クズ聖王家から逃れて、自由に生きるぞ!

梨香

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第二章 防衛都市までの道

アルシア町、防衛戦が始まる

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 女神様クレマンティアの知識の中から、ボス戦でも使えそうな魔法を探す。できたら、髪の毛が伸びない魔法が良いけど、そんな場合じゃないかもしれないからね。

 ううんと、前に変態神官を女神様クレマンティアが裁いたのは女神様の裁きディヴァーインジャジメントだと思う。でも、これは絶対に髪の毛ザッパン事案になりそう。

 できたら、この魔法を使うのは、避けたい。防衛都市カストラでは、真面目に一から冒険者としてやっていきたいからね。
 でも、アルシア町が危険になったら、仕方ない! オークは絶対に中には入れないぞ。

 他の神聖魔法で使えそうなのは、ライトとかは駄目だよね。それともシャイニング! とかで目潰し? ジャスとかも目潰しになりそう。それは、拙いよね。

 ああ、これなら良いんじゃないかな? フルメン! 攻撃力のある雷なら、ボスでも少しは効きそう。

 ついでに、内緒にしているけど、空間魔法で使えそうなのも調べておく。
 いつも使っているバリアは、ヴリシャーカピのボスにも少ししか効かなかった。

 南の大陸って、本当に魔法使いが少ないのか、バリアは神聖魔法だと誤解されている。
 だから、私は黙っているんだけどさ。防衛都市カストラに行ったら、魔法使いもいるそうだから、バレるかも?
 
 バリアの上位魔法、遮断ディスコンティは良いんじゃないかな? これ、髪の毛が伸びなきゃ良いのだけど……。

 うん、世界の断絶とかは見なかったことにしよう。
 ヤバそうな魔法があるけど、それは人間が使う物じゃないよね。記憶から消去しておこう。女神様クレマンティア、こんなヤバイ魔法を混ぜているなんて、凄く雑破だよなぁ。

「おおぃ、アレク、寝ているのか?」
 黙って、使えそうな魔法を調べていたら、ジャスに不審がられた。

「違うよ! オークの動きを調べていたんだ」
 嘘じゃない! 今、脳内地図マッパエムンディで調べているんだけどさ。

「動きがあるのか? もう、夜になるのだが?」
 オークは、夜は寝るとギルド長は言っていたけど、今回は違うみたい。

「ああ、アリシア町を囲い込もうとしている。門を攻めるのは分かるが、周囲にバラけるのは何故だ?」

 アリシア町、高い防衛壁に囲まれている。門も厳重だけど、攻めるならそこだと思う。

「まさか! 梯子とか、防衛壁を突破する道具を用意しているのか?」

 ジャスの顔が真剣になる。それって、本当に拙い! 門の防衛壁の上から、下にいるオークを攻撃しようと考えていたのだ。

「ルシウスに言ってくる! アレクもついて来い!」
 こんな時のジャスは、本当に素早い。あたふたと後ろを追いかける。

「ジャス、何だ?」
 作戦会議中に乱入した私たちに、ルシウスが質問する。

「アレク!」また、私? 仕方ないな。

「オークがアリシア町を取り囲もうと移動している」

 ルシウスは、すぐに意味を理解した。

「拙い! 兵士と護衛だけでは、アリシア町の周囲を全部はカバーできない」

 どうやら、門を兵士と護衛で護り、オークを攻撃して追い払う作戦だったみたい。私も、それかな? と考えていたからね。

「どういう事なのだ?」
 アリシア町の町長は、話についていけていない。
「オークがアリシア町を取り囲む動きをしている。つまり、防衛壁を乗り越える手段があると考えた方が良い」

 これまで黙っていたグレアムとハモンドが、ハッとした顔をした。
「フランク商隊の荷馬車を使うのかもしれない!」
 グレアムの発言に、ハモンドも頷く。
「アリシア町に来たのは、三台だが、普通は十台以上の商隊だ」

 ふうん、あの馬鹿坊ルッツの商会、かなり大きいのかも?

「フランク商会が、取り込んだ小さな商会の荷馬車もあるから、十台以上かもしれない」
 ハモンドさんの苦々しそうな声。どうやら、フランク商会の遣り口は、ちょっとグレーゾーンなのかもね。
 
 それにしても、荷馬車の上に乗れば、防衛壁を越えられるのか? 背の高いオークでも、手は防衛壁に引っかかりそうに無いし、重いオークだと、幌が破けそうだけど。

「荷馬車を解体して、梯子を作ったのでは?」
 ジャスなら作れそう。意外と手先が器用なんだ。解体は下手なのに、不思議だ。

「町の男にも協力して貰うぞ!」
 防衛壁を越えようとするオークに、上から煮え油を落としたり、岩を落とすのは、兵士でなくてもできる。

「煮え油とかは、女の人にも協力して貰おう!」
 町長は、そう言うけど、私は反対だ。

「いや、女の人は、一番安全な場所に避難しておいた方が良い。私が、そこにバリアを張っておく。普通のオークなら通れない!」
 
 一人も攫われたくない。それに、オークが侵入した時に、女の人を助けながら戦うのは大変そうだ。

「アレク、それでお前は戦えるのか?」
 ルシウスが心配する。
「多分、大丈夫だと思う。オークが町の中に入らない状況になったら、バリアは消す」

 つまり、オークの数が減って、ボス戦だけとかになったら、バリアは消して、全力で戦うって事だ。

「おおし! その方が、俺たちも全力で戦える。できれば、グレアムさんとハモンドさんも一緒に避難して欲しい」
 
 ルシウスの提案は、グレアムとハモンドに拒否された。

「私は、戦闘能力は無いが、臆病者の評判を受けたら、商売人としても最後だ。油を煮たたせたり、岩を落とすぐらいは手伝える」

 ふうん、護衛としては、安全な場所に居てくれた方が良いのだけど、そうもいかないのかもね。帰りにも、アリシア町に寄るみたいだしさ。

 それから、女の人は町長の家に集められた。あっ、忘れていたけど、子どもは男の子も一緒に避難させたよ。
 
「バリア!」
 町長の家に掛ける。これで、万が一、オークが侵入しても、この中には入れない。

「ジャス、触るなよ!」と注意しておく。

「オークだ!」
 門にいる兵士が叫ぶ。脳内地図マッパエムンディで確認したけど、門だけじゃない。

「ジャス、アレク! 行くぞ!」
 私たち、星の海シュテルンメーアの持ち場は、アルシア町の裏手だ。
 脳内地図マッパエムンディで確認したら、裏手に一際大きな赤い点が光っている。

「ボスは裏手から攻める気だぞ!」
 気合いの入ったルシウスとジャスが、一回り大きくなった気がするよ。
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