裏切られ献身男は図らずも悪役貴族へと~わがまま令息に転生した男はもう他人の喰い物にならない~

こまの ととと

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第51話 アジトへ

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 騎士団が潜入調査をする時に使っている、髪と瞳の色を変えるアイテムを指輪の中から発動する。
 入れたまま使えるってのは便利だな。

 本来なら専門家であるコセルア達に一任するのがいいんだろう。それが普通だ。
 なのに今回俺が出ると決めたのは、お袋のシマを荒らされてるかもしれねぇってのが気に入らなかった。理由としては弱いな。自分でも分かってる。

 だが、そいつらのせいでお袋のシマにケチが付くのは息子として我慢ならねえ。お袋の顔に泥を塗ろうってヤツらをどうしても他人に任せる気が起きなかった。

「そろそろ目的地近くです。……この辺りで一旦馬から降りましょう」

 コセルアの判断に任せ、近くの森の中で馬から降りる。

「大人しくしてろよ」

 自分の乗って来た馬の顔を撫でながら、コセルアと共に件の連中が通る予定の道が見える場所へと。

 しばらく歩いた。

 場所も遠く、木陰から双眼鏡で覗き込んでいる俺達。バレたら終わりだからな。

「居ますね……」

「……ああ」

 領民はの言っていた通りに、その一団は道を進んでいた。
 その領民が一団を発見した曜日から考えて、その一週間の今日張り込みをすれば、確かに当たりだった。

 夜とはいえ、それなりの人数で歩いていたら目立つ。
 だから毎日はこんな事をやっていないじゃないかと考えたコセルアは、話を聞いた翌日の夜から騎士を毎日張り込ませていたが、想像通り何も通らなかったという。

「あの布、かなりデカいな。覆っているのも大型の檻だろうよ」

「話に聞いた通りなら、それなりの大きさの魔物でしょう。しかし、そうなら大人しく檻に入っている理由が限られます。小型の力の弱い魔物なら調教に手間はあまり掛かりませんが、檻の大きさを考えれば……。罠に嵌めた後に薬で大人しくさせた、と言ったところでしょうか」

「ロクな事しねえもんだな。……で、そんなもんをわざわざ運ぶ理由ってのは――金になるからってのがまず思いつくな」

「無論、それは表には出せない事情です。この侯爵領だけでなく、国の法律で固く禁じられていますので」

 生きた大型魔物の売買は重罪。見つかれば、即牢屋行き。出て来れるのは何十年先か……。
 そんなもんをよくもまぁウチのシマでやらかしてくれたもんだ。

 いや、まだ証拠は無えが。

「大金が動くとなれば、何人も貴族が絡むな。それにどっか商団と手を結んで、だからこうして化け物を運んでんだろうな。ここで突っ込んでったら尻尾切りで終わりか」

「……坊ちゃま、私としては奴らが何処に行くかを確認出来次第お戻り頂きたいのですが」

「俺だってそれは分かってる。相手の規模も分からねえ以上、首突っ込めば何処に飛び火して行くかも分からんしな。……さてバレねえようについてくぞ」

「坊ちゃまがこれ程活発な方になられるとは……素直に喜んでいいのやら、今の私には分かりかねます」

「苦労を掛けてる自覚はあるさ。今度わがままを聞いてやるか見逃してくれ」
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