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第37話 親と子の交流
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朝食も終わり、何も聞かずについて来いと言わんばかりにチラりと俺の方を見て部屋を出て行くお袋。
仕方無く付いていく事、十数分。
まさか邸宅を出て外の倉庫まで行くとは思わなかった。
というかこんな所に倉庫なんてものがあったのか。結構行って無い場所があったんだな。
懐から鍵を取り出す様を見て、最初から用意周到だった訳だと半ば呆れてしまった。
これ俺が着いて来なかったらどうするつもりだったのかと。
「貴方はそっちを引っ張りなさい」
「……へいへい」
お袋に言われた通り、片方のドアノブを掴んで二人同時にスライドさせる。
開け放たれた扉の奥から、埃の粒子が外へと飛び出すのが見えた。
「これは……」
長年使われていない倉庫特有の鼻の奥が若干ツーンとくる匂い、当然好かないがそれを無視して倉庫内に足を踏み入れ、その光景を見た俺は思わず息を呑んだ。
「意外と、綺麗だな……」
「埃だらけとでも思ったの? きちんと定期的に換気はしているわ」
「換気は、ねぇ。じゃあ結局使ってないのは同じじゃねえか」
「そんな細かい事はどうでもいいでしょう。……さあこの奥よ」
倉庫の中は意外にも綺麗に保存されていて、換気が定期的にされているのは本当らしい。
それでも埃っぽさは拭えねぇな。苦手なんだよなこの匂い。
壁に掛かってるのは農具だったり台車だったり梯子だったり、色々ある。
道具の予備倉庫か何かか。
そして倉庫の奥に扉をさらに潜り抜け、お袋が部屋の灯りをつけた時、俺は思わず驚いた。
「まさか……ここって武器庫でもあるのか」
「普段は使われていないけれど。この倉庫自体が非常用の物ばかり入れているから。……私もここに武器を収めていた事をついこの間思い出したのよ」
「おいおい……」
そう、扉の奥にあったのは多種多様な武器だ。
だが、例えばコセルア達が使ってるような剣の類は無い。普段使われてないってのもそういう事なんだろう。
「槍に鎌に斧に……物騒だな、おい」
「私の領地は何かと狙われやすいもの。それが化け物だけならいいのだけれど、ね」
含みのある言い方だ。この間みたいな事を言ってるのか?
自分に敵が多いのは百も承知って事か。しかしどういう理由で人間相手にも嫌われてんのか。
……そういう立場だからこそ、俺に対して外出制限をしてんだろうな。
「でも何でこんな色々溜め込んでんだ? うちの騎士団は剣使う奴ばっかじゃねぇか」
「元々は一人一人の希望に合わせて武器を使わせるのが目的だったのよ。だけれどうちに来る子達って剣に憧れてる子ばっかりで……。剣で名を馳せた弊害といえばそれまでだけど」
「それで誰も剣以外使わないからって此処がこんなになったって訳か」
「一応槍の扱いは習わせてるわ。……それもあまり使う機会が無いのだけれどね」
妙な哀愁がお袋から漂ってるな。クールな面にも色んな歴史があるもんだ。
息子として慰めてやるか。
俺はお袋の背中にポンと手を置いた。
「いや同情は要らないわ」
「冷てぇな」
それはともかく、結局どうして俺を此処まで連れて来たのか? 本題はそこなんだが。
「それで?」
「貴方って剣を使うつもりは無いのよね?」
「コセルアから使い方ぐらいは習ってるな。でもそれだけだ。ガタイで他の奴に勝てねえ俺じゃ、やり方を考える必要があるからな。ただ……」
「棒術を独自に鍛えてるらしいけど、屋内だったり森の中だったり、そういう障害物の多い場所だと十分に扱えない。といったところかしら」
それはライベルにもコセルアにも言ってないはずだが、まさか見抜かれるとは。
「まあ、な。だからって今更剣に切り替える気も無いんだけどよ」
「だったら……これを受け取りなさい」
そう言って、お袋が武器を入れてる籠の中から一つ取り出してみせた。
それは一・五メートル程の長さの……。
仕方無く付いていく事、十数分。
まさか邸宅を出て外の倉庫まで行くとは思わなかった。
というかこんな所に倉庫なんてものがあったのか。結構行って無い場所があったんだな。
懐から鍵を取り出す様を見て、最初から用意周到だった訳だと半ば呆れてしまった。
これ俺が着いて来なかったらどうするつもりだったのかと。
「貴方はそっちを引っ張りなさい」
「……へいへい」
お袋に言われた通り、片方のドアノブを掴んで二人同時にスライドさせる。
開け放たれた扉の奥から、埃の粒子が外へと飛び出すのが見えた。
「これは……」
長年使われていない倉庫特有の鼻の奥が若干ツーンとくる匂い、当然好かないがそれを無視して倉庫内に足を踏み入れ、その光景を見た俺は思わず息を呑んだ。
「意外と、綺麗だな……」
「埃だらけとでも思ったの? きちんと定期的に換気はしているわ」
「換気は、ねぇ。じゃあ結局使ってないのは同じじゃねえか」
「そんな細かい事はどうでもいいでしょう。……さあこの奥よ」
倉庫の中は意外にも綺麗に保存されていて、換気が定期的にされているのは本当らしい。
それでも埃っぽさは拭えねぇな。苦手なんだよなこの匂い。
壁に掛かってるのは農具だったり台車だったり梯子だったり、色々ある。
道具の予備倉庫か何かか。
そして倉庫の奥に扉をさらに潜り抜け、お袋が部屋の灯りをつけた時、俺は思わず驚いた。
「まさか……ここって武器庫でもあるのか」
「普段は使われていないけれど。この倉庫自体が非常用の物ばかり入れているから。……私もここに武器を収めていた事をついこの間思い出したのよ」
「おいおい……」
そう、扉の奥にあったのは多種多様な武器だ。
だが、例えばコセルア達が使ってるような剣の類は無い。普段使われてないってのもそういう事なんだろう。
「槍に鎌に斧に……物騒だな、おい」
「私の領地は何かと狙われやすいもの。それが化け物だけならいいのだけれど、ね」
含みのある言い方だ。この間みたいな事を言ってるのか?
自分に敵が多いのは百も承知って事か。しかしどういう理由で人間相手にも嫌われてんのか。
……そういう立場だからこそ、俺に対して外出制限をしてんだろうな。
「でも何でこんな色々溜め込んでんだ? うちの騎士団は剣使う奴ばっかじゃねぇか」
「元々は一人一人の希望に合わせて武器を使わせるのが目的だったのよ。だけれどうちに来る子達って剣に憧れてる子ばっかりで……。剣で名を馳せた弊害といえばそれまでだけど」
「それで誰も剣以外使わないからって此処がこんなになったって訳か」
「一応槍の扱いは習わせてるわ。……それもあまり使う機会が無いのだけれどね」
妙な哀愁がお袋から漂ってるな。クールな面にも色んな歴史があるもんだ。
息子として慰めてやるか。
俺はお袋の背中にポンと手を置いた。
「いや同情は要らないわ」
「冷てぇな」
それはともかく、結局どうして俺を此処まで連れて来たのか? 本題はそこなんだが。
「それで?」
「貴方って剣を使うつもりは無いのよね?」
「コセルアから使い方ぐらいは習ってるな。でもそれだけだ。ガタイで他の奴に勝てねえ俺じゃ、やり方を考える必要があるからな。ただ……」
「棒術を独自に鍛えてるらしいけど、屋内だったり森の中だったり、そういう障害物の多い場所だと十分に扱えない。といったところかしら」
それはライベルにもコセルアにも言ってないはずだが、まさか見抜かれるとは。
「まあ、な。だからって今更剣に切り替える気も無いんだけどよ」
「だったら……これを受け取りなさい」
そう言って、お袋が武器を入れてる籠の中から一つ取り出してみせた。
それは一・五メートル程の長さの……。
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