
 ボトボトとキラービーが地面に落ちては、ドロップ品に変わっていく。

「巣はなかなか消えないなぁ」
 なんて、呑気に見ていたら……「ぎょえええ!」女王蜂、めちゃめちゃデカい。

「バリア! バリア!」と重ねがけして、必死で空気を抜く。

 バリバリとバリアを巨大な女王蜂が噛み砕いていくけど、重ねがけしたバリアの中の空気が無くなり、消えた。

「怖かった……」昆虫系の魔物は、嫌だ! ホラーも! やはり暗闇ダンジョンは潜りたくないよ。

 私が精神的にやられて、ぼんやりしている間に、ジルとサミーがドロップ品を拾う。

「休憩しよう!」
 体力はまだあるけど、あの女王蜂の残像で精神が疲労している。

「ほら、パンを二人で分けろ!」
 一人、一個ずつでも良いけど、一個は非常食に置いておきたい。

 パンを食べたら、四階に向かう前に荷物の整理だ。
「もう、ほぼいっぱいだよ。大きな巣だったから」

 アイテムボックスの中から大きな袋を取り出して、重たいハチミツやロイヤルゼリーの瓶を入れる。

「お兄ちゃん、進むの早いから、荷物持ちを後一人は雇った方が良いよ」

 今は、三階、四階と五階はもっと複数の魔物が多くなるか? ロイヤルゼリーやハチミツの瓶の少しをアイテムボックスに入れる。重いからね!

「友だちを連れてきても良いかな?」
 ジルの営業力、凄いよ! でもなぁ……子守は嫌だ!
「いざとなったら、私も持つから大丈夫だ」

 明日からは、背負い籠を持って潜ろうかな? あっ、一人で潜れば、アイテムボックスを使い放題なのでは? でも、凄く怪しまれそう。アイテムボックス持ちだと、バレたら大変だ!

 黙々と四階を目指すけど、あちらから魔物がどんどん向かってくる。冒険者が少ないから、遭遇率が高い。

「下級薬草は、この袋に入れてくれ。上に出たら買い取る」
 荷物整理、第二弾だ。これは、軽いけど、嵩張るし、潰されたくない。袋に入れて、アイテムボックスいきだ。



 四階は、木がより増えて、草原というより林になっている。
「他の冒険者はいない! それなら、魔物を避けながら五階へ急ごう」

 転移したら、簡単なのかな? 命の危機なら、転移するけど……。

 林の中、コカトリスがいた。これまでは火食い鳥カセウェアリーだったのに、少しずつ強い魔物が現れるようになった。

「動くなよ!」二人に命じて、先ずは矢を射る。一羽は仕留めたが、もう一羽はこちらに向かってくる。

「バリア!」で首を落とす。

「これ、何?」
 ジルが気味が悪いと、ドロップした毒袋を見ている。

「ああ、これは石化予防の薬になるのさ」
 小さな袋に入れて、私の袋へ。

「石化?」ジルとサミーが震えている。

「そう、中級者ダンジョンの魔物は強い。だから、子どもの荷物持ちを連れて潜りたくなかったんだ」
 石化も治療クーラーティオで治せると思うけどね。



 ぜぃぜぃ、五階に下りるまで、ビッグボアの集団に遇って疲れた。

「あと、一階だが、休憩しよう」

 五階は、冒険者が三組いる。五階の転移陣で潜って、六階には行かず、ここで狩りをしているのかもね。

 オレンジを取り出して、三等分してやる。
「オレンジだ!」とジルとサミーは喜んでいるけど……白い点の動きのチェックに私は忙しい。

 一組は、五階の転移陣の近くで狩りをしているみたい。これは、理解できる。討伐して、疲れたら上に戻るのだろう。

 もう一組は、かなり半ばまで動いている。こんなに動くなら、六階に行った方が良いのに? でも、六階は魔物が強くなるのかな?

 問題は、もう一組だ。四階からの階段、つまり私たちがいる方向に動いている。

「意味不明だよな。五階をクリア出来たなら、四階には用が無いだろう? ギルドで四階に出る魔物のドロップ品の依頼を受けたのか?」

 ぶつぶつ独り言をジルが聞きつける。

「それ、ヤバいんじゃないの! 四階から下りて、疲れている冒険者を狩るつもりなんだ」

 やれやれ、どこにもクズがいるんだな。中級者用ダンジョンに潜っているのなら、銅級以上な筈なのに。

 なるべく避けて行きたいけど、魔物も集団で出るから難しい。それに、あちらの白い点がバラけている。斥候を出したのか?

「ジル、サミー、『動くな!』と言ったら、絶対にそこから動くな! 周りをバリアで囲うから攻撃されても大丈夫だから」

 どうやら魔物討伐より、冒険者の荷物を狙う強盗みたいだ。

「ふうん、魔物を討伐できる腕はあるのに、何故だろう?」

 こちらに向かってくる間に、魔物を討伐している。

「人数が多いと、分け前が少なくなるからじゃないの?」

 ジルに言われて「そうか!」と気づいた。

 これまで、初心者用のダンジョン、中級者用のダンジョンに潜っているチーム、三人とかせいぜい五人だった。それに、荷物持ちが二人か三人。

 でも、こいつらは斥候を入れたら八人、それと荷物持ち二人。

「なぁ、こんな奴らに雇われている荷物持ちも同罪なのか?」

 ジルとサミーは首を傾げる。

「初級の冒険者かも?」

 それなら同罪だし、子どもなら……知っていたら有罪だけど、今回初めて雇われたのなら無罪なのか? 

「向こうは、こちらのドロップ品目当てだ。こうなったら、有利に戦える場所で待ち伏せしよう!」

 林の中に隠れて、脳内地図マッパエムンディで動きを確認する。

「近いな! ジル、サミー、その木の後ろに隠れていろ! バリア!」

 これで子ども達は大丈夫。さて、どうしてやろう!
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