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第一章 クズ聖王家から逃げるぞ!

魂の救済

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 ギルド長、ルシウス、ジャスと森の中を走る。全員、身体強化しているから、かなり速い。
 それでも、パルサー村はほぼ森の外に近い。
 脳内地図で確認したら、街道から森に入った場所だ。

 ギルドで聞いた噂話が嫌な予感と共に思い出される。襲われた商隊、馬車、それに奴隷達!

 今は、真夜中前ぐらいだろうか? 朝までに討伐しないと逃げられるかも?

 四人で森の奥へと急ぐけど、パルサー村が一番遠い。どうしよう? オークを逃すのは嫌だ! こんな事を繰り返す訳にはいかない。

女神様クレマンティア、パルサー村のオークの巣まで俺たちを連れて行って下さい!」

 私の転移では、まだ行った事もないパルサー村までは無理だ。

『女神使いの荒い愛し子ね!』
 女神様クレマンティアの苦笑が聞こえた気がするけど、パッと場所が変わった。
 目の前には、巣というか、パルサー村があった。
 全員が呆気に取られているが、ギルド長がハッと目的を思い出し、指揮を取る。

「ジャスとルシウスは、裏門に回れ! アレクは私と一緒に表門から、殲滅だ!」

 パルサー村は、高い壁に囲まれていた。それに、立派な門もあったが、今は壊れている。
 それに、何台もの馬車が半分破壊されて、転がっている。

「クソッ!」ギルド長がパルサー村にいた住人、襲われた商隊を思い、一言、悪態をついた。

「アレク、お前が何者かなんかどうでも良い。オークを殲滅してくれ!」

 そう言い置いて、ギルド長は、パルサー村の中に駆けて行く。元金級のギルド長の身体が一回り大きくなった気がする。

 身体強化して、凄いスピードで家の扉を打っ壊し、寝ているオークをドンドン討伐していく。
 私も、騒動に起きてきたオークをナタでぶった斬っていく。
 ゼィゼィ、二人で五十頭ほどのオークを討伐した。

「ルシウス達は?」
 ギルド長とオーク達を殲滅して、やっと、変だと気づいた。ルシウスとジャスなら、私より戦闘力はある。何をしているのだ?

 裏門から討伐していたルシウスとジャスが二軒の家を燃やしている。

「アレク! 行くな!」
 ギルド長に止められたけど、私は知りたい。いや、知らなくてはいけない!

「何故、焼いているのだ!」
 私は、ルシウスを問い詰めた!

「中に女達がいた! オークを孕んでいたから、楽にしてやった」
 ルシウスが重い口を開いた。

「そんな!」とルシウスの胸を殴るが、ジャスに止められた。
「オークの子は、人間の女の腹を食い破って出てくるんだぞ! それに、オークを増やすわけにはいかない!」
 ジャスが泣きながら怒鳴る。

 そんな悲惨な事は許される事ではない! 犠牲になった女達の恐怖を思うと、涙が溢れ出る。

女神様クレマンティア! どうか、犠牲になった女達の魂を安らかに!」

 金色の光が天から差し、何十個もの魂の砕けた欠片がその中に消えていった。

 ギルド長、ルシウス、ジャスも跪いて、女神様クレマンティアに祈っている。

「なぁ、男達も食べられたのだけど?」
「ジャス、多分、それも掬い上げてくれていると思う。女神様クレマンティアは寛容で慈悲深いから」
 
 百個以上の魂の欠片も無事に天に向かった。開拓村や商隊には、男の方が多かったみたいだ。

「アレク、解体できるか?」
 
 ゲー、無理! あんなケダモノに触りたくもない。
 ギルド長に首を横に振って拒否する。

「アレク、甘ちゃんだと生きていけないぞ! それにオークの睾丸は高く買い取って貰える!」

「ジャス、それ特に無理だから! あんなバッチィ物を目にしたくもない!」
 
 なんて言っていた時もあったなぁ。ルシウスとジャスの解体の下手さに、ウズウズして手を出しちゃった。

 私はアイテムボックスを使って解体していたけど、サーシャはナタでやっていたからね。

「アレク、他の巣も気になるのだが……無理か?」
 ギルド長は、討伐隊の指揮官だからなぁ。

「何とかしてあげたいけど、女神様クレマンティアは去ったみたいだ。警備隊が来るのを待つしかない」
 
 三角岩の奥のオークの巣は、一番小さかった。もう討伐は終わっているだろう。

 バンズ隊長なら、一番奥のパルサー村まで馬で来てくれるんじゃないかな?

「おおぃ、肉はこちらの馬車に積んでいこう!」
 ジャスは意外と器用に、壊れていた馬車を一台直したみたいだ。

 ルシウスは、解体も下手だったから、睾丸や魔石を集めたり、あちらこちらに散らばっている武器を見つけて貰う。

 薄らと明るくなった頃、バンズ隊長が何人かの兵士を連れて馬でやってきた。

「もう討伐したのか?」驚いている。

 ギルド長は、他のオークの巣の討伐も気になっているようだけど、無事に討伐されたと報告を受けて、ホッとしたみたい。

「俺は、他の巣も回らないといけないかも? 女達がいたのかもしれないから」
 でも、それはバンズ隊長から「女はいなかった」と言われて、ホッとした。

「だが、何故、アレクは女達がいたら、行かないといけないのだ。もしいたとしても、無惨な最後を見るだけだぞ?」

 ルシウスとジャスが「ああああ」と頭を抱える。

「バンズ隊長、アレクはあれだ! そう、前に教会で神聖魔法を習っていたから、犠牲者に祈りを捧げたいと思ったのだろう」
 
 バンズ隊長は、何か変だと思ったみたいだけど、オークが女達に与える酷い行いを考えて、頷いた。

 兵士達も解体を手伝い馬車も何台か修理してくれた。それを街道経由で交易都市エンボリウムに運んでくれる事になった。

 ギルド長とバンズ隊長は、馬で他のオークの巣の指揮を取りながら、交易都市エンボリウムに帰るそうだ。

「ジャス、腹が減った……」
 あんな惨状の後なのに、腹がグーグー鳴っている。
「オークを焼いて食うか?」
「それだけは、やめてくれ!」
 一人の兵士が、軍用レーションを一個恵んでくれた。

「ありがとう!」
 小麦の炒ったのとドライフルーツを脂で固めてある。
 そんなに美味しくないけど、空腹は最高の調味料! ガツガツ食べたけど、口の中の水分が全部持っていかれた感じで、咽せた。

「ほら、常に水を携帯しろと言ったのを忘れるからだ」
 ルシウスが水筒を差し出してくれた。うん、二度と忘れないようにしよう!

「あのう、お名前は?」
 デレデレしている兵士。レーションをくれたのは、彼だったかな?

「おい、彼奴は『男殺しのアレク』だぞ! 去勢されたくなかったら近づかない方が良い」
 ジャスを回し蹴りの練習台にしたのは、悪くないよね。
 それに、やはり回し蹴りはもっと練習しないといけない。ジャスは、よろけたけど笑いながら立っていたからさ。
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