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第32話 気が楽になる相談
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「……ひぃ……っ……はぁ……、あ……もう終わりです、よね? じゃあ部屋に戻りましょう、ボクもうクタクタで」
「……お前がもう少し我慢出来るようになりゃ、綺麗に終われるんだけどよ」
「ふぇ?」
他の騎士からタオルを受け取ったライベルが息も絶え絶えになって帰りたいと言ってくる。
内心溜息をついた俺は、その腕を引っ張って屋敷に戻って行くのだった。
――ふっ。
不意に誰かの……いや、コセルアが静かな笑い声が聞こえて来た。
今日はいい日になるかもな。
「今日のライベル君も汗に濡れて頑張って、もう思わず抱きしめたくなったわ!」
「いやあ、タオルと水筒を渡す栄誉。今日は僕のものとなってラッキーだったよ。あとでみんなに自慢してあげないと」
「お前狡い。オレだってしばらく声を掛けるだけだったのに。くそっ明日こそストレッチに相手になってみせる!」
「…………本当、何で綺麗に終われないのだろうな」
シャワーを浴びているその時、誰かの溜息を聞いたような気がしたが……当然ここには汗を洗い流す俺とライベルしかいない。
「どうしたんですかぁ? 急にソワソワして」
「何でもねぇよ。お前ちゃんと全身洗えよ、汗臭ぇ奴なんて傍に置きたくねえぞ」
「ぼ、ぼくはいつも身だしなみに気を付けてるじゃないですか。汗を流した量なら坊ちゃまの方が多いはずですし、念入りにするならそっちじゃ……」
「あ、生意気言ってんじゃねえぞ」
「わ!? 急に水を掛けないで下さい!」
◇◇◇
やっぱ色々考えたが、あのオーラで切る感覚をものにするなら、日頃から刃物を扱うべきかと思う。
普段棍を使ってて、その都度オーラを纏って切るなんて器用な事をこの俺が出来るとも考えにくい。
そうなると、棍の先に刃でも着けるか? いや、それじゃあ携帯性もいまいちだ。
そもそも長物自体持ち歩くには不便なんだ、だからと言って今更剣に持ち帰るのも違うだろう。
都合よく物を出し入れ出来たりする、アイテム的なのでもないもんか……。
流石に都合が良すぎるか。でもなぁ……。
一つ悩みが終わったら、また別の悩むが沸いて来る。俺という奴はどこまでも未練に囚われて人間らしいというか。
未練か……。
最近、薄れたかと思っても綺麗に残ったままの記憶。あいつとの思い出がこびりついているのも未練だからか? だが、それは惜しいからじゃないはずだ。きっと。
(二度と会えないから永遠にケリを着けられない。だから嫌でも消えてくれないのか。呪いのような生き方は死ぬまで続くのか。それともまた、次の生とやらでも思い出すってのか)
一つ確かなのは、二度目の人生での楽しい思い出が頭の中に入ってるって事だ。
これからもそれが続けば、呪いと対抗する力になるかもしれない。
(誰かに聞いて貰う、か……。コセルアのありがたい説法、早速実践に移すか)
丁度良く、部屋の扉を叩く音が聞こえて来た。
「坊ちゃま、いらっしゃいますか?」
「ああ、勝手に入って来い」
「では……」
侍従のスーツで部屋に入って来るライベル。このどこか頼りないヤツに、一つ頼ってみようじゃねぇか。
「お前さ、便利なアイテムとかについて何か知らないか? 例えば……」
そういう相談をしている時、目の前の会話だけを楽しんでいる俺の中から元カノとの思い出は、確かに浮かんでは来なかった。
頼りないヤツの頼りになる部分だ。
「……お前がもう少し我慢出来るようになりゃ、綺麗に終われるんだけどよ」
「ふぇ?」
他の騎士からタオルを受け取ったライベルが息も絶え絶えになって帰りたいと言ってくる。
内心溜息をついた俺は、その腕を引っ張って屋敷に戻って行くのだった。
――ふっ。
不意に誰かの……いや、コセルアが静かな笑い声が聞こえて来た。
今日はいい日になるかもな。
「今日のライベル君も汗に濡れて頑張って、もう思わず抱きしめたくなったわ!」
「いやあ、タオルと水筒を渡す栄誉。今日は僕のものとなってラッキーだったよ。あとでみんなに自慢してあげないと」
「お前狡い。オレだってしばらく声を掛けるだけだったのに。くそっ明日こそストレッチに相手になってみせる!」
「…………本当、何で綺麗に終われないのだろうな」
シャワーを浴びているその時、誰かの溜息を聞いたような気がしたが……当然ここには汗を洗い流す俺とライベルしかいない。
「どうしたんですかぁ? 急にソワソワして」
「何でもねぇよ。お前ちゃんと全身洗えよ、汗臭ぇ奴なんて傍に置きたくねえぞ」
「ぼ、ぼくはいつも身だしなみに気を付けてるじゃないですか。汗を流した量なら坊ちゃまの方が多いはずですし、念入りにするならそっちじゃ……」
「あ、生意気言ってんじゃねえぞ」
「わ!? 急に水を掛けないで下さい!」
◇◇◇
やっぱ色々考えたが、あのオーラで切る感覚をものにするなら、日頃から刃物を扱うべきかと思う。
普段棍を使ってて、その都度オーラを纏って切るなんて器用な事をこの俺が出来るとも考えにくい。
そうなると、棍の先に刃でも着けるか? いや、それじゃあ携帯性もいまいちだ。
そもそも長物自体持ち歩くには不便なんだ、だからと言って今更剣に持ち帰るのも違うだろう。
都合よく物を出し入れ出来たりする、アイテム的なのでもないもんか……。
流石に都合が良すぎるか。でもなぁ……。
一つ悩みが終わったら、また別の悩むが沸いて来る。俺という奴はどこまでも未練に囚われて人間らしいというか。
未練か……。
最近、薄れたかと思っても綺麗に残ったままの記憶。あいつとの思い出がこびりついているのも未練だからか? だが、それは惜しいからじゃないはずだ。きっと。
(二度と会えないから永遠にケリを着けられない。だから嫌でも消えてくれないのか。呪いのような生き方は死ぬまで続くのか。それともまた、次の生とやらでも思い出すってのか)
一つ確かなのは、二度目の人生での楽しい思い出が頭の中に入ってるって事だ。
これからもそれが続けば、呪いと対抗する力になるかもしれない。
(誰かに聞いて貰う、か……。コセルアのありがたい説法、早速実践に移すか)
丁度良く、部屋の扉を叩く音が聞こえて来た。
「坊ちゃま、いらっしゃいますか?」
「ああ、勝手に入って来い」
「では……」
侍従のスーツで部屋に入って来るライベル。このどこか頼りないヤツに、一つ頼ってみようじゃねぇか。
「お前さ、便利なアイテムとかについて何か知らないか? 例えば……」
そういう相談をしている時、目の前の会話だけを楽しんでいる俺の中から元カノとの思い出は、確かに浮かんでは来なかった。
頼りないヤツの頼りになる部分だ。
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