身勝手で一方的な別れを告げられたので、これからは私も好きにやらせていただきます

こまの ととと

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第一章

第10話 新たなる出会い?

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 手続きをしている受付のお姉さんを後目に、ちょっと手持ち無沙汰になってしまった。
 この妙にやる事のない時間が、ちょっと長く感じる。

 余所に行ってる程の時間も無いし、かといって手続きも直ぐに終わるものじゃないし。

 これも冒険者になるものとしての定めだと言われれば、それも受け入れるしかないけど。

(話し相手にアイツを連れて来れば……ああいや、やっぱうるさくなり過ぎるわね)

 そんな風にちょっと落ち着かない私に、横から話しかける声が聞こえて来た。

「あの……」

「え?」

 話しかけて来た相手は……これがビックリするくらいに整った顔立ちの殿方。

 ツヤのある銀の髪には気品しか感じられない程に優雅。
 それにその切れ長の瞳には、鋭さよりも柔和を醸し出していた。やはり優雅。
 均整のとれた顔立ちには甘さがあり、目の下のほくろにくすぐられるような魅力がある。やはり優雅。

 背も高く、エルと同じぐらいだ。
 身形も整っていて、制服かしら? ここに来るくらいだからどこかのパーティに入ってるのか、薄青いジャケットと紺のロングパンツ。
 よく見たら腰に剣を刺している。鞘にも職人の拘りが見える優美な装飾。それでいて決して派手じゃない。

 こんなイケメンさん、街中歩いてたら女の子達の視線は独占間違い無しだろう。

 いや、もしかしてこの街ではこのレベルが標準……な訳ないか。

 とっさに思い出したのは、どこかの間抜け男。
 シルエットだけなら同レベルだが、あっちにあるのは品は品でも頭に下が付く方の品だ。

(それでも顔なら、そこそこ悪くはないけど……とか言ったら調子に乗るから本人の前じゃ言えないんだけど)

 ま、そんなヤツのことなんて頭から追い出し追い出し。

 今はこのハンサムさんの話を聞こう。

「私に御用でしょうか?」

「ええ。とは言ってもそれ程の用というものでもありませんが。……失礼ながら、ここを訪ねるのは初めてでは?」

「え?」

 確かにそうだけど、私ってそんな落ち着きなく見えたのかな? ちょっと恥ずかしい。

「え、ええ。よくわかりましたね。初めての手続きを終えたばかりなんです。これからが初仕事でして」

「やはりそうでしたか。しかし、私の知る限りの初心者にしては実に……」

「実に?」

「いえ、冷静な方だと思いまして。最初にここを訪れる方は大抵、不安に駆られて落ち着きの無い場合。もしくは逸る気持ちを隠せてない場合の二つに一つ。貴女のような方は珍しい」

 あ、褒めてくれるのね。
 ってことは私は落ち着きがないように見えたわけじゃないんだ。

 あれ? じゃあなんで私が初心者だって……?

「てっきり私が挙動不審に見えたから声を掛けたかと思いましたよ」

「いいえ。ただ、少々の時間潰しになれたらと思ったから、ですかね。初心者かどうかは、正直に勘と言いますか、ここを利用してそれなりに立つものですから……」

「なんとなくわかった、と? そういうこともあるかもしれませんね。それはそれとして、貴重な時間を頂いたようで……。ちょっと悪いですわ」

「お気になさらず。私も、こういう手持ち無沙汰な時間の使い方が苦手なものでして。少しでも役に立てたなら嬉しい限りです……ん?」

 何かに気付いたのか、その男の人は顔をどこかへ向ける。
 気になるけど、私もそっちへ見るのははしたないかな。

「どうやら私の連れが呼んでいるようですので、これで」

「ええ。私も楽しい時間を過ごさせてもらって」

「いえ。……では、またどこかで会えたなら」

 去る時までさわやかだな。
 ほのかに微笑みを浮かべて、その人はどこかへと向かう。
 ああいう仕草に弱い女の子は多いでしょうね。彼女が居てその影響とか?

 いや、きっと居るでしょう。あんな顔も性格も良しで居ないってことはない。

「サトーエン様、長らくお待たせして申し訳ありません。手続きが完了致しました」

 丁度よくこっちも終わったみたい。
 さて、流石にいつまでも待たせてたら悪い。あんなのでも組んでるわけだし。

 受け取った書類を手に持ち、ヤツの元へ向かう。

 すると、見知らぬ女性が一緒に立っていた。
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