裏切られ献身男は図らずも悪役貴族へと~わがまま令息に転生した男はもう他人の喰い物にならない~

こまの ととと

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第54話 手に入れた証拠と……

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 そう言いながらそっと引き出しを開けるコセルア。
 開けた瞬間警戒し、すぐさまその場を離れる俺達。……十秒以上経って何も起きない。
 警戒はしつつも、再びその引き出しへと近づいた。

「書類がいくつか、それに帳簿を発見致しました。……これはっ」

「何だ? 何かマズいもんでも……」

「そうですね。侯爵様から領地経営の一部を任されているはずですが……用途不明の記載があります」

 コセルアは即座にその帳簿に書かれていた内容をスラスラと読む。
 俺は彼女に近づき、何を書いてあるかを読み進めて見れば……。

(こいつはお袋に渡す上納金か。どういう事だ? 徴収した税金が一部別の所に使われてる。流石に使用用途までは……いや、こっちの書類か!)

 ピンと来た俺は、別に見つけた書類の方に目を通す。
 そこに掛かれていたのは、とある商団との取引についての契約書だ。

「カルソン商団か。取引内容は……魔物!? ビンゴだぜ、こいつは……!」

「やりました。これだけでも大々的に踏み込む材料と成り得ます。後はシラを切られないように現場を抑える事が出来れば文句なしですが……。しかし今日はここまでにするべきかと、何時までも中庭の檻に注目が集まっている訳ではありませんので」

「ああ分かってる。……取り敢えず撮れる分だけ写真撮るぞ」

 カメラを取り出し、机に並べた証拠に向けてフラッシュを焚く。
 密室とはいえ、あまり光らせたくは無いが仕方がない。

 何時誰かが来るかも分からん状況で緊張はした。が、何とか全部取り終えた。
 後は分からないように証拠を机の引き出しに戻して。……これで完了だ。

「さあ行きましょう。これを持ち帰ればきっと、侯爵様もお褒めになられるかと」

「お世辞はいいんだ。どう考えても叱られるだけだ」

「……余計な配慮でした、申し訳ございません。しかしながら、私も同罪ですので。坊ちゃま、その時は共に罰を受けましょう」

「ああ、仲良くな」

 カメラを指輪の中に納め、いよいよ部屋の外へ。
 外じゃ横領した金で楽しんでるんだろうよ。だが、それももう終わりだ。

 恩を仇で返せばどうなるかってのを思い知らせてやる。

 コセルアの後に続き、部屋から出ようとした時――不意に頭痛が走った。

「……っ」

 それはほんの一瞬。強烈な痛みだったような、そんな曖昧さでしか表現出来ない程に直ぐに収まった。

「坊ちゃま、どうしましたか?」

 俺が足を止めたのが気になったんだろう。コセルアが振り返って尋ねて来る。

「……いや、暗い所に居たからな。ちょっと外の光に眩んだだけだ」

「そうですか。ですがお気をつけを。敵地では何が起こるか――」

 分からない。

 きっとそう言おうとしたんだろう。だが、その声は外から聞こえて轟音の中で消されてしまった。

 次の瞬間に聞こえてきたものは当然、割れんばかりの悲鳴だった。
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