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第53話 侵入の二人

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 裏手に回り込んで見れば、ラッキーな事に見張りと呼べる人間は一人だけだった。
 裏門には欠伸をしている女のみ。

「側面の方には人が居ません。今なら静かに侵入可能です」

「よしっ」

 人気の居ない裏の門でも、見張りを倒せばいつかは気づかれる。
 その見張りに隙が出来ている今の内に入るしかないな。

 俺達は人の居ない側面の塀目掛け、茂みから飛び出し、その勢いのままジャンプして塀の上に乗る。
 これはオーラ訓練の成果だな。

「やはり内側にも見張りは居ません。今の内に屋敷の中へ」

 オーラの応用で人の気配を広範囲に察知出来るコセルア。
 塀の内側にも人が居ないという読みは完璧だった。

 それでも何時までも居ない訳がない、さっさと扉を発見し、その鍵を指輪から取り出した道具でピッキングするコセルア。

「そういう事も出来るんだな」

「この手の技術は潜入捜査の基本ですので。……さあ開きました、お気を付けて下さい」

 数秒で解除された扉の中へと入ると、そこは薄暗く人の気配を感じない通路だった。この時間は使われていないんだろう。

「あれほど大型の檻ですので、搬入出来るとは思えません。恐らく今も中庭にあるはず。そちらに人が集中している内に証拠を手に入れなければ」

 こういう手合いはコセルアの方が数段上だ、その経験と勘を頼りに進む。
 人の気配を察知しては隠れ、そして進む。
 
 そろそろと階段を上った先、最上階の廊下の向こう、その扉から一人のふくよかな女が出て来た。
 その女は派手な装飾のドレスを身に纏い、明らかにこの屋敷で一番偉い風体だ。
 そいつが通路の反対側へと進み、角へ消えて行く。屋敷の構造から考えて向こうにも階段があるんだろう。

「今の女性には見覚えがあります。間違いなく、件の人物でしょう」

「ってことは、今出て来た部屋が執務室の可能性があるな。……行くか」

「ええ……」

 周りに人が居ないのを確認しながら、その執務室へ。
 途中に窓から見えた中庭の景色、そこには布の被った大型の檻があって、人だかりが出来ていた。
 他にもいくつかの檻がある。小さいものから大きいものまで。

 それがこの屋敷の人間だけならいいが……。

(派手な格好の連中がうようよいやがる。ご丁寧に全員マスクを着けてるとはな、悪趣味な金持ちってのは始末に負えねぇ)

 だが、そっちはまだ早い。まずは証拠だ。
 執務室の扉を開けたコセルアに続き、中へと入る。

 灯りが消えても、趣味の悪い金ぴかな装飾が目立つな。それに、なんだこの匂い? えらく鼻につく。
 だがそれに気をやっている暇はない。部屋の奥にある机を調べる。

「どうだ?」

「幸いにも鍵がかかっていません。ですが、何かしら罠が発動しないとも限りませんのでご注意を」
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