57 / 64
第57話 怒り風
しおりを挟む
そこは、言ってしまえば魔境。
血に飢えた魔物共が人間を食い、そして同じ魔物を食い。辺りには血の匂いが鼻について気分が悪い。頭が痛くなってくる。
「おらあッ!!」
目についたデカトカゲの首を両断。続いて死骸を漁っていた馬型の魔物を首を突いて殺す。
悲鳴、雄叫び、泣き声。色んな叫びが俺を出迎える。
「クソどもがっ!!」
血と臓物をまき散らして化け物共を殺す。目に付いたヤツは一匹も逃さねえように徹底的にだ。
死体で足元を埋め尽くす化け物共。
それでもなお一斉に俺へ襲い掛かって来た。それは大振りの一撃を避けると、凄まじい勢いで吹っ飛んで壁に激突する。
また血で染まった。
周りに生きてる人間の気配を感じない。あるのは肉の削ぎ取られた原型の分からないナニかだ。
それがかつて人間だったってのが分かるのは、高そうな布切れを纏っていたから。
もうほとんど殺されちまったか、運よく逃げ出せたか。
オークションに参加したヤツが一人でも生きてりゃ、多少は情報も聞き出せるだろう。
でも、正直そんな事はもうあまり考えられない。
視界の外から牙を立てて襲い掛かる化け物がいた。
短槍に切り替えて脳天に叩きつける。そして地面に転がったそいつを刺して殺す。
何でまだこんなに居るんだろうなァ?
檻の数と魔物の数が合わない。地下かどっかに閉じ込められたのでもいたんだろうか。
関係無ぇ、全部潰せばいい。
人間よりも二回りデカい一つ目の化け物が、耳障りな足音を立てながらそこら辺に転がってた檻を持って近づいてきた。
「グガァアアッ!!」
叩きつけて来る前に跳ぶ。
地面が凹み、けたたましい音を鳴らす檻の一撃を真下に聞きながら、短槍を斧に切り替えて魔物の頭蓋を叩っ切る。
「グオオ!? ……」
ドシンと倒れ込んで……それで終わらない。
デカブツの死体を巻き込むように火炎が放たれた。
斧にオーラを纏わせて、その火炎ごと横薙ぎに斬る。
飛んで行くオーラの一撃が、生意気にも火を放った鳥野郎の体を二つに分ける。
断末魔と血飛沫、それを見るのはもう慣れた。慣れても気分が悪くなるが。
もう何匹殺したか数えてない。でもまだまだ居る。
背後から飛び掛かって来た猫型の魔物。そいつの首を刎ねるが……その隙に別のヤツが俺の懐に入り込みやがった。
「ズワアアア!! ――ッガズ!?」
「それで俺のタマを獲れたつもりか?」
左手に短槍を出して、逆手持ちで突き下ろす。
ご自慢の爪が届く事も無く、脳天を串刺しにされたまま死んだ。
……ズゥン……ズゥン。
他の魔物よりも重い足音を鳴らしながら近づいてくる。
「そうか……。テメェの方も終わったか」
立ち込める砂埃の向こう、血の匂いを全身から濃ゆくまき散らしながら見えて来た影。
ここに来る途中で見た、一際デカい檻の主。
ヤギの頭と黒い体。背中に蝙蝠みたいな翼を生やした魔物。
名前は……俺が知る訳ねえか。
「……ブモォォォ」
「テメェで最後だ。お互いそうだろ? どっちか死んだらこの血祭りも終わりだぜ。――さあ来いッ!!」
「ブモオォオッ!!」
魔物の雄叫びが響く。その声だけで地面が揺れるようだ。
今更ビビリもしねぇが。
「っらあ!!」
「ブモオオオッ!」
ハルバードと爪が激しくぶつかる。衝撃で砂塵が舞う。
(見た目よりも重てェじゃねえか……!)
ある程度の覚悟はしてたが、全身の筋肉が気張って筋立てていくのを感じる。
オーラを体中に行き渡らせてなかったら……今ので引き裂かれてたな。
だが、それがどうした?
鍔迫り合いをしながらハルバードの石突を地面にしっかりと突き立て、そして両足を一瞬浮かせてヤギ野郎の腹に蹴りを放つ。一層のオーラを込めた蹴りだ。
さしもの怯んだソイツ。
蹴りの反動で後ろに飛びのける俺はすぐさまにハルバードを縦に構えて、飛び掛かる。
脳天に叩き込めば必殺。だが……。
(それで終わると思っちゃいねぇ……!)
予想通り、態勢を立て直したヤギ野郎は背中の翼を使って背後へ飛ぶ。
さっきまでヤツが立っていたはずの場所へと振り下ろされる斧。
それは隙になる。このままなら俺が死ぬだろう。
血に飢えた魔物共が人間を食い、そして同じ魔物を食い。辺りには血の匂いが鼻について気分が悪い。頭が痛くなってくる。
「おらあッ!!」
目についたデカトカゲの首を両断。続いて死骸を漁っていた馬型の魔物を首を突いて殺す。
悲鳴、雄叫び、泣き声。色んな叫びが俺を出迎える。
「クソどもがっ!!」
血と臓物をまき散らして化け物共を殺す。目に付いたヤツは一匹も逃さねえように徹底的にだ。
死体で足元を埋め尽くす化け物共。
それでもなお一斉に俺へ襲い掛かって来た。それは大振りの一撃を避けると、凄まじい勢いで吹っ飛んで壁に激突する。
また血で染まった。
周りに生きてる人間の気配を感じない。あるのは肉の削ぎ取られた原型の分からないナニかだ。
それがかつて人間だったってのが分かるのは、高そうな布切れを纏っていたから。
もうほとんど殺されちまったか、運よく逃げ出せたか。
オークションに参加したヤツが一人でも生きてりゃ、多少は情報も聞き出せるだろう。
でも、正直そんな事はもうあまり考えられない。
視界の外から牙を立てて襲い掛かる化け物がいた。
短槍に切り替えて脳天に叩きつける。そして地面に転がったそいつを刺して殺す。
何でまだこんなに居るんだろうなァ?
檻の数と魔物の数が合わない。地下かどっかに閉じ込められたのでもいたんだろうか。
関係無ぇ、全部潰せばいい。
人間よりも二回りデカい一つ目の化け物が、耳障りな足音を立てながらそこら辺に転がってた檻を持って近づいてきた。
「グガァアアッ!!」
叩きつけて来る前に跳ぶ。
地面が凹み、けたたましい音を鳴らす檻の一撃を真下に聞きながら、短槍を斧に切り替えて魔物の頭蓋を叩っ切る。
「グオオ!? ……」
ドシンと倒れ込んで……それで終わらない。
デカブツの死体を巻き込むように火炎が放たれた。
斧にオーラを纏わせて、その火炎ごと横薙ぎに斬る。
飛んで行くオーラの一撃が、生意気にも火を放った鳥野郎の体を二つに分ける。
断末魔と血飛沫、それを見るのはもう慣れた。慣れても気分が悪くなるが。
もう何匹殺したか数えてない。でもまだまだ居る。
背後から飛び掛かって来た猫型の魔物。そいつの首を刎ねるが……その隙に別のヤツが俺の懐に入り込みやがった。
「ズワアアア!! ――ッガズ!?」
「それで俺のタマを獲れたつもりか?」
左手に短槍を出して、逆手持ちで突き下ろす。
ご自慢の爪が届く事も無く、脳天を串刺しにされたまま死んだ。
……ズゥン……ズゥン。
他の魔物よりも重い足音を鳴らしながら近づいてくる。
「そうか……。テメェの方も終わったか」
立ち込める砂埃の向こう、血の匂いを全身から濃ゆくまき散らしながら見えて来た影。
ここに来る途中で見た、一際デカい檻の主。
ヤギの頭と黒い体。背中に蝙蝠みたいな翼を生やした魔物。
名前は……俺が知る訳ねえか。
「……ブモォォォ」
「テメェで最後だ。お互いそうだろ? どっちか死んだらこの血祭りも終わりだぜ。――さあ来いッ!!」
「ブモオォオッ!!」
魔物の雄叫びが響く。その声だけで地面が揺れるようだ。
今更ビビリもしねぇが。
「っらあ!!」
「ブモオオオッ!」
ハルバードと爪が激しくぶつかる。衝撃で砂塵が舞う。
(見た目よりも重てェじゃねえか……!)
ある程度の覚悟はしてたが、全身の筋肉が気張って筋立てていくのを感じる。
オーラを体中に行き渡らせてなかったら……今ので引き裂かれてたな。
だが、それがどうした?
鍔迫り合いをしながらハルバードの石突を地面にしっかりと突き立て、そして両足を一瞬浮かせてヤギ野郎の腹に蹴りを放つ。一層のオーラを込めた蹴りだ。
さしもの怯んだソイツ。
蹴りの反動で後ろに飛びのける俺はすぐさまにハルバードを縦に構えて、飛び掛かる。
脳天に叩き込めば必殺。だが……。
(それで終わると思っちゃいねぇ……!)
予想通り、態勢を立て直したヤギ野郎は背中の翼を使って背後へ飛ぶ。
さっきまでヤツが立っていたはずの場所へと振り下ろされる斧。
それは隙になる。このままなら俺が死ぬだろう。
7
お気に入りに追加
195
あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。
大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。
ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。
主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。
マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。
しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。
主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。
これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。


母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる