クズ聖王家から逃れて、自由に生きるぞ!

梨香

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第一章 クズ聖王家から逃げるぞ!

|火食い鳥《カセウェアリー》を見つけよう

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 オークなんか探していないのに遭遇した。肝心の依頼の火食い鳥カセウェアリー、いないんだけど。
 依頼を失敗したら、ペナルティがあるのかな? 優男に聞いておけば良かったよ。罰金を取られるのは、嫌だな。

 だって、サーシャのサンダル、元々、ボロだったけど、森歩きに適さない。ブーツが無理でも、靴ぐらい買いたい。
 それに、兵士の服、毛織物だから、南の大陸では暑いんだよ! ルシウスやジャスは、麻が入った綿のシャツの上に皮の鎧を着ている。
 皮の鎧は無理でも、胸当てぐらいは初心者も装備しているから、欲しいよ!

「もっと、森の奥なのかも?」
 資料室で見た生息域、ここら辺だと思う。あの三角岩が目印に書いてあったから。
 でも、火食い鳥カセウェアリーも移動するだろう。

 転移を繰り返し、火食い鳥カセウェアリーを探す!

 見つけた! けどさぁ、オークが羽を毟って食べようとしていた。

「俺の火食い鳥カセウェアリーに何をするんだ!」
 依頼部位の羽が無茶苦茶じゃん! 腹が立つから「バリア」で首を切っておく。

「嫌だ、嫌だ! またオークが増えたよ。その上、火食い鳥カセウェアリー、これではあの優男に買い叩かれそう」

 オークは、兎に角、アイテムボックス行きだ。無惨な姿の火食い鳥カセウェアリーを見て、暫し考える。

浄化ピュリフィケーション!」
 ああ、綺麗にはなったけど、毟られた羽はそのままだ。
 それに思っていたよりデカい。背負い籠に入るかな? 解体しないとむりかも?

 アイテムボックスに火食い鳥カセウェアリーを入れて「肉だけ!」「羽だけ!」「魔石だけ!」「骨だけ!」「内臓!」と分けて出す。

 うん、羽はこれなら良いんじゃないかな? あの優男の受付がどう判断するかは知らないけどさ。
 なるべく揃えて、袋に入れる。この袋は、ルピナス号の二等客船で、お城のシーツを貰ってきた裁縫道具で縫ったんだよ。

火食い鳥カセウェアリーの骨、スープに使えないかな? 防衛都市カストラに行って、金を貯めたら、台所付きの部屋を借りたい!」

 これも、縫った袋に入れて、アイテムボックスに入れる。羽を入れた袋を背負い籠に入れる。肉は、幅広の葉っぱに包んで背負い籠に入れる! 
「やったね! 依頼達成だ!」 

 後は、さっさとギルドに戻ろう! オークがうろうろしている場所に長居は無用だよ。

 オークに羽が乱暴に毟られていたから、ドキドキしながら受付の優男に出す。
「えっ、もう狩ってきたのですか? 肉は、ミネルバから聞いていましたが、本当に綺麗に解体されています。少し、上乗せしても良いですね。羽は、少し乱暴に抜いたのもあるみたいですが、これなら十分です」

 やった! 肉と羽で二十銀貨クラン! それと、魔石が四銀貨クラン

「ギルドで荷車を借りたい」

 依頼から帰ったばかりなのに? って顔をされたけど、十銅貨ペニーで貸してくれた。

「返却されない場合は、十銀貨クラン貰いますから」
 ゲッ、十倍返しじゃん!

「荷車を買い取るのは幾らなんだ?」
 変な顔をされたけど、聞いておこう。
「五銀貨クランです。売却する時は、二十五銅貨ペニーですね」
 
 これも買った方が安いのかも? ただ、ずっと荷車を引っ張ってうろうろするのは嫌だな。

「あっ、買った荷車もギルドに置いておけますよ。保存料として一銅貨ペニー貰いますが」
 
 ううん、悩む! ずっと交易都市エンボリウムで冒険者をするなら、買った方が得だ。特に、アイテムボックスがあるから、狩に行く時に持っていけば良いから。

 ただ、門の兵士、基本、冒険者はスルーで出してくれるけど、意外とよく見ている。
 行きに普通に歩いていて、帰りに荷車を引っ張っていたら、変だと思われる。

「レンタルにする!」
 防衛都市カストラに着いたら、買おう!

 ガラガラ荷車を引っ張って門を出る。
 冒険者の中には、初心者を雇って荷車を引っ張らせているのもいるから、兵士はスルーだ。

「荷車って、森では引っ張り難いな!」
 獣道ならぬ、冒険者道を通り過ぎたら、木の根っこや草に引っかかる。

 きょろ、きょろと、人気の無いのを確かめて、森の奥に転移だ。

「おお、かなり距離を飛べた!」
 火食い鳥カセウェアリーの生息域の三角岩を覚えていたのが良かったのかも?

「先ずは、ビッグボアを解体しよう!」

 肉、皮、牙、魔石、それと骨! 内臓は埋めよう。こちらの世界では、モツ鍋は無しだね。貧しい修道院でも、内臓は食べなかった。コンポストに入れて、菜園の肥料にはしていたけどね。

「一応、チェックしておこうか?」
 内臓を鑑定すると、ウヨウヨと菌とか寄生虫とか! ゲー、やめておこう! 即、穴を空間魔法で掘って埋める。

「肉の美味しい部位は、自分用と海亀亭トゥラトゥラ用に取っておこう」

 これも鑑定で調べる。
「おっ、鑑定レベルが少し上がったみたいだ! ヒレ肉、バラ肉、モモ肉って出たよ」
 
 私が前世で好きだったのは、ヒレ肉とバラ肉! カルビは出なかった。あれは店によって違うと聞いた事があるから、もっと鑑定レベルが上がらないと無理なのかも? 

 広めの葉っぱに丁寧に包んでいく。海亀亭トゥラトゥラのと自分用は、アイテムボックスにしまうよ。
 後のは、背負い籠に入れる。荷車に、オーク二匹を乗せて、森の浅い場所に転移!

 ここからは、冒険者道までは引っ張って行こう! まだ昼頃だから、依頼から帰る冒険者は少ないかもしれないけど、転移を見られたら拙いからね。

「はぁ、はぁ! 重い!」
 レッドウルフ五人より、オーク二匹の方が重いし、荷車から脚や手がはみ出しているから、木に引っかかる。

「解体したら、運び易いのだろうけど、触りたくないし、アイテムボックスに入れるのも嫌だ」
 一度は入れたけど、出して見てみると、本当に嫌悪感しかない。
 首は、身体の下に放り込んだけど、本当に女神様クレマンティア、こんな醜悪な魔物を何故作ったのかな?

 ぶつぶつ文句を言いながら、やっと冒険者道に着いた。
 少し休憩して、水とパンを食べる。オレンジは、冒険者に見られたら困るから出さなかった。

「おい! それはオークか!」
 今日も、門で兵士に止められた。
「オークを討伐してはいけないとは、ギルドに書いて無かったぞ!」
 中級の常設依頼があったぐらいだ。うん? 討伐依頼ではなく、通報依頼だったかも?

「二匹も初心者が行く森に出たなら、大問題だ!」
 また、隊長がやってきた。
「初心者じゃない! 中級だ!」
 紐を引っ張って出して、銅の冒険者証を見せる。

「そうか、それは悪かった。だが、オークが二匹いるという事は、十匹以上いるって事だ!」
 まるで前世のゴ◯◯◯だね! 嫌われ者なのは一緒かも?
 
 冒険者ギルドまで、隊長が付いてきた。昨日のは、冒険者同士の問題だけど、森にオークがウヨウヨしているのは、交易都市エンボリウムの防衛問題だからかも?

 交易都市エンボリウムの街の人も、オークを見て顔を顰めている。
 これを美味しい! と思えるのは、ジャスぐらいじゃないかな?

 今日も噂が流れたのか、ギルド長の出迎えだ。目立っているじゃん! オーク、森に捨ててきたら良かったかも。

「アレク、お前はどうして問題ばかり起こすのだ?」
 はぁぁ、疲れがドッと出たよ。その上、三日連続でギルド長室に連行されそう。

「荷車は返しましたよ! それと、背負い籠の中のビッグボア二頭、欲しい部位は背嚢に入れているから、後は買取りをお願いします!」
 優男に頼んで、ドナドナされる。何故か、隊長も一緒だ。
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