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第三章 防衛都市
初心者用ダンジョン 3
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「ねぇ、お兄ちゃん、本当に十階まで行くの?」
六階も、割と人が多いから、急いで通り抜けようと思っていたら、ジルが声を掛けてくる。
「ああ、そのつもりだ。ジル? 疲れたのか?」
ジルは、ちょっと黙っていた。
「私は、五階までしか来た事がないんだ。だから、十階まで連れて行って貰えると助かる」
ふうん、ダンジョンの転移陣は、一度踏破しないと使えないからな。
「でも、実力がなかったら十階に転移しても危ないぞ」
ジルは笑った。なかなか笑顔は可愛い。生意気な女の子だと思っていたけどさ。
「自分で十階に行くのはもっと先だけど、万が一、冒険者が死んだ時とか転移陣が使えたら助かる場合もあるからさぁ」
ふぅ、それは考えた事がなかったよ。
「ああ、そう言えば……」と言いかけたけど、口を閉じる。
置き去りにされる立場の荷物持ちの子どもに言うことではない。
ダンジョンの最奥を探索するチームが、本当にヤバいと思った時、メンバーだけで逃げるとか聞いたんだ。酷い話だよね。
「さぁ、六階に行ったら、一休みしよう」
時計は持っていないけど、腹時計が昼だと言っている。
六階も人が多いけど、こちらは少なくとも鉄級はいない感じだ。
それでも、うざい馬鹿に絡まれるのは嫌だから、七階への道のりの途中、六階からは木も生えているので、そこで休憩にする。
「ジル、食べ物は持っているのか?」
背負い籠の底から、革の水筒と見るからにカチコチのパンを取り出した。歯が折れそうだけど?
私は、金熊亭でパンに肉を挟んだのを作って貰っていた。相変わらずデカい。
「半分やるよ!」とナイフで切って差し出すと、ジルの目がまん丸になった。
「そのパンは、これ以上固くならないだろう。こっちは、肉が悪くなったらいけないから、先に食べなさい」
水筒から水を飲み、デカいパンに齧り付く。味は、まぁまぁ。
「金熊亭、味より量なんだよなぁ。もう少し、美味しい宿に変えたいけど……」
部屋に風呂がついているのはポイントが高い。ベッドマットがへたっているのはマイナスだけどさ。掃除が良い加減なのもマイナス!
「冒険者って儲かるんだね! 早く冒険者になりたいんだ!」
確かにジルは身体強化ができる。だから、籠にドロップ品がほぼ満杯になっても、私についてこれている。
「武器の扱いをマスターしないといけないな。ギルドで前は研修制度があったと聞いたけど……」
ジルもそれは知っていた。
「うん、でも……あそこに参加する冒険者は……弱い者虐めするから……」
ふうん、あのギルドマスターが見逃すとは思えない。つまり、見つけて罰を与えて、研修システムごと潰したのか? その後のフォローは無し? 何か対策して欲しいよ。
「手斧やナタなら教えてあげれるけど……」
ジルの微妙な顔! 悪かったなぁ、剣とかじゃなくて。教えて欲しそうな弓矢は、矢が有料だから、教えるのはちょっとね。ルシウスに似てケチになったのかも?
「それより、明日もダンジョンに潜るなら、荷物持ちに雇ってよ!」
「ああ、今度は違うダンジョンに潜るつもりだ」
鞄の中から初心者用ダンジョンの分布図を出して、二番目に近いダンジョンに決めた。
「ここは、このダンジョンと違う感じだよ。迷路みたいだから、子どもだけでは潜れないんだ。それに偶に宝箱があるんだよ!」
私の前世のゲームのダンジョンに近いのかな? あっ、そういえば、ジルの荷物持ち代金、ふっかけられているのかも。まぁ、良いかな? お金より、顔見知りの子の方が気が楽だから。
ルシウスやジャスに知られたら「馬鹿か!」と笑われそうだけどね。
休憩の後は、こちらに寄ってくる魔物を討伐して、七階、八階をクリアした。
「もう満杯だよ!」
八階は、人が少なかったから、ドンドン魔物を討伐した。魔石なら良かったのに、毛皮や肉が多くて困った。
「これからは、魔石だけ拾おうか?」
ジルに「勿体無い!」と叱られたので、背負い籠の中を整理する。
それと、鞄から取り出す感じで、アイテムボックスから大きな袋を取り出した。
「こちらに肉を入れよう!」
なんとかジルの背負い籠を三分の二程度にして、九階、十階に挑む。
「ビッグボアかぁ! できたら、魔石がドロップして欲しい」
「肉でも良いよ! 美味しいから!」
まぁ、単体のビッグボアなら、魔法なしでも大丈夫だ。
「十階から、転移陣に行く前にボスがいるって噂だよ。二度目からは、パスできるって聞いたけど……よく知らないんだ」
「ボス戦かぁ……」
ふぅ、その時は、手斧か魔法で討伐しよう。
ダンジョンを踏破するには、ダンジョン石を壊さなきゃいけないのだけど、初心者用のダンジョンでは禁止だ。
「俺の後ろにいなさい」
最奥部への階段を降りると、わぁ、これはビッグボア三匹と火食い鳥四匹! 魔法無しだと、ちょっとキツイな!
「バリア! バリア! バリア! バリア!」
火食い鳥に火を吐かれるのは御免だ。後ろにいる火食い鳥四匹を先に倒して、手斧でビッグボアを殴りつける。
二頭は倒せたけど、一頭が接近してくるから「バリア!」で首を斬る。
「お兄ちゃん! 凄いね! 魔法が使えるんだ!」
いや、冒険者達をバリアで隔離していたじゃん。それは、ノーカウントなの? 南の大陸の人は、本当に魔法に詳しくないね。
「あっ、これは良いな! 火食い鳥のドロップ、羽根とエメラルドグリーンの卵が二個、そして魔石だ!」
ビッグボアは、毛皮と魔石と肉!
「さぁ、地上に戻ろう!」
最奥に鎮座しているダンジョン石は、壊さないよ! ここは、初心者には良いダンジョンだから。
ジルと転移陣に乗ると、一瞬で地上に戻った。
「ジル、二銀貨だ。それと、下級薬草は買取りたい」
ジルは二銀貨を受け取ると、一瞬だけ「良いの?」と逡巡した。でも、ニカッと笑うと慎重に革袋に入れて、服の中にしまう。
高価な物はギルドで売るけど、初心者用ダンジョンで出る物ぐらいは、商人達の売店で売るみたい。
ただし、火食い鳥の卵は、ギルド行きかな?
商人に背負い籠の中のドロップ品を売って、下級薬草はジルの分だけじゃなく、あるだけ買い取る。
「お兄ちゃん、一日で本当にダンジョンを攻略したんだね。それに、凄い儲けだ! ずっと荷物持ちに雇ってね!」
荷物持ちの日当が高い疑惑もあるけど、まぁ、良いか!
「ジル、また明日な!」
ジルは、二銀貨と下級薬草の一銀貨を儲けて、嬉しそうに手を振った。
六階も、割と人が多いから、急いで通り抜けようと思っていたら、ジルが声を掛けてくる。
「ああ、そのつもりだ。ジル? 疲れたのか?」
ジルは、ちょっと黙っていた。
「私は、五階までしか来た事がないんだ。だから、十階まで連れて行って貰えると助かる」
ふうん、ダンジョンの転移陣は、一度踏破しないと使えないからな。
「でも、実力がなかったら十階に転移しても危ないぞ」
ジルは笑った。なかなか笑顔は可愛い。生意気な女の子だと思っていたけどさ。
「自分で十階に行くのはもっと先だけど、万が一、冒険者が死んだ時とか転移陣が使えたら助かる場合もあるからさぁ」
ふぅ、それは考えた事がなかったよ。
「ああ、そう言えば……」と言いかけたけど、口を閉じる。
置き去りにされる立場の荷物持ちの子どもに言うことではない。
ダンジョンの最奥を探索するチームが、本当にヤバいと思った時、メンバーだけで逃げるとか聞いたんだ。酷い話だよね。
「さぁ、六階に行ったら、一休みしよう」
時計は持っていないけど、腹時計が昼だと言っている。
六階も人が多いけど、こちらは少なくとも鉄級はいない感じだ。
それでも、うざい馬鹿に絡まれるのは嫌だから、七階への道のりの途中、六階からは木も生えているので、そこで休憩にする。
「ジル、食べ物は持っているのか?」
背負い籠の底から、革の水筒と見るからにカチコチのパンを取り出した。歯が折れそうだけど?
私は、金熊亭でパンに肉を挟んだのを作って貰っていた。相変わらずデカい。
「半分やるよ!」とナイフで切って差し出すと、ジルの目がまん丸になった。
「そのパンは、これ以上固くならないだろう。こっちは、肉が悪くなったらいけないから、先に食べなさい」
水筒から水を飲み、デカいパンに齧り付く。味は、まぁまぁ。
「金熊亭、味より量なんだよなぁ。もう少し、美味しい宿に変えたいけど……」
部屋に風呂がついているのはポイントが高い。ベッドマットがへたっているのはマイナスだけどさ。掃除が良い加減なのもマイナス!
「冒険者って儲かるんだね! 早く冒険者になりたいんだ!」
確かにジルは身体強化ができる。だから、籠にドロップ品がほぼ満杯になっても、私についてこれている。
「武器の扱いをマスターしないといけないな。ギルドで前は研修制度があったと聞いたけど……」
ジルもそれは知っていた。
「うん、でも……あそこに参加する冒険者は……弱い者虐めするから……」
ふうん、あのギルドマスターが見逃すとは思えない。つまり、見つけて罰を与えて、研修システムごと潰したのか? その後のフォローは無し? 何か対策して欲しいよ。
「手斧やナタなら教えてあげれるけど……」
ジルの微妙な顔! 悪かったなぁ、剣とかじゃなくて。教えて欲しそうな弓矢は、矢が有料だから、教えるのはちょっとね。ルシウスに似てケチになったのかも?
「それより、明日もダンジョンに潜るなら、荷物持ちに雇ってよ!」
「ああ、今度は違うダンジョンに潜るつもりだ」
鞄の中から初心者用ダンジョンの分布図を出して、二番目に近いダンジョンに決めた。
「ここは、このダンジョンと違う感じだよ。迷路みたいだから、子どもだけでは潜れないんだ。それに偶に宝箱があるんだよ!」
私の前世のゲームのダンジョンに近いのかな? あっ、そういえば、ジルの荷物持ち代金、ふっかけられているのかも。まぁ、良いかな? お金より、顔見知りの子の方が気が楽だから。
ルシウスやジャスに知られたら「馬鹿か!」と笑われそうだけどね。
休憩の後は、こちらに寄ってくる魔物を討伐して、七階、八階をクリアした。
「もう満杯だよ!」
八階は、人が少なかったから、ドンドン魔物を討伐した。魔石なら良かったのに、毛皮や肉が多くて困った。
「これからは、魔石だけ拾おうか?」
ジルに「勿体無い!」と叱られたので、背負い籠の中を整理する。
それと、鞄から取り出す感じで、アイテムボックスから大きな袋を取り出した。
「こちらに肉を入れよう!」
なんとかジルの背負い籠を三分の二程度にして、九階、十階に挑む。
「ビッグボアかぁ! できたら、魔石がドロップして欲しい」
「肉でも良いよ! 美味しいから!」
まぁ、単体のビッグボアなら、魔法なしでも大丈夫だ。
「十階から、転移陣に行く前にボスがいるって噂だよ。二度目からは、パスできるって聞いたけど……よく知らないんだ」
「ボス戦かぁ……」
ふぅ、その時は、手斧か魔法で討伐しよう。
ダンジョンを踏破するには、ダンジョン石を壊さなきゃいけないのだけど、初心者用のダンジョンでは禁止だ。
「俺の後ろにいなさい」
最奥部への階段を降りると、わぁ、これはビッグボア三匹と火食い鳥四匹! 魔法無しだと、ちょっとキツイな!
「バリア! バリア! バリア! バリア!」
火食い鳥に火を吐かれるのは御免だ。後ろにいる火食い鳥四匹を先に倒して、手斧でビッグボアを殴りつける。
二頭は倒せたけど、一頭が接近してくるから「バリア!」で首を斬る。
「お兄ちゃん! 凄いね! 魔法が使えるんだ!」
いや、冒険者達をバリアで隔離していたじゃん。それは、ノーカウントなの? 南の大陸の人は、本当に魔法に詳しくないね。
「あっ、これは良いな! 火食い鳥のドロップ、羽根とエメラルドグリーンの卵が二個、そして魔石だ!」
ビッグボアは、毛皮と魔石と肉!
「さぁ、地上に戻ろう!」
最奥に鎮座しているダンジョン石は、壊さないよ! ここは、初心者には良いダンジョンだから。
ジルと転移陣に乗ると、一瞬で地上に戻った。
「ジル、二銀貨だ。それと、下級薬草は買取りたい」
ジルは二銀貨を受け取ると、一瞬だけ「良いの?」と逡巡した。でも、ニカッと笑うと慎重に革袋に入れて、服の中にしまう。
高価な物はギルドで売るけど、初心者用ダンジョンで出る物ぐらいは、商人達の売店で売るみたい。
ただし、火食い鳥の卵は、ギルド行きかな?
商人に背負い籠の中のドロップ品を売って、下級薬草はジルの分だけじゃなく、あるだけ買い取る。
「お兄ちゃん、一日で本当にダンジョンを攻略したんだね。それに、凄い儲けだ! ずっと荷物持ちに雇ってね!」
荷物持ちの日当が高い疑惑もあるけど、まぁ、良いか!
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ジルは、二銀貨と下級薬草の一銀貨を儲けて、嬉しそうに手を振った。
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