クズ聖王家から逃れて、自由に生きるぞ!

梨香

文字の大きさ
上 下
44 / 71
第二章 防衛都市までの道

オークジェネラルとの戦い

しおりを挟む
 ヴリシャーカピのボスもデカかったが、オークジェネラルは異様だった。
 
 人間の倍以上の身体に、これまで殺した冒険者達が着ていた鎧を着込んでいる

「あんな大きなサイズの鎧があるのか? 継ぎ足しているみたいだな」
 ルシウスがボス戦前なのに、お前は呑気だなと笑う。

「作戦は?」とルシウスに聞くけど「オークを殲滅する! それだけだ」だってさ。
 ヴリシャーカピは二十頭ほど逃してしまったけど、オークは逃がさないぞ!

 オークジェネラルの前に邪魔なオークをやっつける。
 ほとんどは、バリアで首を切ったけど、何頭かは強化が効いていてバリアでは無理だった。
フルメン!」なら倒せる。肉が無駄になるから、ジャスに叱られるかな? でも、今はそんな事を考えていられない。

 いつもは、ルシウスとジャスのコンビだけど、今回はオルフェとだ。オークジェネラルと戦っている。

 私は、他のオークが二人の邪魔をしないように「フルメン!」を連発している。

「危ない!」
 オルフェも体格が良いけど、基本的にスレイプニルに乗っての戦闘だから。
 ルシウスの片手剣とオルフェの槍とでは、オークジェネラルを討伐できない。

 オークジェネラルに押されている。
フルメン!」をオークジェネラルに当てる。少しだけ嫌がっているから、効果はあるのか? いや、ブン! と怒りも顕に、大剣を振り回している。

 ルシウスとオルフェに「元気回復レフェクティオ!」を掛ける。それと同時に「防御デーフェンスィオ!」も。

 あんな大剣に当たったら、大怪我しちゃうよ。
 周りのオークをほとんど討伐したので、私もオークジェネラル戦に加わる。

 魔法は「フルメン!」が少しだけ効くみたいだ。それに、嫌がって手で避けようとするから、ルシウスとオルフェがその隙に攻撃できる。

 でも、オークジェネラルの体力は無限じゃないのかと思うほどだ。

元気回復レフェクティオ!」を何回もルシウスとオルフェに掛ける。
 私の魔力も底をつきかけているのか、掛かりが悪い。

 町長の家に掛けているバリアを解こうか? 一瞬、その考えが浮かぶが、私たちがいない横の防衛壁が無事なのかもわからない。
 オークに女の人を拐わせるわけにはいかない! それは絶対だ。

 髪の毛が伸びようと、愛し子だとバレようが、強い魔法を使うしかない。ただ、それを発動できる魔力が残っているのか不安だ。

 初めて使う魔法だ。上手くいくかもわからない。
遮断ディスコンティ!」

 うっ、オークジェネラルに腕でカバーされた。首を狙ったのだけど……。

 でも、大剣を持った腕は切り落とした。そのチャンスを見逃すルシウスとオルフェじゃない。

 オルフェが槍で鎧ごとオークジェネラルの腹を貫き、ルシウスが首を刎ねた。

 慌てて髪の毛が伸びているか、チェックする。なんとか大丈夫だった。ホッとしたけど、魔力切れだ。

 なんとか町長の家のバリアだけは、キープしているけど、もう戦力外だ。
 弓を引こうとしても、身体強化が使えない。身体強化抜きの私の弓の腕では、味方に当てかねない。

「おぃ、戦えないのなら、町の中にいろ!」

 オークジェネラルを倒したら、オーク達は森へと逃げ出した。

「クレイジーホースを中心にオークを殲滅するぞ!」
 負傷でかなり血を失ったクレアが指揮をして、逃げ出したオークを追う。

「破られた防衛壁を修理しなくては! 門も半壊状態だ!」
 町長は、緊急に防衛壁を補修するつもりだ。

「怪我人が多いです!」
 油を煮立てていた鍋に石が飛んでいったから、火傷も多い。それに、戦闘に参加した人も切り傷や亡くなった人もいる。

「ああ、そうだ! カインズ商会は、回復薬を持っていないか? 買取ります!」

 町長は、壁の修理よりも怪我人の治療を優先する。

「下級回復薬を持っています。これは、とても効果がある特別な物です」

 あっ、あれは私がカインズ商会に売った物だ。

「アレク、作れないか?」
 ハモンドさんが側に来て、小さな声で尋ねる。

「下級薬草があれば……でも、作れるのを知られたくない」
 
 どう見ても、カインズ商会が持っている下級回復薬では足りないのは明らかだ。

 怪我の酷い人から、カインズ商会の回復薬を飲ませている。でも、重症者は多い。

 アリシア町の兵舎からも下級回復薬が持って来られたけど、濁っていて、あまり効かない。無いよりはマシって感じだ。

「アレク、宿の台所で下級回復薬を作って欲しい。下級薬草は、町長から出させるから」

 くたくただけど、下級回復薬を大鍋いっぱい作る。薬瓶なんかないから、小鍋に移して、スプーンで飲ませていく方式だな。

 町長の家に掛けていたバリアを解いて、少し休憩だ。

「もう出ても良いよ!」と声を掛けたら、恐る恐る中から女の人や子ども達が出てきた。

 広場には、怪我人が集められている。非常事態に女の人は強い。
「子どもは家に行きなさい!」
 女の人は、下級回復薬を怪我人に飲ませたり、包帯を巻いたりしている。

 私は、魔力も体力も使い果たして、町長の家の玄関の階段に座り込んでしまった。
 
 回復薬を飲んで歩けるようになった怪我人は、後片付けに参加しているが、重症だった者は兵舎に運ばれている。

 怪我人の治療が終わった町の男の人達は、オークを広場に集めている。私は手伝う力が残っていない。

「クレイジーホースはどうしているかな?」
 クレアに治療クーラーティオは掛けたけど、かなり出血していたから、安静にしていた方が良いのだけど……。

脳内地図マッパエムンディ!」
 なんとか残っている魔力を振り絞って、逃げたオークを調べる。

「ああ、かなり残っているな……」
 でも、赤い点々が次々と消えていく。
『クレイジーホース』がオークの先回りして逃がさない。

『草原の風』とルシウスとジャスが仕留めているのだろう。

 もっと魔法の使い方を考えないといけない。それと、威力もつけたい。反省点はいっぱいあるけど、今は寝たいな。

「アレク、魔力切れなのか? 宿の部屋で寝なさい」
 グレアムさん、とても親切だ。下級回復薬を大鍋にいっぱい作ったからかも? でも、眠れるのは大歓迎だ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

処理中です...