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11 楽しい料理

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「大丈夫かな?」
リュカの様子が変だったな。急にニヤニヤして気持ち悪いから一緒に食べるのやめたけど。なんだったんだろ?
ペガが『いつもの事だから』って言ってたけど。情緒不安定?今度、安定剤みたいなの作ってあげようかな。

「あっ!あそこかな?」
宿を出るとき、厨房を貸してくれる場所を聞いたけど。まさか、こんなオンボロとは…衛生面…大丈夫かな?

「すみません!誰かいますか?」
聞こえないかな?
「すみませーーん」
「はいよ~」

ボロボロのドアから、お婆さんが出てきた。
「あの、厨房を借りれると聞いたんですが。」
「厨房?あぁ、はいはい。使っていいですよ~今はもうお店はやってないですからね~」
「はい。ありがとうございます!では、失礼します。」

ここは、昔は食堂だったんだけど。引退したお婆さんが管理している。掃除が行き届いていないからか、古びた感じになっているが、さすが食堂。立派な厨房だった。でも、長年使用してないから埃が被っている。
「掃除がここまで出来なくてね~大丈夫かい~?」
「大丈夫です!使わせて頂きますね!」
よし、まずは掃除だね。
一応妖精さんに頼んだ方がいいよね。

「風の妖精さん、水の妖精さん。お手伝いお願いします」
両手を合わせてお祈りすると、ふわふわと妖精さん達がやってきた。
「来てくれてありがとう。風さんは、埃や小さなゴミを捨ててね。水さんは、汚れを落とすから水をかけてください。」
それぞれにお願いして、だいぶ綺麗になった。
でも、まだ汚れているのは「洗浄・消毒」と魔法を使った。少しなら大丈夫よね?
「うん!これなら大丈夫。みんな、ありがとう」
お手伝いしてくれた妖精さん達に焼き菓子を手渡していく。
キャッキャと楽しそうに話し合っている妖精さんが可愛い。

綺麗になった厨房で、まずは材料を取り出していく。
次にバーの所で作った包丁を取り出す。この世界の包丁は、切れ味悪い上に出刃庖丁みたいに重い。
元の包丁を熱して、ひたすら打ち付けて薄く伸ばしていく。仕上げに石を使い尖らせていく。テレビで見た見様見真だけど、上手くできたんだ。感動の余り、食材を細かく切り過ぎてバーに怒られたな~
今回は気をつけようと野菜を取り出す。

「材料を切って、あっ!火!」
焼く為、火の妖精にお願いする。

作れるだけ作り、異空間にしまっておく。そうすれば、出来たてを食べられるのだ。中に入れると時間が止まるみたいで、食べ物が腐らないんだって。原理はよく分からないけどね。

食材は日本と変わらないのが多く、名前が違うだけだった。
なので、味付けを変えなくても再現出来る。嬉しい事だね。
しかも!!さっき、露店をのぞいたらお米が売ってたんだよ?!しかも格安!!鑑定しながら歩いて正解だったよ。
玄米だったから、魔法で精米したら懐かしい白米が出てきた出てきた!もちろん。精米した時に出たのも捨てずに取っておくよ?ぬか漬けが出来るからね!
・・・元々家畜の餌にしてたみたいだけど、もったいない。

よし、米を研いだら鍋に移して…うん、水はこのくらいかな?
「火さん、お願いします。」
妖精にお願いして、次はオカズ!やっぱりお肉かな~野菜は切って茹でてるから。うん。とりあえず焼こう!
タレは色々作っとけばいいしね。

「料理って楽しい!!」

料理に夢中になり、すっかり暗くなってしまった。
お婆さんに、お礼と作っておいたお弁当を渡して宿に帰る。
入り口を綺麗に直して帰ったのは秘密だ。

宿に着くとリュカが「遅い!何時だと思ってるんだ?!どこに行ってたんだ!」とお父さんみたいになってた。
懐かしいな…このやり取り。

しんみりしていたら、「チズル?大丈夫か?」と心配されてしまった。
「だっ大丈夫だよ!お父さん!っっあ、もう寝るね!おやすみ!」
「おっお父さん?」
放心状態になった、リュカの隣をすり抜け部屋に入る。

やっちゃった、リュカにお父さんって言っちゃったよ。恥ずかしい!!
1人悶えていた。

「でも、リュカってお父さんみたい・・・」
自分を心配してくれる人がいる。それだけで、こんなに嬉しいなんて。ウルっと涙が溢れそうになるのを我慢して、寝る準備をする。
「洗浄」自分に魔法をかけると、体についた汚れや臭いが浮かび上がり、お風呂上がりのようになる。
「ふぅ。やっぱりお風呂に入りたいな」
街中を探したが、風呂屋は無かった。残念に思いながらも次の街にある事を期待して寝ることにする。

明日は、頼まれた依頼をやらなくては。



廊下にはまだ放心状態のリュカがいた。


『過保護もここまでくると、父親になるんだね。頑張れリュカ』
ペガに励まされ、ガックリ項垂れながら部屋に戻るリュカだった。
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