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13.メル・クイード

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 クイード伯爵家は名門貴族であり、私の実家のブルーム家と違い地位も名誉も財産もある。
 あらゆるところを比較しても雲泥の差だった。

 前の世界でメルと出会ったのは、とある貴族の夜会で腕輪に刻印の入った彫金を拾ったことから始まった。とても綺麗に出来ていた腕輪はメルの腕に合わずに落としてしまったらしい。

 あまりにも上手く出来ていて工房を教えて貰おうと思ったら、彼女が作った物だった。クイード伯爵家に招待をされて、彼女の部屋に入ると沢山の物が置かれていた。未完成の作品が沢山あり、その中で最近完成した腕輪を貰う事になった。

 気に入って毎日つけて、たまに会って調整してもらう。
 まさか、腕輪に盗聴器を着けられていたとは知らなかった。巧妙に仕掛けられた魔道具は公爵家で見つける事が出来ず、私は犯罪の片棒を担がされていた。

 それだけではない。メルに夫婦間の悩みを相談し、セシリアに筒抜けになっていた。
 あの時の私達は隙だらけの夫婦で、悪意によってこんな目になるとは知りもしなかった。

 生まれ変わってから彼女と接して来なかったのは、また以前と同じように利用されるのが怖かった。優しい顔をして、利用されると考えるとあの頃を思い出して震えが止まらない。

 でも、今の彼女をみたらそんな気持ちが何処かに飛んでしまった。
 心の何処かで不幸になって欲しいと願っていた。

 今、目の前に不幸になったメルを見てもスカッとするどころか唖然としている私がいる。性格が良くて大らかと言われて来たけれど、本来の私は気が強くて恨みがましい人間だ。

 彼女の事も頭の中で仕返しを考えていたこともある。悔しくて悲しくて何度も不幸せになる事を願っていた。
 現実になると思っていたよりもダメージが大きかった。

「これを、わたしに? 貴方の名前はフラジールって名前なのね。ジール様と呼べばいいのね。どうぞ、中に入って」

 ドアが閉まり部屋の中に入っていく二人を追いかけ、透視魔法で部屋の中を覗いた。食事を分けたメルが細くなった指で少しだけ食べるとベッドで横になった。ジーク様がベッドに乗るとお腹に頭を当てて目を閉じる。

「お腹の子の友達になってね。死にたい時に、神様は意地悪をするのね。子供が出来たなんて信じられないわ。こうして貴方に出会えたのだから生きていてよかった」

「ぶー」

「誰の子供か全く分からないのよ。でもとても幸せなのよ」

 2人のやり取りを静かに聞いて、部屋からジール様が出てくるまで待っていた。

「待たせたな」

 無言で私達は公爵邸まで向かった。

 ♢♢♢

 馬車に乗った私達はジール様の話に耳を傾けていた。いつもよりゆっくり馬車は進んでいる。

 メルが伯爵家から追い出された後はとても不幸になっていた。何処に行っても誰も雇ってくれず助けれくれず、お金がなかった彼女は身に着けていた物を売って生活を送っていた。

 いよいよ売る物がなくなると何とか見つけた仕事をして暮らしていた。

「彼女、聞いた話だと手先が器用じゃない。お針子や何か出来なかったの?」

「指先が潰されていて、細かい仕事が出来なくなっているのさ」

 頭の中で前の世界のメルがちらついている。彼女は前の世界で好きでもない高齢の男性と結婚をした。子供は出来たのは今の時期で間違いはない。

 屋敷に帰ると一人きりになりたくて、察してくれたラシエルが違う部屋で一晩過ごすことになった。

『彼と結婚出来て幸せだわ。伯爵家にいる時よりもずっと自由なのよ』

『あんなに優しそうな家族なのに、どうして?』

『……そう思われているなんて光栄です』

 過去の私は知らないうちにメルを追い詰めていたの。あの幸福な世界の中で、私は知らないうちに不幸だったころの私を忘れてしまった。
 彼女に支えられていた過去のは変わらない。

 今だって彼女と関わる事が怖い。

 だからと助けない選択肢を選ぶのは間違っている。このまま見捨てたら、それこそセシリア・・・・みたいになってしまう。

 ラシエルに相談し、私は陰ながらメルの支援を始めた。
 まず初めに彼女の指先を元に戻すために、偶然居合わせた神官に手の治療をさせることにした。「酷い状態」だと首を左右に振り、なんとか元通り治療が終わった。

 ジール様は甲斐甲斐しく彼女の元に通い、食べ物を持ったバスケットとお金を渡す。

 ――今度はメルを救う事が出来たのかな。

 ため息をついてベッドで横になるとラシエルが側にやってきた。

「最近構ってくれないから、溜まってしまって」

 手を膨らみに誘導されて、口角が上がった。
 パンパンに溜まって切ない表情をしたラシエルがいる。下だけお互いに服を脱いで手に潤滑油をつけるてマッサージをしながら質問をする。

「そういえば、聞いてなかったのだけれど中って気持ちがいいの?詳しく聞きたいどんな感じなの?」

「入り口が窄まっていて入りにくいのに、中に入ると襞が絡んで子宮口を突くと絞り取られてしまうのです。先端捏ねないでください。ん、気持ちがよくて思い出しただけで出そうです。リーファ、リーファ」

「自慰はしてる?」

「してません。あれから中に出すことしか出来なくて、切ないのです」

「ラシエルは自覚してないよね。エッチの時に敬語になっておねだりする癖があるの」

 ビックンと陰茎が揺れ、驚いてラシエルが体を起こして両手で顔を覆っている。完全に勃起した逸物を中に入れる。まだ慣れていないから、少し突っかかり中に入れるとミチミチと肉壁をこじ開けられる。両手をベッドに下して腰を揺すり始めるとすすり泣く声が聞こえる。

「ちんちんは大きくて格好いいのに、何で泣いているの?」

「リーファに襲われている夢みたいです。嫌われているのに、変態だって距離を取られているのに」

 身体も疑問に思ったのか、全体的に強張ると勘違いした逸物がびくっと震えて萎え始めた。ラシエルの筋肉質な胸を揉みしだき、敏感な先端をちゅうちゅう赤ちゃんのように吸った。また硬く猛っている股間が前と違って自信を無くしている。お互いに気持ちよくなりたくて、腰を律動させると情けない声をラシエルは漏らしていた。

「最初に出会った時から最悪だったわ。次に会ったら下着を盗まれそうになって、部屋に入ろうと必死になっていた。その時のラシエルの顔は酷かったのよ。絶対に犯されるって、怖くて仕方がなかったわ。そんな情けない男の赤ちゃんを妊娠したいかですって、悔しい、このっ!」

 潤滑油を手に塗り、乳首をクリクリ弄り、指の腹で弾きおっぱいを弄る。切ないラシエルの声に手が止みそうになったが、やめてあげなかった。

「好きだ、大好きだ、リーファ。俺だけの女になってくれ」

 全く動いていないのに、ドクドクと子宮に暖かいぬくもりを感じてラシエルが何度も「好き」を繰り返している。『片思い完結系の厄介な童貞思考』以前のラシエルでは考えられない。

「ラシエルの赤ちゃんは私以外産める人がいないのに。赤ちゃん作るのに、なんで独りよがりなの。もっと自分に自信を持って、そうだ! 応援してあげる、頑張れ頑張れちんぽ!」

 前のラシエルもちんぽの応援が大好きで、これをやると小出しにしていた性欲を一気に爆発させていた。腰を揺すり始めるとやめて欲しいと止められた。

「きちんと俺を応援してください……」

「いいわよ」

 さっきからチラチラ胸を見ている。その視線が下心があってなんか嫌だった。

「私、おちんちんの事だけ愛しているから」

「え、俺は」

「愛が小さいから無理よ」

「ぐうう、快楽堕ちさせてやる」

「童貞臭いのよね。もう童貞じゃないのにそういうのが、ちょっと」

 顔がいいだけに、この人残念な人だ。近くにいるとムラムラしてラシエルにいっぱい抱かれた。
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