クズ聖王家から逃れて、自由に生きるぞ!

梨香

文字の大きさ
上 下
5 / 71
第一章 クズ聖王家から逃げるぞ!

輿入れ行列

しおりを挟む
 ああ、色々と準備して良かったよ。私は、嫁ぐ本人なのに蚊帳の外だったけど、アスラ王国からお迎えの使者が到着したみたい。

「サーシャ王女様、早くお召し替え下さい」
 朝からメイドが三人掛かりで、ドレスに着替えさせる。
 ゴージャスなドレスだけど、趣味が悪い。それに、これもどうやらクズ王妃オルグェーヌのお古みたい。ああ、嫌だ、嫌だ!

 新品のドレスを用意する気も無いみたい。チッ、もっと小銭を取っておけば良かったな!
 だって、アスラ王国の使者が運び込ませた箱、絶対金貨ゴルディがたんまり入っている。
 サーシャは、これで売り渡されたんだよ。

「さぁ、お別れが済んだら、出発いたしましょう」
 えっ、それは困る! あのクズ王子リグズェールに復讐していないんだ。

「お兄様方にお別れをしたいですわ。あの思い出のあるテラスで」
 お淑やかに言うと、アスラ王国の使者も「少しの時間なら」と許可した。

 ああ、下劣な考えが顔に出ているクズ王子リグズェール。それに弟王子達。こちらまで、復讐する暇はないから、代表でクズ王子リグズェール一人に受けて貰おう。

「やはり、あんなスケベ王に一発やられる前に私に処女を捧げたくなったのか?」
 わぁ、十八禁の股間だ!
「お兄様……」
 なんて後ろを向いて俯いたら、近づいて後ろから肩を抱こうとする。
 
 チャンス! サーシャの身体強化で、胸元にあるクズ王子リグズェールの左手を左手で握り、そのまま身体を右にずらす。私の手のひらを上に向けて肘でみぞおちにエルボーアタック! 衝撃を与える。

「グォ……」と崩れ落ちるクソ王パーベェルの膨れた十八禁の場所を足で思いっきり踏んだ。

 白目を向いて、泡を吹き出している。

「兄上に何をした!」
 煩い第二王子コレール、こいつも同罪だよ。ただ、クズ王子リグズェールがやられたから、剣を抜いている。

 サーシャは、魔物討伐の経験はあるけど、対人戦闘はしたことがない。前世の私も護身術をネットで検索した程度だ。
 ナイフを持った相手に襲われた場合は、バッグなどで距離を取る! と言ってもバッグなんて持っていない。

「ええぃ!」バッグは無いけど、足元にクズ王子リグズェールが横たわっている。
 身体強化で持ち上げて、第二王子コレールに投げつける。
 
 あっ、少し剣がクズ王子リグズェールに刺さったみたいだけど、知らないよ!

 兄王子の下敷きになっている第二王子コレールの顔を思いっきり、踏んづけて行く。

 呆然と見ている第三王子パレスの顔を思いっきりグーパンチ!
「乙女の危機を救わないクズ! へそ噛んで死ね!」

 ああ、少しスッキリしたよ。
「兄上達とのお別れは済みましたわ」
 アスラ王国の使者と城をでる。後ろの城でクズ王妃オルグェーヌが何か叫んでいるけど、知らないよ。
 こちらは、母親マリアを殺されているんだからね。

 あの治療師の腕なら、クズ王子リグズェールは不能になるかも? まぁ、女の人には福音だよ。本当に下衆だったから。
 第二王子コレールの鼻は折れたかも? 顔だけがまともだったのに残念だよ。ハハハ!
 第三王子パレスの顔は、当分腫れているだろうね。
 回復薬があるから、少しは何とかなるかもね?

 アスラ王国の使者は、ゲンペル男爵だそうだ。ふぅん、クルセナ聖王国も馬鹿にされたもんだね。
 男爵が聖王国の王女のお出迎え? ハン! まぁ、逃げるには丁度良いかもね。

 侍女は、初めからサーシャを小馬鹿にしていた年配のカリンだ。きっとあのクズ聖王パーベェルが手を付けるには歳をとり過ぎたのだろう。
 それに、母親マリアの事も知っているかして、身分の低い貴族の娘なのに寵愛を得て、罰が当たったのだと噂していた。地獄耳なんだ。
 自分もお手つきになったのに、孕まなかったのが悔しいのかな? 理解不能だよ!

 早く、港町ヨシュアに着いて欲しい。でも、それまでは演技しなきゃね。

「ああ、喉が渇きましたわ! ゲンペル男爵に頼んで、何処かに止めて貰って。カリン、お茶を用意してください」

「もう疲れましたわ。カリン、早く休みたいのです。食事は部屋に運ばせて」

「カリン、疲れて、起きられません。ゲンペル男爵に出発を遅らせて貰って!」

 我儘放題で、ゲンペル男爵、カリンは、私が部屋に閉じこもっている間に急接近したみたい。私の悪口で盛り上がり、良い仲になったようだ。

 ああ、中年の絡み合う視線、ゲーしそう。それだけでなく、馬車の旅は、本当に辛い。身体強化があるから、なんとか耐えているよ。

 ヨシュアの港町に到着した時は、輿入れ行列の雰囲気は最悪だった。
「早く休みたいわ」これは、毎日言っていたから、カリンもゲンペル男爵も不審に思わない。

「明日は、ゆっくりと休みたいです。この道はデコボコすぎて、気分が悪くなりましたわ」
 憤懣やるかたないカリンとゲンペル男爵の視線がねっとりと絡む。わっ、気持ち悪いけど、今夜はありがたい。

 部屋は、一応は一番上等みたい。ふふふ、それにバルコニーがあるんだよ! 脱出してくれ! と言っているようなものだよね。

 ついでだから、シーツや毛布もアイテムボックスに入れておく。請求書は、アスラ王国にお願い!
 なんだか、泥棒気質になっている感じ。

「ええっと、港から遠いのか、困ったな」
 まだ、薄っすらと夕日が残っている。でも、朝に脱出するのは悪手だと思うんだ。
 一番良いのは、夜に出航する船便に乗ること。
 ただ、この世界では夜は旅行はしない。船でも同じかも? 魔物の活動も活発になるしね。

 下を見たけど、警備の兵もお食事中みたい。チャンス!
 見習い修道女の服に着替えて、柱を伝って下に降りる。サーシャの身体強化がなければ、無理だよね。

 何故、男装じゃないのか? チッチッチッ! 船旅、特に私が乗る三等は雑魚寝だと思う。男装して、男達と雑魚寝なんて嫌だからね。

 船から降りたら、男装しようと計画を立てたんだ。
 それに、聖皇国は腐っていると女神クレマンティア様は言っていたけど、庶民の間ではまだ信心する人もいる。見習い修道女なら、少しは配慮されるかも?
 
 ああ、ややこしい! 聖皇国とクルセナ聖王国、元々は二国とも女神クレマンティア様の愛し子が建国したんだ。こちらがクズなら、あちらはクソだそうだから、どちらも近づきたくないね。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

処理中です...