R18 優秀な騎士だけが全裸に見える私が、国を救った英雄の氷の騎士団長を着ぐるみを着て溺愛する理由。

シェルビビ

文字の大きさ
上 下
2 / 7

英雄の婚約者がクズ過ぎた

しおりを挟む
 優秀な騎士が全裸に見える事を理解してくれたのは臨時兵を指導してくれた元傭兵さんだけだった。その能力を見込まれて、騎士学校に入学することが出来た。騎士のサポートをする学科に通って、全裸に見える学生を教えることが条件だった。陰嚢が発光している人を教えると何故かすぐにいなくなってしまった。

 全裸を見過ぎて私は優秀な男は全裸と基準が出来た。
 時は過ぎて私は18歳になった。

 騎士学校を卒業した私は、成績と騎士の採用で貢献していたおかげで事務員として採用された。平民の両親は大喜びで宿舎に送り出してくれた。

 少ない荷物で宿舎に向かう途中、全裸の騎士が花束を持って遠くで立っていた。
 しょんぼりした仮性包茎のおちんちん……。なんだか随分前に見た時より小さくなっている気がする。

(エリオス様、どうしたのでしょうか)

 ゴミ捨て場に花束とクマのぬいぐるみを投げ捨てると彼はそのまま去ってしまった。綺麗な紫色の花で出来た花束は高級で芳醇な香りがした。周囲を見ても誰もいない。ゴミに捨てた花束とクマのぬいぐるみなら貰ってもいいだろう。

 振り返らずに何処かに向かうエリオス様は、後ろから見えないけれど悲しそうだった。だっておちんちんは悲しそうだったから。きちんと服を着ている彼を見て、何か嫌な予感がしていた。

「どうして服を着ているのですか……?」

 ***

 婚約破棄の話を聞いたのは少し後の事だった。女子事務員たちが食堂から貰って来たお弁当を広げながら事細かく話してくれた。

 事務員の情報は恐ろしい。色んな人の情報を詳しく知っている。彼女たちは私が優秀な騎士が全裸に見えることは知らない。でも彼女たちは誰が剃毛しているのか知っているか興味もないみたいだ。

 お弁当を食べている時、自然に話題になるのは優秀な騎士の交友関係。
 一番人気のエリオスは話題に上がりやすいのは仕方のない事だった。

「本当にエリオス様の婚約者はクズよね」

「公爵令嬢が他の希望者を押し退けて婚約した癖に、使用人のクズの子を妊娠したのよ」

「へぇー」

 興味がない声を思わず出してしまったが、英雄エリオスの婚約者がクズの話は大分前から聞いていた。婚約者の公爵令嬢は、前世の記憶があって様々な商品や知識で個人資産を増やしていた。確かに、彼女の生活商品のおかげでくらしやすくなった。

 金も男も自由に選べるはずなのにエリオスを選んだのだろうか。事務員たちの疑問は、そこで詰まってしまう。見目麗しいのは確かだけれど、エリオスには雄の匂いが圧倒的に足りない。人畜無害で、絵に描いた優秀な騎士。見ていてたまに息がつまってしまう。

 真面目さゆえの正義感。完全無敵の英雄は女運がないみたいだ。しばらく、そっとしておけばいいのにと思いながら食事をとり終わる間際に事務長に呼ばれた。

 防音魔法がかかっている部屋に向かうと椅子に腰かけさせられた。

「エリオスは今はどう見える」

「どうって、いつも通り恥ずかしがり屋のおちんちんですが」

「そうじゃない。服を着ているかどうかだ。ずっと婚約者に振り回されて騎士が嫌になっているんじゃないかと言われている。いつも通りなら問題はない。もし服を着ているようなら話しなさい。リストラの決定権を君に与える。もし服を着ていたら彼は暫く休ませる」

 部屋から出ていくと同僚に話を聞かれたが上の空だった。エリオス様を暫く休ませる。リストラの決定権は私。
 クマのぬいぐるみと花束は部屋に大切に飾られている。

 どうしていいのか分からなくなっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は追いかけられて囚われる。

入海月子
恋愛
侯爵令嬢のセフィリアは、濡衣で王太子から婚約破棄を命じられる。失意のうちに座り込んでいると、近衛騎士のラギリスが追いかけてきた。今までなんの接点もなかったのに、熱い瞳で見つめられて……。

腹黒宰相との白い結婚

恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。

燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~

二階堂まや
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。 夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。 気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……? 「こんな本性どこに隠してたんだか」 「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」 さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。 +ムーンライトノベルズにも掲載しております。

結婚前夜の妹を寝取る王子

岡暁舟
恋愛
タイトル通りです。

優しい紳士はもう牙を隠さない

なかな悠桃
恋愛
密かに想いを寄せていた同僚の先輩にある出来事がきっかけで襲われてしまうヒロインの話です。

英雄騎士様の褒賞になりました

マチバリ
恋愛
ドラゴンを倒した騎士リュートが願ったのは、王女セレンとの一夜だった。 騎士×王女の短いお話です。

淡泊早漏王子と嫁き遅れ姫

梅乃なごみ
恋愛
小国の姫・リリィは婚約者の王子が超淡泊で早漏であることに悩んでいた。 それは好きでもない自分を義務感から抱いているからだと気付いたリリィは『超強力な精力剤』を王子に飲ませることに。 飲ませることには成功したものの、思っていたより効果がでてしまって……!? ※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。 ★他サイトからの転載てす★

旦那様が素敵すぎて困ります

秋風からこ
恋愛
私には重大な秘密があります。実は…大学一のイケメンが旦那様なのです! ドジで間抜けな奥様×クールでイケメン、だけどヤキモチ妬きな旦那様のいちゃラブストーリー。

処理中です...