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「先生、ユニスが目を覚ましました」
ベッドの近くにいた人が先生を呼びに行くと、後ろ姿をみつめた。息を吐くと、再びベッドで仰向けになる。私は夢を見ていた。こことは違う世界に、普通の女性として生きていた頃の夢だ。
「ユニス、ああ大丈夫か?」
「シコル先生、どうしてここに」
「制限魔法を解除して倒れたと聞いて、山奥から急いできたんだ。よかった、生きていて本当に良かった」
射精師師範代シコル先生は安堵して椅子に腰かけると、何があったのか説明してくれた。制限解除をして射精を終わらせた私は、深い眠りについてしまった。男の甘い叫び声が聞こえ、急いでやってきた人たちは私達の姿に驚いていた。
あの日、防犯訓練をする事を言い忘れていた所長は、魔術師団員と一緒に歩いていた。時間にルーズな魔術師たちは、防犯訓練を真面目にした事がなかった。
それなのに、今年は何故か魔術師団長と副団長が、射精師に囲まれて追い打ちをかけられていたのだ。副団長はメス顔をし射精師に前立腺を弄られ、団長は気持ちが良さそうに眠っている。そして、団長の腕枕で私が眠っていた。
「3Pにしては奇妙な構図で、聞いたところ襲おうとした魔術師を撃退したらしいな。実に素晴らしい。制限魔法を外してやったから、これからは無限に使う事が出来る」
「師匠、ありがとうございます」
頭を撫でられるとシコル先生は、山奥に戻ると帰っていく。彼はユニスの記憶の中で、誰よりも射精師として訓練を重ねていた。全てを見透かすような眼差しは、もしかしたら私についてもう知っているのかもしれない。
入れ替わりで入ってきたのは、魔術師団長のイースだ。黒髪の美しい青年で年齢は30歳。目の色は深い青色で、切れ長の一重。何処か冷たい雰囲気があり、近づきがたいらしい。
「……」
「……」
お互いお喋りなタイプじゃない為、無言になってしまう。どうしてここに来たのか分からないが、私は喋る事が何一つない。
「食事を用意いたしました。食後に薬を飲んでくださいね」
「はい」
ベッドに置かれたテーブルの上に配膳されると、全身筋肉痛で身体が軋む。
「うっ……」
思わず呻いてしまうと、団長が身体を支えてくれる。腕に胸が当たってしまい、身体を引こうとすると肩に手が当たった。
「まだ、本調子じゃないのだから無理をするな。私の魔力を全身で浴びたのだから、生きている事が不思議なくらいだ」
「えっ……」
「そんな顔をするな。あの時、本気で殺されると思ったから、魔力を全部放出してしまった。魔獣討伐でも滅多に使わない技を無傷で生還できるなんて、余程優秀な人間なのだな」
「ただの平民に部相応な言葉ですよ」
「ユニスには相応しい言葉だ」
髪の毛を一束持ちキスを落とされると、その行為にハッキリと虫唾が走る。視線が絡むと甘く蕩けるように眦を下げ、熱が籠っていた。
(あ、これ。やっぱり)
首を振って食事を食べ始めると、餌付けのように口に運んでくれる。甘い。行動や仕草が全て甘く感じて、むず痒い。そして、比例するように心が冷めていく。
体調が悪いと嘘をつき、部屋から追い出すとベッドに横になって思い出していた。
前世の私は冷めた性格の女性だった。恋愛事には特に冷めていて、一切興味がなかった。どうして人が人を好きになるのか理解出来ず、自分に好意を抱いている人間が大嫌いで仕方がなかった。
愛する者は必ず愛の対価を求める。何度もおかしいと言われたけれど、多数決で常識が決まっている世界では、自分を偽るしかなかった。
無表情だと冷たいとか、何を考えているのか分からないと悪口を言われる。
だから、表情を作って頑張って普通になろうとした。
興味のない流行も皆が出来る事も、出来ないといけないから練習をする。
人との集まりが嫌いだけれど、定期的に集まってあげた。
小さい時から、普通になるために繰り返し、親からおかしいと言われる前に対処した。勉強は出来る方だったので研究職に進み、年収を上げて人と最小限の関わりしか持たないようにしていた。
親にも兄弟たちにも興味がない。正直一緒にいても楽しいと思った事なんてなかった。高熱で苦しんでいる時に、やっと人生が終わって解放されると安堵したくらいだ。本当につまらない人生で、生まれ変わるなら微生物で良かったのに。
なんで人間に生まれ変わったんだろう。
しかも、射精師って人間に関わっている仕事に就いている。
悲しみに暮れ、涙が頬を伝う。大体、射精師って何なの?
目を閉じると思い浮かぶのは、おちんちんばかり。
前世、研究職。
今世、射精師って一部に特化し過ぎている。
「おちんちん、おちんちん、ぐすん、何で思い出すのおちんちんばかりなの。もう、ちんちんなんて大嫌いで大好きだ」
今の記憶と前世の記憶が混ざり、頭が痛くなってくる。二日酔いみたいに頭がまわって、変になる。急いでやってきた看護師が魔法をかけてくれて、泣きながら何かを叫んでいた。ゆっくり目を閉じると酔いから解放されて、ゆっくり眠りにつく。
ベッドの近くにいた人が先生を呼びに行くと、後ろ姿をみつめた。息を吐くと、再びベッドで仰向けになる。私は夢を見ていた。こことは違う世界に、普通の女性として生きていた頃の夢だ。
「ユニス、ああ大丈夫か?」
「シコル先生、どうしてここに」
「制限魔法を解除して倒れたと聞いて、山奥から急いできたんだ。よかった、生きていて本当に良かった」
射精師師範代シコル先生は安堵して椅子に腰かけると、何があったのか説明してくれた。制限解除をして射精を終わらせた私は、深い眠りについてしまった。男の甘い叫び声が聞こえ、急いでやってきた人たちは私達の姿に驚いていた。
あの日、防犯訓練をする事を言い忘れていた所長は、魔術師団員と一緒に歩いていた。時間にルーズな魔術師たちは、防犯訓練を真面目にした事がなかった。
それなのに、今年は何故か魔術師団長と副団長が、射精師に囲まれて追い打ちをかけられていたのだ。副団長はメス顔をし射精師に前立腺を弄られ、団長は気持ちが良さそうに眠っている。そして、団長の腕枕で私が眠っていた。
「3Pにしては奇妙な構図で、聞いたところ襲おうとした魔術師を撃退したらしいな。実に素晴らしい。制限魔法を外してやったから、これからは無限に使う事が出来る」
「師匠、ありがとうございます」
頭を撫でられるとシコル先生は、山奥に戻ると帰っていく。彼はユニスの記憶の中で、誰よりも射精師として訓練を重ねていた。全てを見透かすような眼差しは、もしかしたら私についてもう知っているのかもしれない。
入れ替わりで入ってきたのは、魔術師団長のイースだ。黒髪の美しい青年で年齢は30歳。目の色は深い青色で、切れ長の一重。何処か冷たい雰囲気があり、近づきがたいらしい。
「……」
「……」
お互いお喋りなタイプじゃない為、無言になってしまう。どうしてここに来たのか分からないが、私は喋る事が何一つない。
「食事を用意いたしました。食後に薬を飲んでくださいね」
「はい」
ベッドに置かれたテーブルの上に配膳されると、全身筋肉痛で身体が軋む。
「うっ……」
思わず呻いてしまうと、団長が身体を支えてくれる。腕に胸が当たってしまい、身体を引こうとすると肩に手が当たった。
「まだ、本調子じゃないのだから無理をするな。私の魔力を全身で浴びたのだから、生きている事が不思議なくらいだ」
「えっ……」
「そんな顔をするな。あの時、本気で殺されると思ったから、魔力を全部放出してしまった。魔獣討伐でも滅多に使わない技を無傷で生還できるなんて、余程優秀な人間なのだな」
「ただの平民に部相応な言葉ですよ」
「ユニスには相応しい言葉だ」
髪の毛を一束持ちキスを落とされると、その行為にハッキリと虫唾が走る。視線が絡むと甘く蕩けるように眦を下げ、熱が籠っていた。
(あ、これ。やっぱり)
首を振って食事を食べ始めると、餌付けのように口に運んでくれる。甘い。行動や仕草が全て甘く感じて、むず痒い。そして、比例するように心が冷めていく。
体調が悪いと嘘をつき、部屋から追い出すとベッドに横になって思い出していた。
前世の私は冷めた性格の女性だった。恋愛事には特に冷めていて、一切興味がなかった。どうして人が人を好きになるのか理解出来ず、自分に好意を抱いている人間が大嫌いで仕方がなかった。
愛する者は必ず愛の対価を求める。何度もおかしいと言われたけれど、多数決で常識が決まっている世界では、自分を偽るしかなかった。
無表情だと冷たいとか、何を考えているのか分からないと悪口を言われる。
だから、表情を作って頑張って普通になろうとした。
興味のない流行も皆が出来る事も、出来ないといけないから練習をする。
人との集まりが嫌いだけれど、定期的に集まってあげた。
小さい時から、普通になるために繰り返し、親からおかしいと言われる前に対処した。勉強は出来る方だったので研究職に進み、年収を上げて人と最小限の関わりしか持たないようにしていた。
親にも兄弟たちにも興味がない。正直一緒にいても楽しいと思った事なんてなかった。高熱で苦しんでいる時に、やっと人生が終わって解放されると安堵したくらいだ。本当につまらない人生で、生まれ変わるなら微生物で良かったのに。
なんで人間に生まれ変わったんだろう。
しかも、射精師って人間に関わっている仕事に就いている。
悲しみに暮れ、涙が頬を伝う。大体、射精師って何なの?
目を閉じると思い浮かぶのは、おちんちんばかり。
前世、研究職。
今世、射精師って一部に特化し過ぎている。
「おちんちん、おちんちん、ぐすん、何で思い出すのおちんちんばかりなの。もう、ちんちんなんて大嫌いで大好きだ」
今の記憶と前世の記憶が混ざり、頭が痛くなってくる。二日酔いみたいに頭がまわって、変になる。急いでやってきた看護師が魔法をかけてくれて、泣きながら何かを叫んでいた。ゆっくり目を閉じると酔いから解放されて、ゆっくり眠りにつく。
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