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記憶喪失と全裸の騎士団長
1.記憶喪失
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頭の痛さで目を覚ます。昨日は久しぶりの休日でお酒を飲んで飲んで飲みまくった。23連勤の居酒屋正社員をやっている私はどこの会社でも働くことが出来るだろう。
しかし不景気がそれを許してくれない。
突然流行ったマスクをしないといけない生活のせいで肌がボロボロになり色んな会社が倒産してしまった。うちの会社はまだいい方だと言われるたびに二の足を踏んでしまった。
「ディアナやっと目を覚ましたのですか?」
やたらいい声がしたのでそちらを向くと整った顔のイケメンが近づいてきた。おやおや、今日の夢はリアル感のある夢みたい。昨日酔ったテンションで買ったTL漫画のイケメン騎士団長みたいだ。
青みが入った黒髪にサファイアブルーの綺麗な瞳。鼻筋がスッとしてお人形みたいな顔つきをしている。……てか、睫毛が長くて声を出さなければ女性に似ている。
(ディアナって誰?――ああ、多分私の事?全く、最近の夢と来たら名前の設定も出来ないなんて)
月子って可愛い名前があるのだから呼んで欲しいのに。さて、24連勤の居酒屋正社員に戻るためにもうひと眠りしましょうか。残業代も出ないけれど、働かないといけないから。
ありがとうイケメン。
触れたら現実に戻りそうで怖かった。元の目の下の隈とシミ皺と美容院に行ってないからアホ毛だらけでイケメンに触れるとか無理!
♢
目を覚ましてもまだこの世界にいる。寝すぎたせいで頭が冴えきっていてお腹も空いている。朝日の光で目を覚ました。改めて見ても凄い部屋だ。白を基調としたアンティーク家具が綺麗に配置されて、綺麗な壁紙に大きな鏡台がある。ウサギの人形が飾られていてお嬢様の部屋っぽい。
鏡台に近づいて姿を確認すると自分の顔を見て驚いた。
シミ皺がない若々しい肌。目鼻立ちがスッとしていて小顔が愛らしい。漆黒の黒髪は綺麗な天然の巻き毛でブルーサファイアの瞳だ。
(おおっ、これは!胸の大きさも大きいし、腰も引き締まっていて男性にモテる見た目をしている。身長も高くて足も長い。何を着ても似合いそうな顔立ち。夢なら何をしてもいいよね。可愛い系の顔じゃなく、綺麗な顔立ち。もしかして流行の異世界転生ってやつ?!人生二回目ならやりたいことが沢山あるよ。どうやって死んだのか大体見当がつくから、今の人生で働きたくないで御座る)
新たな決意をしているとやってきたメイドが顔を洗う盥を持ってやってきた。今日から始めるお嬢様生活の第一歩。演じてみせますわ!おーほっほほほほほほっほほほ。
テーブルに置かれる盥を待っているとわざと服にかけられた。舌打ちをされてメイドが出ていくと水に濡れた私は部屋にあるタオルで身体を拭いて着やすい服に着替えた。
なんなの。さっきのメイド。
同じくらいの年齢で可愛い顔しているけれど醜悪な顔をしていた。
お嬢様生活を満喫するためにアイツは解雇しよう
家の中を歩き回って、さっきのメイドと顔を合わせたくなかった。ドアを開けてメイドを呼ぼうとした時だった。
「あいたっ」
大きな身体にぶつかってよろけると大きな手が身体を支えてくれる。大きな手は厚みがあって温かい。
「大丈夫ですか?ディアナ様」
(ふぉ、ふぉおおおおおお!!きた!さっきみたとんでもないイケメン。低音ボイスで子宮孕ませ系ボイスのせいで足腰に力が入らない。これ、夢だよね。最高だ!!この人の名前を思い出せないけれど少なからず好意はあるはず。神様!この人生最高です。ああ、生きていてよかった…………10年間居酒屋で働いていたから居酒屋の神様が転生させてくれたとか。それともエロ漫画の神様?どっちにしろ最高じゃない)
「…………」
「もう話してくれないのですか。そうだな…………」
大柄のワンコ系イケメンがしょんぼりしている。母性本能が掻き立てられる寂しそうな顔をしていたので正気に戻って話しかけることにした。
「申し訳ございません。私の記憶が戻っていないもので、あなたの名前も分からないのです」
前世居酒屋の正社員。謝ってから本題に入ることが得意だ。少なからず、これで正解のはずだと思いたい。ああ、それにしてもいい男だわ。年齢にしたら30歳くらい?肌が若いからもっと若いかもしれない。
黒の騎士服っぽい制服を着ているから騎士かも知れない。
「…………ディアナ……君と私が結婚を前提に付き合っていたことも忘れてしまったのですか?」
よくやった!ディアナ!!ああ、こんなに格好いい人と結婚を前提に付き合っていたとか最高じゃない。嬉しくて涙が出そう。あ、涙が出てる。ちょ、ちょっと待ってください。結婚を前提に付き合っていたって言っていたけれど、恋人同士キスをしたり、そういうことしているって事よね。もしかしてお腹の中に赤ちゃんいるかもしれないって事。嬉しい!お腹の中に赤ちゃんがもういるかもしれないんだ…………。だから、身体を支えてくれている。
「えっ私たちはそういう事は」
「思わず心の声が駄々洩れになってしまいました。え、あの、してないのですか。ああ、では婚約破棄」
筋肉質な身体で抱きしめられると鍛え上げられた胸筋でぎゅっと抱きしめられて呼吸が止まる。
「レイモンド・アッシュバルドです」
「アッシュバルド様ですか。ディアナ・アッシュバルドになるのですね。ところでどうして私は記憶喪失なのでしょうか。可愛い見た目のメイドも態度が悪いし、今朝頭から水をかけられいたので私は虐められているのでしょうか。それならお腹の赤ちゃんも殺されるのですか?や、やだ。お腹の赤ちゃん殺されるのは嫌」
お腹を守るように腕で包むと身体を支えていたレイモンド様が悲し気な表情を浮かべてこちらを見ている。んっ?この人私の結婚相手だよね。なんだか様子がおかしい。
呼吸も荒いし変態っぽい。お姫様抱っこしてベットに置いてくれたけれど背筋がゾッとする。じっと見つめると髪の毛が揺れて色気のある
「モーリカの事も覚えていないのか?君の専属メイドのはずだ」
「専属メイド?そういえば目が覚めた後に盥を持ってきたメイドに頭から水をかけられたのよ。金髪で赤い目をした女の人よ」
男は恐ろしい顔つきになると
「本当に?」
と聞いてきた。怒りで震えているのは前の記憶もあるせいだろう。
「あの子、やり慣れている感じだったわ!だって今分からないけれど武者震いしているわ。」
私の言葉に納得するとレイモンドは出て行った。
(ふぅ、とりあえずお嬢様生活の第一歩を踏み出せた。さて、これからどうしようかな。お父様とお母様の顔も思い出せないし、名前も分からないけれど、さっき見た感じだととても優しかったと思う。
しかし不景気がそれを許してくれない。
突然流行ったマスクをしないといけない生活のせいで肌がボロボロになり色んな会社が倒産してしまった。うちの会社はまだいい方だと言われるたびに二の足を踏んでしまった。
「ディアナやっと目を覚ましたのですか?」
やたらいい声がしたのでそちらを向くと整った顔のイケメンが近づいてきた。おやおや、今日の夢はリアル感のある夢みたい。昨日酔ったテンションで買ったTL漫画のイケメン騎士団長みたいだ。
青みが入った黒髪にサファイアブルーの綺麗な瞳。鼻筋がスッとしてお人形みたいな顔つきをしている。……てか、睫毛が長くて声を出さなければ女性に似ている。
(ディアナって誰?――ああ、多分私の事?全く、最近の夢と来たら名前の設定も出来ないなんて)
月子って可愛い名前があるのだから呼んで欲しいのに。さて、24連勤の居酒屋正社員に戻るためにもうひと眠りしましょうか。残業代も出ないけれど、働かないといけないから。
ありがとうイケメン。
触れたら現実に戻りそうで怖かった。元の目の下の隈とシミ皺と美容院に行ってないからアホ毛だらけでイケメンに触れるとか無理!
♢
目を覚ましてもまだこの世界にいる。寝すぎたせいで頭が冴えきっていてお腹も空いている。朝日の光で目を覚ました。改めて見ても凄い部屋だ。白を基調としたアンティーク家具が綺麗に配置されて、綺麗な壁紙に大きな鏡台がある。ウサギの人形が飾られていてお嬢様の部屋っぽい。
鏡台に近づいて姿を確認すると自分の顔を見て驚いた。
シミ皺がない若々しい肌。目鼻立ちがスッとしていて小顔が愛らしい。漆黒の黒髪は綺麗な天然の巻き毛でブルーサファイアの瞳だ。
(おおっ、これは!胸の大きさも大きいし、腰も引き締まっていて男性にモテる見た目をしている。身長も高くて足も長い。何を着ても似合いそうな顔立ち。夢なら何をしてもいいよね。可愛い系の顔じゃなく、綺麗な顔立ち。もしかして流行の異世界転生ってやつ?!人生二回目ならやりたいことが沢山あるよ。どうやって死んだのか大体見当がつくから、今の人生で働きたくないで御座る)
新たな決意をしているとやってきたメイドが顔を洗う盥を持ってやってきた。今日から始めるお嬢様生活の第一歩。演じてみせますわ!おーほっほほほほほほっほほほ。
テーブルに置かれる盥を待っているとわざと服にかけられた。舌打ちをされてメイドが出ていくと水に濡れた私は部屋にあるタオルで身体を拭いて着やすい服に着替えた。
なんなの。さっきのメイド。
同じくらいの年齢で可愛い顔しているけれど醜悪な顔をしていた。
お嬢様生活を満喫するためにアイツは解雇しよう
家の中を歩き回って、さっきのメイドと顔を合わせたくなかった。ドアを開けてメイドを呼ぼうとした時だった。
「あいたっ」
大きな身体にぶつかってよろけると大きな手が身体を支えてくれる。大きな手は厚みがあって温かい。
「大丈夫ですか?ディアナ様」
(ふぉ、ふぉおおおおおお!!きた!さっきみたとんでもないイケメン。低音ボイスで子宮孕ませ系ボイスのせいで足腰に力が入らない。これ、夢だよね。最高だ!!この人の名前を思い出せないけれど少なからず好意はあるはず。神様!この人生最高です。ああ、生きていてよかった…………10年間居酒屋で働いていたから居酒屋の神様が転生させてくれたとか。それともエロ漫画の神様?どっちにしろ最高じゃない)
「…………」
「もう話してくれないのですか。そうだな…………」
大柄のワンコ系イケメンがしょんぼりしている。母性本能が掻き立てられる寂しそうな顔をしていたので正気に戻って話しかけることにした。
「申し訳ございません。私の記憶が戻っていないもので、あなたの名前も分からないのです」
前世居酒屋の正社員。謝ってから本題に入ることが得意だ。少なからず、これで正解のはずだと思いたい。ああ、それにしてもいい男だわ。年齢にしたら30歳くらい?肌が若いからもっと若いかもしれない。
黒の騎士服っぽい制服を着ているから騎士かも知れない。
「…………ディアナ……君と私が結婚を前提に付き合っていたことも忘れてしまったのですか?」
よくやった!ディアナ!!ああ、こんなに格好いい人と結婚を前提に付き合っていたとか最高じゃない。嬉しくて涙が出そう。あ、涙が出てる。ちょ、ちょっと待ってください。結婚を前提に付き合っていたって言っていたけれど、恋人同士キスをしたり、そういうことしているって事よね。もしかしてお腹の中に赤ちゃんいるかもしれないって事。嬉しい!お腹の中に赤ちゃんがもういるかもしれないんだ…………。だから、身体を支えてくれている。
「えっ私たちはそういう事は」
「思わず心の声が駄々洩れになってしまいました。え、あの、してないのですか。ああ、では婚約破棄」
筋肉質な身体で抱きしめられると鍛え上げられた胸筋でぎゅっと抱きしめられて呼吸が止まる。
「レイモンド・アッシュバルドです」
「アッシュバルド様ですか。ディアナ・アッシュバルドになるのですね。ところでどうして私は記憶喪失なのでしょうか。可愛い見た目のメイドも態度が悪いし、今朝頭から水をかけられいたので私は虐められているのでしょうか。それならお腹の赤ちゃんも殺されるのですか?や、やだ。お腹の赤ちゃん殺されるのは嫌」
お腹を守るように腕で包むと身体を支えていたレイモンド様が悲し気な表情を浮かべてこちらを見ている。んっ?この人私の結婚相手だよね。なんだか様子がおかしい。
呼吸も荒いし変態っぽい。お姫様抱っこしてベットに置いてくれたけれど背筋がゾッとする。じっと見つめると髪の毛が揺れて色気のある
「モーリカの事も覚えていないのか?君の専属メイドのはずだ」
「専属メイド?そういえば目が覚めた後に盥を持ってきたメイドに頭から水をかけられたのよ。金髪で赤い目をした女の人よ」
男は恐ろしい顔つきになると
「本当に?」
と聞いてきた。怒りで震えているのは前の記憶もあるせいだろう。
「あの子、やり慣れている感じだったわ!だって今分からないけれど武者震いしているわ。」
私の言葉に納得するとレイモンドは出て行った。
(ふぅ、とりあえずお嬢様生活の第一歩を踏み出せた。さて、これからどうしようかな。お父様とお母様の顔も思い出せないし、名前も分からないけれど、さっき見た感じだととても優しかったと思う。
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