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第2章

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「うっ、イテテ・・・はっ!まなみは?!」
アランが見渡すと真奈美は椅子に腰掛けているのが見えた。

ホッとし、近づくが中々真奈美の所まで行けない。
「?何故近づけない!?」苛立ちながら走り出すも、真奈美はドンドン離れていく。「待て!!待ってくれ!!まなみ!」

手を差し出すと、スッと真奈美は立ち上がりアランの方へ向かってくる。「・・まな・・み?」差し出した手も虚しく、通り過ぎてしまった。驚いたアランは振り返り、真奈美の肩を掴むと怪訝な顔で『触れるな人間!!』払い除けられてしまった、呆然とするアランに真奈美は高飛車な態度で『はっ、私とあんな小娘を間違えるな。あっ!ロードォ~~♡』
甘ったるい声で話す先には、あの男が立っていた。

何処からともなく、現れた不気味な男。肌は青白く顔は作り物の様にえらく整っている。男の私から見ても端整な顔立ちにゾクリとする。
2人が仲良く抱き合いながら、遠くへ行ってしまう。慌てて追いかけるが 足元から黒い渦が巻き付いて来て、身動きが取れなくなってしまった。ジタバタ抵抗するも、逃げ出す事も出来ない「まなみ!どうしてしまったんだぁぁ!まなみぃぃぁぁああ!!!」



ガバァッ
「はぁ、はぁ、・・・ここは?ーーーー今のは・・・夢、だったのか?」
(嫌な夢だーーーあの男は誰だ?)視線を上げると、どうやら客間に寝かされていた様だ。真奈美奪還の時に寝泊まりしていたから、覚えている。

(ん?まなみはどこだ?あれも夢だったのか?)
真奈美が戻って間もなく気絶してしまった為、半信半疑になりながらリビングへと足を運ぶ。


『あはは!ぅんーーーー美味しい!!』ドアの中から、楽しそうな笑い声が聞こえてきた。(やはり、現実だ。帰ってきたんだね、まなみ)ガチャリと扉を開けると椅子に座る真奈美が居た。(ほっ)姿を見て安心し、近くに寄り声をかける。

「まなーーー「さぁ、まなみ。これも食べてごらん、この地方では滅多にお目にかかれないよ」
『ん~!これも美味しい~甘くて、柔らかい。ーーーあっ!アラン!こっちに来て、ロードさんが珍しい食べ物を持ってるよ~~』

アランは絶句した。
悪夢の続きだと感じたーー真奈美の隣にはあの男が居たのだ。
しかも、仲良さげにしている。自分が気絶している間に何があったのだ?何故、見知らぬ男とイチャついているのだ?ロードを睨みつけながら見下ろし、話しかける。

「まなみ。知らない人と話してはいけないよ?物も貰ってはダメだ。こっちにおいで」
優しい口調でも目は笑っていない。静かに怒るアランにビクりとしながら、駆け寄るとグイッとアランの後ろに隠されてしまった。
スッとロードの前に立ち、アランは威圧するも、効き目は無いようだ。



「おやおや、レディーには優しくしないと。自己紹介が遅れたな、俺はロード。ただのロードだ、ファーストネームは過去に捨てた。」スッと、出された握手に嫌々ながらも強く握り返す。
「ちっ、アラン・ハッシュバーグだ。覚えなくていい、すぐに忘れる名だからな。さぁ、まなみ。屋敷へ帰ろう?」
2人のやり取りにアワアワしながらも真奈美はコクリと頷いた。

「俺も一緒に行く。やっと、ミナに会えたんだ。本人では無くても一緒に居たい。いいだろ?まなみ?」
『えっとーーーチラ』
答えに困りアランを見るが、あからさまに嫌な顔をしている。
「それは断っ「言っておくが。お前に断る権利は無い。まなみの魔力はずば抜けているのは知っているだろ?それを狙う奴が出てくる筈だ。お前に其奴らを倒す術があるのか?」
何とか断ろうとしていたが、先に遮られてしまい 確信を突かれ、グゥの音も出ない。出しかかった言葉を飲み込み真奈美を見る。

(確かに、魔力が強く制御が難しい。普段は大丈夫だが、先日の様に感情が高まり、暴走した時に何も出来ない自分が悔しい。真奈美を危険に晒す事は出来ない。)

「くっ、、いいだろう。ただし!まなみに必要以上に近づかないーーーって、ぅおい!!言ってるそばから離れろ!」
「まなみは、こんな口煩い奴の何が良いんだ?こんな奴より俺にしとけ、俺の方がまなみを大切に出来る。俺と一緒にいろ?守ってやる。」
『えっ、嫌です。アランの側にいると決めたので、気持ちは受け取れません』
甘い囁きにキッパリと断り、ロードから離れてアランの側に行き腕にしがみつく。

「まなみーーー私達の愛は不滅だな。チュッ、ロードとやらまなみの魔力は確かに凄い。何か宛があるのか?制御しようにも私には出来ない・・・まなみを守る為に知恵を貸してくれないか?」
大切な真奈美を危険に晒す訳にはいかない。苦渋の選択で、ロードに助けを求める事にしたのだ。

余りにもハッキリと拒絶され、目をパチクリしながら次第に可笑しくなり、笑い出す。そんなロードに首を傾げながら真奈美はアランを見る。

「オッケー、はいはい。俺の負けだ、ミナとは性格も真逆だな。はは、こんなにキッパリ断られたのは初めてだ。そうだ、宛はある。ここから離れた場所に枯渇の泉があるんだ、そこに行けば魔力を減らすーーー無くす事は出来る。魔力が無くなれば、ただの人間になるが・・その覚悟はあるのか?」

「枯渇の泉だと?それは大昔に消えた筈だ。ーーーまなみの魔力が無くても、まなみに変わりはない。私の愛は変わらない、ロード。信じていいんだな?」
(アラン・・・魔力が無くなったら、あなたを守れなくなる・・それでも、側にいていいの?)
不安げに見る真奈美に優しく頭を撫でる。

「大丈夫。私が側にいる、さぁロード!今すぐにでも出発しよう!」

「ーーー覚悟を決めた様だな。流石に今の俺では三人で瞬間移動する魔力が戻ってない。移動しながらになるな、準備しながら向かおう。(本当は余裕だが、旅は楽しまないとな。)」
「うむ、」
ロードはそういうと、外に移動して魔法で馬車を創り出した。
馬は幻影の為、魔力で走らせると話すロードに興味深々でアランはあれこれ聞いていた。生粋の騎士団魂が働き、邪険にしていたのが嘘の様に話しかけていた。ロードも気にしていない様で素直に教えていた。

黙って聞いていたマダム・イシュリーは真奈美にそっと耳打ちしながら新しいネックレスを渡していた、
アランもロードも馬車に乗り込み気付いていなかったーーー



「よし、目指すは北の地、オルスレィ。行くぞ!」
ロードの掛け声で、三人を乗せた馬車は静かに走り出した。

「三人に加護がありますように」静かに見送るマダムであった。

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