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「何故ルビーは会ってくれない?!」

 救貧院の帰りに用事があったルビーは別の場所に向かって分かれて帰宅することになっていた。僕は先に男爵家に帰ることにしたが、ロランジュが先に来ていたみたいだ。他の貴族にもルビーが不合格したことが話題になっている。自分の娘が合格してルビーが落ちたことに対して疑問に思っている人間は少なくない。

 ロランジュはルビーが頭がいい事は知っている。今更何をしに来たのだろう。お前の記憶何て、とうの昔に消えてなくなっていた。ルビーの記憶を覗いてみたけれどどうでもいい存在になっていた。

「男爵、ルビーが学校に通わないなら私の領地に来てくれないだろうか」

「いえいえ、娘は学校に合わないので通わないだけです。辺境伯の領地は機会があればお伺いいたします。せっかくいらっしゃったのですから、お茶でもいかがですか?」

「男爵、このままでは誰もルビーと結婚してくれませんよ」

 男爵は豪快に笑って口に手を当てるとロランジュは疑問を抱いた顔をした。むふーと息を吐いた男爵は艶のある髪の毛をすっと撫でたがロランジュは気がつかない。ルビーが育毛剤や領地の特産品の開発者だと。

「たった一人の大切な娘は結婚しなくても構いません。もしかしたらいるかもしれませんよ。婿養子になってくれて、ルビーを認めてくれる人間が。可愛らしい孫を与えてくれてくれる夫が、ね」

 僕は隠密で姿を隠していたのに目が合ってしまった。やはり戦場の諜報員をしていた男爵には何もかもがバレている。王の専属護衛部隊であり諜報員の梟は一部の者しか存在は知られていない。従者がロランジュを呼び彼は帰ることになった。男爵夫妻が怒って使用人は夫人に同情していた。

「あれほどルビーの好意を無視しておきながら今さら何をしに来たのだ!」

「あれよ。王都に行ったルビーがたまたま会ったと言っていたから、可愛いから声をかけに来たんじゃない。王都に行ったら会う機会が増えるから堕とそうとしたのよ。ルビーは学校に落ちたから意味がなくなったけれど。ふふっ」

「そうです。ルビー様は学校に相応しくありません。早く赤ちゃん抱っこしたいです。何人でも抱っこしたいから薪を抱っこして体を鍛えています。ふんっ!」

 メイドが力を入れると服が少し破けて筋肉ムキムキの体型になった。吹っ飛んだボタンが裏口から侵入しようとしていた泥棒の額に当たって腰を抜かしていた。

「ん、なんだ」

 料理長がゴミ捨て場に泥棒を置くと森から黒い影がやってきて泥棒を飲み込んでいった。

 男爵家は不合格通知のおかげで、お茶会を呼ばれなくなり暇なので領地改革を進めることにした。
 公爵家で学んだ知識を与えると男爵は夫人と一緒に勉強をして

「年をとっても学ぶものがある」

 と二人で勉学に励んでいる。夫人は5か国語話せて書くことが出来るが役に立てる機会がなく燻っていた。他国の小説の抄訳を頼まれたことにして任せてみると分からない文章は辞書を引きながら抄訳をきちんと出来ていた。

 ルビーには他国の交尾の仕方を抄訳してもらうことにした。体勢が分からないと質問してきたので、夜のベッドで実践することになった。お互いの性器を擦り合わせて腰だけで挿入を繰り返すのだが、すぐに達してしまい、くてんくてんになっていた。

 絵にした方が早いとルビーが言っていたから描かせてみたところ上手に描けていた。

 引き出しに入れておいたところなくなってしまい、王都の裏通りで高額で販売されていた。犯人は蛇の子供だった。

『王都の娼婦蛇に騙されて大金を支払わないと脱皮沢山しないといけないって言われて。怖かったんだよぉ』

『馬鹿!中出ししたんだから責任取ってきなさい!ルビーの前で交尾して発情させなさい。』

 5歳になった蛇は今日も玄関前で交尾をしてルビーを驚かしている。ルビーと僕は男爵家の両親公認の婚約者になった。僕は指輪を投げた時のことを謝って、あの時の指輪を差し出した。ルビーも同じものを持っていたみたいだ。
 もう大人になって指輪のサイズが合わなくなってしまった。新しいものを作ろうかと聞くと

「妊娠したらむくむからどうしようかなって思ってる。早く欲しいなぁ。若いママっていいと思わない」

「とてもいいと思うよ。指輪も沢山作ろう」

「そうね、10本もあるから沢山作ってね」

 僕たちは笑ってベッドに入った。ルビーが好きで堪らない。

 ***

 孤児院で芋ほりをしている時、シスターたちは嘆いていた。
 貴族学校で10年前と同じ婚約破棄騒動が起きたからだ。
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