クズ聖王家から逃れて、自由に生きるぞ!

梨香

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第三章 防衛都市

防衛都市のギルドマスター

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 冒険者ギルドの二階のギルドマスターの部屋、交易都市エンボリウムのよりも大きい。それは、冒険者ギルド自体も大きいから、不思議ではないけどさ。

「私は、ギルドマスターをしているヨハンセンだ。アレク、そこに座ってくれ」

 これまで、交易都市エンボリウムのギルド長の部屋にドナドナされたことがあるけど、ルシウスやジャスが一緒だった。

 元金級だというギルドマスター、とても強そうで圧もきつい。

「あのう、何の用でしょう?」

 防衛都市カストラで何も問題を起こしていないよね?

「アルシア町の村長の息子から、オークの集団に襲われた時、アレクが大量の下級回復薬を作ってくれたと聞いたのだ」

 げー、あの息子! いらない事を! 今度、会ったらぶん殴ってやる。

「アルシア町には多くの薬草があったので、それで作っただけです」

 どの程度の下級回復薬かは、知らないだろうと、婉曲に断る。

「いやぁ、普通の下級回復薬だと、もっと被害が拡大していたとか……」

 うん、バレているな! 回し蹴りしよう。男のくせに口が軽い奴って嫌いだ。

「私が習った下級回復薬と売っている下級回復薬とは、少し作り方が違うみたいです。これからも、下級回復薬を作ったら、カインズ商会に売るつもりです」

 要するに、下級回復薬は作るけど、価格はカインズ商会に下ろす値段じゃなきゃお断り! って私なりに婉曲に伝えた。

「ふうむ……今回、防衛都市カストラの北にダンジョンが沸いたので、調査隊を派遣する事になったのだが、オークジェネラル以上の魔物がいると推測されている。だから、効果の高い下級回復薬が必要なのだ。ダンジョンの宝箱から、偶に出る中級回復薬に近い効果だと聞いた」

 へぇ、そうなんだね! ダンジョンから出る中級回復薬って、並程度なのかな? 一度、見てみたいな。

「そうなんですね。優れた下級回復薬が必要なら、カインズ商会から購入されたら如何ですか?」

 ギルドは下級回復薬を五銀貨クランで売っている。つまり、それより安く仕入れているって事だよね。そんな安く売る義務はないから断ろう!

「カインズ商会のグレアムさんに聞いたら、優れた下級回復薬は二金貨ゴルディだと言うのだ。それは、薬師が作る中級回復薬の値段だ。ダンジョンの宝箱から出るのは、五金貨ゴルディもする。もう少し安く仕入れたいと考えている」

 げー! 私が売った倍の値段じゃん! グレアムさんって、ボンボンのイメージだったけど、結構悪どいの? いや、商人だから当たり前?  二金貨ゴルディって、こちらの中級回復薬を見たことがないから、高いのか安いのかわからないけどさ。

 ダンジョンから出る中級回復薬は、まともだと思うけど、こちらの薬師は駄目駄目だね。
 こんな話し合い、苦手だ。サーシャは、修道院で純粋培養だし、私は覚醒してまだ間もないからさぁ。全く常識がないんだ。

「私は、星の海シュテルンメーアに属しているので、リーダーのルシウスと話してもらえますか?」

 グレアム商会にも、専属になるとは言っていないから、値段次第ではギルドに下ろしても良いんだよね。

「ふぅむ、星の海シュテルンメーアか? 知らないパーティだが、ルシウスの顔は知っている。わかった」

 やれやれ、値段交渉はルシウスに任せておけば、安心だ。

「では」と席を立とうしたら、手で押し留められた。

「何個ぐらい納入できるのだ?」

 やれやれ、まだ話し合わなきゃいけないのか?

「私の持っている鍋は小さいので十二、三本ですね」

 少し考えていたギルドマスターは、にこりと笑った。いや、怖いんですけど。

「冒険者ギルドには、薬師の為の施設もある。それを使えば、もっと大量に作れるのではないかな?」

 そりゃ、そうだけど……囲いこまれるのは御免だ!

「それも、ルシウスと話し合って下さい」

 きつい視線を向けられたけど、ギルドマスターの言いなりになる必要はない。それに、下級回復薬を作る秘伝を教える必要もないよね。リリィは可愛いから良いんだよ!

 とっとと、ギルドマスターの部屋から出て、資料室へと行く。

 おお、ダンジョンごとの情報がいっぱい! ただ、ほとんどが有料みたい。ケチくさいね!

「ダンジョンについて、ただの情報はないのか?」

 ギルドの職員が、椅子に座っているので質問する。ルシウスやジャスなら、この赤毛の可愛い子の名前も知っているのかもね。

「ただの情報は……ダンジョンの位置がわかる板ぐらいですね」

 それって、資料室の壁に掛けてある板だよね。

「そうか、ルーシーさん、ありがとう」

 名札を見て、お礼を言っておく。ギルド職員と仲良くなれ! と二人に言われているからね。

「あっ、そういえば……これぐらいしかありませんけど……」

 ごそごそと、机の中を探していたルーシーは、かなり使い込まれた紙を出してきた。

「これは?」

「前に使っていた初心者用のダンジョンの分布図です。冒険者の教本だったのですが、研修を受ける人が少なくて、なくなったのです」

 へぇ、初心者用のダンジョンがどこにあるのか書いてある。これから、初心者用のダンジョンに潜るから嬉しい!

「ルーシーさん、ありがとう」

 ルーシー、顔が真っ赤だよ。サーシャって顔が良いからなぁ。ごめんね、実は女なんだ。
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