身勝手で一方的な別れを告げられたので、これからは私も好きにやらせていただきます

こまの ととと

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第一章

第19話 これからの指針

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 本来ならエレトレッダのパーティが決まる前に、自分と二人だけのパーティを再結成するつもりであった。その出鼻を挫かれてしまった事が今だ心に突き刺さってるのがティリートである。

 辛うじて、ラゼクが彼の好みから外れているという点がティリートの支えでもあった。

「でもさ、安心! あーしらとどっこいのペッタンなんだからさ。あんま気にする必要も無いっしょ?」

「そ、そうかい……。嬉しくは無いが、一応励ましとして受け取っておくよ。……でもそうだ、彼はすごく失礼な男だからね。普通の女の子じゃすぐに愛想をつかされるだろう、うん」

「そうかもね。普通の女の子だったらエレぴと付き合おうなんて思わないっしょ。だってエレぴってばオープンおっぱい星人なんだもん」

 エレトレッダが巨乳好きというのは有名な話で、そのせいでメンバー全体が被害を被ったことも一度や二度ではない。彼を追放したのもそれに起因するのだから。

 ……パーティメンバー全員が本当に追放したかったかはさておいて。

「う、うん。そうだよね。普通はそんな男の人なんて願い下げだろう。今は何かの間違いでお似合いに見えるのかもしれないが、彼のあの性格だ。きっとラゼクさんの方から嫌気が刺してパーティを解散される事間違いないな。うん、たぶん……。いや、きっとそう!」

「ティリちん?」

 どこか自分を納得させるかのようにそう言い放つティリートに対し、ラティーレンは怪しげな視線を向ける。

 だが、当の本人はそれに気づかず、一人考え込んでいた。

(はは、何を焦っているんだボクは? 彼のあの性格は長い目で見なければ付き合いきれるものじゃない。そんな一日二日の付き合いなんて、それだけで終わるだろう。その時! 彼がどうしても泣きついてくるのであれば、正体を明かして仕方なくっ、広い心で受け入れてあげようじゃないか!!)

 追い出した本人であるにも関わらず、ティリート自身にエレトレッダを毛嫌いする感情がある訳でも無く、その性格や癖の矯正に失敗した結果として出て行かれただけで、戻ってくるのであればあくまでも仕方なく受け入れるつもりであった。


『やっぱ俺、ココじゃなきゃダメみたいだ。お前たちとじゃなきゃ……。また俺と一緒パーティを、いや! お前と一緒に行きたい!』

『ふぅ、全く仕方がないなキミは。いつもつまらない世話を掛けさせてくれて、まあこれも幼馴染としての宿命というか……。付いてくるのであれば好きにするといい』

『ありがとう! やっぱりどんなヤツよりもお前とのコンビが最高だぜ!』

『ふぅ、やれやれ……』


「フ、フフ……」

「え? 何? ど、どったんティリちん?」

 思わず妄想にふけ込み、つい笑みが零れる。それに気づく事なくラティーレンに心配されてしまうティリート。


 エレトレッダだけが知らない秘密、幼馴染でもあるティリートの正体が男装の麗人であるという事。


 女性にしては高い背丈と恰好に中性的で美しい顔立ちと、何より胸がほぼ無い故に勘違いした女性にモテてしまい、それを見たエレトレッダが勝手に男性であると認識して嫉妬してきたのである。

 関係が崩れるのを恐れ、なんだかんだで十数年間も言い出せずにいた。

 本人は気づいてはいないが嫉妬しやすい性格をしている。だが、エレトレッダの好きなタイプからは過剰なアプローチの為に嫌われやすい。だからこそ今まで安心している構えている面があった。

 だが、いまや自分の手元を離れてしまった。
 もし、万が一彼を受け入れてくれる胸の大きい女性が現れたらと気が気でない。

 追い出した手前、リーダーとしての面子がある為大手を振って戻って来るように言えず……。
 それ故に慣れない女性の恰好で近づき、そしてあわよくば二人の距離が近づくのではと下心もあった。

 しかし問題は、それを他のパーティーに相談せずに半ば暴走してやっている事である。
 リーダー権限を行使してしばらくの間この街に留まる事にしているのも暴走故だ。

「ラティ」

「な、何?」

「ボクはこれからも彼の動向探る必要がある、と考えている。だがそれとは別に、キミも彼と二人で一緒に行動する事があるかもしれない。その時はボクに報告してくれてもいいよ」

「そ、そう? じゃあそうするけど……。他のメンバーにもエレぴの事話してもいい?」

「ああ、好きにしたまえ。彼の様子を知りたいメンバーがいればだが」

「分かったっしょ。あーしに任せて欲しいし!」

「ああ、よろしく頼むよラティ」

(これで彼が捨てられた時でも大丈夫だ! ボクが慰めれば彼はボクを頼ってくれるに違いない!)

 心の中でほくそ笑むティリート。その表情は勇者として生を受けた者の自信が満々に溢れていた。

 その心情まで勇者らしいかは……果たして。
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