海と風の王国

梨香

文字の大きさ
上 下
270 / 368
第十二章 新たな問題

1  新たな問題

しおりを挟む

「グレゴリウスに、かなり押し込まれたな」

 ユングフラウ訪問の報告を父上にしていたショウは、小言を貰って謝った。

「ええ、グレゴリウス国王に海軍での研修と、イルバニア王国寄りの海域ををパトロールするのを押し込まれてしまいました」

 アスランはショウが素直に謝るので、どうせエリカあたりがウィリアムがパトロールで疲れているとか泣きついたのだろうと肩を竦める。

「それより、マルタ公国、サラム王国が連携して海賊を擁護しているような感触が気になります」

 まだスーラ王国のジェナス王子が後ろにいるとまでは確証が掴めていないが、庶子のミーシャとシェリーを娶ってやっても良いとローラン王国とカザリア王国に提案して拒否されてからは、二国の大使館には行かなくなった。

 そして、マルタ公国、サラム王国の大使館へ頻繁に出入りしているとの報告があがっている。

「アルジェ女王の王子とは思えない馬鹿者だなぁ。ミーシャは兎も角、ジェーン王妃が認めていないシェリーぐらいは嫁に貰うのではと思ったが、エドアルドはプライドが高い。庶子を貰ってやると言わんばかりの態度で怒らせたのだろう」

 庶子の件はさておき、アルジエ海の海賊や、カザリア王国北西部の海賊の動きが活発になっているのは目に余る。

「今はイズマル島の東部は開発されていないが、小麦やゴムの樹脂などをカザリア王国に運搬するにはサラム王国の海賊が目障りだ。お前は春にはエスメラルダと結婚だが、その前に許嫁のゼリア王女と会いに行って来い。あっ、ついでに隣国のサバナ王国にも寄った方が良いな。したたかな豹王がアルジェ女王の馬鹿王子をそそのかしているかもしれないからな」
 
 ショウも海賊を擁護している両国の後ろにジェナス王子の影を見ていたが、それよりねぐらを提供しているのをどうにかするべきだと思っている。

「サバナ王国とスーラ王国を訪問するのは良いのですが、マルタ公国とサラム王国は……」

 ギロリと睨まれて、気の短い父上が怒ってない筈が無いのだと首を竦める。

「グレゴリウスとの交渉で押し込まれたお前に、偉そうに指図される覚えは無い! お前はスーラ王国とサバナ王国を訪問したら良いのだ!」

 ガツンと叱られて、ショウはバッカス外務大臣の部屋に最新の両国からの報告を聞きに行った。バッカス外務大臣は帰国早々にアスラン王に叱られて、次の命令を受けたショウに同情した。

「まぁまぁ、お茶でもどうぞ」

 香りの良いお茶を勧められて、ふぅ~と人心地つく。

「スーラ王国とサバナ王国を訪問するようにと父上から言われたのだけど、何か新しい動きは無いかな?」

 帰国したばかりなのにと、バッカス外務大臣さえも気の毒に感じる。 

「まぁ、スーラ王国のレーベン大使と、サバナ王国のメルヴィル大使から、色々と報告は届いてます」

 バサッと書類を机の上に出されて、ショウはウッと唸る。

「帰国されたばかりで、お疲れでしょう。ゆっくりされてからでも、宜しいですよ」

 ショウはそれなら妊娠中のロジーナや、留守番させたララと過ごせるかなと、一瞬喜びかけたが、にこやかなバッカス外務大臣を疑わしそうに眺める。

「まさか、サバナ王国の……」

 一夫多妻制のサバナ王国のアンガス王には、多くの王女がいるのを思い出した。

「ショウ王太子様、疑い深い性格になられましたね。グレイブス号も水や食糧の補給をしなくてはいけませんし、今夜ぐらいはゆっくりして頂こうと……」

 絶対に怪しい! と、ショウは報告書を読み出す。

しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

愛人がいらっしゃるようですし、私は故郷へ帰ります。

hana
恋愛
結婚三年目。 庭の木の下では、旦那と愛人が逢瀬を繰り広げていた。 私は二階の窓からそれを眺め、愛が冷めていくのを感じていた……

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

処理中です...