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自称薬師と全裸騎士団長

4 騎士団長は全裸

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 全裸に夢中で騎士団長の名前を聞く事を忘れてしまった。しかしどうでもいい。二度と会わない相手だから。
 アリエルはそう思っていたが、意外な事に再び騎士団長と再会してしまう。

 騎士団から解放された日は貯蔵庫から肉を取り出して、今まで小食で質素な物しか食べていない演技をしていた反動で沢山の食べ物をたくさん食べていた。

 干しブドウにチーズ、焼いたウサギ肉に野菜たっぷりスープ。買ってきた硬い黒パンにオリーブ油とニンニクに似たものを乗せてガッツリ食べた。異世界はニンニクの匂いが口に含むとすぐに消える。
 お腹いっぱいになるとお風呂に入って月明かりを見ながら眠る。

 いつも聞こえる声はテレビの音を聞くような感覚でBGMの変わりに聞く事にしている。毎日飽き足らず行為をしているのだから。

 騎士団長の楔は……多分XLサイズだ。入れてしまったらぶっ飛んじゃってよがってしまうものだと思う。

「どうして全裸でいるのかな、もしかして金属アレルギーなのかな……」

 アリエルは少しだけ考えて瞼が重くなり眠ることにした。

 ♢

 王都の城下町向かって歩いている最中、目の前からやってきた馬に道を譲ろうと思ったら乗っていたのは全裸の騎士団長だった。後ろに下がると路地裏な事を無視して隠れた。

(馬に乗る時も全裸何て痛くないのかな?)

 全裸を見て3回目だと気にしなくなってしまった。通り過ぎる姿を見送ると城下町を目指して一直線で歩いて行く。

「Hey!お嬢さん。金置いて行きな」

 後ろを振り返ると3人のチンパンジーみたいな男たちに囲まれていた。鼻の下が伸びていて、いやらしい気持ちで
いっぱいな事がすぐに分かった。

「ねえ、お兄さんたち。騎士団長って服着ているの?質問に正しく答えてくれたらお金は渡す」
「普通に騎士団長は服を着ているだろう。今日は私服で刺繍の入った詰襟の黒いスーツみたいな服さ。靴は革靴で黒色だ」
「目が悪いのか?薬師のところに行けばいいって今は閉まっているのか。隣国に転売できなくなって商売あがったりだわ」

 アリエルはお金を渡して裏路地から出ていくと城下町の市場を目指した。
 沢山の絵師たちが市場にいて似顔絵を販売していた。そこの一角に異常なほど騎士たちの姿絵を描いている人がいる。

「すいません。特注で依頼を受けられますか?」
「はい、どんな絵を希望でしょうか」

 眼鏡をかけた女性が手に握った鉛筆の動きを止めず口だけ動かして対応をする。描いているのは馬が走っている姿の絵だった。

「騎士団長が四つん這いになって目を閉じて情けなく射精をしている絵を描いてください」
「ん、なにそれ」

 鉛筆の動きを一瞬止めると初めて目が合った。その人の瞳には描きたいと思っている気持ちが籠っていた。アリエルはあらかじめ描いていた。

「へえ、顔を手で隠しているから問題はないかな。楔は皮つきね」
「色はあそこにある馬のモノを参考にして、長さはこのくらいで」
「分かったわ、私が今まで書いたことがない構図だけれど頑張って描くわ」

 アリエルと絵描きは未来の希望に満ちていた。異世界にエロ革命をもたらすきっかけとなったのだった。

 ♢

「犯人を捕まえてこい!!!!」

 騎士団長ウィンターが叫ぶと騎士たちは蜘蛛の子を散らすようにいなくなってしまった。
 始まりは一枚の姿絵だった。

 久しぶりに夜会に行くと貴族たちがこちらを見てジロジロと何かを観察している。騎士団長が参加することは珍しかったせいだろう。領主のムッツ・リスケベが最近騎士団に寄付をしてくれたので礼に来ていただけだった。ウエイターがシャンパンを持ってきて来る途中で足を引っかけられて胸元にかかる。夜会を開いた貴族の領主に部屋を案内されると服を貸してくれることになった。胸元のボタンを外している時、夫人がやってきて「やっぱりそうだったんだ!!」と叫ばれて何処かに行ってしまった。

 ウィンターは頭に疑問を思い浮かべながら貸してもらった服のお礼を言いに領主の元に向かった。

「やっぱりエッチな騎士団長だったんだ」

 一枚の絵画の前で呟いている領主の夫人を見て血の気が引いた。自分が描かれた絵が飾られていて、そこには最近できた胸元の黒子が描かれていた。
 四つん這いになって手で目を隠し、口元と胸元の黒子、皮の被っているおちんちんが特徴的な絵がそこにあったのだ。

 領主に話しかけられたので夫人の元に無言で背後から近づいて思いつく限りの腕力で絵画を真っ二つにへし折って中身を魔法で燃やした。

「酷い!酷すぎるわ!!いやあああ」
「だから、帰ってからじっくり見なさいと言っていたじゃないか!」
「やめてぇ、可愛い楔が燃えていく、どうしてどうして……」
「……黙れ。私は皮なんて被っていない!どこで買ったのか吐いてもらおうか!?」

 ただならぬ覇気に夫人は驚いて失神してしまい、領主は事の経緯を全て吐き出すことに決めた。

 普段なら歩きもしない市場を通り過ぎた時、夫人は側仕えの女性と一緒に一直線で走って行った。布のかかった絵画はすでに誰かが支払い終えていて運搬待ちの状態だった。

「楔よ、楔がある!」
「はぁ?」
「ナニも感じないの?この絵には楔のオーラがあるじゃない!もうあなた長年使っているのに分からないの?」

 長年連れ添った妻が突然訳の分からないことを言いだしたのだ。普段物を欲しがらない妻が目をキラキラさせて喋っている事が面白く、画家に声をかけた。

「いくらでもいいからこの絵を売って欲しい」
「申し訳ございませんが、買い手がおりまして。こちらは既に完成しておりまして修正が出来ませんので販売できません」
「だそうだ、諦めなさい」
「金貨100枚出すわ」
「分かりました、売ります」
「布は絶対に外さないで。被っている方がいいのよ」

 夫人は屋敷に絵画を運ばせると布を取り替えたが絵を一切見ようとしなかった。
 何の絵が描かれているのか領主は気になって就寝後に見に行った。

 布が被っているのを外して、初めて見た絵画の被っている楔を見た時

「楔は皮被っていた」

 と呟いてしまった。その時、昔の出来事を思い出して泣いてしまった。
 宗教の関係で割礼をすることが義務の世界で、この子は皮が被ったままだなんて何か理由があるのだろう。きっと彼は見た目や権力に拘らず、己の信念を貫いたのだろう。

「皮が被っていても恥ずかしくない、そうか、そうだったのか!わしも年だと思って諦めていたが新規事業をしてみたい」

 ムッツは胸に野望を抱くと妻を抱きにベットに向かった。

「あの絵のおかげで金貨100枚以上の勇気や希望を手に入れることが出来ました。あなたから勇気を貰ったのです」
「あれは私ではない。私はあんな絵を描かせたこともなければ、裸を見せたことはない!」
「なるほど、妄想で描かれた作品だったのですね」

 夫人が小さく「童貞って事なの?高潔だわ…………。」と呟いて眠った。

 明らかに顔を隠したウィンターと思われる絵画は舌を舐めずさり、誘っているポーズを取っている変態騎士団長と思われても仕方がない物。
 話が広がる前に絵を描いた人物と依頼者を見つけないといけない。

 絵を見つけてから1週間、未だに犯人の足跡が見つからない。
 媚薬、魅了の力、自分の裸。

 これが何を意味しているのか分からない。
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