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クソッタレな2022年から、きっとロクでもない2023年へ、愛をこめて

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「原尾のやつ、資料上げ忘れてねぇか?」

半分聞き流しながら大学のホームページを開いて。見当たらない今日の日付に頭を搔く。ノパソの画面に、いつもの「ミュート中です。ミュートを解除するには踊るだか歌うだかエトセトラ」が灰色と白で光る。

「チャット送ってやれよ。」
「やだよ、なんか言ってたのかもしんねーじゃん。俺こいつの『さっき言いましたよね』が一番嫌いなんだわ。」

ノートパソコンの音量をあげる。一緒にノイズも上がって、いまいち聞き取れない。別に痒くもないが、ある種の自傷癖みたいに唇を破いた。血の味。指に血がつく。

「まぁいいや、開いとけ。」
「終わんの何時?」
「さぁんじ。コーヒー飲みてぇ。」
「入れてやるわ。え、いいの聞こえなくて。」
「いいよ、原尾のは。どうせ聞かんでも紙見りゃ分かる、何言ってるかよく聞こえんし。」

原尾教授の声がする。あいや、准教?まぁなんでもいーや。もう何を言ってるのかすら分からない、クソみたいに音質も滑舌も悪いノイズ混じりの講義は、どうせあとからレジュメを見りゃ全部分かる。あいや、ちげーわ、そういやこいつ今日レジュメ上げてねぇんだった。

《で……その……まぁ……》

接続詞ばかりがノパソから煩い。

「原尾なぁ、月曜五限取ってるよ。アイツマイクつけない上に回線バカなってるからな。」
「さんべんに一回落ちるのよ。オンラインに向いてないわ、あのばぁさん。」
「ばあさんゆうなよ、まだ30なんぼだろ。」
「でも1000円札夏目だと思ってるよ。」
「アッヒ、哲学科そういうやつ多いなぁ。」
「あ゛?喧嘩か仏文。」

振り返って長岡を見れば、奴はケラケラ笑いながら片手を振った。

「お前らの話じゃないわ、教授陣な。」
「マサコウかて『プロジェクションマッピング』分からんかったぞ。マサコウ仏文よな?」
「アッヒェア、アイツ世捨て人だからなぁ。」
「先生にアイツ言うなや。」
「いまさらだろ。」
「あとお前その笑い声何とかせぇよ。」
「なんともならん、生まれつきだわ。」
「お前かグーフィーしかしないぞ、そんな笑い方。」

カメラの覆いを確認して授業音声のボリュームを下げて、パソコンを開いたまま立ち上がる。長岡がドリップコーヒーの箱を漁る横に立って、俺これ、と緑のパッケージを手に取った。フルーティーって書いてあるそれは、俺が好きな浅煎り。長岡は苦めの赤。予想して待っていれば、散々悩んだ後長岡が赤のパッケージを手に取った。ほらね。

「クッキー食う?さすがにコーヒー入れたら授業戻る?」
「全然クッキー食うわ。聞こえないし。」

最早環境音と化したノートパソコンを顎でさして、ドリップコーヒーの封を切る。

「今日で今年授業最終よな?」
「おう明日から冬休みよ。長岡今日何もないんだっけ。」
「このあとバイト行くだけ。お前の四限が始まる前に出るわ。」

四年ともなれば皆ほとんど授業を取ってない。授業料がもったいねぇからって単位足りてるのに授業を取る俺がレアケースだ。ま、授業受けたいからって言うより資料読みたいからなんだけども。

「了解。夕飯焼きそばでいい?」
「いいじゃん。坂城は四限で最後?」
「そ。今日バイトないし。」
「おーけい。」

長岡とクッキーを食ってるうちに授業時間が終わる。長岡を見送ってから、次のzoomのURLを開いた。

まぁやることは同じだ。今日の授業に目新しいことがないことを確認した上で、資料を確保してそっちを読んであとは流しておく。

オンライン授業だから云々、と言われるが、どうせリアルタイムで授業しても落書きしてるか内職してるか寝てるかなのでサボり具合は同じだ。内容把握が最終的に出来ればそれでよし。むしろ移動時間がないので居眠りが減った。

あの後、誰かが原尾に連絡を入れてくれたらしい。サイトに無事上がった三限のレジュメを流し見ながら、四限の授業を聞く。ノートパソコンを覗いていると、結び忘れた髪が耳からずり落ちて視界の邪魔をした。

あー、髪、切っとかなきゃいけなかったな。

思い出すとめちゃくちゃ気になってきて、俺はノートパソコンの音量をマックスにして立ち上がる。洗面台に聞こえる位置にパソコンをセットして、フローリングワイパーと掃除機を持ってくる。百均産の普通のハサミとスキバサミを洗面台においてから、服を脱いでその辺に積んでおく。

《日記小説というものは》

一度思い切り全体にハサミを入れる。焦げ茶とオレンジの混ざった線がバラバラと落ちる。

後ろは見えないから、手で触りながらざっくり長さをそろえる。肩を超えていた髪が、顎より上のラインでパチンと落ちる。

《どう繋がってるって思うと思うんですけど》

鏡を覗き込みながら左右がだいたい同じに見えるようにバランスをとる。ブリーチで色が抜けてオレンジっぽくなっていた毛先が殆ど切り落とされて、久々に焦げ茶一色の自分の顔を見る。

髪染めるのどうしよっかな。ブリーチ剤もうないし。

《みなさん覚えていますか》

覚えてないでーす。ほとんど聞いてない授業音声に、時々意味もなく頭の中で返事をする。

《の立場と言えるんですね》

バリカンのスイッチを入れれば、授業の音声なんかほとんど聞こえなくなる。襟足周りを手探りで整えて、頭を振った。細かい毛がバラバラ落ちる。肩や腕にのった髪を払って、掃除機を手に取った。がなる掃除機の隙間から、教授の声がする。

《陥っていた作者は》

掃除機をかけてからフローリングワイパーをかければ、床はだいたい片付く。洗面台の中に大量に落ちている髪の毛は後で片付けるとして。

授業はまだ三十分ほど残っている。指名されるようなタイプの授業ではないことを画面を見て再確認してから、洗面台隣のシャワー室に入った。ざっと流せば、だいぶスッキリする。

《だから詩と小説の》

濡れた頭と体をタオルで拭いて、脱ぎ捨てていた服に袖を通す。ゴミ箱を持ってきて洗面台の髪の毛を拾い上げたら、細かい毛は流してついでに洗面台を掃除する。

《昔には戻れませんから》

最後に鏡を拭いて……

《じゃあ、一人ずつここは聞いていこうかな》

やべ。

慌てて掃除用の布切れを置いて、手を洗ってパソコンを取りに行く。引っ掴んだパソコンを持って椅子に座って、他の人の発表を聞き流しながら資料を流し読む。作業中に漏れ聞こえていた声と合わせて資料をざっと読めば、問題なく授業に合流できた。

カメラオンじゃなくて助かったもんだ。濡れた頭のまま、しれっと授業の感想を答えた。

「スッキリしたじゃん。」
「授業中に切った。」
「やば。」
「途中全裸で聞いてたからな、授業。」
「アッヒェア!」

短いバイトを終えて帰ってきた長岡が、至極楽しげに笑い声で返事をする。

「相変わらず後ろ自分で切るの上手いなー……結構ばっさりいったな。失恋した?って聞かれるやつ。」
「あー、」

とっくに乾いた髪の毛を触られながら、俺は出来上がった焼きそばを皿に載せる作業を続ける。

「失う恋もないけどさ、失恋したら髪切るって言われてんのなんかちょっと分かるわ。」
「気分転換になる?」
「そんな感じ。物理的に軽くなるから。」
「あー、それはあるかも。また半分金髪にすんの?」
「悩んどる。ブリーチ剤買うの面倒いし。」

皿を渡せば、受け取った長岡は引き出しから箸を出して机の方に向かう。リビングもダイニングもなぁなぁの2LKには、でかい机はひとつしかない。

「お前今一膳だけ持ってった?」
「いや箸は二膳出した。お前の皿持ってきてくれればおっけー。」
「了解。」

フライパンを洗ってから残りの皿を掴んで、座って手を合わせる。いただきますを言わないことが多いが、手を合わせることだけは子どもの頃からの惰性だ。

「そういや坂城、年末年始って何してる?」
「三十……に最後のバイト行って、四日から出勤。お前は?」
「三日が初日。お前も三十一と一日は暇なんだな。」
「まぁ正月くらい家でボーっとしたいだろ。」
「あ、初日の出見に行かん?って思ったけど外嫌か。」
「まぁー、近所なら?高台ならいいよ、ギリ歩いて行けるべ。」

去年どうしてたっけ、と内心首を傾げた。ロクに覚えてないから、多分ただ普通に寝て起きたんだろう。まだ去年はコイツと同居もしてなかったし。

「初日の出とかする派なんだ。」
「まぁなんとなく。せっかく新年だし的な。」
「新年、ねー……」

別にあけてもめでたくないよな、なんて。

言わなくてもいいことは、とりあえず飲み込んでおいた。

「お、あと五分。」

一週間ってのは割とあっという間で、授業が終わったと思えばもう大晦日。見るテレビがある訳でもないから、あんまり年越し感はなかった。トランプと酒の缶詰が広がった机の上で長岡のスマホが振動して、23:55を伝える。

「年越しカウントダウンとかしちゃう?」
「あは、ジャンプとかしちゃう?」
「いいじゃん、坂城飛べる?酔ってすっ転ぶなよ?」
「飛べるわい。」

五分前からスタンバることもないのに、とりあえずテレビをつけて適当なカウントダウンをつける。

「飛ぶのってどうすんの、さんにーいちピョンだと年越しの瞬間足ついとるけど。」
「細かいこと気にしなくていいよ、いち直後で飛べば良くない?」

突然ちゃんと年越しっぽくなってきた。そわつく俺に、長岡が気にしぃだなといつもの笑い声をあげる。

「悪いかったわね細かいこと気にするタイプで。」
「言うて俺も年越しジャンプしたことないけどね。」
「ベタすぎて逆にな。」
「あなんか来るっぽい、始まったぞ。」

生放送特有のたるいカウントダウンに、踏み切りのタイミングが分からず二人で笑い声を上げる。近所迷惑かもしれないけど、まぁ起きてる人も多いだろ。

「どこどこどこ」
「ほらくるくる、あはズレまくってる」
「加速すんな突然」
「えーっ、ごー、よん、」
「「さん、にー、いち、」」

ドタタッてイマイチしまりのない二十二歳共の着地音。

「アッヒ、ンフ、今年もよろしくね、」
「あはは、こちらこそ、」

笑い混じりにお互いペコッとお辞儀して、テレビを消す。

「大学生活も終わりますねぇ。」

わざとらしくしみじみ言う長岡に、俺も真似して感慨深く頷いてみる。

「あと三ヶ月だし、きっと爆速で終わるよな。」
「言うて一ヶ月だろ、テスト一月末だから。」
「言えてるー。あ長岡、初日の出何時?」
「六時四十五分とか。」
「じゃー六時に家出れば余裕か。」
「暇だなそれまで。蕎麦とか食う?あったべ。」

カップ麺の蕎麦をふたつ引きずり出して、こじつけみたいな年越し蕎麦を試みる。

「お湯沸かさないと、」
「待ってさっきの箸で最後じゃない?」
「うーわ朝と昼のやつ乾いてたのに誰だよここに夕食の箸突っ込んだやつ。」
「おーれ♡」
「許さんぞ長岡。」
「やけに沢山割り箸あるからいいじゃん。」

何故かお湯を注いで五分待つだけで大騒ぎ。蕎麦で騒いで、トランプに戻って、ドタバタしてるうちに六時も近づいた。

「あ待って外サッッッム!」
「やばマフラーマフラー!」

ドアを開けてまた閉めて、使用期限切れたカイロを引っ張り出して。着膨れしてダルマみたいになりながらやっと外に出て高台を目指す。

「すげぇいつも通りの朝だろうに、早朝に出歩いてるだけでなんか非日常ぽいわ。」

歩きながら思わず呟けば、長岡が俺の腕を引っ張った。

「もっと非日常しようぜ、そこの神社行こ。」
「えお賽銭ないけど。スマホと鍵しか持ってねぇ。」
「俺があるから行ける行ける。」

近所に神社があることは知っていたけれど、入ったことなんて一回もない。礼儀作法なんも分からん、とググれば、「極論心持ち」と出てきたのでお邪魔しますの気持ちだけはしっかりと持っておく。

初詣、なんてのはこういう小さい神社にはあまり関係がないのかもしれない。俺たちの他に人はいなかった。

「来ましたよーって鳴らすんだっけ。」
「覚えてねぇ……でもまず来ましたよーってしなきゃ神様も困るか?」

紐を揺すって、手を叩いて、礼。お賽銭を投げて、なんとなくもう一回礼。多分グダグダだけど「こんな時ばっかり日本人面してすみませんね、何卒。」っていう謙虚さ?だけはちゃんと誠意を持って神社を出た。

「年みたいにさー、さんにぃいちで、終わればいいのにな。」
「何が?」
「色々。さっきみたいに手を叩くとかでもいいんだけど。」

パン、と長岡が大きく手を叩いた。案外大きな音が響く。

「さんにぃいちでゼロにならんかな。パァンって世界が全部終わっちまって欲しいよ。なのに世界はリニューアルまでしやがった。困っちまうよなぁ。」
「新年祝いたいって言うやつの台詞じゃなくて笑うんだが。」
「や、祝いたいっつか、季節行事くらいやっておかないとマジで気が狂いそうだしさ。」

吐く息が白い。まだ高台まではちょっとかかる。

「時間って昔は円上だったっていうじゃん。春があって、夏があって、秋、冬、そんでまた春。ぐるぐる時間は回ってて、現代人みたいな遠い遠い未来への不信感なんてもんはなかったって。」

こいつ俺より哲学科向いてんじゃないかな、とは言わないでおく。

「それが羨ましくて。季節行事が数少ない円上時間の名残なら、それにしがみついてたい訳よ。」
「ぐるぐる、ねー。」

毎年同じことの繰り返し、なんていう楽観的思考はなかなか難しい。だいたい三年前には考えられなかった世界が毎日拡がっていて、マスクは邪魔で、十年前に夢見たようにキッパリと大人にはなれてないし。予想っていうのはだいたい裏切られて、結果っていうのは予想より大体たいしたことがない。

「なんかどうせなら、上がっていく未来が予想出来りゃいいんだけど。親とかに言われん?悲観的過ぎるって。」
「ま、明日が今日より良かったことなんて俺らの世代ないもんな。」

ずーっと日本自体が下り坂で、やれ不況、やれ災害。エマージェンシーの良い所は全てをそれのせいに出来ることで、悪い所は実際大半がそれのせいであることなんだ。皆同じ条件で成功してる奴もいるって言うけど、でも「エマージェンシーのなかった場合の俺」と比べられない限り、どうしたって納得がいかねぇ。

「親世代っつーか、ギリバブル組と価値観合う方が不思議だろ。」
「そうだなぁ。俺らがガキの頃から、既にキャラクターですら明日はもーっと楽しくなるよ、ね?って他人に確認取ってたもんな。」
「長岡お前、ロコちゃんのことなんだと思って見てたの?ハムスターに明日の希望を託す限界キッズじゃん。」
「そこまで言ってないわ。いやでも実際それだろ。」

真っ暗な中街灯の光だけで歩く。ちらほら明るくなっている家の窓もあるけれど、日の出前はやっぱり暗い。案外響く声と散々飲んだアルコールで、くだらない話にも意味がある気がしてきた。

「ま、どうせ俺らの就職バイトの延長だしさ。」
「それな。パートになるだけ。」
「同じよ結局。どうせグルグルするって。」
「なんか坂城が言うと、そのグルグルは滑車走らされてる感じがする。」
「アハ、ハムスターから離れろよ。」

車通りがほぼ無い中を、向こうからガーッとトラックが近づいてきた。さん、にー、いち。横を走り抜けていく。

「……いうて、明日トラックに轢かれるかもしれないし。」
「貴方のその、胸~の~な~か~?」
「いやそれは轢かれても元気なやつね。」

無駄に美声な長岡の返しに、ポッケに手を突っ込んだまま軽く体当たりする。当たり返してきた感じが、ちょっと高校の頃の帰り道みたいだ。

「だからねー、もう毎日金と時間無駄にして、やりてぇなーってことして、刹那主義に生きていくのが関の山よ。長生きすればしたで考えれば良くない?最後はみんな全部忘れて子供に戻るんだし。」

あまりにも先が見えない。来年どころか来月の世界も分かんない。明日の俺もぶっちゃけ分かんない。ぐるぐるの安心感は無いのに、季節行事が来る度ぐるぐるの消失感がやってくる。

だから、結局今日の俺をハッピーにするしかないのだ。

「じゃー、坂城!コンビニで雪見だいふく買って帰ろ!こたつでアイス食べたいから擬似コタツ作ろうぜ。」
「三秒で時間と金の無駄遣いの実践に走ってて草。やろうやろう、あの小さいテーブルに毛布被せようぜ。」
「アッヒ、いいじゃん。それっぽいそれっぽい。」

考える元気があるときに難しいことは考えりゃいい。とりあえずは遠い未来のことより、今日のアイスのことの方が重要。

高台が近い。神社に寄り道したせいか、空が白み始めてきた。

「やっべ見逃す!」
「走れ走れ!」
「アッヒェア、あの朝日に向かって!?」
「あははは、そうそうそう、」
「はえーよ哲学科!」
「存在と時間の分厚さなめんなよ!おら走れ仏文!」

高台の階段を駆け上がる。目を光が焼いて慌てて目を細める。

サヨナラ、クソッタレな去年。
ハロー、きっとロクでもない新年。

せめてもマシな一年になるよう努めるから、好きに生きさせてくれよな。





参考:
歌 KICK BACK 歌詞
アニメ とっとこハム太郎 台詞
本 存在と時間 分厚さ(?)
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