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第3章

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「ーーやっと、やっと着いたのか・・・?」


何故私がこんなに、疲労困憊気味かというとミナとロードのいちゃつきが我慢できない。ーーただでさえ、まなみでいる時間が少ないのに。

それに加えて、暑苦しいアーマードの相手は疲れる。
匂いの強い香水に暑化粧・・・何故か、話しているとグイグイ近づいてきてーー怖かった。

長かったーーーとても長かった、着いた途端に一番乗りで外の空気を吸うのも無理もない。
ーーだから、そんな目で見ないでおくれ。
私だって息抜きしたいんだよ?分かっておくれアルジェ。

ジトーッと見ているアルジェから目を背けながら心の中で言い訳をするアラン。




「まずは、最長老にご挨拶しないとね♡ヨシュア君にバレない内に グエッ」
私達に説明しながら歩いていたら、急にアーマードの動きが止まり、苦しみだした。なんだ?何が起きたんだ?!

ーーーー私の気のせいだろうか?
アーマードの首に緑の手が絡みついて締め付けているように見えるが・・・うん。私は何も見ていない。アーマードの後ろに鬼の形相で睨みつけているヨシュアさんなんて、ミテイナイヨ。


危険を察知したのか、ロードとミナも素知らぬ顔をしている。


「アーマード。仕事を放り出して居なくなったと思ったらーーーのこのことよく戻って来ましたね。」
一言一言に威圧が込められ聞いているだけで体が凍りつくようだ。







*****





「なるほど、話は分かりました。
まなみさんの中にいるミナさん、ミナさんをまなみさんから切り離すんですね?
結論から言いますと可能です。」


「本当か!やったな!ミナ!!」
歓喜のあまりミナは泣き出した。

ヨシュアさんにこれまでの経緯を話した、静かに話を聞いていヨシュアさんの後ろで、アーマードが先程より生傷が増えているのは見て見ぬ振りをしよう。

アーマードの言葉を疑っていた訳ではないが、ここまでハッキリ聞かされると私も期待してしまう。
グッと握った手に力が入る。

「ーーただ、問題があります。あなたの」
「ヨシュア君!!」

言葉を遮るようにアーマードが割って入った。やはり、何かあるのか?
「はぁー、その様子だとまだ言ってないんですね?まったく、後でみっちり話さないといけない様ですね。」
鋭い眼光でアーマードはすごすごと引き下がった。

ゴクリと生唾を飲み込み、ヨシュアさんが話すことを静かに聞く事にする。

「物事には手順があります。まず、精神を肉体から切り離す事は簡単です。しかし、残された肉体。新たな肉体には負担がかかります。
1つ、元々の肉体に2つの精神が1つになるので、喪失感が出てきます。例えるなら、心にポッカリと穴が空いた状態になりますね。なので、支える人が居ないと精神を病んでしまいます。
2つ、切り離された精神が新しい肉体に馴染むのに時間がかかります。今まで五感を自然に出来ていた事が初めからになるので、リハビリが必要です。頭はしっかりしているのに、体が思うように動かせません。言葉も練習が必要です。

最後に、新しい肉体。
こちらを作るのはーーー見たほうが早いですね。付いてきてください。」

ヨシュアさんはそういうと、スタスタ歩いていってしまった。

思っていたより、難しい事では無いと思った。
そう、実際に体験するまでは。それはこの先に理解することになる。




「これです。こちらの卵に魔力を注ぎます。ミナさんが魔力を注ぐと、そのまま魔力と一緒に卵の中に入り時間をかけて肉体を作り新たに産まれて来るんです。」
連れてこられたのは、一面に卵が沢山ある場所だった。
大小様々な卵が等間隔で並んでいる。不思議な光景だ。

「なんだ、そんな事か。すぐに取り掛かろう!ミナ、」
ロードが近くにあった卵を持ち上げようとした時、ガシッとヨシュアさんに腕を掴まれた。


「気軽に考えてはいけません。これらの卵は新しく生まれるんです。必ずしも生まれる前の記憶があるとは限りません。ミナさんも記憶があるとは・・・同じ魂でも、あなたの事を忘れているかもしれません。この卵達は地中や待機中から集まった魔力が固まり1つの生命として卵になり生まれてきます。この場所が特殊なんです。
その時に記憶を持って生まれてくる者達はいません。稀にまなみさんの様に記憶を持ったままの者もいますがーーーあなたを忘れている、それでも覚悟はありますか?」

真剣な表情で話すヨシュアさんにロードは躊躇なく二つ返事をする。
「気が遠くなるほど待てたんだ。忘れたらまた2人の時間を作ればいい。俺はミナ以外考えられないんだ。ミナ、俺にはお前だけだ。」
男の私でも惚れてしまうな。こんないい男は他にいないな。
ーーーーおや?アーマードも目がハートになっている。ロードに惚れたな、ミナ・・は言うまでもないか。

私もロードと同じ立場でも、同じ事をしていたな。
まなみ以外考えられない。
記憶が無くてもこの愛は永遠だ。


「ーーー分かりました。あなたの覚悟は変わらない様ですね。
では、ここへ。ミナさん、あなたの魔力で卵を作ります。」
『たまご?』
「はい、卵をイメージして下さい。」
言われた通りに両手を前に出し、卵をイメージする。

『ーーーたまご・・』
手から薄っすらと卵の形が出来てきた。すると、ロードがある事に気づく「ミナの魔力が無くなってる?体に残っていた魔力はミナの魔力だったのか、ーーーこれで、まなみの魔力は無くなったな」
小さな呟きは誰に聞こえるわけもなく、ミナの手から卵が出来る事に皆釘付けのようだ。


『凄い、私の魔力がドンドン吸い込まれーーーてーーーいーく?』
「!!ミナ!お前の体が消え始めるているぞ!」
ガシッと掴もうとするが、見えない力に弾かれる。
ミナの体は霧の様に浮き出てきて、2人いる様に見える。
これが、真奈美とミナの精神が離れてきているのだ。


『大丈ーー夫よーーーすぐに………ぁ‥‥ぇ…………』
ミナは卵の中に入ってしまった。
ピンク色に金色の模様が入った卵がロードの目の前にある。
この中にミナがいる。

そっと卵に触れるロードにヨシュアさんは「卵が孵化するのはまだ分かりません。それまで、こちらで滞在しますか?」
「ぁあ、そうして貰えると助かる」
「では用意しましょう。こちらへ、あぁ卵はそのままにして下さい。この場所でしか孵りませんので動かさないでくださいね」

「そうなのか?分かった。しばらく、ここにいていいか?大丈夫だ。動かしたりしない。」

ロードは離れたく無いようで卵の側にいる。ヨシュアさんもそれが分かるのかあまり強くは言わない様だ。
まなみ、もうミナはいないよ?早く目を覚ましておくれ。
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