クズ聖王家から逃れて、自由に生きるぞ!

梨香

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第二章 防衛都市までの道

兎に角、防衛都市へ行こう!

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 私が魔力切れで宿屋で寝ている間に、他の冒険者達と兵士達がオークを討伐した。

 明け方、起きたら、魔力は回復していた。

「もしかして、治療が必要な人がいたのか?」

 魔力切れだったので、治療クーラーティオを掛けられたかは分からないけど、反省したんだ。

 もっと魔法の使い方を練習しなくてはいけないし、効率的に使わないといけない。
 
「確かにダンジョンに潜るなら、弓の練習も必要だな。魔法で攻撃して、いざと言う時に魔法切れになったら困る」

 魔法があるから大丈夫だなんて、凄く馬鹿げた自信過剰だったと思い知った。

「良い匂いだ……」
 寝て魔力も回復したら、お腹がグーッと鳴る。ペコペコだよ。

 匂いにつられて、食堂に行く。まだ他の人は起きていないみたいだ。
 きっと、夜遅くまで討伐されたオークを集めたりしていたのだろう。

「おはようございます」
 台所にいる料理人のおばさんに声を掛ける。

「おや、早いね! もうすぐ朝食ができるよ」
 
 それはありがたいけど、この宿に泊まっていないのだ。いや、昨夜はハモンドさんに言われて、空いている部屋で寝たけどさ。

「あのう、部屋代は幾らですか? 昨夜は、勝手に寝てしまったのです」

 台所のおばさんは、ケタケタと笑う。

「あんたは、昨日、町長の家に魔法を掛けてくれたんだろう。お陰で、安心して避難できていたよ。あんたから宿代や食事代を取ろうなんて、誰も考えないさ」

 そう言うと、パンを厚切りにして、スープをお皿にたっぷりとついでくれた。

「まだ肉料理はできていないけど、スープを飲んで待っていておくれ」

 お腹が空いているし、暖かいスープと厚切りパンは美味しかった。食べ終わった頃、大振りの肉が焼いて出てきた。
 
 これってオークだよな。梯子車や投石器を作る知能があるオークを食べるのかぁ。
 一瞬、躊躇ったけど、美味しそうな匂いに負けた。

「うん、美味い!」
 おばさんが「たっぷり食べな!」ともう一切れ皿に乗せてくれた。

 腹一杯になって、外の様子が気になった。宿に泊まっているカインズ商会の御者達も、起きてきたようだ。

「護衛の皆は怪我とかしていないかな?」

 腹ごなしの前にチェックしなきゃいけなかった。でも、本当に空腹で、頭が回らなかったんだ。

「うちの護衛は大きな怪我はしていなかったよ。それに、兵士達も下級回復薬で、ほぼ完治していたと思う。兵舎に運ばれた奴らは、まだ治療が必要かもしれないがな」

 顔見知りの御者は、スープを飲みながら話してくれた。

「兎も角、皆の様子を見てくる!」

 宿を出て、広場に行くとテントの中で皆は寝ているようだ。

 荷馬車の前に『草原の風』のリーダーのシャムスと『クレージーホース』のプルーが座って番をしていた。

「おはよう! 俺はゆっくりと眠らせて貰ったから、交代するよ」

 シャムスに笑われた。

「やぁ、アレク! もう大丈夫なのか? 今から交代して貰わなくても、大丈夫だ」

「一晩眠ったから、魔力も回復したよ。そうか、朝番なんだな」

 そう言いながらも、目の前のオークの山にうんざりする。

「これって……解体するのかな?」

 二人は「当たり前だ!」と肩を竦める。

「俺が魔法で攻撃した中には、ちょっと肉が悪くなっているのもあるかも……ジャスに叱られるかな」

「そんなことはないさ! それに、ジャスが叱ったら、俺が文句を言ってやる」とシャムスが請け負ってくれた。

「それより、逃げたオークがいないか確認できないか?」

脳内地図マッパエムンディ!」
 どんどん魔法の範囲を広げていく。

「少なくともアリシア町の近くにはいない。もっと、もっと広げるには、魔法の熟練度が足りないんだ」

 女神様クレマンティアが憑いている状態なら、ちゃんと確認できるかもね。

「いや、近くに潜んでいないなら、それで十分さ。俺たちは、カインズ商会の護衛なのだから」

 あっ、そうだった! オークは女の敵だから、殲滅したいと思うけど、今はカインズ商会の防衛都市カストラまでの護衛依頼の途中だったのだ。

 宿のおばさんが女中と一緒に大鍋を運んで来たので、護衛の皆も朝食にする。ちょっとロケーションが悪いけど、誰も気にしていない。

「アレクはもう食べたのか?」
 眠そうにテントから出て来たルシウスとジャス、血がシャツについたままだよ。

「ああ、食べたよ。二人とも浄化ピュリフィケーション!」
 
 それを見た他の護衛も羨ましそうなので、全員に浄化ピュリフィケーションを掛ける。

 オークの山を見ながら、スープとパン、そしてオークの焼いた肉を食べている。
 私も同じメニューだったけど、目の前に死体の山はなかったからね。

「おお、皆! 食事を済ませたら、少し解体を手伝って欲しい」

 グレアムさんが宿屋から出て来た。私達は、雇い主の命令に従うけど、リーダー達は報酬がどうなるのか話し合う。

「先ずは睾丸を集めようぜ!」

 ジャス、それが一番嫌いなんだけど……でも、確かに魔石と睾丸が高いんだよね。

「オークジェネラルは、ルシウスとオルフェとアレクが討伐したんだよなぁ! かなり高額になるかもな!」

 ふぅ、どのくらいの報酬になるのかは分からない。でも、アリシア町は、これから防衛壁や門の補修もしなくちゃいけないから、かなり交渉は難航するんじゃないかな?
 ハモンドさんは、かなり商売上手みたいだから、任せよう。

「解体は手伝うけど、それが終わったら、防衛都市カストラへ出発だ!」

 ジャスが防衛都市カストラに早く行きたがるのは、綺麗なお姉ちゃんと遊びたいからじゃないかな? これが無ければ、もっと信頼できるのに。

「アレクは解体が上手いから、ボスを頼む!」

 ボスを倒したルシウスは、カインズ商会のグレアムさん、ハモンドさんと町長と報酬について話しているから、オルフェが私にボスの解体を頼む。

「睾丸は俺が集めておく!」
 解体が下手なジャスでも、睾丸を切り取るぐらいはできるだろう。

 ボスは、他のオークの山とは別に置いてあった。
「この鎧を脱がすのが面倒だな!」
 きょろきょろと周りを見渡すけど、オークの山の陰になっている。

 オークジェネラルをアイテムボックスに入れて「鎧だけ! 睾丸だけ! 魔石だけ! 肉だけ! その他!」とズルをする。

 鎧が地面に転がっている。近くで見たら、ボロボロだ。オークジェネラル戦の時は、ちゃんと鎧に見えていたけど、あれも魔法なのかな?

 睾丸も魔石もデカかった。肉も美味しいのだろうか? あまり食欲はわかないけど、それは満腹だからか?

 オークジェネラルの睾丸と魔石は、防衛都市カストラで売るそうだ。
 これは、ルシウス、オルフェと私で分ける事になった。

 オークジェネラル、オークの肉は塩漬けにして、半分はカインズ商会が帰りに受け取る。

 護衛の報酬も、ルシウス、クレア、シャムスが交渉してかなり出る。

 それと、私は下級回復薬代もかなり貰えるみたいだ。

「兵舎の負傷者を治療しなくても良いのか?」

 コソッとルシウスに尋ねる。
「命に関わる怪我じゃないし、良いんじゃないか? 町長から依頼が来たら考えよう」

 亡くなった二人の埋葬や葬儀は、町の人達に任せる。

「明日は、兎に角、防衛都市カストラに向かうぞ!」
 
 今夜は、深夜の二番目の見張りだ。ちょっと疲れそうだけど、仕方ない。

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