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第ニ章 カザリア王国の日々
3 カザリア王国の人達
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「東南諸島連合王国のパドマ号が、レキシントン港に着きました」
カザリア王国の王宮に、東南諸島連合王国の旗艦パドマ号がレキシントン港に着いた報告が入ると、エドアルド国王はスチュワート皇太子にショウ王子を出迎えに行くようにと命じた。
「あのアスラン王の王子かぁ。メーリングで初めて会った時は、お互いに若かったなぁ」
若い頃を思い出しているエドアルド王に、側近のハロルド・マゼラン外務大臣はクスッと笑った。
「さぁ、どのような王子様でしょうねぇ。でも、アスラン王の王子ですし、十歳でパロマ大学に聴講生とはいえ送り込んでくるぐらいですから、きっと目から鼻に抜けるような王子ですよ」
東南諸島連合王国の第六王子を、パロマ大学に聴講生として留学させたいと申し出を受けてから、情報を入手しようとしたが漠然とした事しかわからなかった。
「全く、ユリアンは大使なのに、仕事をしているのか? まさか、奥方と子ども達をニューパロマに置いて単身赴任だからといって、ハーレムでも作っているのではあるまいな」
ハロルドは数年前のエドアルド国王の浮気騒動を思い出して苦笑した。ハロルドの妹のジェーン王妃が、流産して離宮に籠もっている間に、ペネローペという歌姫に入れあげ、子供までつくって大騒動になったのだ。一時は離婚とも囁かれたが、スチュワート王子と同盟国のイルバニア王国の王女とのお見合いがきっかけで、エドアルドとジェーンの仲は復活し、可愛いヘンリエッタ王女まで誕生したのだ。
「まさか十歳の王子が密偵という事はあるまいが、お目付役や、護衛に密偵を忍ばせているかもしれないな」
自国の国王夫妻の不和に、ローラン王国と東南諸島連合王国に付け込まれた苦い記憶を蘇らせ、ハロルドは気を引き締める。
「クション、レッサ艦長、未だ下船出来ないの?」
レキシントン港に寄港したのに、カザリア王国の出迎えが着くまで甲板で待たされているショウは、春なのに冷たい風にクシャミを連発した。
「誰か、噂しているのかな?」
「ショウ様、もう一枚上着を着られたら如何ですか」
シーガルは風邪をひいたら大変だと心配したが、ショウはもう荷物を纏めたのにと遠慮した。
「少し予定より早く着きましたから、カザリア王国も出迎えの準備が出来ていなかったのでしょう」
そうこう話しているうちに、港に出迎えの一行が揃った。
「そうだ、サンズはどうしよう」
「落ち着いて下さい、昨夜話し合ったでしょ」
外国の王子が出迎えに来ていると思うと緊張して、アタフタしだしたショウに、シーガルとワンダーは段取りを思い出させる。
「ショウ様はカザリア王国のスチュワート王子と馬車で王宮まで行き、エドアルド国王陛下に留学を認めて下さった挨拶をします。その間に大使館付きの竜騎士が、サンズを大使館に連れて行きます。さぁ、下船しますよ」
シーガルに段取りを復習してもらい、ワンダーに下船の縄梯子を押さえて貰って、ショウはボートに乗り移った。ワンダーは、東南諸島の王子と思えない下船の下手さに、溜め息をついた。
「いつも竜で乗り降りしているから、こんなに下手なんだ」
竜で乗り降りすることが多いショウだって、普段はもっとスムーズに下船できるのだが、今日は王子としての正装の上に上着まで着込んでいるし、慣れない半月刀まで下げているのでモタモタしてしまったのだ。
「今、下船しているのが、ショウ王子かなぁ」
港でボートに王子一行が乗り込むのを見ていたスチュワート王子は、海に落ちないか心配した。
「多分、ショウ王子でしょうね。ああ、無事にボートに乗れたみたいです。留学の初っ端から海に落ちたりしたら、可哀想ですからね」
スチュワート王子と学友のジェームズは、ショウ王子のパロマ大学での案内と世話を、エドアルド国王とマゼラン外務大臣から命じられていた。ジェームズ・マゼランは外務大臣の息子で、スチュワート王子と従兄なので、二人は兄弟のように仲良く育った。
「スチュワート様、ハーレムとか一夫多妻の話は禁句ですよ。お互いに内政の事には触れないのが、外交のルールですから」
ジェームズは、父王の浮気騒動で不倫とか浮気とかに過敏に反応する潔癖症気味のスチュワートに最終チェックする。
「わかっているよ。それに、あのような子供に、議論なんかふっかけないさ」
いや、学友として付いて来ている人達にも議論をふっかけないで下さいと言いかけたジェームズだが、スチュワートからお着きだそと脇腹を肘でつつかれて、口を閉じる。
「ショウ王子、カザリア王国にようこそお越し下さいました。私はスチュワートと申します。パロマ大学に通っていますので、わからないことがあればお聞き下さい」
丁重な挨拶を受けて、ショウも出迎えに感謝する。
「スチュワート王子、お出迎え感謝いたします。ショウとお呼び下さい。パロマ大学で、数学と土木建築の基礎を勉強したいのです。色々とご指導下さい」
東南諸島の長衣に上着を着込んだショウは、深々と頭を下げる。
その様子を見て、遣り手と噂されているアスラン王の王子とは思えない、可愛い王子だなぁと、スチュワートとジェームズは顔を見合わせる。
「こちらは私の従兄のジェームズ・フォン・マゼランです。私と一緒にショウ様のパロマ大学での世話をします」
ショウはジェームズにも丁寧に挨拶して、シーガルとワンダーを紹介する。
両国の若い王子と学友は、馬車でニューパロマの王宮へ向かった。
「わぁ、ニューパロマも大きな街なのですね」
初めて訪れた外国の街を、ショウは馬車から乗り出さない勢いで見ていたが、ワンダーに座席に座り直さされる。
「窓から身を乗り出したら、危ないですよ」
シーガルにも注意されて、大人しく座っているショウを、スチュワートとジェームズは、十歳なのだから仕方ないなと苦笑した。
王宮でエドアルド国王陛下に留学の挨拶を済ませて、東南諸島連合王国の大使館に着いたショウはドッと疲れた。
カザリア王国の王宮に、東南諸島連合王国の旗艦パドマ号がレキシントン港に着いた報告が入ると、エドアルド国王はスチュワート皇太子にショウ王子を出迎えに行くようにと命じた。
「あのアスラン王の王子かぁ。メーリングで初めて会った時は、お互いに若かったなぁ」
若い頃を思い出しているエドアルド王に、側近のハロルド・マゼラン外務大臣はクスッと笑った。
「さぁ、どのような王子様でしょうねぇ。でも、アスラン王の王子ですし、十歳でパロマ大学に聴講生とはいえ送り込んでくるぐらいですから、きっと目から鼻に抜けるような王子ですよ」
東南諸島連合王国の第六王子を、パロマ大学に聴講生として留学させたいと申し出を受けてから、情報を入手しようとしたが漠然とした事しかわからなかった。
「全く、ユリアンは大使なのに、仕事をしているのか? まさか、奥方と子ども達をニューパロマに置いて単身赴任だからといって、ハーレムでも作っているのではあるまいな」
ハロルドは数年前のエドアルド国王の浮気騒動を思い出して苦笑した。ハロルドの妹のジェーン王妃が、流産して離宮に籠もっている間に、ペネローペという歌姫に入れあげ、子供までつくって大騒動になったのだ。一時は離婚とも囁かれたが、スチュワート王子と同盟国のイルバニア王国の王女とのお見合いがきっかけで、エドアルドとジェーンの仲は復活し、可愛いヘンリエッタ王女まで誕生したのだ。
「まさか十歳の王子が密偵という事はあるまいが、お目付役や、護衛に密偵を忍ばせているかもしれないな」
自国の国王夫妻の不和に、ローラン王国と東南諸島連合王国に付け込まれた苦い記憶を蘇らせ、ハロルドは気を引き締める。
「クション、レッサ艦長、未だ下船出来ないの?」
レキシントン港に寄港したのに、カザリア王国の出迎えが着くまで甲板で待たされているショウは、春なのに冷たい風にクシャミを連発した。
「誰か、噂しているのかな?」
「ショウ様、もう一枚上着を着られたら如何ですか」
シーガルは風邪をひいたら大変だと心配したが、ショウはもう荷物を纏めたのにと遠慮した。
「少し予定より早く着きましたから、カザリア王国も出迎えの準備が出来ていなかったのでしょう」
そうこう話しているうちに、港に出迎えの一行が揃った。
「そうだ、サンズはどうしよう」
「落ち着いて下さい、昨夜話し合ったでしょ」
外国の王子が出迎えに来ていると思うと緊張して、アタフタしだしたショウに、シーガルとワンダーは段取りを思い出させる。
「ショウ様はカザリア王国のスチュワート王子と馬車で王宮まで行き、エドアルド国王陛下に留学を認めて下さった挨拶をします。その間に大使館付きの竜騎士が、サンズを大使館に連れて行きます。さぁ、下船しますよ」
シーガルに段取りを復習してもらい、ワンダーに下船の縄梯子を押さえて貰って、ショウはボートに乗り移った。ワンダーは、東南諸島の王子と思えない下船の下手さに、溜め息をついた。
「いつも竜で乗り降りしているから、こんなに下手なんだ」
竜で乗り降りすることが多いショウだって、普段はもっとスムーズに下船できるのだが、今日は王子としての正装の上に上着まで着込んでいるし、慣れない半月刀まで下げているのでモタモタしてしまったのだ。
「今、下船しているのが、ショウ王子かなぁ」
港でボートに王子一行が乗り込むのを見ていたスチュワート王子は、海に落ちないか心配した。
「多分、ショウ王子でしょうね。ああ、無事にボートに乗れたみたいです。留学の初っ端から海に落ちたりしたら、可哀想ですからね」
スチュワート王子と学友のジェームズは、ショウ王子のパロマ大学での案内と世話を、エドアルド国王とマゼラン外務大臣から命じられていた。ジェームズ・マゼランは外務大臣の息子で、スチュワート王子と従兄なので、二人は兄弟のように仲良く育った。
「スチュワート様、ハーレムとか一夫多妻の話は禁句ですよ。お互いに内政の事には触れないのが、外交のルールですから」
ジェームズは、父王の浮気騒動で不倫とか浮気とかに過敏に反応する潔癖症気味のスチュワートに最終チェックする。
「わかっているよ。それに、あのような子供に、議論なんかふっかけないさ」
いや、学友として付いて来ている人達にも議論をふっかけないで下さいと言いかけたジェームズだが、スチュワートからお着きだそと脇腹を肘でつつかれて、口を閉じる。
「ショウ王子、カザリア王国にようこそお越し下さいました。私はスチュワートと申します。パロマ大学に通っていますので、わからないことがあればお聞き下さい」
丁重な挨拶を受けて、ショウも出迎えに感謝する。
「スチュワート王子、お出迎え感謝いたします。ショウとお呼び下さい。パロマ大学で、数学と土木建築の基礎を勉強したいのです。色々とご指導下さい」
東南諸島の長衣に上着を着込んだショウは、深々と頭を下げる。
その様子を見て、遣り手と噂されているアスラン王の王子とは思えない、可愛い王子だなぁと、スチュワートとジェームズは顔を見合わせる。
「こちらは私の従兄のジェームズ・フォン・マゼランです。私と一緒にショウ様のパロマ大学での世話をします」
ショウはジェームズにも丁寧に挨拶して、シーガルとワンダーを紹介する。
両国の若い王子と学友は、馬車でニューパロマの王宮へ向かった。
「わぁ、ニューパロマも大きな街なのですね」
初めて訪れた外国の街を、ショウは馬車から乗り出さない勢いで見ていたが、ワンダーに座席に座り直さされる。
「窓から身を乗り出したら、危ないですよ」
シーガルにも注意されて、大人しく座っているショウを、スチュワートとジェームズは、十歳なのだから仕方ないなと苦笑した。
王宮でエドアルド国王陛下に留学の挨拶を済ませて、東南諸島連合王国の大使館に着いたショウはドッと疲れた。
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