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第二章
第27話 かつての仲間その2
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美人な家主の案内で屋敷を進む私達。
あ、エルのヤツ。あの人の後ろ姿見てニヤニヤしれるわね。えいっ。
「いたっ。何すんの?」
「止めなさいな、はしたない」
「何だよ。俺の密やかな楽しみまで奪おうっての? そんな権利がお前にあるってかよ」
「相手は依頼人の関係者よ。下手な事してお金貰えませんでしたじゃすまないの。もっと言えばそのニヤけ顔が普通に気持ち悪い」
「あっ、お前それが本音だろ」
どうだか?
しかし、周りを見れば品のある内装。
けどどこか寂しさを感じるのは、貴族のお屋敷と言う割にはいわゆる装飾品のようなものは特に無いからかしら。
なんというか、変にアンバランスというか……。
(程度の良い調度品なんかあれば、交渉して貰えないかなぁ)
「あんた今なんかロクでもないこと考えてなかった?」
「何言ってんだ人聞きの悪い」
当てずっぽうだけど、当たったみたいね。
コイツの下心がちょっとは読めるようになってきたわ。嬉しくないけど。
「――」
廊下を進む私達の耳に、どこからか声が聞こえてくるの聞いた。
「あん? 誰かいるんですかい?」
「ああ、実は昨日からこの村に泊まっている人が居てね。一緒に晩餐でもしようと客間に待機してもらってるのよ」
「へぇ、私たち以外にもこの村に」
さっき言ってた賑やかってこういう事か、なるほどね。
その客間とやらが近づくたびにその声もやはり大きくなってくる。若い女性の声だ。
「はは、くすぐったいって!」
「くすぐったい? さっきのイタチとでも遊んでるのかしら?」
「もうあの子にあったの? 私が可愛がってる子で、名前はテデって言うの」
「まあ、可愛いらしい名前ですわね」
「何年か前にこの村に来て懐かれて。それから一緒に暮らしてきたのよ」
「ほぉそれはっ……羨ましい限りで」
「アンタ何その恨みがましい声? 小動物に嫉妬なんてしてんじゃないわよ」
軽く小突く、思わず声を出してしまうエル。コイツも本当に心の狭いわね。
「まあいいんじゃないかしら? 貴方達があの子と出会ったというのなら、危害を加えない人間だからでしょうし。ここに居る間、仲良くしてあげて」
「だってよ?」
「こら! すいません。ではそのように」
もう恥ずかしい。申し訳なく思い頭を下げる。
そして、私の手に押さえつけられて一緒に頭を下げさせられるエル。
アンタが謝らないという選択肢は無いのよ。
けど、楽しそうな笑い声ね。声の感じからして私と歳が近い感じかな?
そんなことを考えている内に、客間の前へとたどり着いた。
「ここよ。中でくつろいでくれる。私は食事の準備をしてくるから」
「手伝いますわゼイルーグ様」
「気にしなくていいわ、仕込みはもう大体終わっているから。それに貴方達はゲスト、ここは家主にわずかな華を持たせると思って。ね?」
「そこまで言われれば、こちらとしても引き下がるしかありませんわ。ではお言葉に甘えさせてもらいます」
「ええ」
満足げな表情を浮かべて厨房へと向かうゼイルーグ様、その麗しい後ろ姿を見送った。私も見習いたいくらいね。
そして、残された私達二人は客間に入っていったのだ。
「んじゃ、失礼しますよっと。……あれ?」
「あ? あ、お前!?」
中に入ると中にいたのはイタチと戯れる少女。
そして、目の合う少女とエル。
え? 知り合い?
「ミャオか? なんだチビすけ、こんなところで何やってんの?」
「久しぶりに会って言う事がチビだ? とんだご挨拶だな!」
「何? この子アンタの知り合い?」
「ま、その。元パーティメンバー、かなぁ? あぁ、ユーミャオってんだ」
そこに居たのはエルの元パーティーメンバーらしい、ユーミャオさん。
小柄で、やっぱり私に歳が近い少女だ。恐らく三つくらい下だろうか。
朱色に近い髪色の女の子で、まあなんというか、私と近い感じのフラットというか……。
思わず親近感。
それにしてもあまり聞かない名前の響きだけど、外国の人?
「まあいいじゃねえか。お前も久々だな、そんな離れていたような気がしないでもないけど。お、背ぇ伸びたんじゃねえか?」
「え? ホントか?」
嬉しそうな声を出しちゃって、やっぱり気にしてるのね。
エルはにユーミャオさん近づきつつ、続ける。
「ホントホント。だってお前、もう俺の胸くらいまで……伸びてるわけねえだろたった数日でよぉ! がっはははは!」
「あ゛!?」
「マジになってんなよ。相変わらずカルシウム足りてねえな。いや、むしろ足りてるか? だって牛乳がぶ飲みしたって腹が壊れるだけだって、いつも言ってた俺って親切な男だよなぁ!」
「て、テメェ! ほざきやがったなぁ!!」
「ちょ、ちょっとやめなさい二人とも!? 他人様のお屋敷で何やってるの!」
エルが挑発したせいで喧嘩になり掛けた。
まったく、コイツって元のパーティでもやっぱりこんななのね。
あ、エルのヤツ。あの人の後ろ姿見てニヤニヤしれるわね。えいっ。
「いたっ。何すんの?」
「止めなさいな、はしたない」
「何だよ。俺の密やかな楽しみまで奪おうっての? そんな権利がお前にあるってかよ」
「相手は依頼人の関係者よ。下手な事してお金貰えませんでしたじゃすまないの。もっと言えばそのニヤけ顔が普通に気持ち悪い」
「あっ、お前それが本音だろ」
どうだか?
しかし、周りを見れば品のある内装。
けどどこか寂しさを感じるのは、貴族のお屋敷と言う割にはいわゆる装飾品のようなものは特に無いからかしら。
なんというか、変にアンバランスというか……。
(程度の良い調度品なんかあれば、交渉して貰えないかなぁ)
「あんた今なんかロクでもないこと考えてなかった?」
「何言ってんだ人聞きの悪い」
当てずっぽうだけど、当たったみたいね。
コイツの下心がちょっとは読めるようになってきたわ。嬉しくないけど。
「――」
廊下を進む私達の耳に、どこからか声が聞こえてくるの聞いた。
「あん? 誰かいるんですかい?」
「ああ、実は昨日からこの村に泊まっている人が居てね。一緒に晩餐でもしようと客間に待機してもらってるのよ」
「へぇ、私たち以外にもこの村に」
さっき言ってた賑やかってこういう事か、なるほどね。
その客間とやらが近づくたびにその声もやはり大きくなってくる。若い女性の声だ。
「はは、くすぐったいって!」
「くすぐったい? さっきのイタチとでも遊んでるのかしら?」
「もうあの子にあったの? 私が可愛がってる子で、名前はテデって言うの」
「まあ、可愛いらしい名前ですわね」
「何年か前にこの村に来て懐かれて。それから一緒に暮らしてきたのよ」
「ほぉそれはっ……羨ましい限りで」
「アンタ何その恨みがましい声? 小動物に嫉妬なんてしてんじゃないわよ」
軽く小突く、思わず声を出してしまうエル。コイツも本当に心の狭いわね。
「まあいいんじゃないかしら? 貴方達があの子と出会ったというのなら、危害を加えない人間だからでしょうし。ここに居る間、仲良くしてあげて」
「だってよ?」
「こら! すいません。ではそのように」
もう恥ずかしい。申し訳なく思い頭を下げる。
そして、私の手に押さえつけられて一緒に頭を下げさせられるエル。
アンタが謝らないという選択肢は無いのよ。
けど、楽しそうな笑い声ね。声の感じからして私と歳が近い感じかな?
そんなことを考えている内に、客間の前へとたどり着いた。
「ここよ。中でくつろいでくれる。私は食事の準備をしてくるから」
「手伝いますわゼイルーグ様」
「気にしなくていいわ、仕込みはもう大体終わっているから。それに貴方達はゲスト、ここは家主にわずかな華を持たせると思って。ね?」
「そこまで言われれば、こちらとしても引き下がるしかありませんわ。ではお言葉に甘えさせてもらいます」
「ええ」
満足げな表情を浮かべて厨房へと向かうゼイルーグ様、その麗しい後ろ姿を見送った。私も見習いたいくらいね。
そして、残された私達二人は客間に入っていったのだ。
「んじゃ、失礼しますよっと。……あれ?」
「あ? あ、お前!?」
中に入ると中にいたのはイタチと戯れる少女。
そして、目の合う少女とエル。
え? 知り合い?
「ミャオか? なんだチビすけ、こんなところで何やってんの?」
「久しぶりに会って言う事がチビだ? とんだご挨拶だな!」
「何? この子アンタの知り合い?」
「ま、その。元パーティメンバー、かなぁ? あぁ、ユーミャオってんだ」
そこに居たのはエルの元パーティーメンバーらしい、ユーミャオさん。
小柄で、やっぱり私に歳が近い少女だ。恐らく三つくらい下だろうか。
朱色に近い髪色の女の子で、まあなんというか、私と近い感じのフラットというか……。
思わず親近感。
それにしてもあまり聞かない名前の響きだけど、外国の人?
「まあいいじゃねえか。お前も久々だな、そんな離れていたような気がしないでもないけど。お、背ぇ伸びたんじゃねえか?」
「え? ホントか?」
嬉しそうな声を出しちゃって、やっぱり気にしてるのね。
エルはにユーミャオさん近づきつつ、続ける。
「ホントホント。だってお前、もう俺の胸くらいまで……伸びてるわけねえだろたった数日でよぉ! がっはははは!」
「あ゛!?」
「マジになってんなよ。相変わらずカルシウム足りてねえな。いや、むしろ足りてるか? だって牛乳がぶ飲みしたって腹が壊れるだけだって、いつも言ってた俺って親切な男だよなぁ!」
「て、テメェ! ほざきやがったなぁ!!」
「ちょ、ちょっとやめなさい二人とも!? 他人様のお屋敷で何やってるの!」
エルが挑発したせいで喧嘩になり掛けた。
まったく、コイツって元のパーティでもやっぱりこんななのね。
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