上 下
33 / 83
第1章

33

しおりを挟む
リードリッヒ様に連れてこられたお店はどうやら、スイーツがメインのようだ。何故なら甘い匂いが漂ってきている。

良い匂い~!甘い匂い~!何かな?蜂蜜かな?
スンスンと匂いを味わっていた。

「っは、本当猫みたいだ。でも、今は人間だな?面白い。」
リードリッヒが不意に声を出して笑い、真奈美は恥ずかしくなる。

『・・そういえば、聞きたい事があったんですが。猫の時に人間の姿を知っていましたよね?・・何故ですか?』
屋敷以外は猫のまま、人間の姿は見せていない筈。
最近はこの姿で王宮に行ったから、知られていてもおかしく無いが、リードリッヒは初めてあった時に知っていた様な素振りを見せていた。
疑問に思った真奈美は質問したのだ。


「知りたいか?そうだな、ロイ!」
バサッバサ
何も無い空間から梟が飛び出してきた。
「このロイはわたしの使い魔。何から話そうか、、そうだな。
今年の使い魔養成所での主人候補。あの場所に私も居たのだよ?
気付いていなかっただろう?
アランが・・あの馬鹿がいきなり、気持ち悪い事を口走りお前を連れて行ってしまったんだ。私が見つけ、近寄ろうとした時に横取りされた。そして、お前は無色属性なんだろ?
受付に追いついた時に聞いたんだ。」

(驚きです。あの場に居たんですね、はい。私もあっという間に連れて行かれ、契約されたので驚きでした。)

「それで、諦め切れない私はロイを使って、アランの屋敷を見張っていたんだ。そしたら、お前が人間になれるのを知ったんだ。」

『えっ?見張ってた?って、、、確かあの時はまだ猫で、、お風呂に入る為に変身を・・・・』
そこまで言って、真奈美は見る見る赤くなる。
キッとリードリッヒをみると、視線を逸らされ、耳が赤くなっているのが分かった。

『!!!!』
「・・すまん、見るつもりは無かったんだが、たまたまロイが見つけてしまい 悪気は無かった」
『信っっじられない!!エッチ!!変態!ストーカ!!!』バチィィッン!!
真奈美はあまりの衝撃にリードリッヒを叩いてしまった。

あっ、、やっちゃった、、

感情的になってしまった真奈美はジンジン痛む手をギュッと握り青くなる。

『ごっ、ごめんなさい!!!つい、手が出てしまい、、ごめんなさい!』
「ふんふ~ん♡おまったっせぇ~ん♡出来たわよ~ん!マリー特製、盛りもりランツァー♪ふったっつ~ん♡」

間の悪い事に、マリーが料理を持ってきてしまった。
リードリッヒの赤くなった頬を見て驚き、料理を落としそうになる。
「ちょちょちょっっと!リードちゃんの頬っぺたが赤くなってるじゃない!あなたね!どぅいうつもりなのかしら?!」

『あっえっと、、それは、、私が『俺に非がある。大丈夫だ。下がっていいぞ。」
リードリッヒが真奈美の言葉を遮り、マリーを部屋から出るように取り計らう。


シーン・・・
静まり返った部屋で沈黙を破ったのは梟のロイ。
「主人は悪くありません。私の目と主人の目は同じ物を見てしまいます。あの日は、たまたま窓に近寄ったあなたを私が見つけてしまいまして、首輪をしていたのですぐにわかりました。ハッシュバーグ家の使い魔はあなたしかいないですからね。今は。」

シレッとした顔でロイは真奈美に顔色変えず話した。
1人で騒いで真奈美が恥ずかしいと思った程。
「すまない。目を逸らせば見なくて済んだんだが、、女神の様に美しかったので、俺はお前の虜になったんだ。」
スッと、真奈美の髪を掴みリードリッヒはキスを落とす。

「アランにお前は勿体無い。俺の処に来い、お前の魔力は目の前にいてもヒシヒシと感じる。体から漏れ出ているんだ、自分では分からないだろう?その魔力があれば、俺はもっと強くなれる。女神が微笑んでくれたら、敵なんかあっという間に蹴散らして見せる」

口角を上げてニヤリと笑う姿は、容姿のせいか美しくもあり恐くもあった。

『えっ・・・と、私はアランさんの使い魔ですから、ごめんなさい。』
真奈美は迫力に押されながらも断ったが、リードリッヒは真奈美を諦めず見つめている。

『ぅわぁ~、コノ料理ハ美味しソウダナ』
話題を変えようとしたが棒読みになり、冷や汗をダラダラかきながら目の前に出されたスイーツを一口食べて見る。
ランツァーと名前だが見た目はパンケーキのようで、木苺のジャムらしき物をパンケーキに掛けるのだ。
おもむろに口に運び、真奈美は目を見開いた。

『!!おいっしー♡甘いのに、酸っぱい味もある!んんー幸せ』
さっきまで怒っていたのに直ぐに機嫌が直り、ランツァーを平らげてしまった。
そんな様子にリードリッヒ様はクックッと笑みを零していた。

「そんなに美味しかったのか?私のもあげよう、お前のと味が違うはずだ。」
どうぞ、と渡されたランツァーにはオレンジの様なジャムが付いていた。

『あっ、ありがとうございます。・・・ん~これも旨し』

真奈美はホクホクしながら2つとも平らげてしまったのだ。
(これ、アランさんも食べるかな?お持ち帰り出来るか聞いてみよ)

余りの美味しさにリードリッヒが熱い眼差しを見ているのに、真奈美は気付いていなかった。

ゴーン、、ゴーン
夕刻の鐘が鳴り響く。真奈美はハッとし、窓の外を見ると日が暮れて薄暗くなっていた。

『もう、こんな時間!あの!ご馳走様でした。迎えが来てるのでこれで失礼します!』
会釈をし、部屋から出ようとした時、ガシッと腕を掴まれた。

「外は暗くなって来た。私が屋敷まで送ろう。ロイ!迎えの者の所まで行き、伝えてくれ」
「御意に」
ロイはまた、何も無い空間に消えていった。



(えーっと、、あなたから離れたかったんですが、失敗ですね。)
『では、お屋敷までお願いします』
渋々答えると、余程嫌な顔をしていたのか、リードリッヒがまたクックッと笑いを零していた。


「そぅ、邪険にするな。心配しなくても屋敷まで届けるからな」
ふっと先ほどまでの俺様的な話し方ではなく、優しい言葉にビクリとしてしまう。


リードリッヒは何やら呪文を唱えると、真奈美の腕を離し手を繋いで来た。男性に免疫が無い真奈美はビクっと背筋を伸ばしたが誤魔化し「お願いしまふっ・・す』
動揺を隠しきれず噛んでしまった。

「ああ、すぐ使いが来る。行こうか」
リードリッヒは優しく微笑み部屋を後にする。


「あら?!あなた!さっきの事をきちんと説明っ『あの!あの!とっても美味しかったです!あんなに美味しいスイーツ、、また食べに来てもいいですか?』っつ、ぇえ、別にいいわよ。」
『やったー!!あっ、美味しかったのでお持ち帰りとか出来ますか?食べさせたい人がいるんですが、』

「あら~ごめんなさいね。うちのはお店で食べて貰ってるのよ~だから、持ち出しはやってないのよね~」
『そうでしたか、、分かりました!ご馳走様でした!』

真奈美はマリーに挨拶を済ませると、外でまってるリードリッヒに付いていった。
「んもう、可愛い子を連れて来ちゃって。リードちゃんったら本気ね。でも、彼女は他に好きな人がいる感じね。ファイト!リードちゃん!・・・あらやだ!頬の件!聞きそびれちゃった!・んでも、リードちゃんがあんな柔らかく笑うの久々に見たわね。
まぁ本人も気にしてない様だし、いいかしら。」


リードリッヒと真奈美を見送り、マリーは後片付けを始めた。


迎えの馬車は豪華で、煌びやかな雰囲気に気圧され、真奈美は端っこに座った。
リードリッヒ様はそんな真奈美の隣にきて、そっと手を重ねる。
「怯えさせようとした訳では、無いんだ。ただ、お前と2人っきりで話がしたかっただけで、こっちを向いてくれ」

語りかけられても、真奈美は頑なに窓の外を見ている。
夕刻の鐘が鳴り響いても人々はお祭りに明け暮れていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王太子の子を孕まされてました

杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。 ※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。

裏切りの代償

志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。 家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。 連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。 しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。 他サイトでも掲載しています。 R15を保険で追加しました。 表紙は写真AC様よりダウンロードしました。

妻のち愛人。

ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。 「ねーねー、ロナぁー」 甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。 そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜

七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。 ある日突然、兄がそう言った。 魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。 しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。 そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。 ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。 前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。 これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。 ※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...