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第47話 見え始めた影

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 地下に閉じ込めている魔導士の女の情報について、やっと分かったらしい。
 そんな事を騎士達が話しているのを偶然聞いた。

 あの女からはもう大した情報は得られないから、どういう生活を送っていたかについて調べ、そっから少しでもお袋の領地に手を出そうとしてる連中についての手掛かりを騎士団は情報を集めていた。

「協会に所属していない為、時間が掛かってしまいました。がしかし、重要だと思われる情報として……あの人物は他領の冒険ギルドに出入りしていたそうです」

「ギルド?」

 お袋への報告を済ませて執務室から出て来たコセルアを捕まえた俺は、悪いとは思ったが同じ事を喋らせた。

「しかし、それも身元を明かしての所属ではないようで……名を偽り、魔導士では無くサポーターとして登録されていました」

「用心深いな。ま、そんな人間だからあんな仕事やってんだろうが……。で? そこから何が分かったんだ?」

「聞き込みの結果、サポーターとして登録しているにも関わらず、パーティを組んでの活動はほぼしていなかった為に、人となりすら知っている人間がいませんでした。……流石にそれでは収穫が無いも同然ですので、さらに細かく聞き込みを行ったところ――彼女は決まってとある依頼を受けていたようです」

「依頼だ? ……まさか」

「恐らくお考えの通りかと。その依頼自体は何の変哲もない薬草等の採集でした。依頼人の名前はバラバラでしたが、魔法で幾つかの顔と名前を使い分けて依頼を行っていたと思われます。そしてその依頼人こそ……」

「うちのシマに手ェ出した黒幕。もしくはその関係者、か」

 用意周到に喧嘩を吹っ掛けて来てるってのはこれで確定だな。
 表向きの依頼はカモフラージュ、実際に会うのは毎回同じ人間って訳だ。

 でもあの女曰く、顔は見た事無いらしいし、相手の開いたゲートを通って周りのよく分からない部屋で会っていた。とのこと。

 自分の身元はキッチリ隠す割りに、あんな三下には熱心に会っていた。ってのは実は暇だから、な訳ねぇよな。
 それだけ手間掛ける必要があった。蛇みてぇな執念の誰かさん。

 男か女かも知らないって事は、声も魔法かなんかで変えていたんだろう。
 背は小さめらしいって事は男の可能性が高いが、判断材料としちゃあ薄い。
 背の小さい女なんて、それこそ町に行かなくても近場の村でぽつぽつとだが見るくらいだ。

「残念ながら、その依頼人の数名はここしばらくギルドに訪れていないようです。彼女が捕まったのを知り、身を隠したと思われます。……あれから時間も経っていますので、その領地周辺に居ない可能性も高いかと」

「それは仕方ねぇ。どうしたって今の俺達は後手に回るしかないんだ。今はそれだけ分かっただけでも儲けもんとでも思うしかねえな」

「痛み入ります。……しかしながら、一体どのような人物がこのような事をしているのでしょうか? 単なる恨みか、それとも利益があるのか……」

「さぁてな。だが、少なくともお袋を敵に回す程の奴ってこった。そんな大それた事が出来るなら、どう考えてもチンピラレベルじゃ収まらねえよな。色々と手回しだってしているはずだ。本人は来れないにしろ、怪しい人間を他人様のシマで動かせる。もしかしたら……」

「この侯爵領で手引きをしている人間がいる。その可能性がある、と?」

「あくまで可能性だがな。だが、身内の人間を抱き込めば……これ程動きやすくなるって事もねえ」

「……なるほど」

 コセルアがそっと目を閉じた。何かを考えているようだが、一体何なんだ?
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