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30 マミ 語り合う (3)
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少し、間が有って、
ふと、クレイアが、「…一応、わたしも、言わせてもらうけど…、
女の子としてマミさんをどう思うか、って聞かれたら、正直、
自分でもよく解らない…、けど、
…一人の暗殺者として言わせてもらえるのなら…、
マミさんは、わたしが絶対にかなわない相手だから…、だから、
わたしは、マミさんが男になってわたしを犯そうが殺そうが
一切抵抗するつもりも無いし一言の文句も言うつもりも無いの。」と、淡々と、
この上なく真摯な声音で。
「!!!!?っ、そんな…っ!!!!?」愕然と叫ぶマミに、
「…わたしの言う事がマミさんは気に入らない、っていうのは解るの。
でも、わたしはわたしなりに今までもこれからも暗殺者として誇りを持って
生きるつもりだから、
だから、これは、わたしの、負けて見苦しい真似はしないっていう、
暗殺者としてのこだわり。」
「…クレイア……」マミが、言葉を失う。
ふと、マリンが、「…あー、なんかこう、わたしが言おうと思ってた事と
ほとんど同じ様な事クレイアちゃんに言われちゃったなあ…」と、なんとなく
遠くを見る様な瞳で。
「…マリン…?」と、なんだか途方に暮れている様なマミに、
マリンが、「…わたし、格闘家として、命を賭けて生きていこうって
自分に誓ってるから。…ヴィクトルパパに追い付いて追い越してやろうって
それを目標にしてたんだけど、
そのヴィクトルパパでも全く勝ち目の無いマミさんって存在が現れて、
正直、かなり、撃ちのめされちゃって…。
一格闘家として命を賭けて勝負を挑むのなら、
負けたら殺されても殺されるより酷い事されても全部受け止める、
その覚悟はしてたから…。」
「…マリン……」マミが、撃ちのめされて。
暫し、沈黙が流れて、
マミが、あまり力の無い口調で、「…おれも、元は男だから…、
…正直に言えば、男になって、女の子とセックスしたいって気持ち、
確かに…あるけど…、…でも、それでみんなを不幸にしちゃったら、って
思うと…、…それは、嫌だな……」と、
なんとなく、ミーユの、フレナの、フィリスの、クレイアの、マリンの、
瞳を、見つめながら、「…例えば、これはあくまで仮に、の、話だけど…、
…おれが男になって、…ミーユ妊娠させて、…フレナ妊娠させて、
その事で、二人の友情を壊して、二人を不幸にしちゃったとする…、
…そんな事になるぐらいなら、
おれ自身で、おれをぶっ殺した方が、ましだ…!!!!」
「!!!!っ、そんな事おっしゃらないで下さいっ!!!!、
そんな、自分で自分を殺す、なんて…っ!!!!」愕然とミーユが、
瞳から大粒の涙を飛び散らせて。
「…ミーユ……」マミが、胸がいっぱいになった面差しで、「…その、
これあくまで仮に、の、話だから……、あー、うわー、なんか
思い出しちまった。…いや、こんな時に前に見たアニメの話とか
不謹慎だとは思うんだけどさ……」
思わず語ってしまうマミの話を、5人の少女達も黙って聴いている。
いきなりアニメの話を始めるマミだがその瞳が真摯なのを
感じ取っているから。
「…前に知り合いに見せられたアニメなんだけど、主人公の少年が
本当に酷い奴でさ…。メインヒロインの女の子が2人いて
友達同士なんだけどその両方とセックスして両方とも妊娠させて、
その上さらに他の女の子達ともセックスして妊娠させたりしてさ…、
ヒロイン二人の友情は当然無茶苦茶になるし、
もうネット上は『主人公死ね』の嵐になって。
それで、最終回は、精神やられたヒロイン二人がかりで
主人公刃物でめった刺しにして殺してから、ヒロイン二人が
お互いの心臓刃物で刺して、結局みんな死んで、って、
なんでこんな酷いアニメ作ったんだ状態。」と、マミが、
なんだか死にそうな目で。
少女達が言葉を失っている。
マミが、思い詰めた瞳で、「…アニメのお話でも胸糞悪くて
耐えられないのにさ、…仮にだ、その主人公と同じ様な真似
現実の女の子達相手におれ自身がしちまったら、って、
もう、思っただけで……。
…流石に自分で自分に向かって『死ね…!!!!』って、
言わずにいられなくなる様な真似だけは、したくない…、
…絶対……!!!!」
「……マミ様……」ミーユが、涙を浮かべたままの瞳で、
頬を染めて。
暫し、間が有って、
マミが、「……おれは、この場にいるみんな、幸せに、
仲良く、過ごしてもらえたら…って、思うし…、
……しばらくは、おれも、女の子として、みんなと一緒に
過ごしていきたい……、できれば、友達として。
…その、みんなも、おれの事、よく知らないんだし…、
あわてて結論みたいなの出すより、もっとよく知ってもらえてから、でも、
遅くないんじゃないかな。」と、少し苦く微笑みつつ。
沈黙が流れて、
フレナが、「…まずはお友達から、って、事…?」と、たずねて、
マミが、「…そういう事に、なるかな……。」と、なんとなく深い瞳で。
また少し、間が有って、
マミが、「…ごめん、おれには、こんな風にしか言えない。」と。
思わず、ミーユが、「…謝ったりしないで下さい、
マミ様…!」と。「…マミ様は、わたし達が幸せでいられる様に、って、
思いやって下さってて…。…わたし、一方的に、
気持ち、ぶつけちゃったのに、マミ様は、これ以上無いくらい、
わたしの気持ちに向き合って下さって…!!!、…だから……。」
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