クズ聖王家から逃れて、自由に生きるぞ!

梨香

文字の大きさ
上 下
18 / 71
第一章 クズ聖王家から逃げるぞ!

魚を食べよう!

しおりを挟む
 夕方に武器屋に行ったけど、店を出た時は夜になっていた。
「腹減ったな!」
 ジャスだけでなく、私も腹ペコだ。やはり、転移魔法をいっぱい使ったのと、森の端近くから、男三人を引きずって歩いたからだ。その上、ビッグボアと取り上げた武器も背負っていたからね。

「魚が食べたい!」
 わらじみたいなビッグボアは、美味しかったけど、防衛都市カストラでも食べられるだろう。

「えっ、肉の方が美味しいぞ!」
 ジャスは、見た目通りの肉食大好き大男だ。

「折角、海の近くの交易都市エンボリウムにいるのだから、魚を食べたい!」
 ルシウスも肉派みたいで、困った顔をする。

「肉と魚、どちらも出す店かぁ……そうだ! 海亀亭トゥラトゥラで夕食を食べたら良いんだ」
 魚が食べられるなら、何処でも良い。それに、海亀亭トゥラトゥラなら、海亀スープの味からしても、絶対に美味しそう!

「うん? では何故いつもは海亀亭トゥラトゥラで食べないんだ?」
 昨日は、ギルド併設の酒場で食べていたよね。それに、口調で夕食を宿で食べていない感じがする。

海亀亭トゥラトゥラには商人が多く泊まっている。お行儀よくしないと、女将さんに迷惑を掛けるんだ。特にジャス、気をつけろよ! 夕食は、酒をいっぱい飲むから、ギルドか他の店の方が気楽なのさ。酔って騒いでも良いからな。朝食の海亀スープは欠かせない。あれは二日酔いでも飲める」
 へぇ、ルシウスは気を使っているのか? 私も酔っ払って騒ぐのは、やめておこう。

「肉はギルドが安くて量が多いぜ! 冒険者が狩ってきたのを買い取っているからな。他の店は、そこから買うから、割高になる。時々は、海亀亭トゥラトゥラに直接売ってやるけどな!」
 ジャス、本当に見た目のゴツさの割に、心配りができる大男だよ。少し見習おう! アイテムボックスの中には、ビッグボアがまだ二頭入っているからね。

「お帰りなさい。あら、お食事はまだなのかしら?」
 酔ってないから、食事を取っていないと女将さんは思ったみたい。普段の生活態度がわかるね。

「ああ、部屋に荷物を置いてから、食事にする。席は空いているか?」
 食堂は、ほぼ満席で、ルシウスの言う通り、商人っぽい格好の人が多い。でも、何人かは冒険者みたい。

「三人なら、大丈夫ですよ」
 そういう事なら、部屋に背負い籠を置いて、手を洗おう。

 ルシウスやジャスは、防具を外したりするのだろうけど、私は兵士の服のままだからね。
浄化ピュリフィケーション!」とかけたら、手を洗わなくても良いのかも? でも、部屋に置いてある水差しからタライに水を注いで、手を洗うよ。何となくね!

「さて、魚だ!」
 修道院でも、祝日に魚が出た時もあるようだ。サーシャの中で寝ていたから、ぼんやりとした記憶だけどね。川魚や干物で、美味しかった記憶はない。

 でも、海亀亭トゥラトゥラのは、期待しちゃうな!
 食堂へ行ったら、ルシウスとジャスは、もう席についていた。

「早いな!」と驚くと「遅いぞ!」とジャスに笑われた。
「夜は、メインを選べるぞ。俺は、ビッグボアのステーキだ!」
 ジャス、昨日も同じだったよ。
「ビッグエルクの煮込みにしよう」
 ルシウスのも美味しそうだけど、私は魚だね!
「カジキのステーキ! とエール」
 ジャスが「エールは頼んである!」と言った。

 夜は、酔っ払いもいるから、リリーは給仕の手伝いはしない。料理は、亭主、運ぶのは女将さんと、雇われ人。

 ああ、こういう宿屋、良いなぁ。料理が美味しくて、少し泊まり賃は高いけど、客層も良い。
 治療院から宿屋に目標を変えたくなったよ。ただ、治療院なら一人でできそうだから、そっちかな?
 これは、海亀亭トゥラトゥラの家族経営の雰囲気が良いから、憧れただけだね。

「「「乾杯!」」」
 エールを一気飲みしたら、疲れが癒える。えっ、ギルドでも飲んでいただろうって? あれは、男五人を森から連れて帰って、本当に喉が渇いていたの!

「前菜です」
 ほぉ、前菜なんて、サーシャの輿入れ行列、部屋に閉じこもって食事をしていた時以来だよ。城では、使用人の食事だったからね。

「俺、野菜はいらない」
 ジャスは、前菜の蒸し野菜の皿を机の奥に置く。
「勿体ない! 野菜を食べないと、身体の調子が悪くなるぞ」
 要らないなら、私が二皿食べよう。
「海亀のスープです」
 これは、定番みたい! 美味しいね!

「ビッグボアのステーキ、ビッグエルクの煮込み、カジキのステーキです」
 うっ、前菜二皿、食べなきゃ良かったかも。カジキのステーキ、わらじなみだ。これに、パンが付いてくる。

「さぁ、食べようぜ!」
 ジャスは、大きなビッグボアのステーキをガシガシ切って、食べていく。
 ルシウスのビッグエルクの煮込み、玉ねぎやにんじんが入ってて、美味しそう。

「魚だぁ! 美味しい!」
 一口食べて、涙が出そうになったよ。修道院の質素な食事よりは、お城の使用人の食事や輿入れ行列の食事はマシだったけど、あの頃は味わう心の余裕がなかったから。

「変な奴だな!」
 ジャスが無意識に、頭に手を置いて、ぽんぽんする。
「ジャス、手が無くなっても良いのか?」
 今回は、魚が美味しかったから許すけど、毎回は駄目だぞ! 第一、大男は力が強いから、背中とかバンバンされたくない。
 それに、肉体接触は誰にも許さない態度を貫かないと、女だとバレたら困る。

 それより、カジキのステーキだけど、デカい! つまり、このカジキってのも凄く大きいって事だよね。
 海老とかないかな? 海亀、毎日スープにしていて絶滅しないのだろうか?

「美味しかった!」
 食べられるかなと不安に思う大きさだったけど、完食です。魔法と力仕事で、腹ペコだったからね。

「アレク、綺麗に食べるな?」
 ジャスが褒めてくれた。修道院育ちだけど、祝日はナイフとフォークで食事していたからね。

「ルシウス、いつ頃になったら、奴隷のお金が貰えるんだろう。それが貰えたら、防衛都市カストラに行けるのだけど……」
 ルシウスとジャスと護衛しながら防衛都市カストラに行っても良いけど、追っ手が気になるから早目に移動したい。

「彼奴ら、これまでも新人を襲っていたようだから、尋問が長引きそうだ。でも、奴隷落ちは確定だから、一週間もかからないと思うぞ。その頃、防衛都市カストラに移動する商隊を探しておこう」

 なるほどね! では、それまで私はお仕事して、皮の胸当て、ブーツぐらいは買っておきたい。

「護衛任務で必要な物は無いのか?」
 これも知らないから聞いておく。
「食事は、商隊が出してくれるが、酒は無いぞ! 夜警の当番が終わった時に飲みたいなら、自分で用意しなくちゃいけない。エールを樽で買って荷馬車に乗せて貰えたら良いんだが……」
 ジャス! それ必要な物? いや、必要だろうけど、一番目に言う必要はないよね。

防衛都市カストラまで、魔物とあまり遭遇しなくても十日以上は掛かる。食事を出してくれると言っても、逸れた時に自分が数日は食べられるように用意しておいた方が良い」
 そう! ルシウスの様なアドバイスが欲しかったんだ。

「食べ物なら、魔物を狩れば良いだけだ!」
 ジャス、塩とかないと食べにくいと思うよ。
「水は、最低限は常に持っておけ!」
 だよね! ルシウスの方を信じよう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

処理中です...