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第2章

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『・・・っ』
身体の痛みで目が覚めてしまった。魔力が無くなるとこんなにも辛いのかと身をもって知る。痛みはあるが、身体は動く様だ。
ムクリと起き上がり洋服をめくり、刺されたお腹を見てみる。
『ーーーあっ傷が無いーーー!声が出る・・』

歓喜の声を上げてしまうのも無理はない。
その声で、隣に寝ていたアルジェとアランを起こしてしまった。
「ーー目が覚めたのかい?身体は大丈夫かい?」
愛しい人の声を聞いて、振り向くと目は赤く腫れており、あまり寝ていないのか目の下にはクマが出来ていた。随分と心配させてしまった様だ。

『ごめんなさい、心配かけてしまってーーー』
「本当に死んだと思ったよーー、ロードが回復してくれなかったら……まなみがいない世界など考えられない、愛してる」
ギュッと抱きしめられ、生きてて良かったと助けてくれたロードに感謝するアラン。すっと真奈美も腕を伸ばし、アランを抱きしめる。
そんな2人にアルジェもギュウっと2人にしがみついた、そんな可愛らしいアルジェに『ふふっ』と笑みが溢れてしまう。

「ーーーもう大丈夫だな?食事は食べれるか?」
トントンっとドアを叩いて様子を伺うロード。アランは名残惜しそうに真奈美から離れた。真奈美はロードにお礼を言おうと向きを変えた。
『ありがとう、ローーーッ』
突然の頭痛に倒れてしまう、(痛い!痛い、急に何?!)困惑しながらも頭を抱えてしまう。

「?!どうした!大丈夫か!!」駆け寄るアランとロード。
真奈美は意識が薄らぐのを感じた。

ガシッ

意識のない真奈美がロードの腕を力強く掴み、離そうとしない。
「?そんな強く掴まなくても俺はいるよ」
力強く握る手に優しく触れる、するとカッと顔を上げロードの顔を掴みーーーチュゥゥ…激しいキスをした。


「!!」
突然のキスに戸惑いながらも、抵抗しないで受け入れるロード。
真奈美の頭に手を回しながら角度を変えて自分からもキスをする。

目の前で起きている事態に訳が分からず、唖然としてしまう。
ハッとアルジェの目を隠しながらもロードと真奈美を引き剥がすアラン。
「ちょっ、ちょっと待て!まなみ!どうしたんだ?!ーーーロードも抵抗ぐらいしたらどうなんだ!!」
「何故だ?まなみからしてきたんだ。受け入れるに決まってるだろ?なぁ、まなみ?」

引き剥がされたロードは、しれっと答えその態度に苛立ちを覚える。真奈美は鋭い目つきでアランを突き飛ばした。
「??ーーど、どうした?」
戸惑いを隠せず、真奈美に詰め寄ると激しく拒否られ、ロードにピッタリとくっついている。
何かがおかしい。怪訝な表情で真奈美を見つめる。

『何を見ている人間。私に触れるな!ーーーロード、やっと会えたゎ。チュウ』
(この口調ーーー最悪だ。あいつが出てきたのか、)
アランの予想は当たっていた。
今、目の前にいる真奈美はまなみでは無い。別の人格だ。

『ロード?固まってるの?やっと会えたのに、嬉しく無いの?』
「ーーー誰だ。お前は」
グイっと自分から離し、明らかに真奈美と違う口調の目の前の女に警戒する。
(そうか、ロードは知らないのか……教えたら、ロードはーー)
アランが女の正体を教えるか戸惑っていると女は真奈美の顔でにっこり笑いながらこう話した。

『私?ミナよ?忘れたなんて酷い。ミナ・マーリンよ、あなたの恋人。どう?思い出したでしょ?』
「ーーーっまさか!!ミナは死んだはずだ!!・・・この手の中でーー息を引き取ったんだ。忘れるわけがない。」

『そうよ、あの頃のミナは死んだ。でも、あなたの事が忘れずにーーー今、こうして目の前にいるのよ!私は生まれ変わったの!』

(確かにこの話し方はミナだ。本当なのか?)
チラッとアランを見ると、何か言いたそうな目をしている。

「アラン、話を聞こうか」
そう言うとアランを連れて部屋から出て行く。
残されたミナは側でキョトンとしているアルジェの頭を撫でて優しく抱き抱えた。

『びっくりさせてごめんなさいね、暫くまなみは眠るから私が変わりに出てきたの。あなたはアルジェちゃんね、見ていたから知っているわ。私はミナ・マーリンよ。ミナでいいゎ、よろしくね』
撫で撫でしてくれるミナにアルジェは戸惑いながらも優しく抱き抱えてくれるミナに身を委ねる。





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