上 下
8 / 105
第1章 王都編

第8話  依頼

しおりを挟む
フェリクスは結局、10冊ほど本を借りて部屋に戻った。

そのまま、その日は本を読んで1日は終わった。フェリクスが寝ている内に本は11冊になっていた。

休日になり、フェリクスは王都のクレソン商会を訪れていた。

「すみません、少し厨房を貸してほしいのですが」
「これはフェリクス様」
「その呼び方はやめて下さいよ、マリアンヌさん」
「ふふ、分かりました、厨房の件は問題ありません、いつでも使用していただいて構いません」
「ありがとうございます」

お礼を言うとフェリクスは商会の奥へと消えて行った。

(しかし、フェリクス君は何を厨房で作るのでしょうか)

フェリクスが作っていたのは妖精に上げるクッキーだった。保存が効くので旅の間も少しだけ持っていたが、妖精たちに全て上げてしまい、ストックが切れてしまったので商会に作りに来たのだ。

クッキーを作っていたフェリクスだが、何やら外から騒がしい声が聞こえてきた。

「おい、新しいダンジョンが見つかったらしいぞ」
「まじか」
「稼ぎ時だ――」

会話の内容から想像するに新なダンジョンが見つかって、活気立っているようだ。ダンジョンは危険もあるが魔物が落とす魔石や未知のマジックアイテムなど、豊富な資源がたくさん眠っている。自然に発生するダンジョンもあるので冒険者にとってはいい稼ぎになっている。

「浮かれすぎかな」

確かに金になるのがダンジョンだが、今の雰囲気は命の危険などを考えていない感じだなとフェリクスは感じた。

(こんなときは多分)

そこに食堂に近づく足音が聞こえてきた。

「フェリクス君、会頭から貴方に速達の手紙が来ました」
「了解です、こっちに投げてもらっていいですよ」

基本的に商会も利益が欲しいため、冒険者を雇ったりするが大体は商会専属の冒険者がダンジョンに行く。

レアアイテムなど、見つけた際に商会に報告しない者などが出てきてトラブルなどになるからだ。そして、その中で一番確実な方法は自分でダンジョンに潜ることだ。そうすれば、レアアイテムを他の誰にも取られることもない。

ダルクの手紙にはダンジョンの詳細と王都のAランクパーティと一緒にダンジョン行ってほしいという旨が書かれていた。

読み終わるとまたもフェリクスは手紙を魔法で燃やした。料理の後片付けも終えていたフェリクスは作ったクッキーを腰巾着に入れた。

「マリアンヌさん、商会のAランクパーティ、ホープフラッグの所に案内お願いします」
「ダンジョンの件でしょうか?」
「ああ、親父からダンジョンに一緒に潜ってくれと」
「わかりました、そう言うことならご案内いたします」
「お願いします」

案内されたのは商会の中の裏側だった。マリアンヌはフェリクスを案内すると一礼して商会の受付けへ戻って行った。そこにはいつくかのパーティが居た。フェリクスは顔を知っているので真っ直ぐ、ホープフラッグの所に向かった。するとバスターソードを背負った青年がフェリクスに話しかけてきた。

「これは若、お久しぶりです」
「久しぶり、レオナルド」
「例のダンジョンの件ですかね」
「ああ、そうだよ、親父が一緒に潜ってやってくれってさ」
「それは心強いです、若」
「おい、お前、レオナルドさんに、何、気軽に話しかけているんだ」

フェリクスとレオナルドが話していると1人の少年が割って入ってきた。

「彼は、新人かな」
「すみません、若」
「いや、別に大丈夫だよ、レオナルド、俺のことを知らない人は大体、あんな感じだよ」
「お前、レオナルドさんの事、呼び捨てにしてー」
「アル、いい加減にしろ、この人は――」
「いや、いいレオナルド」

レオナルドを手で制すとフェリクスはアルと呼ばれ少年に向き合った。

「アル君だったかな」
「そうだ」
「なんで、俺がレオナルドに話しかけてはいけないんだ?」
「それはレオナルドさんがこの商会の筆頭のAランクパーティだからだ」
「Aランクパーティだと、気軽に話をしてはいけないのか?」
「そうだ」
「それじゃ、話かけられるような奴だと、証明すればいいんだな、ほら」

フェリクスは懐から金属の板を取り出した。それはギルドカードと呼ばれるもので自分の魔力を通すと身分を証明できるものだ。

「Aランク!しかもソロ」
「これでいいかな」

ギルドのランクにはS、A、B、C、D、Eのランクがある。それプラス、ソロとパーティでランク付けされている。もちろん、ソロのAとパーティのAでは雲泥の差がある。

「レオナルドを慕っての反応、なんだろうけど、今後はやめた方がいいかな、冒険者としても商会としても」
「・・・」
「ほら、もいいだろアル、引っ込んでいろ」

レオナルドに止められて、フェリクスからアルは引き離された。とぼとぼとアルは離れて行ったがその背中には悲しさが見て取れた。

「ふむ、レオナルド、今回のダンジョン、あの少年も連れて行こうか」
「正気ですか、若、彼はCランクですよ」
「俺が守れば問題ないでしょ」
「確かにそうすれば問題ないですが、それだと若に来てもらった意味がなくなってしまいませんか?」
「そうかもしれないけど、俺が守らなくても、もう大丈夫だろ、レオナルド」
「・・・若にはかないませんね」
「それじゃ、決定と、朝の初めの鐘が鳴る前に集合でいいかな」
「わかりました、アルには私から伝えておきます」
「それじゃ、明日」
「はい、明日お願いします」

フェリクスはそう言うと商会を後にした。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

この眼の名前は!

夏派
ファンタジー
「パンイチ最高ッッ!!!!!!!!!」  目が覚めたら、パンイチで椅子に括り付けられていた。  異世界に転生した俺は、チート能力を期待していたが、実際の職業はまさかの無職。  唯一もらった眼の力も「相手の嫌なこと」、「相手の好きなこと」だけがわかる力?!  夢の異世界なのに、剣も魔法も使えない展開に!  どうなっちまうんだ俺の異世界ライフ!  ゆるゆる異世界ファンタジー。俺YOEEE系。コメディ感覚でどうぞ。  よく誤字ります。ご了承を。  投稿は今現在忙しいので不定期です。  第13回ファンタジー小説大賞、890位獲得。これからの伸びに注目。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~

たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!! 猫刄 紅羽 年齢:18 性別:男 身長:146cm 容姿:幼女 声変わり:まだ 利き手:左 死因:神のミス 神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。 しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。 更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!? そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか... 的な感じです。

転生勇者の異世界見聞録

yahimoti
ファンタジー
ゲームのメインストーリーが終わったエンドロール後の異世界に転生したのは定年後の会社員。体は子供だけど勇者としての転生特典のチートがある。まあ、わしなりにこの剣と魔法の異世界を楽しむのじゃ。1000年前の勇者がパーティメンバーを全員嫁さんにしていた?何をしとるんじゃ勇者は。わしゃ知らんぞ。

2回目チート人生、まじですか

ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆ ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで! わっは!!!テンプレ!!!! じゃない!!!!なんで〝また!?〟 実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。 その時はしっかり魔王退治? しましたよ!! でもね 辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!! ということで2回目のチート人生。 勇者じゃなく自由に生きます?

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

精霊に好かれた私は世界最強らしいのだが

天色茜
ファンタジー
普通の女子高校生、朝野明莉沙(あさのありさ)は、ある日突然異世界召喚され、勇者として戦ってくれといわれる。 だが、同じく異世界召喚された他の二人との差別的な扱いに怒りを覚える。その上冤罪にされ、魔物に襲われた際にも誰も手を差し伸べてくれず、崖から転落してしまう。 その後、自分の異常な体質に気づき...!?

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

処理中です...