本日をもって、魔術師団長の射精係を退職するになりました。ここでの経験や学んだことを大切にしながら、今後も頑張っていきたいと考えております。

シェルビビ

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 前世では適当な相手と寝て、処女のしがらみから開放された。処女であることが恥ずかしかった訳じゃない。
 ただ、周りの人達が当たり前のように抱かれていることを知り、マッチングアプリで出会った人とやっただけだ。

 抱かれた後に後悔してことを覚えている。無駄なことに時間をかけ、妊娠しないために緊急避妊薬を飲んだ。別に体調が悪くなった訳じゃない。訳が分からない罪悪感で苛まれただけだ。

 射精師で処女だなんて、バランスが悪い。

 私はユニスとして、きちんと仕事ができるのだろうか。ため息をつくと、不安に駆られる。

「明日から本気で射精させられるの?」

 射精師として、仕事に向き合わないといけない。

 ***

 次の日、退院の準備をして久しぶりに外に出た。普通の景色なのに初めて見たように感じる。荷物が何もないから身軽で、ただ歩いているだけで楽しい。

 宿舎に戻るための帰り道は知っている。綺麗に咲いている花が綺麗で見惚れていると、背後から声を掛けられた。

「どうして、ひとりで歩いているんだ」

 走ってきたのか汗を掻いているイースをみて、申し訳ない気持ちになる。誰かに迷惑をかけるのは好きじゃない。でも、帰る時に誰も呼び止めなかったから、一人で帰ってもいいと思っていた事が事実だ。

「ひとりで帰ったらいけないの?」
「射精師は誘拐されやすい。特にお前は可愛いから、すぐに孕ませられる事になるだろう」
「孕ませられる……」

 卑猥な言葉を当たり前に口に出され、顔が赤くなると声を掛けられる。

「大丈夫か?」
「ごめんなさい。もうひとりで歩きません。でも、外に出る時に誰に声を掛けたらいいんだろう」

 時間が合わないから、一緒にいられる人もいない。悩んでいると腰を掴まれて、イースの胸に顔が埋もれた。

「私がいるだろう」

 胸に挟まれて何も言えない。魔術師の癖に筋肉質で胸筋が大きなイースは、いつも目立っていた。心臓の音が早くて、それにいい匂いがする。頭がくらくらして、ボーっとする。下半身もグリグリ当てられて形が分かってしまう。

「決まりだな。外に出る時は知らせなくてもいい」
「どうやって分かるの?」
「王宮魔術師なら当たり前に出来る事だ」
「凄い、凄いね」

(あ、この勢いなら多分出来そう)

 心の奥底から湧き上がる射精師としてのやる気、今なら秒で精液を出させる自信がある。腰を抱いていた両手を下半身に近づけて、触れようとした時に手を抑えられた。

「外ではダメだ」
「え」
「射精師として仕事熱心な事は分かるが、ここで射精をしたら生態系に影響を与える。逃げ出した魔獣が街に向かい、人々を襲うかもしれない」
「ごめんなさい」

 何度目かの謝罪をすると、呆れたようにため息を吐いていた。その瞬間、前世の沢山の呆れられた出来事を思い出して嫌な気分になる。

 こうして私達は一緒に帰った。宿舎に帰ると射精師たちが出迎えてくれた。皆を呆れさせないように、一生懸命仕事をしないと――。そう思っていたのに。

「まるで、おちんちんに触れたことがない手つきだな」

 退院して初出勤で射精させられない大失態を犯してしまう。
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