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クマの着ぐるみ
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前世の記憶持ちのシャルロッテは、面倒な事が嫌いだった。
転生前は、女子たちの恋愛事情に巻き込まれないようにしだっさい女として過ごしていた。好きな事、勉強、アニメ漫画。勉強が出来る分、アニメや漫画にハマったが一つ気がついたことがある。
結構、虚しいのだ。アニメや漫画もジャンルが違えば話すことがなくなり、推しが被らないと盛り上がらない。嫌いなキャラが好きだった時なんて何も話さなくなる。
オタクの人間が全てそうじゃないが、基本は真面目で自分の言いたいことしか言わない。オタクもリアルも充実している人は実家のパイプが太く、海外旅行も好きな人が多かった。綺羅びやかなオタクな人を見て、お金があって羨ましいと思った。
前世は気がつくのが遅すぎた。オタクでも恋愛が得意な人がいて、脱毛や美容を早い年から手を出していていつでも結婚できるように準備しているのだと。
気が付いたら結婚適齢期。年齢相応の会話も出来ない女が出来上がった。
安月給なのに奨学金を支払い、残ったお金はアパートの更新に使うくらいだ。奨学金を借りて大学を卒業したものの、就職が決まらなかった。面接を繰り返しして思ったことがある。学歴は大事だが、見た目や会話のスキルも大切だと思い知った。
部屋の中でこけたら転生していた。全裸の男の人に抱きかかえられて母に渡されてベッドで寝た。目覚めるとベッドの上で感謝の祈りを捧げて、感謝のあまり踊り狂った。鏡で姿を見て、可愛い顔立ちと体つきで天に拳を突き出した。
(神様、今回の人生は全裸の男の人が当たり前にいる世界って最高です! 今回はオタクにならず、キチンと勉強をして社会貢献します。)
こうして生まれ変わった私は、周囲の誘惑に負けず勉強をしながら、美しさに磨きをかけた。優秀な騎士候補も全裸に見える私は、当たり前のように騎士学校のサポート学科に合格し勉強を続けた。
しかし卒業間近になると女子生徒は結婚ラッシュに入ってしまい、騎士団の事務に面接する人はあっという間に減ってしまった。女子生徒たちの結婚相手は、騎士試験に合格した人たち。大勢の騎士の面倒を見るよりも、騎士になる夫のサポートをした方が楽だと思って結婚したのだろう。
「シャル、結婚式に来てね。夫の同僚も成績優秀なあなたに会いたいみたいなの。特に料理が気になるみたい」
「結婚式に行ってもいいけれど、私は結婚する気はないから」
こっちの世界の結婚はご祝儀を持っていかなくてもいい。無料で料理を食べて結婚相手を見つける事が出来る。そこで結婚相手を見つけたら、招待した新婦や新郎に仲介金を渡すのが習わしだ。
異世界にやってきた私は前世と違って人気があった。ブラック企業仕込みの接待技術と一人暮らしの料理スキルが高かったからだ。
自分自身を可愛いと思ってくれる人がいないから、結婚が嫌で避け続けてきたのに。一番厄介な人に絡まれようとしている。
相手は英雄エリオス。彼から求婚されたい人はたくさんいるのに、どうして私がこんな目に会わないといけないの?
そういえば、エリオスは相手を溺愛して自分しか見つめさせない事が好きと聞いた。
「どうしてこんなことに気がつかなかったの?簡単な事じゃない、スケラ事務長に伝手がないか聞かないといけない!」
こうして私はエリオスに嫌われるために行動を起こすことにした。
***
「シャルロッテ、何だい、その服装は」
事務員の同僚が声を出して驚いていると私はスケラ事務長に相談して出来上がったコートを見せびらかした。目元しか見えないコートは前世では着ぐるみと呼ばれるものだった。
エリオス様と別れた後、スケラ事務長の元に行き服が着て見えることを伝えて着ぐるみを用意してもらった。
『エリオス様、クマのぬいぐるみ見ている時は全裸になりやすいですよ』
と嘘を言った。自腹で支払ったら勿体ないし、通年コートを使うこの国では必要不可欠のものだから。
実は逆だ。
クマのぬいぐるみを見た時、好きと言いながら服を着て見えたのだから。
これで私の身も守れたのも当然。人間嫌いな物には近づかない。服を着ている人たちは嫌いな食べ物や匂いでも服を着て見えたから間違いはない。
仕事中は事務員の服を着ているが帰る時は、これに着替えるから問題はない。金貨20枚もしたのだから元を取ってくれないと困る。
転生前は、女子たちの恋愛事情に巻き込まれないようにしだっさい女として過ごしていた。好きな事、勉強、アニメ漫画。勉強が出来る分、アニメや漫画にハマったが一つ気がついたことがある。
結構、虚しいのだ。アニメや漫画もジャンルが違えば話すことがなくなり、推しが被らないと盛り上がらない。嫌いなキャラが好きだった時なんて何も話さなくなる。
オタクの人間が全てそうじゃないが、基本は真面目で自分の言いたいことしか言わない。オタクもリアルも充実している人は実家のパイプが太く、海外旅行も好きな人が多かった。綺羅びやかなオタクな人を見て、お金があって羨ましいと思った。
前世は気がつくのが遅すぎた。オタクでも恋愛が得意な人がいて、脱毛や美容を早い年から手を出していていつでも結婚できるように準備しているのだと。
気が付いたら結婚適齢期。年齢相応の会話も出来ない女が出来上がった。
安月給なのに奨学金を支払い、残ったお金はアパートの更新に使うくらいだ。奨学金を借りて大学を卒業したものの、就職が決まらなかった。面接を繰り返しして思ったことがある。学歴は大事だが、見た目や会話のスキルも大切だと思い知った。
部屋の中でこけたら転生していた。全裸の男の人に抱きかかえられて母に渡されてベッドで寝た。目覚めるとベッドの上で感謝の祈りを捧げて、感謝のあまり踊り狂った。鏡で姿を見て、可愛い顔立ちと体つきで天に拳を突き出した。
(神様、今回の人生は全裸の男の人が当たり前にいる世界って最高です! 今回はオタクにならず、キチンと勉強をして社会貢献します。)
こうして生まれ変わった私は、周囲の誘惑に負けず勉強をしながら、美しさに磨きをかけた。優秀な騎士候補も全裸に見える私は、当たり前のように騎士学校のサポート学科に合格し勉強を続けた。
しかし卒業間近になると女子生徒は結婚ラッシュに入ってしまい、騎士団の事務に面接する人はあっという間に減ってしまった。女子生徒たちの結婚相手は、騎士試験に合格した人たち。大勢の騎士の面倒を見るよりも、騎士になる夫のサポートをした方が楽だと思って結婚したのだろう。
「シャル、結婚式に来てね。夫の同僚も成績優秀なあなたに会いたいみたいなの。特に料理が気になるみたい」
「結婚式に行ってもいいけれど、私は結婚する気はないから」
こっちの世界の結婚はご祝儀を持っていかなくてもいい。無料で料理を食べて結婚相手を見つける事が出来る。そこで結婚相手を見つけたら、招待した新婦や新郎に仲介金を渡すのが習わしだ。
異世界にやってきた私は前世と違って人気があった。ブラック企業仕込みの接待技術と一人暮らしの料理スキルが高かったからだ。
自分自身を可愛いと思ってくれる人がいないから、結婚が嫌で避け続けてきたのに。一番厄介な人に絡まれようとしている。
相手は英雄エリオス。彼から求婚されたい人はたくさんいるのに、どうして私がこんな目に会わないといけないの?
そういえば、エリオスは相手を溺愛して自分しか見つめさせない事が好きと聞いた。
「どうしてこんなことに気がつかなかったの?簡単な事じゃない、スケラ事務長に伝手がないか聞かないといけない!」
こうして私はエリオスに嫌われるために行動を起こすことにした。
***
「シャルロッテ、何だい、その服装は」
事務員の同僚が声を出して驚いていると私はスケラ事務長に相談して出来上がったコートを見せびらかした。目元しか見えないコートは前世では着ぐるみと呼ばれるものだった。
エリオス様と別れた後、スケラ事務長の元に行き服が着て見えることを伝えて着ぐるみを用意してもらった。
『エリオス様、クマのぬいぐるみ見ている時は全裸になりやすいですよ』
と嘘を言った。自腹で支払ったら勿体ないし、通年コートを使うこの国では必要不可欠のものだから。
実は逆だ。
クマのぬいぐるみを見た時、好きと言いながら服を着て見えたのだから。
これで私の身も守れたのも当然。人間嫌いな物には近づかない。服を着ている人たちは嫌いな食べ物や匂いでも服を着て見えたから間違いはない。
仕事中は事務員の服を着ているが帰る時は、これに着替えるから問題はない。金貨20枚もしたのだから元を取ってくれないと困る。
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