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6.5 黒歴史
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セシリアと出会って拭えなかった違和感。2度目の人生が初めてだから、彼女を見逃してあげたい。
誰だって最初から上手くいくはずがない。彼女は私よりも幸せだったはずだ。
侯爵家の夫妻は娘を美しく着飾らせ自由にさせていた。ラシエルに執着しなければ、彼女は視野が広く前向きに行動できる。友達に囲まれて楽しそうに話しているところを何度も見て羨ましいと思っていた。
「他に夢中になれるものがなかったのが無かったのかな」
独り言を呟いて、昔の自分を思い出した。誰かに気に入られたくて、「大好き」を多用していた物知らずの伯爵令嬢。
完全な黒歴史だ。
「リーファ様は素直ですね」
この言葉の中に、愛されたくて馬鹿みたいだが含まれていた。子供ならいいが、小さいうちだけだ。人前で好きを多用するのは、媚びているのだ。
人に好意をすぐに伝えなければ、すぐにひとりぼっちの惨めな伯爵令嬢に戻りそうで怖かった。
服装も周囲に合わせて、足並みを揃える。権力者が寵愛する妻に逆らえる人なんていない。
素直にラシエルに報告するから向こうもやりずらかっただろう。
メルことメルニー・モレの件が話題になっている今、お茶会があり参加することにした。セシリアと極力会いたくない。
もしも会った時に同じドレスとか笑えない。場が凍りつくに決まっている。
絶対に選ばないようなドレスを選んで会場に向かうと男性たちも集まっていた。女性だけのお茶会だと思っていたが、直前になってガーデンパーティに変更したのだ。
有り得ない。連絡が来なかったのは、優先順位が低い証拠だ。ここと取引をしないと心に決めて頃合いを見て帰ることにした。
会場の中心にセシリアと主催者が集まっていて挨拶をする。思わず口を抑えて扇子で表情を隠した。
キツイ顔立ちにカントリー風のダサい野暮ったいドレス。イメージは草原で走る少女だろう。自分の黒歴史を目の前で再現されて、今すぐベッドで転がりたい気持ちを抑える。
私は16歳で彼女は19歳。似合っていない服装に苦笑いするしかない。田舎から出てきた流行おくれの令嬢なら分かるけれど、彼女は生粋の貴族で流行の物を着た方がいい。誰か、おかしい服だって注意しなさいよ。
「ごきげんよう、アンヘル様」
「やぁ、よく来たね。君のこと待っていたよ。クロッカス嬢が挨拶をしたいそうだ」
とことこやってきたセシリアが目の前にいる。目つきの悪さは変えられない。私の事が大嫌いなセシリアは、今の私をどうみているのだろうか。セシリアはボリュームのあるドレスが好きで、身体のラインが出るドレスは着なかった。今の野暮ったいドレスは無理をして服を着ているのだろうか。地味でダサいドレスをこれから先も着ると思うと少し不憫だと思った。
私たちはこの時やっと初めて正面で向かい合って挨拶をした。
「クロッカス侯爵家のセシリアと申します」
「お初お目にかかります。ブルーム伯爵家のリーファと申します」
早くこの場を立ち去りたい。セシリア様は薄い茶色の髪の毛を腰まで伸ばし、鋭い青い瞳を垂れ目にお化粧していた。
今の彼女に婚約者はいない。
以前は元がいいからモテていたが以前は男に奔放してて、男性ウケが悪かった。
今は違う意味で危ない女性だ。幼児が着そうな服装をしている。彼女と会話が盛り上がる事はなく、私達はすぐに離れた。
セシリアの取り巻きになりたい女性が声をかけていた。特注で作らせたダサいドレスが気になっている。すごいセンスだ。お金出して田舎者になりたいのだろうか。
「私もセシリアお姉さまのようになりたいのです」
いや、向こうは王妃を輩出した名家です。お姉さま呼びはちょっと失礼では無いのかな。
「お姉さま。私はひとりっこだから嬉しいわ。ありがとう、エミリア大好きよ」
本人は気にしていないようだ。自分がやってきたことを再現されると心にダメージを負う。
ここは私と違うとハッキリしたことがある。私を「妹にしたい」や「姉にしたい」と冗談で言う人がいたけれど、姉はクズだったから要らないし妹は必要だと思ったことがないため首を振っていた。
セシリアはこれから先どうなるのだろうか。自分を隠して生きて楽しいのかな。ため息をつきたい気持ちを隠して、必要な人に声を掛けて会場を後にした。
全部過去の自分を思い出す行動だ。
今すぐおうちに帰りたい。
すれ違うようにラシエルの馬車が会場を目指していた。セシリアを心配しているのだろう。仲が良い事で何よりだ。
誰だって最初から上手くいくはずがない。彼女は私よりも幸せだったはずだ。
侯爵家の夫妻は娘を美しく着飾らせ自由にさせていた。ラシエルに執着しなければ、彼女は視野が広く前向きに行動できる。友達に囲まれて楽しそうに話しているところを何度も見て羨ましいと思っていた。
「他に夢中になれるものがなかったのが無かったのかな」
独り言を呟いて、昔の自分を思い出した。誰かに気に入られたくて、「大好き」を多用していた物知らずの伯爵令嬢。
完全な黒歴史だ。
「リーファ様は素直ですね」
この言葉の中に、愛されたくて馬鹿みたいだが含まれていた。子供ならいいが、小さいうちだけだ。人前で好きを多用するのは、媚びているのだ。
人に好意をすぐに伝えなければ、すぐにひとりぼっちの惨めな伯爵令嬢に戻りそうで怖かった。
服装も周囲に合わせて、足並みを揃える。権力者が寵愛する妻に逆らえる人なんていない。
素直にラシエルに報告するから向こうもやりずらかっただろう。
メルことメルニー・モレの件が話題になっている今、お茶会があり参加することにした。セシリアと極力会いたくない。
もしも会った時に同じドレスとか笑えない。場が凍りつくに決まっている。
絶対に選ばないようなドレスを選んで会場に向かうと男性たちも集まっていた。女性だけのお茶会だと思っていたが、直前になってガーデンパーティに変更したのだ。
有り得ない。連絡が来なかったのは、優先順位が低い証拠だ。ここと取引をしないと心に決めて頃合いを見て帰ることにした。
会場の中心にセシリアと主催者が集まっていて挨拶をする。思わず口を抑えて扇子で表情を隠した。
キツイ顔立ちにカントリー風のダサい野暮ったいドレス。イメージは草原で走る少女だろう。自分の黒歴史を目の前で再現されて、今すぐベッドで転がりたい気持ちを抑える。
私は16歳で彼女は19歳。似合っていない服装に苦笑いするしかない。田舎から出てきた流行おくれの令嬢なら分かるけれど、彼女は生粋の貴族で流行の物を着た方がいい。誰か、おかしい服だって注意しなさいよ。
「ごきげんよう、アンヘル様」
「やぁ、よく来たね。君のこと待っていたよ。クロッカス嬢が挨拶をしたいそうだ」
とことこやってきたセシリアが目の前にいる。目つきの悪さは変えられない。私の事が大嫌いなセシリアは、今の私をどうみているのだろうか。セシリアはボリュームのあるドレスが好きで、身体のラインが出るドレスは着なかった。今の野暮ったいドレスは無理をして服を着ているのだろうか。地味でダサいドレスをこれから先も着ると思うと少し不憫だと思った。
私たちはこの時やっと初めて正面で向かい合って挨拶をした。
「クロッカス侯爵家のセシリアと申します」
「お初お目にかかります。ブルーム伯爵家のリーファと申します」
早くこの場を立ち去りたい。セシリア様は薄い茶色の髪の毛を腰まで伸ばし、鋭い青い瞳を垂れ目にお化粧していた。
今の彼女に婚約者はいない。
以前は元がいいからモテていたが以前は男に奔放してて、男性ウケが悪かった。
今は違う意味で危ない女性だ。幼児が着そうな服装をしている。彼女と会話が盛り上がる事はなく、私達はすぐに離れた。
セシリアの取り巻きになりたい女性が声をかけていた。特注で作らせたダサいドレスが気になっている。すごいセンスだ。お金出して田舎者になりたいのだろうか。
「私もセシリアお姉さまのようになりたいのです」
いや、向こうは王妃を輩出した名家です。お姉さま呼びはちょっと失礼では無いのかな。
「お姉さま。私はひとりっこだから嬉しいわ。ありがとう、エミリア大好きよ」
本人は気にしていないようだ。自分がやってきたことを再現されると心にダメージを負う。
ここは私と違うとハッキリしたことがある。私を「妹にしたい」や「姉にしたい」と冗談で言う人がいたけれど、姉はクズだったから要らないし妹は必要だと思ったことがないため首を振っていた。
セシリアはこれから先どうなるのだろうか。自分を隠して生きて楽しいのかな。ため息をつきたい気持ちを隠して、必要な人に声を掛けて会場を後にした。
全部過去の自分を思い出す行動だ。
今すぐおうちに帰りたい。
すれ違うようにラシエルの馬車が会場を目指していた。セシリアを心配しているのだろう。仲が良い事で何よりだ。
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