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第六章 王太子への道 ローラン王国
16 ルドルフ国王とミーシャ
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「えっ? アリエナ、貴女の勘違いではないのですか? ミーシャは、まだ恋をするには幼いと思いますよ」
アリエナはアレクセイに、ミーシャがショウに好意を持っていると伝えた。
「ミーシャは13歳でしょう? ショウ王子は14歳だし、全然恋してもおかしくないわ。私がアレクセイ様に一目惚れしたのも、14歳だったでしょう」
アレクセイはそういえばと、甘酸っぱい思い出に微笑む。
「それに、海賊から救出してくれたのよ。顔も可愛いし、優しく抱き上げて貰ったりしたら、恋に落ちるのも無理はないわ。ただ、ショウ王子に許嫁がいると聞いて青ざめていたから、諦めるかもね?」
アレクセイは、前はミーシャをショウに嫁がせようと思っていたが、妹に会ってみて控え目な態度に好感は持ったものの、個性的で美人揃いの許嫁達を知ってるので、勝ち目がないと諦めた。
「アリエナもミーシャでは無理だとわかっているだろう。ショウ王子の許嫁達は特別だよ。それに、スーラ王国のゼリア王女の婿にと、望まれているそうだ。次次代のスーラ王国の女王は、ショウ王子の娘かもしれないんだ。モテモテのショウ王子が薔薇や百合や蘭に飽きて、野に咲く菫に目を止めたとしても、手折りはしないよ。カザリア王国のエドアルド国王陛下も庶子のシェリー姫を考えておられたが、メリッサ姫の美貌と知性と色気にたじたじになられたみたいだぞ」
プンとアリエナは、アレクセイは妹に対して酷いわと怒る。
「アレクセイ様は、メリッサ姫みたいにボンキュウボンがお好きなのね。エドアルド国王陛下は、メリッサ姫がパロマ大学で優等生なのと竜騎士なのに臆されたのだと、ロザリモンドから手紙が来ていたわ。とてもメリッサ姫を気に入られて、王宮の行事に招待されるのは良いけど、スチュワート様も目が胸に吸い寄せられる有り様だと怒っていたわ。あそこの国王は愛人を作りやすいから、スチュワート様から目を離さないようにするんですって」
アレクセイは、スチュワートはロザリモンド妃にめろめろだから、目を離さなければ大丈夫だろうと笑う。
「メリッサ姫はショウ王子にべた惚れみたいで、パロマ大学生やウェスティンの同級生にアプローチされても相手にされてないので、ロザリモンドも気に入っているみたい。スチュワート皇太子が胸をチラ見したら、思いっきり抓るのも夫婦のお約束みたいになっているようね……ああ、ロザリモンドに先を越されたくないわ……」
アレクセイは危険な話題の領域に近づいたので、ミーシャがどの程度ショウを思っているのかと質問する。
竜騎士同士の夫婦である二人には、結婚1年半過ぎても子供が授かっていなかった。アリエナは緑の魔力を引き継いでいたが、キャベツに赤ちゃんが授かる呪いをかける程の魔力は持っていなかったので、母親に子授けのキャベツ畑を作って貰いたがっていたのだ。
しかし、ユーリ王妃に先王の騎竜カサンドラを射殺されたのを恨むゲオルク王の遺臣達は、そんな怪しい魔法を使って次代の王子や王女を作るなんてとんでもないと、拒否反応を起こしていたので、キャベツ畑は諦めざるをえない。
アリエナはアレクセイの質問に答えるより、子供問題で頭がいっぱいになった。
「どれほど好きかは、ミーシャ本人に聞いてみて。それより、キャベツ畑が駄目なら、他の手段を考えなくてはいけないわ。う~ん、ウィリアムとミミ姫の会話をキャサリンがフィリップ兄上から伝え聞いて、面白可笑しく書いてきてくれたの。ミミ姫はショウ王子が大好きで、許嫁になりたいから騎竜のサンズに自分を売り込んだり、どうしたら気に入って貰えるか質問したそうよ。キャサリンはアンドリュー卿にそこまでできなかったと書いてきたの。そうよ! ミミ姫は絆の竜騎士になってサンズと交尾飛行させれば良いと思いついたのよ」
アレクセイは未婚のミミでは、その作戦には無理があるのではと爆笑する。
「確か、騎竜は絆の竜騎士が性的に成熟しないと、交尾飛行しないのではないかな? 処女のミミ姫ではショウ王子を落としたくても、無理じゃないか?」
「まぁ、その件はエリカ王女の付き添いでリューデンハイムに入学するのと引き換えで、アスラン王と取り引きしてショウ王子の許嫁にしてもらえたみたいよ。それより、私達は夫婦なのだから、何も問題は無い筈よ」
少し頬を染めたアリエナにアレクセイも試す価値は有るなと微笑んでキスをする。今回のヘーゲル男爵の陰謀の件でも、世継ぎが産まれていない隙を突かれた面もあると、アレクセイ皇太子は深刻に受け止めていた。
まだ新婚気分でラブラブの皇太子夫妻には、ミーシャのことは後回しにされてしまったが、ルドルフ国王はかなり真剣に考える。
「アレクセイが言い出した時は、乗り気にならなかったが……どうやらミーシャは、ショウ王子に一目惚れしたようだ」
数少ない忠臣のカニンガム伯爵は、ヘンダーソン家の警備や管理も任されていたので、ミーシャの幼い初恋にも気づいた。
「それは、海賊から助けて貰いましたからね。ジーニアス卿は昔気質の武人でしたので、ミーシャ姫は外に出たことも無かったですし。ショウ王子は、若い令嬢には理想の王子様に見えるのでしょう。でも、一夫多妻制ですからなぁ」
カニンガム伯爵は、ロジーナの如才ない振る舞いを目の当たりにしていたので、お淑やかで控え目なミーシャには勝ち目が無いとは国王に言いにくくて、一夫多妻制を持ち出した。
「カニンガム伯爵、私と二人きりなのだから、正直に答えて良いぞ。ショウ王子の許嫁はロジーナ姫しか私は会った事が無いが、竜騎士だったり、才色兼備だったり、華やかだと聞いている。ミーシャは母親のソフィアにそっくりで、控え目で優しい性分だが、相手にされないと思ったのだろう」
苦笑しながら、二人は若くして亡くなったソフィアを思い出す。
「ソフィアが生きていたら、父上が亡くなられた後で正式な妃にしたのに……そうすればミーシャにも、今回のような目に遭わすことも無かっただろう」
自分がソフィアやミーシャに愛情を持っているのをあからさまにすると、父のゲオルク前王に人質として利用されるのでは無いかと恐れて、ヘンダーソン家に置き去りにしていたのを後悔していた。
父ゲオルクが亡くなった時には、ソフィアはこの世を去っていたし、アレクセイやナルシスが帰国してからは、忘れ難く思っていたコンスタンス妃を思い出して、ミーシャと会わすのも憚ってしまった自分の優柔不断さを、ルドルフ国王は重く受け止める。
「カニンガム伯爵、ミーシャが幸せになれる相手が見つかるだろうか? 旧帝国再建派は、一番に除外しなくてはいけないし、そちは竜騎士も駄目だという。今回のヘーゲル男爵のような陰謀を企てる輩もいるから、そちの言い分にも一理はあるが、この二つを除外したら……」
旧帝国再建派は軍部にかなりの人数がいるし、エリートの竜騎士も除外となると、文官か信頼できる貴族の中からミーシャの婿を探さなくてはいけなくなるのだ。
「ミーシャは一応は私の娘だが、所詮は庶子でしかない。名門貴族は余り喜ばないだろうし、気位の高い貴婦人が姑だと、控え目なミーシャは怯えて暮らすことにならないか?」
カニンガム伯爵はそんなことまで心配していたら、ミーシャ姫の嫁ぎ先など見つからないと溜め息をつく。
「国王陛下、石橋を叩いて渡るのは良いと思いますが、そのように石橋を叩き壊してしまわれたら、話は進みませんよ。それに、国内の名門貴族に嫁がされないのなら、東南諸島連合王国の王太子はもっと無理ではないですか。気位の高い姑どころか、才色兼備の夫人達がハーレムに勢揃いしているのですよ」
自分の考えの弱点をズバリと指摘されて、ルドルフ国王はう~んと唸る。
「だが、アレクセイは、ショウ王子の許嫁達は自由に振る舞って、楽しそうだと言っていたぞ。私達が考えるハーレムと、東南諸島連合王国の一夫多妻制は、かなり違うようだ。妻達の権利と財産は、帝国三国より保護されている。離婚も妻から言い出せるし、再婚も自由だし、その際には持参金を投資や交易で増やしたものを貰える。それに……東南諸島連合王国には、庶子への差別が無いのだ。ミーシャは私がソフィアを妃にするのを躊躇ったせいで、庶子として日陰の身分にしてしまった。東南諸島連合王国に嫁げば、庶子であろうと平等に扱われる」
カニンガム伯爵は平等と言っても、許嫁達は王族の姫君達ですよと反論するのを抑えた。そのくらいルドルフ国王も知っていての発言だし、ミーシャを国内に留めておけば、又陰謀に担ぎ出される危険もあると恐れたのだと察したからだ。
今回のヘーゲル男爵の陰謀は未然に防げたし、ミーシャに罪が無いのも明らかだったが、結婚した相手が陰謀の少しでも片棒を担いでいたりしたら、罪に問われる危険性も出てくるのだ。東南諸島連合王国に嫁がせれば、ミーシャが庶子であろうが関係なく、産まれた子供が王子や王女として大切に育成されるのは、後ろ盾のない母親を持つショウ王子を見て実感していた。
「あれほどの豊かな国なら、ミーシャ姫の一人や二人大丈夫かもしれませんなぁ。なんといっても、冬でも外で寝て死なない国ですからなぁ。海で魚を取り、木になっている果物を食べれば飢えない国なんて、羨ましいかぎりです。その上、交易を牛耳っていますから、世界の富が東南諸島連合王国に集まっています」
忠臣の愚痴に、ルドルフ国王は苦笑する。
「一度、ミーシャと話し合ってみなくてはいけないな。東南諸島連合王国の一夫多妻制を、説明しなくてはいけないし、それでミーシャが拒否反応を示すなら、この話は無かったことにすれば良い」
ミーシャがショウを好きならば、ソフィアを妃にできなかった埋め合わせに、好きな相手と結婚させて遣りたいとルドルフ国王は考える。
「ショウ王子は許嫁を増やしたくないと考えていると、ニューパロマの大使から報告を受けた。あの大使も、父上の遺臣だが、仕事は真面目にこなしている。エドアルド国王も、庶子のシェリー姫をショウ王子の許嫁にしようと考えていたが、パロマ大学に入学したメリッサ姫を見て断念されたと聞いている」
ルドルフ国王は、才色兼備の上に竜騎士とは、ミーシャに勝ち目は無さそうに思えるが、ショウ王子には薄幸の美少女といった風情のタイプの許嫁はいない筈だと考える。
「私もソフィアの悲しそうな瞳に惹かれたのだから、ショウ王子もミーシャの暗灰色の瞳を笑いで輝かしたいと思ってくれるかもしれない。持参金には、造船所の土地を持たせれば良い……」
許婚の竜騎士を先のイルバニア王国との戦争で亡くして、未婚のまま未亡人のような生活をしていたソフィアと知り合って、悲しそうな瞳をどうにか幸せに輝かして遣りたいと願ったが、果たせないまま亡くならせた。
その悔いを、そっくりのミーシャを幸せにすることで償おうと決意したルドルフ国王だった。
アリエナはアレクセイに、ミーシャがショウに好意を持っていると伝えた。
「ミーシャは13歳でしょう? ショウ王子は14歳だし、全然恋してもおかしくないわ。私がアレクセイ様に一目惚れしたのも、14歳だったでしょう」
アレクセイはそういえばと、甘酸っぱい思い出に微笑む。
「それに、海賊から救出してくれたのよ。顔も可愛いし、優しく抱き上げて貰ったりしたら、恋に落ちるのも無理はないわ。ただ、ショウ王子に許嫁がいると聞いて青ざめていたから、諦めるかもね?」
アレクセイは、前はミーシャをショウに嫁がせようと思っていたが、妹に会ってみて控え目な態度に好感は持ったものの、個性的で美人揃いの許嫁達を知ってるので、勝ち目がないと諦めた。
「アリエナもミーシャでは無理だとわかっているだろう。ショウ王子の許嫁達は特別だよ。それに、スーラ王国のゼリア王女の婿にと、望まれているそうだ。次次代のスーラ王国の女王は、ショウ王子の娘かもしれないんだ。モテモテのショウ王子が薔薇や百合や蘭に飽きて、野に咲く菫に目を止めたとしても、手折りはしないよ。カザリア王国のエドアルド国王陛下も庶子のシェリー姫を考えておられたが、メリッサ姫の美貌と知性と色気にたじたじになられたみたいだぞ」
プンとアリエナは、アレクセイは妹に対して酷いわと怒る。
「アレクセイ様は、メリッサ姫みたいにボンキュウボンがお好きなのね。エドアルド国王陛下は、メリッサ姫がパロマ大学で優等生なのと竜騎士なのに臆されたのだと、ロザリモンドから手紙が来ていたわ。とてもメリッサ姫を気に入られて、王宮の行事に招待されるのは良いけど、スチュワート様も目が胸に吸い寄せられる有り様だと怒っていたわ。あそこの国王は愛人を作りやすいから、スチュワート様から目を離さないようにするんですって」
アレクセイは、スチュワートはロザリモンド妃にめろめろだから、目を離さなければ大丈夫だろうと笑う。
「メリッサ姫はショウ王子にべた惚れみたいで、パロマ大学生やウェスティンの同級生にアプローチされても相手にされてないので、ロザリモンドも気に入っているみたい。スチュワート皇太子が胸をチラ見したら、思いっきり抓るのも夫婦のお約束みたいになっているようね……ああ、ロザリモンドに先を越されたくないわ……」
アレクセイは危険な話題の領域に近づいたので、ミーシャがどの程度ショウを思っているのかと質問する。
竜騎士同士の夫婦である二人には、結婚1年半過ぎても子供が授かっていなかった。アリエナは緑の魔力を引き継いでいたが、キャベツに赤ちゃんが授かる呪いをかける程の魔力は持っていなかったので、母親に子授けのキャベツ畑を作って貰いたがっていたのだ。
しかし、ユーリ王妃に先王の騎竜カサンドラを射殺されたのを恨むゲオルク王の遺臣達は、そんな怪しい魔法を使って次代の王子や王女を作るなんてとんでもないと、拒否反応を起こしていたので、キャベツ畑は諦めざるをえない。
アリエナはアレクセイの質問に答えるより、子供問題で頭がいっぱいになった。
「どれほど好きかは、ミーシャ本人に聞いてみて。それより、キャベツ畑が駄目なら、他の手段を考えなくてはいけないわ。う~ん、ウィリアムとミミ姫の会話をキャサリンがフィリップ兄上から伝え聞いて、面白可笑しく書いてきてくれたの。ミミ姫はショウ王子が大好きで、許嫁になりたいから騎竜のサンズに自分を売り込んだり、どうしたら気に入って貰えるか質問したそうよ。キャサリンはアンドリュー卿にそこまでできなかったと書いてきたの。そうよ! ミミ姫は絆の竜騎士になってサンズと交尾飛行させれば良いと思いついたのよ」
アレクセイは未婚のミミでは、その作戦には無理があるのではと爆笑する。
「確か、騎竜は絆の竜騎士が性的に成熟しないと、交尾飛行しないのではないかな? 処女のミミ姫ではショウ王子を落としたくても、無理じゃないか?」
「まぁ、その件はエリカ王女の付き添いでリューデンハイムに入学するのと引き換えで、アスラン王と取り引きしてショウ王子の許嫁にしてもらえたみたいよ。それより、私達は夫婦なのだから、何も問題は無い筈よ」
少し頬を染めたアリエナにアレクセイも試す価値は有るなと微笑んでキスをする。今回のヘーゲル男爵の陰謀の件でも、世継ぎが産まれていない隙を突かれた面もあると、アレクセイ皇太子は深刻に受け止めていた。
まだ新婚気分でラブラブの皇太子夫妻には、ミーシャのことは後回しにされてしまったが、ルドルフ国王はかなり真剣に考える。
「アレクセイが言い出した時は、乗り気にならなかったが……どうやらミーシャは、ショウ王子に一目惚れしたようだ」
数少ない忠臣のカニンガム伯爵は、ヘンダーソン家の警備や管理も任されていたので、ミーシャの幼い初恋にも気づいた。
「それは、海賊から助けて貰いましたからね。ジーニアス卿は昔気質の武人でしたので、ミーシャ姫は外に出たことも無かったですし。ショウ王子は、若い令嬢には理想の王子様に見えるのでしょう。でも、一夫多妻制ですからなぁ」
カニンガム伯爵は、ロジーナの如才ない振る舞いを目の当たりにしていたので、お淑やかで控え目なミーシャには勝ち目が無いとは国王に言いにくくて、一夫多妻制を持ち出した。
「カニンガム伯爵、私と二人きりなのだから、正直に答えて良いぞ。ショウ王子の許嫁はロジーナ姫しか私は会った事が無いが、竜騎士だったり、才色兼備だったり、華やかだと聞いている。ミーシャは母親のソフィアにそっくりで、控え目で優しい性分だが、相手にされないと思ったのだろう」
苦笑しながら、二人は若くして亡くなったソフィアを思い出す。
「ソフィアが生きていたら、父上が亡くなられた後で正式な妃にしたのに……そうすればミーシャにも、今回のような目に遭わすことも無かっただろう」
自分がソフィアやミーシャに愛情を持っているのをあからさまにすると、父のゲオルク前王に人質として利用されるのでは無いかと恐れて、ヘンダーソン家に置き去りにしていたのを後悔していた。
父ゲオルクが亡くなった時には、ソフィアはこの世を去っていたし、アレクセイやナルシスが帰国してからは、忘れ難く思っていたコンスタンス妃を思い出して、ミーシャと会わすのも憚ってしまった自分の優柔不断さを、ルドルフ国王は重く受け止める。
「カニンガム伯爵、ミーシャが幸せになれる相手が見つかるだろうか? 旧帝国再建派は、一番に除外しなくてはいけないし、そちは竜騎士も駄目だという。今回のヘーゲル男爵のような陰謀を企てる輩もいるから、そちの言い分にも一理はあるが、この二つを除外したら……」
旧帝国再建派は軍部にかなりの人数がいるし、エリートの竜騎士も除外となると、文官か信頼できる貴族の中からミーシャの婿を探さなくてはいけなくなるのだ。
「ミーシャは一応は私の娘だが、所詮は庶子でしかない。名門貴族は余り喜ばないだろうし、気位の高い貴婦人が姑だと、控え目なミーシャは怯えて暮らすことにならないか?」
カニンガム伯爵はそんなことまで心配していたら、ミーシャ姫の嫁ぎ先など見つからないと溜め息をつく。
「国王陛下、石橋を叩いて渡るのは良いと思いますが、そのように石橋を叩き壊してしまわれたら、話は進みませんよ。それに、国内の名門貴族に嫁がされないのなら、東南諸島連合王国の王太子はもっと無理ではないですか。気位の高い姑どころか、才色兼備の夫人達がハーレムに勢揃いしているのですよ」
自分の考えの弱点をズバリと指摘されて、ルドルフ国王はう~んと唸る。
「だが、アレクセイは、ショウ王子の許嫁達は自由に振る舞って、楽しそうだと言っていたぞ。私達が考えるハーレムと、東南諸島連合王国の一夫多妻制は、かなり違うようだ。妻達の権利と財産は、帝国三国より保護されている。離婚も妻から言い出せるし、再婚も自由だし、その際には持参金を投資や交易で増やしたものを貰える。それに……東南諸島連合王国には、庶子への差別が無いのだ。ミーシャは私がソフィアを妃にするのを躊躇ったせいで、庶子として日陰の身分にしてしまった。東南諸島連合王国に嫁げば、庶子であろうと平等に扱われる」
カニンガム伯爵は平等と言っても、許嫁達は王族の姫君達ですよと反論するのを抑えた。そのくらいルドルフ国王も知っていての発言だし、ミーシャを国内に留めておけば、又陰謀に担ぎ出される危険もあると恐れたのだと察したからだ。
今回のヘーゲル男爵の陰謀は未然に防げたし、ミーシャに罪が無いのも明らかだったが、結婚した相手が陰謀の少しでも片棒を担いでいたりしたら、罪に問われる危険性も出てくるのだ。東南諸島連合王国に嫁がせれば、ミーシャが庶子であろうが関係なく、産まれた子供が王子や王女として大切に育成されるのは、後ろ盾のない母親を持つショウ王子を見て実感していた。
「あれほどの豊かな国なら、ミーシャ姫の一人や二人大丈夫かもしれませんなぁ。なんといっても、冬でも外で寝て死なない国ですからなぁ。海で魚を取り、木になっている果物を食べれば飢えない国なんて、羨ましいかぎりです。その上、交易を牛耳っていますから、世界の富が東南諸島連合王国に集まっています」
忠臣の愚痴に、ルドルフ国王は苦笑する。
「一度、ミーシャと話し合ってみなくてはいけないな。東南諸島連合王国の一夫多妻制を、説明しなくてはいけないし、それでミーシャが拒否反応を示すなら、この話は無かったことにすれば良い」
ミーシャがショウを好きならば、ソフィアを妃にできなかった埋め合わせに、好きな相手と結婚させて遣りたいとルドルフ国王は考える。
「ショウ王子は許嫁を増やしたくないと考えていると、ニューパロマの大使から報告を受けた。あの大使も、父上の遺臣だが、仕事は真面目にこなしている。エドアルド国王も、庶子のシェリー姫をショウ王子の許嫁にしようと考えていたが、パロマ大学に入学したメリッサ姫を見て断念されたと聞いている」
ルドルフ国王は、才色兼備の上に竜騎士とは、ミーシャに勝ち目は無さそうに思えるが、ショウ王子には薄幸の美少女といった風情のタイプの許嫁はいない筈だと考える。
「私もソフィアの悲しそうな瞳に惹かれたのだから、ショウ王子もミーシャの暗灰色の瞳を笑いで輝かしたいと思ってくれるかもしれない。持参金には、造船所の土地を持たせれば良い……」
許婚の竜騎士を先のイルバニア王国との戦争で亡くして、未婚のまま未亡人のような生活をしていたソフィアと知り合って、悲しそうな瞳をどうにか幸せに輝かして遣りたいと願ったが、果たせないまま亡くならせた。
その悔いを、そっくりのミーシャを幸せにすることで償おうと決意したルドルフ国王だった。
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