完結 悪女の幼馴染の別れは公爵令息の溺愛の始まり~気弱令嬢で八方美人の悪女の幼馴染辞めました!~

シェルビビ

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イラついたときは集中するに限る

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 アリア・マリーゴールド家は子爵家で両親ともに健康で借金もなく穏やかに過ごしている。

 両親は2人とも薬師。
 30歳の私からすると裕福な家庭だとすぐに分かった。
 屋敷も古いものだけれどメンテナンスはしっかりしているし、病気にならないように清掃清潔は徹底的にしている。

 母親は花が好きで一部の住民から『花屋敷』と呼ばれるくらい花に満たされている。この景色が手入れが面倒で見られなくなると思っていなかったので当時は嫌で仕方がなかった。

 今思うと手入れも配置も苦労して作られたものだと分かってしまう。


 両親ともに教育に無関心で私は放置されていた。


 今思うとこれもキリエに漬け込まれた原因だと思う。一人っ子で寂しいから依存するしかなかったのね。と他人事に感じる。
 今の私は13歳の身体に30歳の心が入っているのだから客観的に見えて当たり前だ。

 キリエは何かあったのか聞くために家に来ると思ったら来なかった。いつもならご機嫌取りに私が手土産を持って謝りに行っていたから今回もそうなると思っているのだ。

 使用人たちに今までの事を話して執事に両親に伝えてくれるように頼んだ。

「面倒なことにならなければいいわ」
「お前が何か悪いことをしたのではないか」

 両親は放任主義で自分たちに迷惑がかからなければいい人間たち。契約結婚で仕方なく子供を一人作ったら私だった。子供を生まれた時点で興味を無くした。

 病気の時も傍にいてくれない。仕事の邪魔になるからと離れで面倒を見られる。
 今思うとダメな親だと分かるけれど、彼らも病人に病気をうつすわけにもいかないから仕方のないことだった。契約結婚で職場からも子供を産まないとおかしいと言われていて仕方なく産んだのだから、お金出してもらえる分だけありがたいと思う。

 世の中にはお金を貰えずに虐待する親がいる。
 愛の形は人それぞれで、うちの場合はお金を与えられるだけだった。

 元々子供が大嫌いな人たちで使用人に教育をさせている。この環境は異常だけれど前回の自分がねじ曲がらなくて育ったのは使用人のおかげだ。


 公爵令息に会った後、王都の城下町まで馬車を走らせてもらった。メイドのアビーと一緒に買い物に行くのだ。アビーは前回の時にキリエに何か言われるたびに

「離れた方がいいですよ。あなたのためと言いながら支配下に置いています。毒親の両親で育った私には分かるんです。」

 と何度も言ってくれた人だ。結婚して辞めるまでいい続けてくれて裁縫で作った物をよく褒めてくれた。人間関係を第三者目線でアドバイスして客観的に見て正直に言ってくれる人はアビーくらいしかいなかった。

(前回は結婚式の贈り物もしょぼいのしか送れなかったわ。もっと豪勢に祝いたかった。使用人程度にどうしてここまで祝うの?とキリエに言われて安い物しか送らなかったことを後悔していたのよね)

 馬車は城下町の洋服店に着いて止まった。思い出してみたら、いつもこんな場所で買っていたのねと青ざめる。年齢層30代のマダムが行きそうなお店の前に馬車が止まったのだ。

(当時の私、どうしてこんなに大人っぽいところで買っていたのかしら。老け顔と馬鹿にされたからってありえないわ。若い女の子しか着れない服なんていっぱいあるじゃない)

「アビー、お勧めのお店はあるかしら。今あのお店に行きたくないの。持っている洋服は全部捨てるから、13歳の女の子が着てもおかしくないお店を御者に教えて」

 アビーは表情をほころばせて、ぱあっと明るくなった。

「……はい!失礼します。ミスクローゼットのお店は分かりますか?すぐに向かってください!」

 御者は分かっていたので馬車が再び動き出した。

「ミセスクローゼットは最高のお店なんです。ずっとお嬢様に着て欲しいと思った服が沢山あります。お洋服たくさん買いましょうね!あのダサい服全部処分しましょう!」

 使用人からもダサいと言われている服を今も着ているのですが…。
 馬車はミスクローゼットのお店の前に止まった。

(こ、これは……!!外観が可愛らしいお店。テンションの上がる配色淡い色のドレス。ピンク黄色紫色、青い色も沢山の色がある。リボンフリフリドレス。シックなドレスもある。)

 店内に入って一通り見て見ると全部購入したい思いに駆られる。全身鏡が近くにあったので見てみた。今着ているドレスは一言で言うと芋臭い。キャラメル色の髪の毛には白髪が混じっていない。顔だって何もしていないのに毛穴が見えない。本当にもったいない事をしていたのだと改めて実感する。

「髪飾りから靴まで全身何を着てもいいのか分からないわ」
「よろしければ全身見繕いましょうか」

 店員さんが親切に話しかけてきたのでアビーに任せて座ることにした。座り心地のいいソファで待っていると紅茶が出されたので飲むことにした。

(紅茶の入れ方も学ばないといけないわね。新しいことをしようとするたびに止められて来たから何もできない令嬢だったわ。これからは何でもやってやるわ。)

 アビーは嬉しそうに選んだ商品を見せるために歩いてきた。いつか自分で選べるようになりたい。今の私は自分の服を選ぶことが出来ない。まだキリエに何を言われるのか気にしているから。

 今日は何を買ったのか覗いてくるやつはいない。

「センスがないわね、どうしてこれを買ったの?」

 綺麗な服を着ていてもババ臭い服を着ていても言われるなら、みすぼらしい姿になっていくのは当たり前だ。これからは好きな服を好きなときに着よう。

 まずは見た目から変わろう。そして心を鉄壁にして何を言われても気にしない性格にしよう。
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