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第三章 新航路発見
9 新航路発見するぞ!
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ショウはサンズとの絆を結んでから、精神的に少し落ち着いた。アスランに後継者だと言われてパニック状態だったが、自分では口出しできない事だと諦めたのだ。
「父上が自分の間違えに気づいたら、良いのだけど……」
未だ後継者だと公表されていない事に、一縷の望みをかける未練たらしいショウだったが、サンズと一週間籠もっている間に、カドフェル号は進水式を迎えていた。
「明日はカドフェル号の進水式なんだ。ララにも見せてあげたいな。カジム伯父上が許可してくれたら、進水式を見にくるかい?」
「まぁ、嬉しいわ! 進水式だなんて、めったに見れないもの。それに、そのカドフェル号でショウ様は新航路を発見する航海に出られるのでしょ。私も無事に帰港できるように、お祈りしたいわ」
許嫁のララにまた留守番させてしまうので、ショウは出帆まではご機嫌を取りに日参する。ララは、ショウに地球の意味や、大きさの計算方法を聞いたり、新しい地図を見せて貰って、新航路を発見の可能性は信じていた。
「この地図には、白紙の所が多すぎるわ。東南諸島の最東島のペナン島から、ゴルチェ大陸までも白紙ですもの。この白紙の海を、ショウ様は航海されるのね」
心配そうなララを抱きしめて、無事に帰って来るよと約束しながらキスをする。
「姉上、あら、失礼しました。ショウ兄上が来られていたのね」
ミミが部屋に入って来たので、ショウはララと少し離れた。
ミミ! 後で叱ってやると、ララは怒りを目にこめる。
「何か用なの?」
ララはショウの前なので、お淑やかにふる舞った。
「ショウ兄上がいらしているなら、丁度良いわ。家庭教師に宿題を出されたのだけど、全然わからないの。私は姉上と違って勉強が出来ないの。このままでは、第一夫人のユーアンに叱られてしまうわ」
ララは、ミミの計画に気づいた。
ショウには後宮に何人かの姉妹がいたが、五歳からは兄上達と離宮で暮らしていたので、余り親しくはしていない。ラシンドの屋敷には、父親違いのマリリンがいたが、そうそう会いには行けなかったので、ララの妹のミミに兄上と甘えられると嬉しかった。
「どこがわからないの?」
真面目に勉強を教えているショウに、ミミは一見真剣に聞いているふりをした。
「ああ、そういう意味だったのね。家庭教師より、ショウ兄上の方が教えるの上手ね」
ミミがショウの説明通りに、問題を解いていくのを見て、ララは内心でこの嘘つき! と毒づく。真っ直ぐな重たく感じるほどの黒髪の豊かなララと違い、少し栗色がかった華やかな軽い感じの髪を持つミミだったが、頭の回転は早かった。
ララは、いつもはこんな問題スラスラ解いて、恋愛小説を読んでるくせにとミミを睨みつける。
要領の良いミミは、ショウが王子の中で末っ子で、父親違いの弟や妹を可愛がっていると知って、兄上と甘える作戦を実行中だ。ショウはミミが自分で言うほど馬鹿ではないと気づいていたが、兄上と懐かれると可愛く思った。
「ショウ兄上、父上が一緒に夕食を召し上がって下さいと言われてたわ。それまで時間があるから、竜に乗せて貰いたいの。私は竜に乗ったことが無いの」
ララは、ミミを侮れないと目を見張る。ショウの竜好きを利用するだなんて、ララは思いつかなかったのだ。
「ミミは竜が好きなの? 良いよ、いつでも乗せてあげるよ」
東南諸島では竜好きは珍しいので、ショウは喜んだ。
「ショウ様、私もアスラン叔父上には乗せていただいた事があるけど、サンズには乗った事が無いわ。ショウ様はサンズと絆を結ばれたのでしょ。という事は、サンズはショウ様と一心同体ね」
ミミもララが一歩も引かないつもりだと悟った。本の虫なのに、やはり王家の女だと見直す。
ショウはララの言葉に感動して抱き寄せたが、ミミの前なのでキスはしない。ララはお呼びでないのを見せつけるように、抱き付いてキスにもっていった。
「ララ、妹が見ているよ」
ショウが恥ずかしがって、ララとのキスを軽くで止めてしまったので、ミミは少しホッとしたが姉上ばかりズルいと内心で愚痴る。
サンズの巨体にミミは一瞬ビビったが、ここで引いては王家の女ではないと勇気を振り絞る。
「なんで姉上の後ろなのよ!」
ショウはミミを鞍の後ろに乗せて、此処を持つんだよと鞍の持ち手を教えたりしてくれたが、ララを前に乗せた。ララはもちろん鞍の持ち手など持たず、ショウにピッタリと身体を寄せた。
「ララの胸が……そんなにキツく抱きつかなくても、サンズは落としたりしないよ」
背中に当たるララの柔らかな感触と、腰に回された手にドキドキしたが、気を取り直してショウはミミに飛ぶよと声をかけた。
「ミミ、ちゃんと持ち手を持った? 飛ぶよ」
サンズが羽ばたくと、あっという間に空高く舞い上がった。
「家があんなに小さく見えるわ!」
ミミはショウの関心を引くために竜に乗りたいと言い出したけど、空を飛ぶ開放感に夢中になった。
「今度はショウ様と二人で、何処までも空を飛びたいわ」
ピッタリ引っ付いている姉上が羨ましくて仕方無いミミだった。
レイテの上を一周するとショウは屋敷へと舞い降りた。身軽にサンズから飛び降りると、ララとミミを抱き下ろす。
「おや、二人とも竜に乗せて貰ったのか? アスラン王も竜騎士だが、私は乗ったことが無いのだ。ショウ、一度乗せてくれないか?」
ショウはララを乗せるほどは楽しくなかったが、竜を少しでも多くの人に理解して欲しかったので、カジムをサンズに乗せてレイテの上を一周した。
「ショウ、乗せてくれてありがとう。アスラン王が竜を愛する気持ちが少し理解できたよ。日頃の煩わしさから解放される気持ちがした」
悠々自適の生活を送っているカジムに、何の悩みが有るのだろうと、ショウは不思議に思った。
「私は年をとってラビータと結婚した。ラビータは良い妻だったし、ララとミミを私に授けてくれたが、他の妻達と同じく息子は産んではくれなかった。ショウがララと結婚してくれれば、私にも息子が出来るから嬉しいと喜んでいたが、後継者となれば話は変わってくるな」
カジムは、第六王子のショウには後ろ盾も無いし、ララとミミを結婚させて、同じ屋敷で住む夢を見ていたのだ。
「未だ、父上の気が変わるかもしれませんよ。僕のことはボンヤリだとか、よく言われますからね」
カジムは、傲慢なアスランの息子とは思えないと、ショウの自信のなさが気になる。父親があそこまで傲慢だと、ショウのように自信を持てなくなるのかもしれないと、能力的には問題ないが、兄達を押さえていけるのだろうか心配する。
カジムの一番の悩みは娘達の幸福だが、ショウの事もかなり重く考えている。カジムは王族の長老として、少し頼り無いショウを陰から支えていこうと覚悟を決める。ただ、その為には娘のララには辛い事だが、他の王族の姫君もショウの許嫁にしなければならないだろうと悩んでいたのだ。
カジムは王家の女の怖さを知っている。重臣や、大商人の娘など、彼女達にかかれば小娘みたいなものだ。
カジムは自分の娘たちの事を思い浮かべ、ララは王家の女にしては大人しいが、ミミは姉にも容赦が無いと溜め息をつく。
この件についてカジムはかなり真剣に考えていたのだ。ミミが付いていれば、ララを他の王家の女からは守ってくれるだろうが、熾烈な姉妹喧嘩になるのは困るからだ。
悠々自適なカジムが、まさか自分の後宮問題で悩んでいるとは知らず、呑気にお酒をついであげるショウだった。
翌日は、カドフェル号の進水式に相応しい雲一つない晴天で、ショウは朝から正式な王子の正装に着替えさせられた。
「ミヤ、こんなにズルズルと裾を引きずって歩くのは嫌だ」
「未だ成人ではないから、裾は短い方ですよ。来年、成人のお祝いをしたら……」
ミヤは赤ちゃんの時から育てたショウの晴れ姿に目を潤ませる。でも泣いている場合じゃないと、侍従達に裾を持つように指示をだすミヤに、ショウは自分で持てるよと断る。
「まぁ、裾をからげて持つなんて、そんな不作法な事をしては駄目です。それくらいなら、この位汚れても平気だと、父上みたいに平然としていらっしゃい」
ショウはそう言えば父上が式典とかでも、侍従達を従えていた姿に記憶がなかった。
「アスラン様は侍従達が裾を持つのを嫌がられるので、式典ごとに新調しなくてはいけませんの。ショウもどうせ成人したら、この正装は着れないから好きにしたら良いわ。でも、裾をからげて持っては駄目よ。みっともないですからね」
ズルズル引きずる裾にウンザリしながらも、カドフェル号の進水式に列席したショウだった。
「こんな不便な正装は廃止したら良いのに」
東南諸島連合王国の正装に文句をつけていたショウなのに、ララの正装姿にはうっとりとする。此方も長い裾なのだが、薄手の透けるような生地だからか、華やかに見える。
進水式の間は余計な会話もできなかったが、ララとショウがお互いに熱い視線を交わしているのに列席者全員が気づいていた。
カドフェル号の艦長のレッサと、新航路の調査団の責任者であるショウは、二人で海の女神と風の神に祈りを捧げて、七色のリボンで結ばれていた船を海に浮かべた。
造船所のドッグの中に海水が満ち、カドフェル号が進水式を終えると、ショウはカジムとララに列席のお礼を言いに行った。人目があるので抱き締めたいのを我慢したが、王族の正装姿のララはとても高貴で綺麗に見える。
「ショウ様、カドフェル号の進水式おめでとうございます。新航路の発見と、無事な帰港をお祈り致します」
ララは王子の正装姿のショウの凛々しさにうっとりしながらも、見せて貰った地図の白紙がチラついて不安を抑えきれない。
主催者のショウは、ゆっくりとララと話しているわけにもいかない。次々と他の王族や、重臣達からの祝いを受けているショウをララは少し遠く感じて、後継者になどならなければ良かったのにと、王家の女らしくないことを呟く。
「初めて会った日、私を養う自信が無いから、断ってくれと頼んだショウ様はもう居ないのね……」
ララは群がる王族の背後にライバルの姫君達の存在を感じて、絶対にショウ様の心は渡さないと誓った。
ショウが新航路の発見の航海に出た日、ララは第二夫人を目指す人生の旅に一歩足を踏み出した。
「父上が自分の間違えに気づいたら、良いのだけど……」
未だ後継者だと公表されていない事に、一縷の望みをかける未練たらしいショウだったが、サンズと一週間籠もっている間に、カドフェル号は進水式を迎えていた。
「明日はカドフェル号の進水式なんだ。ララにも見せてあげたいな。カジム伯父上が許可してくれたら、進水式を見にくるかい?」
「まぁ、嬉しいわ! 進水式だなんて、めったに見れないもの。それに、そのカドフェル号でショウ様は新航路を発見する航海に出られるのでしょ。私も無事に帰港できるように、お祈りしたいわ」
許嫁のララにまた留守番させてしまうので、ショウは出帆まではご機嫌を取りに日参する。ララは、ショウに地球の意味や、大きさの計算方法を聞いたり、新しい地図を見せて貰って、新航路を発見の可能性は信じていた。
「この地図には、白紙の所が多すぎるわ。東南諸島の最東島のペナン島から、ゴルチェ大陸までも白紙ですもの。この白紙の海を、ショウ様は航海されるのね」
心配そうなララを抱きしめて、無事に帰って来るよと約束しながらキスをする。
「姉上、あら、失礼しました。ショウ兄上が来られていたのね」
ミミが部屋に入って来たので、ショウはララと少し離れた。
ミミ! 後で叱ってやると、ララは怒りを目にこめる。
「何か用なの?」
ララはショウの前なので、お淑やかにふる舞った。
「ショウ兄上がいらしているなら、丁度良いわ。家庭教師に宿題を出されたのだけど、全然わからないの。私は姉上と違って勉強が出来ないの。このままでは、第一夫人のユーアンに叱られてしまうわ」
ララは、ミミの計画に気づいた。
ショウには後宮に何人かの姉妹がいたが、五歳からは兄上達と離宮で暮らしていたので、余り親しくはしていない。ラシンドの屋敷には、父親違いのマリリンがいたが、そうそう会いには行けなかったので、ララの妹のミミに兄上と甘えられると嬉しかった。
「どこがわからないの?」
真面目に勉強を教えているショウに、ミミは一見真剣に聞いているふりをした。
「ああ、そういう意味だったのね。家庭教師より、ショウ兄上の方が教えるの上手ね」
ミミがショウの説明通りに、問題を解いていくのを見て、ララは内心でこの嘘つき! と毒づく。真っ直ぐな重たく感じるほどの黒髪の豊かなララと違い、少し栗色がかった華やかな軽い感じの髪を持つミミだったが、頭の回転は早かった。
ララは、いつもはこんな問題スラスラ解いて、恋愛小説を読んでるくせにとミミを睨みつける。
要領の良いミミは、ショウが王子の中で末っ子で、父親違いの弟や妹を可愛がっていると知って、兄上と甘える作戦を実行中だ。ショウはミミが自分で言うほど馬鹿ではないと気づいていたが、兄上と懐かれると可愛く思った。
「ショウ兄上、父上が一緒に夕食を召し上がって下さいと言われてたわ。それまで時間があるから、竜に乗せて貰いたいの。私は竜に乗ったことが無いの」
ララは、ミミを侮れないと目を見張る。ショウの竜好きを利用するだなんて、ララは思いつかなかったのだ。
「ミミは竜が好きなの? 良いよ、いつでも乗せてあげるよ」
東南諸島では竜好きは珍しいので、ショウは喜んだ。
「ショウ様、私もアスラン叔父上には乗せていただいた事があるけど、サンズには乗った事が無いわ。ショウ様はサンズと絆を結ばれたのでしょ。という事は、サンズはショウ様と一心同体ね」
ミミもララが一歩も引かないつもりだと悟った。本の虫なのに、やはり王家の女だと見直す。
ショウはララの言葉に感動して抱き寄せたが、ミミの前なのでキスはしない。ララはお呼びでないのを見せつけるように、抱き付いてキスにもっていった。
「ララ、妹が見ているよ」
ショウが恥ずかしがって、ララとのキスを軽くで止めてしまったので、ミミは少しホッとしたが姉上ばかりズルいと内心で愚痴る。
サンズの巨体にミミは一瞬ビビったが、ここで引いては王家の女ではないと勇気を振り絞る。
「なんで姉上の後ろなのよ!」
ショウはミミを鞍の後ろに乗せて、此処を持つんだよと鞍の持ち手を教えたりしてくれたが、ララを前に乗せた。ララはもちろん鞍の持ち手など持たず、ショウにピッタリと身体を寄せた。
「ララの胸が……そんなにキツく抱きつかなくても、サンズは落としたりしないよ」
背中に当たるララの柔らかな感触と、腰に回された手にドキドキしたが、気を取り直してショウはミミに飛ぶよと声をかけた。
「ミミ、ちゃんと持ち手を持った? 飛ぶよ」
サンズが羽ばたくと、あっという間に空高く舞い上がった。
「家があんなに小さく見えるわ!」
ミミはショウの関心を引くために竜に乗りたいと言い出したけど、空を飛ぶ開放感に夢中になった。
「今度はショウ様と二人で、何処までも空を飛びたいわ」
ピッタリ引っ付いている姉上が羨ましくて仕方無いミミだった。
レイテの上を一周するとショウは屋敷へと舞い降りた。身軽にサンズから飛び降りると、ララとミミを抱き下ろす。
「おや、二人とも竜に乗せて貰ったのか? アスラン王も竜騎士だが、私は乗ったことが無いのだ。ショウ、一度乗せてくれないか?」
ショウはララを乗せるほどは楽しくなかったが、竜を少しでも多くの人に理解して欲しかったので、カジムをサンズに乗せてレイテの上を一周した。
「ショウ、乗せてくれてありがとう。アスラン王が竜を愛する気持ちが少し理解できたよ。日頃の煩わしさから解放される気持ちがした」
悠々自適の生活を送っているカジムに、何の悩みが有るのだろうと、ショウは不思議に思った。
「私は年をとってラビータと結婚した。ラビータは良い妻だったし、ララとミミを私に授けてくれたが、他の妻達と同じく息子は産んではくれなかった。ショウがララと結婚してくれれば、私にも息子が出来るから嬉しいと喜んでいたが、後継者となれば話は変わってくるな」
カジムは、第六王子のショウには後ろ盾も無いし、ララとミミを結婚させて、同じ屋敷で住む夢を見ていたのだ。
「未だ、父上の気が変わるかもしれませんよ。僕のことはボンヤリだとか、よく言われますからね」
カジムは、傲慢なアスランの息子とは思えないと、ショウの自信のなさが気になる。父親があそこまで傲慢だと、ショウのように自信を持てなくなるのかもしれないと、能力的には問題ないが、兄達を押さえていけるのだろうか心配する。
カジムの一番の悩みは娘達の幸福だが、ショウの事もかなり重く考えている。カジムは王族の長老として、少し頼り無いショウを陰から支えていこうと覚悟を決める。ただ、その為には娘のララには辛い事だが、他の王族の姫君もショウの許嫁にしなければならないだろうと悩んでいたのだ。
カジムは王家の女の怖さを知っている。重臣や、大商人の娘など、彼女達にかかれば小娘みたいなものだ。
カジムは自分の娘たちの事を思い浮かべ、ララは王家の女にしては大人しいが、ミミは姉にも容赦が無いと溜め息をつく。
この件についてカジムはかなり真剣に考えていたのだ。ミミが付いていれば、ララを他の王家の女からは守ってくれるだろうが、熾烈な姉妹喧嘩になるのは困るからだ。
悠々自適なカジムが、まさか自分の後宮問題で悩んでいるとは知らず、呑気にお酒をついであげるショウだった。
翌日は、カドフェル号の進水式に相応しい雲一つない晴天で、ショウは朝から正式な王子の正装に着替えさせられた。
「ミヤ、こんなにズルズルと裾を引きずって歩くのは嫌だ」
「未だ成人ではないから、裾は短い方ですよ。来年、成人のお祝いをしたら……」
ミヤは赤ちゃんの時から育てたショウの晴れ姿に目を潤ませる。でも泣いている場合じゃないと、侍従達に裾を持つように指示をだすミヤに、ショウは自分で持てるよと断る。
「まぁ、裾をからげて持つなんて、そんな不作法な事をしては駄目です。それくらいなら、この位汚れても平気だと、父上みたいに平然としていらっしゃい」
ショウはそう言えば父上が式典とかでも、侍従達を従えていた姿に記憶がなかった。
「アスラン様は侍従達が裾を持つのを嫌がられるので、式典ごとに新調しなくてはいけませんの。ショウもどうせ成人したら、この正装は着れないから好きにしたら良いわ。でも、裾をからげて持っては駄目よ。みっともないですからね」
ズルズル引きずる裾にウンザリしながらも、カドフェル号の進水式に列席したショウだった。
「こんな不便な正装は廃止したら良いのに」
東南諸島連合王国の正装に文句をつけていたショウなのに、ララの正装姿にはうっとりとする。此方も長い裾なのだが、薄手の透けるような生地だからか、華やかに見える。
進水式の間は余計な会話もできなかったが、ララとショウがお互いに熱い視線を交わしているのに列席者全員が気づいていた。
カドフェル号の艦長のレッサと、新航路の調査団の責任者であるショウは、二人で海の女神と風の神に祈りを捧げて、七色のリボンで結ばれていた船を海に浮かべた。
造船所のドッグの中に海水が満ち、カドフェル号が進水式を終えると、ショウはカジムとララに列席のお礼を言いに行った。人目があるので抱き締めたいのを我慢したが、王族の正装姿のララはとても高貴で綺麗に見える。
「ショウ様、カドフェル号の進水式おめでとうございます。新航路の発見と、無事な帰港をお祈り致します」
ララは王子の正装姿のショウの凛々しさにうっとりしながらも、見せて貰った地図の白紙がチラついて不安を抑えきれない。
主催者のショウは、ゆっくりとララと話しているわけにもいかない。次々と他の王族や、重臣達からの祝いを受けているショウをララは少し遠く感じて、後継者になどならなければ良かったのにと、王家の女らしくないことを呟く。
「初めて会った日、私を養う自信が無いから、断ってくれと頼んだショウ様はもう居ないのね……」
ララは群がる王族の背後にライバルの姫君達の存在を感じて、絶対にショウ様の心は渡さないと誓った。
ショウが新航路の発見の航海に出た日、ララは第二夫人を目指す人生の旅に一歩足を踏み出した。
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