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初美の浮気するまでの話 有名学校合格から転落までの道のり

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 どうしてこうなったんだろう。

 昔の事を思い出しながら初美は泣きはらした目で横になっていた。両親ともに有名企業で働いていて、祖父母は社長をしている。誰もが聞いたことがある名前の企業の令嬢だった。

「初美合格おめでとう」
「ありがとう、おばあちゃん」

 家族に囲まれて合格祝いをしてもらった。妹と弟がいいなーと言っていたが、2年後には合格して同じことをしているわよと言い返した。とても幸せな失敗すらなかった日々だと思う。
 あの日は有名学校の合格をして、友達と学校の制服を着て合格祝いをしていた。私立学校も卒業して優秀な友達とプリクラを撮って解散した。

 塾に部活にいくら時間があっても足りない。それでも将来両親と同じように仕事について子供を産んで、ハウスキーパーを雇えるくらい裕福で暮らしたいと思っていた。
 帰り道歩いているときに声が聞こえた。その声に反応したら、目の前がビルやキャッチの男性や人ゴミだらけの渋谷から何もない森の中に変わっていた。

 周りをキョロキョロ見渡してもさっきまでいた場所ではない。持っていたカバンがなくなっていて、制服だけは着ていた。
 立ちすくんでいると獣の威嚇する声が聞こえてきた。10匹いる。これから死ぬんだと思った時に矢が獣に突き刺さった。獣に的確に刺さり死んでいく。血の匂いが充満する中現れたのは、初美より大きな体のゴルダナという名の騎士だった。

 ♢

 訳が分からないまま、あの場所から連れ出された。言葉も通じず嬉しそうに抱きしめている騎士の服装をした男の人。今思えば、その場で犯されたり殺されなかったことが彼らなりの誠意だとわかる。ただ、あの時は訳が分からない状況と感情でいっぱいだった。

 中世ヨーロッパを思わせるレンガ造りの屋敷にたどり着くとメイドや執事に出迎えられた。部屋はすでに用意されていて、猫足の鏡台や大きなベット、アンティーク家具が配置されていた。

 合わない食事、言葉が通じない環境。

 どれもストレスが溜まるものだった。水は何とか飲めるものの生きる気力というものを無くしてしまっていた。向こうに通じない言葉で何度も家に返してほしいと言った。泣いていると抱きしめてくれるが、胸の中で抱かれても憎しみだけが増していった。

 同じ国の人間がいることを知ったのは1か月も経ってからだった。何度も脱走をしようとしたものの失敗して、悲しそうな顔をしたゴルダナが会わせてあげると言ってきたのだった。

 同じ世界から来た美咲という女性だった。2人の優秀な子供を産んだと声を弾ませて、案内するメイドは話している。こちらに来た時と同じ服装を着ていた。わたし、初美にとっては故郷の服で心の支えになっていた。

 初めて会った美咲は正直に話してくれた。ここでは生きていくために男に抱かれないといけないことだった。元の世界に帰りたいと言っても帰る方法がないと言い返された。
 そもそも異世界小説にある召喚ではなく、異世界から来たの迷い人の私たち。向こうにいるときに声に反応してしまった時点でダメだった。

「声?ミーシャ初めて聞いたよ」
「私はここに来るときに女性の声が聞こえてきて、グーたら出来て豪華な衣食住提供出来るなら、異世界でもどこでも行ってもいいと反応したよ」
「……ミーシャ、だからミーシャは僕のベットで眠っていたのか。ああ、神様。僕がミーシャに一番グーたらを提供できると判断していただきありがとうございます。王族のベットで寝ていたら、妃教育や外交でミーシャは死んでいた。それか脱走していたかもしれない。……いや、脱走は有り得ないな。」

 ミーシャと美咲は呼ばれていてニルスという飼い主に甘やかされていた。美咲はいいかもしれないけれど、どうしても嫌だった。

 その日の晩、初美は元の世界に戻してもらうように頼みにゴルダナの寝室に向かった。頼みの綱はゴルダナしかいない。元の世界に戻りたい。

 制服を着たまま寝室に向かうとゴルダナは
「意味が分かっているのか」
 と低い声で聞いてきた。冷静を装っているが瞳の奥で情欲の炎が燃え上がっている。その目が恐ろしく初美は目を合わせようとしなかった。
「風呂に入ってきたのか?」
「はい」
 寒くないのに震えが止まらず初美は服を自分で脱いでいた。全裸になるとゴルダナに近づいて不慣れなキスをした。

 はじめてのキスだった。

 異世界に来て知らない相手と肌を重ねる。自慰行為をしたことのない割れ目に指を入れられて広げられる。陰核に指が当たるたびに奥の方から蜜がこぼれ出た。口で刺激されると甘い声が漏れていく。
 処女を捧げた時、ゴルダナは苦しそうな嬉しそうな顔をしていた。

「俺の番、大切にする。頼むから逃げないでくれ。」

 この言葉はゴルダナの本心で理解できない言葉だった。この言葉の続きは痛いほどに理解することになる。

 ♢

 行為が終わるとゴルダナは抱きしめて眠った。幸せで幸福に満ち溢れている。


 私は幸福じゃなかった。彼が眠った隙をついて、あらかじめ用意していた荷物を持って明け方逃げようとした。
 しかし見つかってしまい、ゴルダナは使用人の前で、わたしのお尻の穴の処女を奪った。痛いと叫んでやめて欲しいと懇願しても、ゴルダナの怒りは収まらなかった。何度も白濁を吐露すると寝室に戻り、わたしを凌辱した。

 初めての時は優しくしてくれたのに、今は優しさもない交尾をしている。

 自分の処女を捧げるところを皆に見られ、鑑賞会に参加させられた数日後。護衛騎士を誘ってみたらあっさり寝てくれた。

 使用人は主人の心が壊れるからやめて欲しいと訴えても、女性が浮気しても問題がない国でしょうと言い返す。護衛騎士と行為中、遠征討伐で屋敷にいなかったゴルダナが戻ってきた。

 誰よりもわたしを愛していたゴルダナではなく、冷血で残忍な戦場の姿のゴルダナを目の当たりにした。
 寝た護衛騎士は目の前で殺された。主人よりも女を信じた護衛騎士が悪いと使用人たちは口にする。

「お前はまだ俺の妻じゃない。好きなところに行くといい。金は用意した」

 メイドが着替えさせると、素早く屋敷から追い出される。
 仲が良かったメイドに何処に行きたいのか会話したときに言った行きたい場所に連れて行かれると聞いた。馬車に揺られて、辿り着いた先に城壁が見える。馬車の中でメイドにこれから先生きていける十分なお金を渡されて、手で持てない分はカードのようなものがあり入金されていると聞いた。

「もう私たちの国と関係が切れています。二度と国に入ることも許されません。紹介状を持っていけば何処でも雇ってもらえます。お幸せに」

 国と関係が切れて、分からないところに来てしまった。地図で見たことしかない場所になる、

(やっと自由になれた。もう犯されなくて済むんだ。)

 幸せだと実感できたのは数日だけだった。

 生きていくには十分なお金だったが、女性で働きたいと言っても現地の人ではないので断られる。紹介状を出して仕事が欲しいと言っても脱走した異邦人としか認識してもらえない。

 わたしの失敗はゴルダナの元で自立するまでセックスをして、皆に物を教えられるまで気に入られて次の就職先を斡旋してもらうことだった。

 その後は貯金を食いつぶしながら移動して暮らしていた。珍しい異国の人間は何時だって危険にさらされる。

 幸せだった日本にいた頃を思い出して22歳の誕生日を迎えた。
 初美はこの世界に来たことを不幸だと嘆いている。
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