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上から下から舐めるように見てくる不躾な男に椿はイラッとしていた。
〔へぇ~ロイにしては、珍しいタイプを選んだね。って言ってもお前嫌われてるな!あっはっは!ロイの100人目にはならなそうだな、残念だったなー!あっはっは」

妖精王を親しげにロイと呼び、肩を組みながら話す男。妖精王は凄く嫌そうな顔をしている。
っていうより、今聞き捨てならない事を言っていなかった?
100人目って聞こえたんですけど。

ジトーっと妖精王・ロイを見ると椿に見つめられてパァーっと明るくなったロイが浮かれながら〔なんだ??我と行く気になったのか??〕と近づいてきた。

「奥さんが99人もいるなら、もう要らないでしょ。どんだけ女好きなの?近付かないで下さい。」
嫌味タップリ話すがロイは気にしていないようだ。
〔妬いているんだね。私は1人一人を愛している。だから、安心していいんだよ?〕

寒!!そんなの絶対嘘でしょ!1人一人なんて愛せるわけない!
ーーーー1人を愛する事がどれだけ難しいか、分かっていない。だから、平気で次から次へと愛してるって簡単に言えるんだ。

椿はロイの奥さん達が本当に幸せなのか聞きたくなった。
「奥さん達は、それで満足しているんですか?幸せなんですか?」
〔?何を言っているんだ?我と結ばれたのだ。幸せに決まっているだろ?不思議な事を聞くんだな〕

あっ、これはダメだ。自分が一番好きなタイプの考えだ。

呆れながら「もういいです。何でもないです」と話を終わらせた。
〔ん?どうかしたのか?我ーーーー〕
〔こんな所にいた!ロイ様、早く帰りますよ!!〕
〔げっ!?何故分かったのだ!クリュスの結界で分からないはずなのに…〕
〔あっ、俺が呼んどいた。早く帰れ帰れ、女心がわからん奴はさっさっと家に帰って、バカな女達とイチャイチャでもしてろ!〕

緑の髪の男の子に引っ張られながら、〔まだ、愛しの伴侶がーーー〕と抵抗しているが、何やらボソボソ言われ大人しくなり、帰っていった。

嵐が去った部屋は静かになっていた。

目の前の男が話から考えると、この国を守っている精霊。だと思うんだよね、今更聞くのもあれだけど。
気まずいな…と思っていたら、衛兵が男に敬礼しながら報告していた。


「ーーで、結果に異常があった為こちらで事情聴取をしていました!」
〔うん。報告ありがとう。だいたいは分かった、後はやるから持ち場に戻って大丈夫。お疲れ様〕
「はっ!有り難き幸せ!!!」
ビシッと敬礼すると、部屋から出ていった。
残された椿、エマにクリュスはニッコリ笑いながら〔俺の国にようこそ。いい町だからゆっくりしていくといい。結界も直したから、安心して町を楽しんでくれ、何かあればすぐに行くからな〕
パチンとウインクする。

氷の精霊だから、冷たい感じだと思っていたけど…随分気さくな態度で驚いた。
精霊っていっても色んなタイプがあるんだな、と思う椿だった。

〔それにしても、仮にも妖精王だぜ?あんな態度を取る人間は、初めて見た。逆に興味があるなーー俺が町を案内しようか?女2人だと何かと危ないだろ?〕
思いもよらない提案に椿は断ろうとしたら、エマに断らないでっと耳打ちされてしまった。

「せっかくなので案内してもらいましょ!」
「えっ、でもーーー」
「ほら~つばきちゃんも大丈夫よね?さっ!行きましょう!(馬鹿ね~美味しい所を案内してもらった方が得でしょ?美味しいエールにありつけるじゃない!)」
キラーンと目を光らせるエマに何も言えず圧倒された。


〔決まったようだか?では、行くか。〕
「はい!」

ウキウキなエマを見て、楽しそうだからいっか。と椿も気持ちを切り替えてクリュスに着いて行く。

やはり、何度見ても綺麗な建物。
太陽の光に反射してキラキラ光る道や建物を見てしまう。

「つばきちゃーん、こっちよ~」
「あっ、はーい!今行きまーす」

たたっと、エマ達の方へ駆け寄り、歩きながら街並みやお店に飾られた物を見て回った。

買い物って楽しい。


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