3 / 15
イラついたときは集中するに限る
しおりを挟む
アリア・マリーゴールド家は子爵家で両親ともに健康で借金もなく穏やかに過ごしている。
両親は2人とも薬師。
30歳の私からすると裕福な家庭だとすぐに分かった。
屋敷も古いものだけれどメンテナンスはしっかりしているし、病気にならないように清掃清潔は徹底的にしている。
母親は花が好きで一部の住民から『花屋敷』と呼ばれるくらい花に満たされている。この景色が手入れが面倒で見られなくなると思っていなかったので当時は嫌で仕方がなかった。
今思うと手入れも配置も苦労して作られたものだと分かってしまう。
両親ともに教育に無関心で私は放置されていた。
今思うとこれもキリエに漬け込まれた原因だと思う。一人っ子で寂しいから依存するしかなかったのね。と他人事に感じる。
今の私は13歳の身体に30歳の心が入っているのだから客観的に見えて当たり前だ。
キリエは何かあったのか聞くために家に来ると思ったら来なかった。いつもならご機嫌取りに私が手土産を持って謝りに行っていたから今回もそうなると思っているのだ。
使用人たちに今までの事を話して執事に両親に伝えてくれるように頼んだ。
「面倒なことにならなければいいわ」
「お前が何か悪いことをしたのではないか」
両親は放任主義で自分たちに迷惑がかからなければいい人間たち。契約結婚で仕方なく子供を一人作ったら私だった。子供を生まれた時点で興味を無くした。
病気の時も傍にいてくれない。仕事の邪魔になるからと離れで面倒を見られる。
今思うとダメな親だと分かるけれど、彼らも病人に病気をうつすわけにもいかないから仕方のないことだった。契約結婚で職場からも子供を産まないとおかしいと言われていて仕方なく産んだのだから、お金出してもらえる分だけありがたいと思う。
世の中にはお金を貰えずに虐待する親がいる。
愛の形は人それぞれで、うちの場合はお金を与えられるだけだった。
元々子供が大嫌いな人たちで使用人に教育をさせている。この環境は異常だけれど前回の自分がねじ曲がらなくて育ったのは使用人のおかげだ。
公爵令息に会った後、王都の城下町まで馬車を走らせてもらった。メイドのアビーと一緒に買い物に行くのだ。アビーは前回の時にキリエに何か言われるたびに
「離れた方がいいですよ。あなたのためと言いながら支配下に置いています。毒親の両親で育った私には分かるんです。」
と何度も言ってくれた人だ。結婚して辞めるまでいい続けてくれて裁縫で作った物をよく褒めてくれた。人間関係を第三者目線でアドバイスして客観的に見て正直に言ってくれる人はアビーくらいしかいなかった。
(前回は結婚式の贈り物もしょぼいのしか送れなかったわ。もっと豪勢に祝いたかった。使用人程度にどうしてここまで祝うの?とキリエに言われて安い物しか送らなかったことを後悔していたのよね)
馬車は城下町の洋服店に着いて止まった。思い出してみたら、いつもこんな場所で買っていたのねと青ざめる。年齢層30代のマダムが行きそうなお店の前に馬車が止まったのだ。
(当時の私、どうしてこんなに大人っぽいところで買っていたのかしら。老け顔と馬鹿にされたからってありえないわ。若い女の子しか着れない服なんていっぱいあるじゃない)
「アビー、お勧めのお店はあるかしら。今あのお店に行きたくないの。持っている洋服は全部捨てるから、13歳の女の子が着てもおかしくないお店を御者に教えて」
アビーは表情をほころばせて、ぱあっと明るくなった。
「……はい!失礼します。ミスクローゼットのお店は分かりますか?すぐに向かってください!」
御者は分かっていたので馬車が再び動き出した。
「ミセスクローゼットは最高のお店なんです。ずっとお嬢様に着て欲しいと思った服が沢山あります。お洋服たくさん買いましょうね!あのダサい服全部処分しましょう!」
使用人からもダサいと言われている服を今も着ているのですが…。
馬車はミスクローゼットのお店の前に止まった。
(こ、これは……!!外観が可愛らしいお店。テンションの上がる配色淡い色のドレス。ピンク黄色紫色、青い色も沢山の色がある。リボンフリフリドレス。シックなドレスもある。)
店内に入って一通り見て見ると全部購入したい思いに駆られる。全身鏡が近くにあったので見てみた。今着ているドレスは一言で言うと芋臭い。キャラメル色の髪の毛には白髪が混じっていない。顔だって何もしていないのに毛穴が見えない。本当にもったいない事をしていたのだと改めて実感する。
「髪飾りから靴まで全身何を着てもいいのか分からないわ」
「よろしければ全身見繕いましょうか」
店員さんが親切に話しかけてきたのでアビーに任せて座ることにした。座り心地のいいソファで待っていると紅茶が出されたので飲むことにした。
(紅茶の入れ方も学ばないといけないわね。新しいことをしようとするたびに止められて来たから何もできない令嬢だったわ。これからは何でもやってやるわ。)
アビーは嬉しそうに選んだ商品を見せるために歩いてきた。いつか自分で選べるようになりたい。今の私は自分の服を選ぶことが出来ない。まだキリエに何を言われるのか気にしているから。
今日は何を買ったのか覗いてくるやつはいない。
「センスがないわね、どうしてこれを買ったの?」
綺麗な服を着ていてもババ臭い服を着ていても言われるなら、みすぼらしい姿になっていくのは当たり前だ。これからは好きな服を好きなときに着よう。
まずは見た目から変わろう。そして心を鉄壁にして何を言われても気にしない性格にしよう。
両親は2人とも薬師。
30歳の私からすると裕福な家庭だとすぐに分かった。
屋敷も古いものだけれどメンテナンスはしっかりしているし、病気にならないように清掃清潔は徹底的にしている。
母親は花が好きで一部の住民から『花屋敷』と呼ばれるくらい花に満たされている。この景色が手入れが面倒で見られなくなると思っていなかったので当時は嫌で仕方がなかった。
今思うと手入れも配置も苦労して作られたものだと分かってしまう。
両親ともに教育に無関心で私は放置されていた。
今思うとこれもキリエに漬け込まれた原因だと思う。一人っ子で寂しいから依存するしかなかったのね。と他人事に感じる。
今の私は13歳の身体に30歳の心が入っているのだから客観的に見えて当たり前だ。
キリエは何かあったのか聞くために家に来ると思ったら来なかった。いつもならご機嫌取りに私が手土産を持って謝りに行っていたから今回もそうなると思っているのだ。
使用人たちに今までの事を話して執事に両親に伝えてくれるように頼んだ。
「面倒なことにならなければいいわ」
「お前が何か悪いことをしたのではないか」
両親は放任主義で自分たちに迷惑がかからなければいい人間たち。契約結婚で仕方なく子供を一人作ったら私だった。子供を生まれた時点で興味を無くした。
病気の時も傍にいてくれない。仕事の邪魔になるからと離れで面倒を見られる。
今思うとダメな親だと分かるけれど、彼らも病人に病気をうつすわけにもいかないから仕方のないことだった。契約結婚で職場からも子供を産まないとおかしいと言われていて仕方なく産んだのだから、お金出してもらえる分だけありがたいと思う。
世の中にはお金を貰えずに虐待する親がいる。
愛の形は人それぞれで、うちの場合はお金を与えられるだけだった。
元々子供が大嫌いな人たちで使用人に教育をさせている。この環境は異常だけれど前回の自分がねじ曲がらなくて育ったのは使用人のおかげだ。
公爵令息に会った後、王都の城下町まで馬車を走らせてもらった。メイドのアビーと一緒に買い物に行くのだ。アビーは前回の時にキリエに何か言われるたびに
「離れた方がいいですよ。あなたのためと言いながら支配下に置いています。毒親の両親で育った私には分かるんです。」
と何度も言ってくれた人だ。結婚して辞めるまでいい続けてくれて裁縫で作った物をよく褒めてくれた。人間関係を第三者目線でアドバイスして客観的に見て正直に言ってくれる人はアビーくらいしかいなかった。
(前回は結婚式の贈り物もしょぼいのしか送れなかったわ。もっと豪勢に祝いたかった。使用人程度にどうしてここまで祝うの?とキリエに言われて安い物しか送らなかったことを後悔していたのよね)
馬車は城下町の洋服店に着いて止まった。思い出してみたら、いつもこんな場所で買っていたのねと青ざめる。年齢層30代のマダムが行きそうなお店の前に馬車が止まったのだ。
(当時の私、どうしてこんなに大人っぽいところで買っていたのかしら。老け顔と馬鹿にされたからってありえないわ。若い女の子しか着れない服なんていっぱいあるじゃない)
「アビー、お勧めのお店はあるかしら。今あのお店に行きたくないの。持っている洋服は全部捨てるから、13歳の女の子が着てもおかしくないお店を御者に教えて」
アビーは表情をほころばせて、ぱあっと明るくなった。
「……はい!失礼します。ミスクローゼットのお店は分かりますか?すぐに向かってください!」
御者は分かっていたので馬車が再び動き出した。
「ミセスクローゼットは最高のお店なんです。ずっとお嬢様に着て欲しいと思った服が沢山あります。お洋服たくさん買いましょうね!あのダサい服全部処分しましょう!」
使用人からもダサいと言われている服を今も着ているのですが…。
馬車はミスクローゼットのお店の前に止まった。
(こ、これは……!!外観が可愛らしいお店。テンションの上がる配色淡い色のドレス。ピンク黄色紫色、青い色も沢山の色がある。リボンフリフリドレス。シックなドレスもある。)
店内に入って一通り見て見ると全部購入したい思いに駆られる。全身鏡が近くにあったので見てみた。今着ているドレスは一言で言うと芋臭い。キャラメル色の髪の毛には白髪が混じっていない。顔だって何もしていないのに毛穴が見えない。本当にもったいない事をしていたのだと改めて実感する。
「髪飾りから靴まで全身何を着てもいいのか分からないわ」
「よろしければ全身見繕いましょうか」
店員さんが親切に話しかけてきたのでアビーに任せて座ることにした。座り心地のいいソファで待っていると紅茶が出されたので飲むことにした。
(紅茶の入れ方も学ばないといけないわね。新しいことをしようとするたびに止められて来たから何もできない令嬢だったわ。これからは何でもやってやるわ。)
アビーは嬉しそうに選んだ商品を見せるために歩いてきた。いつか自分で選べるようになりたい。今の私は自分の服を選ぶことが出来ない。まだキリエに何を言われるのか気にしているから。
今日は何を買ったのか覗いてくるやつはいない。
「センスがないわね、どうしてこれを買ったの?」
綺麗な服を着ていてもババ臭い服を着ていても言われるなら、みすぼらしい姿になっていくのは当たり前だ。これからは好きな服を好きなときに着よう。
まずは見た目から変わろう。そして心を鉄壁にして何を言われても気にしない性格にしよう。
1
お気に入りに追加
441
あなたにおすすめの小説

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

【完】まさかの婚約破棄はあなたの心の声が聞こえたから
えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
伯爵令嬢のマーシャはある日不思議なネックレスを手に入れた。それは相手の心が聞こえるという品で、そんなことを信じるつもりは無かった。それに相手とは家同士の婚約だけどお互いに仲も良く、上手くいっていると思っていたつもりだったのに……。よくある婚約破棄のお話です。
※他サイトに自立も掲載しております
21.5.25ホットランキング入りありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている
五色ひわ
恋愛
ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。
初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

「白い結婚の終幕:冷たい約束と偽りの愛」
ゆる
恋愛
「白い結婚――それは幸福ではなく、冷たく縛られた契約だった。」
美しい名門貴族リュミエール家の娘アスカは、公爵家の若き当主レイヴンと政略結婚することになる。しかし、それは夫婦の絆など存在しない“白い結婚”だった。
夫のレイヴンは冷たく、長く屋敷を不在にし、アスカは孤独の中で公爵家の実態を知る――それは、先代から続く莫大な負債と、怪しい商会との闇契約によって破綻寸前に追い込まれた家だったのだ。
さらに、公爵家には謎めいた愛人セシリアが入り込み、家中の権力を掌握しようと暗躍している。使用人たちの不安、アーヴィング商会の差し押さえ圧力、そして消えた夫レイヴンの意図……。次々と押し寄せる困難の中、アスカはただの「飾りの夫人」として終わる人生を拒絶し、自ら未来を切り拓こうと動き始める。
政略結婚の檻の中で、彼女は周囲の陰謀に立ち向かい、少しずつ真実を掴んでいく。そして冷たく突き放していた夫レイヴンとの関係も、思わぬ形で変化していき――。
「私はもう誰の人形にもならない。自分の意志で、この家も未来も守り抜いてみせる!」
果たしてアスカは“白い結婚”という名の冷たい鎖を断ち切り、全てをざまあと思わせる大逆転を成し遂げられるのか?

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
21時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる