27 / 33
第二章
第27話 かつての仲間その2
しおりを挟む
美人な家主の案内で屋敷を進む私達。
あ、エルのヤツ。あの人の後ろ姿見てニヤニヤしれるわね。えいっ。
「いたっ。何すんの?」
「止めなさいな、はしたない」
「何だよ。俺の密やかな楽しみまで奪おうっての? そんな権利がお前にあるってかよ」
「相手は依頼人の関係者よ。下手な事してお金貰えませんでしたじゃすまないの。もっと言えばそのニヤけ顔が普通に気持ち悪い」
「あっ、お前それが本音だろ」
どうだか?
しかし、周りを見れば品のある内装。
けどどこか寂しさを感じるのは、貴族のお屋敷と言う割にはいわゆる装飾品のようなものは特に無いからかしら。
なんというか、変にアンバランスというか……。
(程度の良い調度品なんかあれば、交渉して貰えないかなぁ)
「あんた今なんかロクでもないこと考えてなかった?」
「何言ってんだ人聞きの悪い」
当てずっぽうだけど、当たったみたいね。
コイツの下心がちょっとは読めるようになってきたわ。嬉しくないけど。
「――」
廊下を進む私達の耳に、どこからか声が聞こえてくるの聞いた。
「あん? 誰かいるんですかい?」
「ああ、実は昨日からこの村に泊まっている人が居てね。一緒に晩餐でもしようと客間に待機してもらってるのよ」
「へぇ、私たち以外にもこの村に」
さっき言ってた賑やかってこういう事か、なるほどね。
その客間とやらが近づくたびにその声もやはり大きくなってくる。若い女性の声だ。
「はは、くすぐったいって!」
「くすぐったい? さっきのイタチとでも遊んでるのかしら?」
「もうあの子にあったの? 私が可愛がってる子で、名前はテデって言うの」
「まあ、可愛いらしい名前ですわね」
「何年か前にこの村に来て懐かれて。それから一緒に暮らしてきたのよ」
「ほぉそれはっ……羨ましい限りで」
「アンタ何その恨みがましい声? 小動物に嫉妬なんてしてんじゃないわよ」
軽く小突く、思わず声を出してしまうエル。コイツも本当に心の狭いわね。
「まあいいんじゃないかしら? 貴方達があの子と出会ったというのなら、危害を加えない人間だからでしょうし。ここに居る間、仲良くしてあげて」
「だってよ?」
「こら! すいません。ではそのように」
もう恥ずかしい。申し訳なく思い頭を下げる。
そして、私の手に押さえつけられて一緒に頭を下げさせられるエル。
アンタが謝らないという選択肢は無いのよ。
けど、楽しそうな笑い声ね。声の感じからして私と歳が近い感じかな?
そんなことを考えている内に、客間の前へとたどり着いた。
「ここよ。中でくつろいでくれる。私は食事の準備をしてくるから」
「手伝いますわゼイルーグ様」
「気にしなくていいわ、仕込みはもう大体終わっているから。それに貴方達はゲスト、ここは家主にわずかな華を持たせると思って。ね?」
「そこまで言われれば、こちらとしても引き下がるしかありませんわ。ではお言葉に甘えさせてもらいます」
「ええ」
満足げな表情を浮かべて厨房へと向かうゼイルーグ様、その麗しい後ろ姿を見送った。私も見習いたいくらいね。
そして、残された私達二人は客間に入っていったのだ。
「んじゃ、失礼しますよっと。……あれ?」
「あ? あ、お前!?」
中に入ると中にいたのはイタチと戯れる少女。
そして、目の合う少女とエル。
え? 知り合い?
「ミャオか? なんだチビすけ、こんなところで何やってんの?」
「久しぶりに会って言う事がチビだ? とんだご挨拶だな!」
「何? この子アンタの知り合い?」
「ま、その。元パーティメンバー、かなぁ? あぁ、ユーミャオってんだ」
そこに居たのはエルの元パーティーメンバーらしい、ユーミャオさん。
小柄で、やっぱり私に歳が近い少女だ。恐らく三つくらい下だろうか。
朱色に近い髪色の女の子で、まあなんというか、私と近い感じのフラットというか……。
思わず親近感。
それにしてもあまり聞かない名前の響きだけど、外国の人?
「まあいいじゃねえか。お前も久々だな、そんな離れていたような気がしないでもないけど。お、背ぇ伸びたんじゃねえか?」
「え? ホントか?」
嬉しそうな声を出しちゃって、やっぱり気にしてるのね。
エルはにユーミャオさん近づきつつ、続ける。
「ホントホント。だってお前、もう俺の胸くらいまで……伸びてるわけねえだろたった数日でよぉ! がっはははは!」
「あ゛!?」
「マジになってんなよ。相変わらずカルシウム足りてねえな。いや、むしろ足りてるか? だって牛乳がぶ飲みしたって腹が壊れるだけだって、いつも言ってた俺って親切な男だよなぁ!」
「て、テメェ! ほざきやがったなぁ!!」
「ちょ、ちょっとやめなさい二人とも!? 他人様のお屋敷で何やってるの!」
エルが挑発したせいで喧嘩になり掛けた。
まったく、コイツって元のパーティでもやっぱりこんななのね。
あ、エルのヤツ。あの人の後ろ姿見てニヤニヤしれるわね。えいっ。
「いたっ。何すんの?」
「止めなさいな、はしたない」
「何だよ。俺の密やかな楽しみまで奪おうっての? そんな権利がお前にあるってかよ」
「相手は依頼人の関係者よ。下手な事してお金貰えませんでしたじゃすまないの。もっと言えばそのニヤけ顔が普通に気持ち悪い」
「あっ、お前それが本音だろ」
どうだか?
しかし、周りを見れば品のある内装。
けどどこか寂しさを感じるのは、貴族のお屋敷と言う割にはいわゆる装飾品のようなものは特に無いからかしら。
なんというか、変にアンバランスというか……。
(程度の良い調度品なんかあれば、交渉して貰えないかなぁ)
「あんた今なんかロクでもないこと考えてなかった?」
「何言ってんだ人聞きの悪い」
当てずっぽうだけど、当たったみたいね。
コイツの下心がちょっとは読めるようになってきたわ。嬉しくないけど。
「――」
廊下を進む私達の耳に、どこからか声が聞こえてくるの聞いた。
「あん? 誰かいるんですかい?」
「ああ、実は昨日からこの村に泊まっている人が居てね。一緒に晩餐でもしようと客間に待機してもらってるのよ」
「へぇ、私たち以外にもこの村に」
さっき言ってた賑やかってこういう事か、なるほどね。
その客間とやらが近づくたびにその声もやはり大きくなってくる。若い女性の声だ。
「はは、くすぐったいって!」
「くすぐったい? さっきのイタチとでも遊んでるのかしら?」
「もうあの子にあったの? 私が可愛がってる子で、名前はテデって言うの」
「まあ、可愛いらしい名前ですわね」
「何年か前にこの村に来て懐かれて。それから一緒に暮らしてきたのよ」
「ほぉそれはっ……羨ましい限りで」
「アンタ何その恨みがましい声? 小動物に嫉妬なんてしてんじゃないわよ」
軽く小突く、思わず声を出してしまうエル。コイツも本当に心の狭いわね。
「まあいいんじゃないかしら? 貴方達があの子と出会ったというのなら、危害を加えない人間だからでしょうし。ここに居る間、仲良くしてあげて」
「だってよ?」
「こら! すいません。ではそのように」
もう恥ずかしい。申し訳なく思い頭を下げる。
そして、私の手に押さえつけられて一緒に頭を下げさせられるエル。
アンタが謝らないという選択肢は無いのよ。
けど、楽しそうな笑い声ね。声の感じからして私と歳が近い感じかな?
そんなことを考えている内に、客間の前へとたどり着いた。
「ここよ。中でくつろいでくれる。私は食事の準備をしてくるから」
「手伝いますわゼイルーグ様」
「気にしなくていいわ、仕込みはもう大体終わっているから。それに貴方達はゲスト、ここは家主にわずかな華を持たせると思って。ね?」
「そこまで言われれば、こちらとしても引き下がるしかありませんわ。ではお言葉に甘えさせてもらいます」
「ええ」
満足げな表情を浮かべて厨房へと向かうゼイルーグ様、その麗しい後ろ姿を見送った。私も見習いたいくらいね。
そして、残された私達二人は客間に入っていったのだ。
「んじゃ、失礼しますよっと。……あれ?」
「あ? あ、お前!?」
中に入ると中にいたのはイタチと戯れる少女。
そして、目の合う少女とエル。
え? 知り合い?
「ミャオか? なんだチビすけ、こんなところで何やってんの?」
「久しぶりに会って言う事がチビだ? とんだご挨拶だな!」
「何? この子アンタの知り合い?」
「ま、その。元パーティメンバー、かなぁ? あぁ、ユーミャオってんだ」
そこに居たのはエルの元パーティーメンバーらしい、ユーミャオさん。
小柄で、やっぱり私に歳が近い少女だ。恐らく三つくらい下だろうか。
朱色に近い髪色の女の子で、まあなんというか、私と近い感じのフラットというか……。
思わず親近感。
それにしてもあまり聞かない名前の響きだけど、外国の人?
「まあいいじゃねえか。お前も久々だな、そんな離れていたような気がしないでもないけど。お、背ぇ伸びたんじゃねえか?」
「え? ホントか?」
嬉しそうな声を出しちゃって、やっぱり気にしてるのね。
エルはにユーミャオさん近づきつつ、続ける。
「ホントホント。だってお前、もう俺の胸くらいまで……伸びてるわけねえだろたった数日でよぉ! がっはははは!」
「あ゛!?」
「マジになってんなよ。相変わらずカルシウム足りてねえな。いや、むしろ足りてるか? だって牛乳がぶ飲みしたって腹が壊れるだけだって、いつも言ってた俺って親切な男だよなぁ!」
「て、テメェ! ほざきやがったなぁ!!」
「ちょ、ちょっとやめなさい二人とも!? 他人様のお屋敷で何やってるの!」
エルが挑発したせいで喧嘩になり掛けた。
まったく、コイツって元のパーティでもやっぱりこんななのね。
1
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる