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第ニ章 逆恨み
12 賑やかなグリーンガーデン
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大阪の片隅にある風情ある喫茶店で、やる気のない政宗に、やる気満々の銀狐がコーヒーの淹れ方を熱血指導している。
「違います! 何度言ったらできるんですか?」
「ええっ? どこが違うんだ?」
どこが違うのかも分からないのかと銀狐が溜息をついていると、チリン、チリンとドアに付いている銀鈴が鳴った。
「いらっしゃいませ」
営業スマイルを浮かべかけた銀狐だが、入ってきたのが東三条と留美なので、微妙な顔になる。本腰を入れてマスター修行をさせようとしていたのに、政宗はいそいそとカウンターから出て行ってしまった。
「東三条さん、どうやら黒い影は戻っていませんね」
マスカレードで黒い影は東三条から離れたが、また戻るかもしれないとほんの少し心配していたのだ。
「お陰様で……武藤さんも技術的には優れていますし、仕事のオファーは問題ないのですが……」
若い留美の前でキャバ嬢のルミの話をしにくそうな東三条だ。
「なぁに? 東三条のおじ様?」
「あっ、留美さんは銀さんに紅茶の淹れ方を教えて貰ったら?」
「やったぁ! 前から習いたいと思っていたの」
銀狐は「カウンターに部外者など入れない」と揉めている間に、東三条と政宗は観葉植物に遮られたソファー席に座る。
「仕事面は問題無いのですが、ルミちゃんとの仲を疑われるのが面倒臭いのです。私はバッグを買った後は、マスカレードに行ってもいないのに……」
政宗は厄介ごとかと心配したのに悄然とする。
「そちら関係のお悩みは銀蝶ママにお願いします」
政宗は冷たく東三条に言い捨てて、カウンターの定位置へ座る。ぎゃんぎゃん煩い留美と銀狐の争いをよそに、愛読するミステリー小説を開き、こんな難事件を解決してみたいものだと呟くのだった。
「違います! 何度言ったらできるんですか?」
「ええっ? どこが違うんだ?」
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