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英雄の婚約者がクズ過ぎた
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優秀な騎士が全裸に見える事を理解してくれたのは臨時兵を指導してくれた元傭兵さんだけだった。その能力を見込まれて、騎士学校に入学することが出来た。騎士のサポートをする学科に通って、全裸に見える学生を教えることが条件だった。陰嚢が発光している人を教えると何故かすぐにいなくなってしまった。
全裸を見過ぎて私は優秀な男は全裸と基準が出来た。
時は過ぎて私は18歳になった。
騎士学校を卒業した私は、成績と騎士の採用で貢献していたおかげで事務員として採用された。平民の両親は大喜びで宿舎に送り出してくれた。
少ない荷物で宿舎に向かう途中、全裸の騎士が花束を持って遠くで立っていた。
しょんぼりした仮性包茎のおちんちん……。なんだか随分前に見た時より小さくなっている気がする。
(エリオス様、どうしたのでしょうか)
ゴミ捨て場に花束とクマのぬいぐるみを投げ捨てると彼はそのまま去ってしまった。綺麗な紫色の花で出来た花束は高級で芳醇な香りがした。周囲を見ても誰もいない。ゴミに捨てた花束とクマのぬいぐるみなら貰ってもいいだろう。
振り返らずに何処かに向かうエリオス様は、後ろから見えないけれど悲しそうだった。だっておちんちんは悲しそうだったから。きちんと服を着ている彼を見て、何か嫌な予感がしていた。
「どうして服を着ているのですか……?」
***
婚約破棄の話を聞いたのは少し後の事だった。女子事務員たちが食堂から貰って来たお弁当を広げながら事細かく話してくれた。
事務員の情報は恐ろしい。色んな人の情報を詳しく知っている。彼女たちは私が優秀な騎士が全裸に見えることは知らない。でも彼女たちは誰が剃毛しているのか知っているか興味もないみたいだ。
お弁当を食べている時、自然に話題になるのは優秀な騎士の交友関係。
一番人気のエリオスは話題に上がりやすいのは仕方のない事だった。
「本当にエリオス様の婚約者はクズよね」
「公爵令嬢が他の希望者を押し退けて婚約した癖に、使用人のクズの子を妊娠したのよ」
「へぇー」
興味がない声を思わず出してしまったが、英雄エリオスの婚約者がクズの話は大分前から聞いていた。婚約者の公爵令嬢は、前世の記憶があって様々な商品や知識で個人資産を増やしていた。確かに、彼女の生活商品のおかげでくらしやすくなった。
金も男も自由に選べるはずなのにエリオスを選んだのだろうか。事務員たちの疑問は、そこで詰まってしまう。見目麗しいのは確かだけれど、エリオスには雄の匂いが圧倒的に足りない。人畜無害で、絵に描いた優秀な騎士。見ていてたまに息がつまってしまう。
真面目さゆえの正義感。完全無敵の英雄は女運がないみたいだ。しばらく、そっとしておけばいいのにと思いながら食事をとり終わる間際に事務長に呼ばれた。
防音魔法がかかっている部屋に向かうと椅子に腰かけさせられた。
「エリオスは今はどう見える」
「どうって、いつも通り恥ずかしがり屋のおちんちんですが」
「そうじゃない。服を着ているかどうかだ。ずっと婚約者に振り回されて騎士が嫌になっているんじゃないかと言われている。いつも通りなら問題はない。もし服を着ているようなら話しなさい。リストラの決定権を君に与える。もし服を着ていたら彼は暫く休ませる」
部屋から出ていくと同僚に話を聞かれたが上の空だった。エリオス様を暫く休ませる。リストラの決定権は私。
クマのぬいぐるみと花束は部屋に大切に飾られている。
どうしていいのか分からなくなっていた。
全裸を見過ぎて私は優秀な男は全裸と基準が出来た。
時は過ぎて私は18歳になった。
騎士学校を卒業した私は、成績と騎士の採用で貢献していたおかげで事務員として採用された。平民の両親は大喜びで宿舎に送り出してくれた。
少ない荷物で宿舎に向かう途中、全裸の騎士が花束を持って遠くで立っていた。
しょんぼりした仮性包茎のおちんちん……。なんだか随分前に見た時より小さくなっている気がする。
(エリオス様、どうしたのでしょうか)
ゴミ捨て場に花束とクマのぬいぐるみを投げ捨てると彼はそのまま去ってしまった。綺麗な紫色の花で出来た花束は高級で芳醇な香りがした。周囲を見ても誰もいない。ゴミに捨てた花束とクマのぬいぐるみなら貰ってもいいだろう。
振り返らずに何処かに向かうエリオス様は、後ろから見えないけれど悲しそうだった。だっておちんちんは悲しそうだったから。きちんと服を着ている彼を見て、何か嫌な予感がしていた。
「どうして服を着ているのですか……?」
***
婚約破棄の話を聞いたのは少し後の事だった。女子事務員たちが食堂から貰って来たお弁当を広げながら事細かく話してくれた。
事務員の情報は恐ろしい。色んな人の情報を詳しく知っている。彼女たちは私が優秀な騎士が全裸に見えることは知らない。でも彼女たちは誰が剃毛しているのか知っているか興味もないみたいだ。
お弁当を食べている時、自然に話題になるのは優秀な騎士の交友関係。
一番人気のエリオスは話題に上がりやすいのは仕方のない事だった。
「本当にエリオス様の婚約者はクズよね」
「公爵令嬢が他の希望者を押し退けて婚約した癖に、使用人のクズの子を妊娠したのよ」
「へぇー」
興味がない声を思わず出してしまったが、英雄エリオスの婚約者がクズの話は大分前から聞いていた。婚約者の公爵令嬢は、前世の記憶があって様々な商品や知識で個人資産を増やしていた。確かに、彼女の生活商品のおかげでくらしやすくなった。
金も男も自由に選べるはずなのにエリオスを選んだのだろうか。事務員たちの疑問は、そこで詰まってしまう。見目麗しいのは確かだけれど、エリオスには雄の匂いが圧倒的に足りない。人畜無害で、絵に描いた優秀な騎士。見ていてたまに息がつまってしまう。
真面目さゆえの正義感。完全無敵の英雄は女運がないみたいだ。しばらく、そっとしておけばいいのにと思いながら食事をとり終わる間際に事務長に呼ばれた。
防音魔法がかかっている部屋に向かうと椅子に腰かけさせられた。
「エリオスは今はどう見える」
「どうって、いつも通り恥ずかしがり屋のおちんちんですが」
「そうじゃない。服を着ているかどうかだ。ずっと婚約者に振り回されて騎士が嫌になっているんじゃないかと言われている。いつも通りなら問題はない。もし服を着ているようなら話しなさい。リストラの決定権を君に与える。もし服を着ていたら彼は暫く休ませる」
部屋から出ていくと同僚に話を聞かれたが上の空だった。エリオス様を暫く休ませる。リストラの決定権は私。
クマのぬいぐるみと花束は部屋に大切に飾られている。
どうしていいのか分からなくなっていた。
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