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第ニ章 逆恨み
2 魔王の城?
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「同じ大阪に建っているビルとは思えないなぁ。なんだか魔王が住む城みたいだ……」
東三条の運転手付きの高級車から降り立った政宗は、ガラス張りの高層ビルを見上げて羨ましそうに呟く。
「これだけのビルなら、テナント料金は幾らになるのですか?」
社長を出迎える秘書に案内され、ピカピカのエントランスに入りながら、無礼な質問をする政宗に東三条は眉を顰める。きょろきょろと値踏みをするように見渡している目に、不信感が膨らんでくる。助手だからと強引についてきた留美は『まずいわぁ』とフォローする。この点では、銀孤よりは探偵の助手として留美の方が役に立つのかもしれない。
「政宗さんは、あのビルのオーナーだから気になるのね。でも、あのビルのテナント料とこのビルのを比べても意味は無いと思うわ」
「いやぁ、ついねぇ。輝正大伯父さんも遺してくれるなら、こんなビルを遺してくれたら遊んで暮らしていけたのにと考えちゃって。それに喫茶店を続けなきゃいけないだなんて、条件もつけてくるしさぁ」
「貴方はあのビルのオーナーなのですか?」
東三条はエレベーターを待ちながら、政宗と留美との会話を聞いていたが驚いた。古びてはいるが、趣のあるビルのオーナーだとは知らなかったのだ。もしかして、資産家の息子なのかと政宗を観察するが、白いシャツと黒いパンツ姿の痩せぎすな青年からは、そんな様子は感じられない。
この服装はグリーンガーデンの制服というか、輝正が好んで着ていたので、銀孤も同じ格好をしているし、政宗にも着るようにと、毎朝きちんとアイロンを掛けたのを用意しているのだが……政宗の白いシャツは、開店前にソファーで寝転んでミステリー小説を読んだりして、何となくグシャとしているし、猫背気味なのも良くない。秘書も社長が何故このような若者をつれてきたのか尋ねたそうにしているが、東三条は無視する。
「そうよ、一応はちゃんとしているの」
そうフォローする留美ももう少し何とかならないのかと溜息を押し殺す。せめて、しゃんと立たないかと、背中をパシンと叩きたくなる。
そうこう話している内に、チンとエレベーターの扉が開く。
「へぇ、外が見えるのかぁ」
まるで子どものようにエレベーターの窓に張り付いて外を眺めている政宗に、留美と東三条は呆れる。
「あっ、彼処にビルが見えるなぁ」
「えっ、何処に?」
「ほら、あのちっちゃな……屋上に菜園があるビルだよ」
「へぇ、屋上で何を植えているの?」
瑠美が興味を持って尋ねるが、政宗は銀狐に任せているので、何を育てているのか知らない。
「さぁね、多分ミントとかハーブだとは思うけど……こうして見ると、本当に小さいなぁ」
「全く政宗さんは、オーナーだというのに銀さんに任せっきりね。せめて、こちらの探偵業の方はちゃんとしてね」
自分が紹介したのだからと、留美はコソッと念押しするが、生憎と狭いエレベーターの中なので東三条と秘書の耳にも届いていた。
チン! とドアが開き、スリースター社が借り切っている階へと到着した。にこやかな受付嬢に鼻の下を伸ばす政宗の腕を引っ張りながら、留美は東三条の後を追いかける。
『何だか、本当に魔王の城みたいだ……』
受付から奥へと進むにつれて、段々と東三条に憑いている黒い影が活性化していく。どうやら、このビルには何か悪霊が集まっているようだと、政宗は回れ右して帰りたくなった。
「政宗さん、何をしているの?」
伯母とはいえ悪霊に憑かれた留美だから、何か霊感でもあるのでは無いかと考えていた政宗だが、全くこの雰囲気の悪さを感じ取っていないのにがっかりする。
「本当に助手失格だなぁ」
「まぁ、失礼ね! それより、早く原因を突き止めなきゃいけないんでしょ」
ぐぃぐぃと腕を引っ張られて、黒い渦の方へと政宗は進んで行く。
東三条の運転手付きの高級車から降り立った政宗は、ガラス張りの高層ビルを見上げて羨ましそうに呟く。
「これだけのビルなら、テナント料金は幾らになるのですか?」
社長を出迎える秘書に案内され、ピカピカのエントランスに入りながら、無礼な質問をする政宗に東三条は眉を顰める。きょろきょろと値踏みをするように見渡している目に、不信感が膨らんでくる。助手だからと強引についてきた留美は『まずいわぁ』とフォローする。この点では、銀孤よりは探偵の助手として留美の方が役に立つのかもしれない。
「政宗さんは、あのビルのオーナーだから気になるのね。でも、あのビルのテナント料とこのビルのを比べても意味は無いと思うわ」
「いやぁ、ついねぇ。輝正大伯父さんも遺してくれるなら、こんなビルを遺してくれたら遊んで暮らしていけたのにと考えちゃって。それに喫茶店を続けなきゃいけないだなんて、条件もつけてくるしさぁ」
「貴方はあのビルのオーナーなのですか?」
東三条はエレベーターを待ちながら、政宗と留美との会話を聞いていたが驚いた。古びてはいるが、趣のあるビルのオーナーだとは知らなかったのだ。もしかして、資産家の息子なのかと政宗を観察するが、白いシャツと黒いパンツ姿の痩せぎすな青年からは、そんな様子は感じられない。
この服装はグリーンガーデンの制服というか、輝正が好んで着ていたので、銀孤も同じ格好をしているし、政宗にも着るようにと、毎朝きちんとアイロンを掛けたのを用意しているのだが……政宗の白いシャツは、開店前にソファーで寝転んでミステリー小説を読んだりして、何となくグシャとしているし、猫背気味なのも良くない。秘書も社長が何故このような若者をつれてきたのか尋ねたそうにしているが、東三条は無視する。
「そうよ、一応はちゃんとしているの」
そうフォローする留美ももう少し何とかならないのかと溜息を押し殺す。せめて、しゃんと立たないかと、背中をパシンと叩きたくなる。
そうこう話している内に、チンとエレベーターの扉が開く。
「へぇ、外が見えるのかぁ」
まるで子どものようにエレベーターの窓に張り付いて外を眺めている政宗に、留美と東三条は呆れる。
「あっ、彼処にビルが見えるなぁ」
「えっ、何処に?」
「ほら、あのちっちゃな……屋上に菜園があるビルだよ」
「へぇ、屋上で何を植えているの?」
瑠美が興味を持って尋ねるが、政宗は銀狐に任せているので、何を育てているのか知らない。
「さぁね、多分ミントとかハーブだとは思うけど……こうして見ると、本当に小さいなぁ」
「全く政宗さんは、オーナーだというのに銀さんに任せっきりね。せめて、こちらの探偵業の方はちゃんとしてね」
自分が紹介したのだからと、留美はコソッと念押しするが、生憎と狭いエレベーターの中なので東三条と秘書の耳にも届いていた。
チン! とドアが開き、スリースター社が借り切っている階へと到着した。にこやかな受付嬢に鼻の下を伸ばす政宗の腕を引っ張りながら、留美は東三条の後を追いかける。
『何だか、本当に魔王の城みたいだ……』
受付から奥へと進むにつれて、段々と東三条に憑いている黒い影が活性化していく。どうやら、このビルには何か悪霊が集まっているようだと、政宗は回れ右して帰りたくなった。
「政宗さん、何をしているの?」
伯母とはいえ悪霊に憑かれた留美だから、何か霊感でもあるのでは無いかと考えていた政宗だが、全くこの雰囲気の悪さを感じ取っていないのにがっかりする。
「本当に助手失格だなぁ」
「まぁ、失礼ね! それより、早く原因を突き止めなきゃいけないんでしょ」
ぐぃぐぃと腕を引っ張られて、黒い渦の方へと政宗は進んで行く。
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