クズ聖王家から逃れて、自由に生きるぞ!

梨香

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第二章 防衛都市までの道

オーク再び

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 後ろで門が閉まる! これで退路は絶たれたけど、オークをアリシア町に入れるわけにはいかない。町には、女の人や女の子がいるから! 
「アレク、全力で殲滅するぞ!」
 ルシウスがズタボロの商隊に駆け寄りながら叫ぶ。つまり、髪の毛ザッパンでも、オークは一頭も逃さないって意味だ。勿論、そのつもりだ!

 商隊の荷馬車の中から、オークがぞろぞろ降りてくる。
『クレイジーホース』のメンバーは、今回はスレイプニル無しでの戦闘だ。

 ルシウスとジャスが、どんどん倒していく。私も、遠くのオークから、バリアで首を飛ばす。

 三台の荷馬車にオークが何頭乗っているのか? 戦闘開始の時は、限りなく感じだけど、三十頭もいなかった。

「これで全てか?」
 ジャスが首を捻る。こんな狡賢い計画を立てるオークが、少人数? 変な気がする。

「荷馬車の中に隠れていないか?」
 中には、商隊の人の遺体の一部が残っていた。クソッ!

「斥候に行こうか?」
『草原の風』のシャムスが言うが、止めさせる。
「俺が魔法で探索する。夜になるのに危険だ!」
 確か、オークは夜に寝ると聞いたけど? こんな襲撃計画を立てるとか、何か変だ!

脳内地図マッパエムンディ!」
 アルシア町の周辺を探索する。

「オークの集団がいる!」
 真っ赤な点が固まっている。これは、ヤバい!

「何頭ぐらいなのだ!」
 ルシウスの顔も強張っている。

「百頭以上だ!」
 今、アルシア町の外にいるのは、カインズ商隊の護衛十一人だけだ。
「一旦、アルシア町に撤退するぞ!」
 ルシウスの判断は早い。門番に合図して、門を開けさせる。

 オークの死体を荷馬車に積んで、アルシア町の中に入る。

「これで討伐は終わったのか?」
 ホッとしている兵士達には悪いけど、本隊が残っている。

 グレアムとハモンドも門までやってきた。
「この商隊は……まさか、フランク商会か?」
 荷馬車でわかるの? えっ、フランク商会って、あの馬鹿坊ランツの?

「護衛をケチったのか? 運が悪かったのか?」
 ハモンドが腕を組んで考えている。
「オークが集団で襲ったのだろう。ヴリシャーカピの集団といい、本当に何処かにダンジョンが湧いたのかも」

 ルシウスの言葉に、グレアムが真っ青な顔になる。
交易都市エンボリウムの近くにもオークに占拠された村があったそうだが……」
 そう、このアルシア町も、うっかりとオークを入れたら、そうなったかも。

 アルシア町の町長もやってきて、先ずはお礼を言ってくれた。
「オークをアルシア町に入れなくて良かった! 感謝している。褒賞も出そう!」
 うん、言いにくいけど、言わなきゃね。

 ルシウスが言ってくれると思っていたのに「アレク!」と指名される。

「えっ、俺?」

 それは、リーダーにやって欲しい。

「お前がオークを見つけたんだろ!」
 ジャスに後押しされて、一息ついて話す。

「オークの集団が近くにいます」

 町長も兵士も真っ青になった。ここからは、ルシウス、クレア、シャムスに任せる。

「アレク、解体しようぜ!」
 まぁ、誰かがしなきゃいけないんだけどさ。
「ジャスは下手じゃん!」
 それより、荷馬車の中の遺体の一部。それも弔わないといけない。

 気が重いけどと思っていたら、それは兵士達が手伝ってくれた。
「あんた達が止めてくれなかったら、オークを町に入れていた」
 それは、ゾッとするだろう。

「冒険者証があったら、集めてくれ。それと商人ギルド証を持っているかも」
 商人ギルド、あったんだね! 興味なかったから、女神様クレマンティアの知識を調べていなかった。
 でも、それを持っている人は少ないみたい。

 私たちが護衛している商隊でも、御者達は持っていない。グレアムとハモンドだけみたいだね。

女神様クレマンティア、犠牲になった人達の魂をお救い下さい」

 私達と、前後して交易都市エンボリウムを出た商隊がオークに襲われた。祈らずにはいられないよ。

 商隊の人達、アルシア町の人達も一緒に祈ってくれた。勿論、護衛の皆も! 明日は我が身だからね。

「アレク、解体も町の人がしてくれるそうだから、身体を休めておけ!」
 まだ話し合っている途中のルシウスから注意がきたので、解体をやめて、休憩する。

「どうするのかな?」
 ジャスに聞くけど、肩を竦めるだけだ。リーダー達とお偉いさん達の判断に任せるしかない。

「俺達は、カインズ商隊の護衛だ。だから、本来はオークの討伐をしなくても良いが、そうも言っていられないだろう」

 つまり、兵士達と一緒にオークを討伐するって事だよね。

「オークって、夜は寝ると聞いたけど?」
 
 ジャスも首を捻っている。
「夜更かしのオークもいるのかもな? それか、アルシア町の襲撃を考えていたのか?」
 
「そんな知性があるのだろうか? それって拙いんじゃないか?」

 ジャスも渋い顔だ。
「もしかしたら、オークの進化系がいるのかも? ダンジョンボスには、偶にいるそうだ」
 
 げぇ! それは遭遇したくない相手だ。
 
「俺達が潜る程度のダンジョン階には、そんなレアボスは出てこないさ。金級の連中なら遭遇しているのかもな!」

 ルシアに言われたけど、金級のパーティなんかに加入したくないよ。実力以上の魔物と戦うなんて無理だ。勧誘されても、断ろう!

「それより、ボス戦があるなら、アレクは強化魔法と回復魔法を掛けれるように、魔法を節約しておいた方が良いぞ」

 魔法量は、多分、大丈夫だと思う。ただ、ボス戦の補助魔法を調べておきたい。本当に泥縄だけどさ!
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