身勝手で一方的な別れを告げられたので、これからは私も好きにやらせていただきます

こまの ととと

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第一章

第4話 助けたヒーロー

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(あ! 胸しか見てなかったけど、よく見たらこの女さっき俺の股間を蹴り上げてくれた女じゃねぇか!! 冗談じゃないよもう……。あれ? でもこれはこれは恩を売るチャンスでは?)

 立ち去ろうとした男は、足を止めてこちらをじ~っと見て来る。
 何? やっぱり助けてくれるのね。

(この俺を蹴っ飛ばした女が頼ろうとしている。これはヤツにとっても屈辱なハズだし俺もスカッとする。その上でこっちの言い分を通す事も出来るのでは?)

 何を考えてるのかは知らないけれど、考えがまとまったのか、男は口を開く。

「助けて上げなくもないけど、それって俺に旨みがあるわけじゃないしなぁ」

 何ですって!?

「何よ、さっきの事なら謝って上げるから!」

「いや、所詮謝罪なんて口だけだしな。誠意ってのはさ、やっぱ物と行動の中にあるものなわけなのだから」

 こ、この男! 人の足元を見てからに……!

「~~~っ! アンタの言う事一つ聞いて上げるから!! それでいいでしょ?!」

「へへ、毎度あり!」

 ケタケタといやらしい笑みを浮かべたデリカシーなし男は、私の了承を得ると大男の前へ踊り出た。

(あそこまで言ったんだもの、解決してくれなきゃ思いっきり文句言ってやる!)

 大男の前に姿を現した男に対して、大男は挑発気味に話しかける。

「おうおう、一体何の用だあああん? ヒーロー気取りなんかしてると痛い目をみるぜドチビ!!」

 チビと言われてカチンと来た表情を見せる男。
 でも実際、彼が小さいというよりこの大男がデカ過ぎるだけだ。

 だって、どう見ても三メートル近くあるし……。もしかして何かの種族なの?


 男の方は挑発で返した。

「ああ? 何て言ってんのかわかんねえよハゲゴリラ。町中でウホウホ言ってる暇があるなら、自分から檻に入るぐらいの愛嬌でも見せてみろってんだ」

「んだとゴラァッ!!!」

(あっ、やっぱりゴリラ系の獣人だったの。……ってそんなワケないわね)

 ブチ切れた男が殴りかかる。でも男には遅く見えるのか、難なく回避してみせた。

(へぇ、結構やるんだ……)

 思わず感心。
 次にどんな手をするのか、ちょっと期待してしまうわ。

 っと思ったんだけど……。

「皆さーん暴漢ですよ! 婦女暴行犯がいますよ、変態ですよ!! お巡りさーん!!」

 男はありったけの声を上げて叫ぶ。
 すると周囲はざわめき始め、やがて野次馬が集まってきた。

「くそ、覚えてやがれドチビがぁ!!!」

 ありきたりな捨て台詞を残して男は情けなく逃げて行った。

「見せかけだけの筋肉ゴリラが、ポリ公の名前叫んだだけで逃げて行きやがったぜ。全くダセェな」

「ってアンタも結局他力本願じゃない!」

 期待して損した。

「どんなやり方でも結果は結果だ、約束は守ってもらうぜお嬢ちゃんよぉ」

「……何よ。あんまり無茶は無しだからね」

「安心しろって、俺だって相手は見るんだからよ」

 ……頼む相手間違えたかも。さっきと対して変わってなくない?

 ◇◇◇

「ふい~。食った食ったぜ。いや満腹満腹! 持つべきものは助け人ってか!」

「あ、アンタ。ホントに遠慮しないわね……」

 街中にあるファミリーレストラン。
 そこの一角を占拠した男は、テーブルに並べられた皿をすべて空にして満足気に自分の腹を小突いていた。

「ぐぇっ」

 ゲップまで出して。

 その様子を呆れ顔で見る、もう何コイツ。

「いいじゃねえか、これで貸し借りなしになったわけだしよ。そちらさんの気がかりが一つ減ったわけで、これもある意味人助けだろ」

「何て図々しい性格なの……。アンタ友達とかいないでしょ?」

「失礼な奴だなぁ。……ま、昨日一人いなくなっちまったのは本当だけど」

「?」

 どういう意味?
 もしかして、こんな奴でも訳アリって事なのかも。
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